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2009年 > 4月度の観察記録
4月度の観察記録
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 晴天で風もなくほとんど初夏のようでした.新池周辺のサクラ(桜,バラ科)の花は,かなり残っていましたが,わずかな風で花吹雪でした.ヒヨドリ(鵯,ヒヨドリ科)とスズメ(雀,スズメ科)もサクラの花の蜜を盛んに吸って,花びらを落としていました.ヒヨドリは,サクラの蜜だけでなく,虫も食べていました.新池の水面の2/3程は,スイレン(睡蓮,スイレン科)の茶褐色の葉で覆われていました.その隙間にカワウ(川鵜,カワウ科)が2羽とヒドリガモ(緋鳥鴨,カモ科)の3つのつがいとバン(鷭,クイナ科)が1羽いました.カイツブリ(鳰,カイツブリ科)の鳴き声もしましたが,姿は見えませんでした.新池の岸に近い水中でコイ(鯉,コイ科)がもぞもぞと動いていました.周辺では,クマバチ(熊蜂,ミツバチ科)やキチョウ(黄蝶,シロチョウ科)が飛んでいました.センダン(栴檀,センダン科)は,やっと枝先に新芽を出し始めていました.元清風荘は,ほとんどの樹木が伐採されすっかり整地されていました.参加者は,子供2人を含めて26名でした.

新池のサクラ センダンの新芽

 まず,参加者の持ってきた,3種のアケビを見ました.普通のアケビ(通草,アケビ科)とゴヨウアケビ(五葉通草,アケビ科)とミツバアケビ(三葉通草,アケビ科)でした.ゴヨウアケビは,小葉が5枚で,ミツバアケビと同じ形の暗紫色の花が付いていました.アケビとミツバアケビは交雑して,ゴヨウアケビという雑種をつくり,小葉はふちに波状の鋸歯があるのが特徴だそうですが,持ち込まれたものはほとんど鋸歯はありませんでした.

【外部リンク】女王蜂にも毒はある(スズメバチと戦う為の研究と対策 実践日記)

5葉のアケビ

 先月の報告のバニラビーンズに関連して,モモ(桃,バラ科)の受粉も最近はけばたで人為的に受粉させているという話がありました.遺伝子組み替えの大豆が,大豆の原種のツルマメ(蔓豆,マメ科)と交配して,組み替え遺伝子が自然に出てしまうという話題がでました.ただし,その受粉確率は1/1000であり,これを無視してよいかどうかの議論があるそうです.
 編んだ竹かごに竹で作った10個の風車を持ってきた参加者がいました.竹細工を教えている方でしたが,ほしい人に差し上げると言ったとたん,すぐになくなりました.男の子が早速息を吹きかけて遊んでいました.
 生きているオオスズメバチ(大雀蜂,スズメバチ科)の女王蜂が歩道に落ちていたのを持ってきた参加者がいました.ゆっくりと足を動かしており,危ないという声もでました.まだ,暖かくないのでゆっくり動いている,または,車にでもぶつかったのではという人もいました.ハチの毒針は産卵管が変化したものなので雌しか刺しませんが,女王蜂は産卵するので,毒針をもたないので刺さないと言う人もいました.女王蜂については,種々の記述が事典などにもありますが,「女王蜂も毒針を持っていますが,攻撃性は低く刺すことはほとんどない」という記述がありました.
 2月に観察したシロフフユエダシャクガ(白斑冬枝尺蛾,シャクガ科)が産卵した卵からかえった幼虫を持ってきた参加者がおり,皆で観察しました.3cm長くらいで尺取りをしていました.

竹の風車で遊ぶ子ども オオスズメバチの女王蜂 シロフフユエダシャクガの幼虫

 ここまでで,10時になってしまい急いで平和公園に向かって出発しました.元清風荘の横の歩道で,風もないのにサクラの花びらが舞い降りてきました.平和公園の駐車場を入ったすぐ横で,クスノキ(楠または樟,クスノキ科)が紅葉して落葉しているのを観察しました.今年は,落葉が異常に早いという感想がでました.サクラが散るのと紅葉して落葉するクスノキが一緒なのはめずらしく,コイののっこみももう終わりに近く,イロハモミジ(伊呂波紅葉,カエデ科)の花も終わりつつあり,フジ(藤,マメ科)やライラック(Lilac,モクセイ科,和名:紫丁香花)の花も咲き始めたという話がでました.
 日本の台湾支配は,クスノキが支えたというNHKの番組の紹介がありました.クスノキは,枝,根,葉などを水蒸気蒸留して得られる樟脳が取れる貴重な木で,イギリスは当時,樟脳を可塑剤としたセルロイドからいろいろなものを造っていました.無煙火薬の原料としても注目され,1920年代に化学製品が開発されるまで貴重な輸出商品でした.まだ,九州で天然樟脳をクスノキからとっている所がHPに紹介されています.

   【外部リンク】アジアの一等国(世界の情報教えます)

   【外部リンク】天然クスノキ樟脳(染色こだまS)

 オタマジャクシ池の横のマサキ(柾,ニシキギ科)の葉が例年のように食害で無惨な姿をしていました.葉の裏を探すとミノウスバ(蓑薄翅蛾,マダラガ科)の幼虫がいました.

マサキについたウスミノガ

 近くの白い花を咲かせているオオシマザクラ(大島桜,バラ科)を観察しました.この桜の葉は,香りはしますが食べてもうまくないということでした.溝の近くに群生しているホトケノザ(仏の座,シソ科)を観察しました.赤い点の小さな蕾とラッパ型の花が混在していましたが,その中間がありませんでした.オオイヌノフグリ(大犬の陰嚢,ゴマノハグサ科)の花のように日があたる朝方にパッと花が咲くようです.ただし,閉鎖花として咲かずに,自家受粉をする戦略も持っているそうです.奥の畑には,ハナモモ(花桃,バラ科)が花を咲かせていました.向かいの原っぱに群生していたシンジュ(神樹,ニガキ科)はすっかり伐採されていました.

オオシマザクラ ホトケノザ

 トンボ池に行き,3種の蛙のオタマジャクシを観察しました.最も多かったのは,黒いニホンアカガエル(日本赤蛙,アカガエル科)のオタマジャクシでした.最も数が少ないのは,他のオタマジャクシより少しだけ大きい灰色のウシガエル(牛蛙,アカガエル科)でした.昨年まで多かったアズマヒキガエル(東蟾蜍,ヒキガエル科)はすっかり影が薄くなっていました.先月見つけたウシガエルの3つの卵塊は撤去したそうですが,それでも新参者のウシガエルはしっかりとオタマジャクシになっていました.トンボ池の畦の草に,青い条(すじ)のあるホソミオツネントンボ(細身越年蜻蛉,アオイトトンボ科)がとまっていました.成虫で冬を越したイトトンボで,春に最も早く出てくるトンボでした.
 池の水底に写っているアメンボ(水黽,水馬または飴坊,カメムシ目アメンボ科)の影は表面張力による水面の凹凸によって不思議な形をしていました.動くと影の形が変わり,アメンボが2本の前足でこいで動くのが分かるという説明がありました.

3種の蛙のオタマジャクシ ホソミオツネントンボ

 水田の奥の斜面のウスノキ(臼の木,ツツジ科)の花を観察しました.縦に紅い筋のある釣鐘状の1cm大の花は,地味ですがきれいなものでした.葉を触るとビロードのような感触で,気持ちがよいという感想を述べたご夫婦の参加者がいました.
 アベマキ(阿部槇,ブナ科)の虫えいのクヌギエダイガフシ(櫟枝毬五倍子)を観察しました.漢字で書くと分かりやすい名前ですが,この時は誰も思いだせませんでした.

ウスノキの花

 平和公園と名古屋市街を見渡せる場所で,一重のヤマブキ(山吹,バラ科)の山吹色の花を観察しました.ヤマブキに関連して,万葉集の歌と芭蕉の俳句が出ました. 

『山吹の花の盛りにかくのごと君を見まくは千年にもがも』(大友家持)

夜麻夫伎乃 花能左香利尓 可久乃其等 伎美乎見麻久波 知登世尓母我母(原表記)

意味: 山吹(やまぶき)の花の盛りに,このようにあなた様にお会いすることがいつまでも続いて欲しいものです.

   【外部リンク】第二十巻 : 山吹の花の盛りにかくのごと(たのしい万葉集)

 『ほろほろと 山吹ちるか 滝の音』(松尾芭蕉)

   【外部リンク】山吹を詠んだ歌(たのしい万葉集)

 昔はこの色を山吹色というように習いましたが,今はどのような名称になるかという問いがありました.答えは,カドニウムイエローという味気ないものでした.文化の破壊なのかもしれません.頭上に,アベマキに絡みついたミツバアケビの花が咲いていました.

ヤマブキの花

 藪こぎをして斜面を登り,小径に出てコモウセンゴケ(小毛氈苔,モウセンゴケ科)を探しました.溝が乾燥しているため,斜面にわずかなコモウセンゴケしかありませんでした.花はまだ咲いていませんでした.近くの背の低い樹木にゴミグモ(塵蜘蛛,コガネグモ科)がいました.まさにゴミの中に隠れているような感じでした.シャシャンボ(小小坊,ツツジ科)の新しい芽を観察しようとしましたが,昨年の実殻しかありませんでした.

 白い釣鐘状の花が鈴なりになった2本のアセビ(馬酔木,ツツジ科)を観察しました.学生を指導しているときに,この花は何かと聞いたらスズラン(鈴蘭,スズラン科)という答えがあったそうです.樹木と草の違いも分からないというより,少なくともスズランの花の形を知っているだけでもよいのかも知れません.小さな花をとって,中を見てみると小さなハチがかなりの頻度で見つかりました.
 近くでマルバアオダモ(丸葉青?,モクセイ科)の2本の花を観察しました.短冊状の花の付き方が違うので,どちらかが雄木で他方が雌木のようでした.花をなめて甘い方が雌木だということで,花を食べた参加者がいましたが,どちらも苦いだけということでした.雌木には両性花が咲きますが,自家受粉はできないそうです.マルバアオダモの横でヤマウルシ(山漆,ウルシ科)が新芽を出していました.

コモウセンゴケ アセビの花 アセビの花の中のハチ マルバアオダモの花

 最後に大乗寺に行って,ソテツ(蘇鉄,ソテツ科)のクロマダラソテツシジミ(黒斑蘇鉄小灰蝶,シジミチョウ科)による食害を見ました.3本のソテツの中で,1本だけ葉がひどい状況になっていました.ソテツの周りの芝生の中で,ヒメスミレ(姫菫,スミレ科),スミレ(菫,スミレ科)およびヒメハギ(姫萩,ヒメハギ科)の紫色の小さな花が咲いていました.少し離れた野原には,紫色の小さな花を咲かせたカラスノエンドウ(烏野豌豆,マメ科)と,白い小さな花を咲かせたスズメノエンドウ(雀野豌豆,マメ科)がありました.カスマグサ(かす間草,マメ科)は,周辺を探しましたがありませんでした.芝生と一緒に入ってきた帰化植物のマツバウンラン(松葉海蘭,コマノハグサ科)も小さな紫の花を咲かせて群生していました.赤い新芽のついたアカメガシワ(赤芽柏,トウダイグサ科)もありました.

  【外部リンク】カスマグサ(身近な動植物)

 観音堂の石の階段で感想会を行いました.ある参加者から「シソの茎」(まどみちお)という詩が紹介されました.シソの茎の断面が4角形だということに驚いたものでした.アメンボが前足で水を蹴って進むということに驚いたという感想もありました.快適な初夏のような観察会になりました.

食害にあったソテツ ヒメスミレ
観察項目:ミツバアケビ,ゴヨウアケビ,竹の風車,アケビコノハガ,シロフフユエダシャクガの幼虫,スズメバチの女王蜂,クスノキの落葉,ミノウスバ,コガタルリハムシ,コバノミツバツツジ,3種の蛙のオタマジャクシ(アズマヒキガエル,ニホンアカガエル,ウシガエル),アメンボの影,ホソミオツネントンボ,ウスノキ,ヤマブキ,アベマキの虫えい(クヌギエダイガフシ),ゴミグモ,シャシャンボの昨年の実殻,アセビ,マルバアオダモ,イロハモミジの花,クロマダラソテツシジミに食害されたソテツ,ヒメスミレ,スミレ,ヒメハギ,カラスノエンドウ,スズメノエンドウ,マツバウンラン(概ね観察順)

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子

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2009年4月度の観察記録です。
2009-8-15 447

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