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2009年 > 5月度の観察記録
5月度の観察記録
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 快晴で,新池周辺は既にむっとする初夏の様相でした.新池の水面の3/4以上を覆っているスイレン(睡蓮,スイレン科)は,少しだけ白い花を咲かせていました.岸では2羽のカワウ(川鵜,ウ科)が羽根を広げて乾かしていました.また,ツバメ(燕,ツバメ科)が水面を飛んで,上手に水を飲んでいました.カイツブリ(鳰,カイツブリ科)の鳴き声とカワラヒワ(河原鶸,アトリ科)の鳴き声が大きく聞こえました.水際には,紫色の花を咲かせたシラン(紫蘭,ラン科)とシロバナシラン(白花紫蘭,ラン科)が混じっていました.黄色い花をつけたキショウブ(黄菖蒲,サトイモ科)も満開でした.集合場所側の新池の土手では,一面にオオキンケイギク(大金鶏菊,キク科)の黄色い花が咲いていました.新池横の歩道では,昨年と同じように淡紅色の1.5cm大の花を咲かせたアカバナユウゲショウ(赤花夕化粧,アカバナ科)が群生していました.その中に,2輪だけ花の色が真っ白なシロバナユウゲショウ(白花夕化粧,アカバナ科)もありました.5mm大の5弁の黄色い花を咲かせたカタバミ(片喰または酢漿草,カタバミ科)と紫の花を咲かせたニワゼキショウ(庭石菖,アヤメ科)も近くで群生していました.センダン(栴檀,センダン科)は,今にも咲きそうな薄紫色の花のつぼみをつけていました.集合場所のハリエンジュ(針槐樹,マメ科)は,白い花びらを既にたくさん地面に落としていました.
 参加者は,出発時に大人28名と子供7名でした.

シランとシロバナラン キショウブ キショウブ シロバナユウゲショウ

 集合場所で,まず,蝶の好きな参加者が持ってきた岐阜県博物館のチラシの紹介がありました.江戸時代に正確に書かれたギフチョウ(岐阜蝶,当時は「錦蝶」,アゲハチョウ科)などの絵の展示をしているそうです.関連して,「食草」や「食樹」の元の英語は「host plant」で,「寄主植物」と訳してよいかどうかの議論がありました.「口腔外科」は,日本語の読みとしては「こうこうげか」ですが,医学界では誤った「こうくうげか」を使っており,誰かが誤用したものが慣例になってしまったという例もあげられました.兄妹の子供達は,説明とは関係なくダンゴムシ(団子虫,ワラジムシ科)を捕まえて遊んでいました.
 参加者が持ってきた黄色い雄しべが目立つイタチハギ(鼬萩,マメ科,別名:クロバナエンジュ)と通常の3倍くらいの大きさのミツバアケビ(三葉木通,アケビ科)の葉を観察しました.イタチハギの総状花序(軸に均等に多くの花がつく付き方)の花びらを観察して,小さな旗弁と船弁を見つけて,確かにマメ科であることを再確認しました.自家受粉が主なのに,どうして雄しべがこんなに目立つのかという疑問がでました.自宅の庭から持ってこられたミツバアケビの葉がこんなに大きいので,どんな実がなるか楽しみだという声がでました.

   【外部リンク】四季に生きる草木と昆虫(白岩先生の植物教室)

イタチハギとミツバアケビ

 集合場所を出発して,最初に元清風荘の整地した所を見に行きました.北側斜面下の湧き水の水路で,子供たちがアメンボ(水馬,アメンボ科)を捕まえました.湧き水の水路を残すことが決まっているそうですが,その他の計画は新しい市長次第のようです.整地されてすぐに,コチドリ(小千鳥,チドリ科)のつがいが来ていましたが,残念ながら卵はありませんでした.ほとんどの木は切られていましたが,残っている木の根本に数本のアヤメ(菖蒲,アヤメ科)が紫色の花をきれいに咲かせていました.男の子達は,水路の泥にはまっていましたが,何故かうれしそうでした.斜面を登って,柵を越えて平和公園に入りました.

アヤメ 泥にはまった男の子

 小径横のムラサキシキブ(紫式部,クマツヅラ科)の葉の上の触角を入れても1cm弱大のイチモンジカメノコハムシ(一文字亀子葉虫,ハムシ科)を観察しました.コガタカメノコハムシ(小型亀子葉虫,ハムシ科)とジンガサハムシ(陣笠葉虫,ハムシ科)の名前も候補として出ましたが,結局昨年も観察して,昨年の本の表紙の6月用写真となったイチモンジカメノコハムシということになりました.ムラサキシキブの一部の葉は,かなり穴あきになっていました.周辺には,ミツバアケビの実生が数本あり,その近くにニガナ(苦菜,キク科)が黄色い花を咲かせていました.
 ネジキ(捩木,ツツジ科)が白い花のつぼみをたくさんつけていました.その中で小さな花が1つだけ咲いていました.別のムラサキシキブに交尾中のイチモンジカメノコハムシを見つけました.それを見て「十文字になっている」と言った参加者がいて,一部の参加者にうけていました.近くに独特の形で光沢のある葉を持ったサルトリイバラ(猿捕茨,ユリ科)もありましたが,ルリタテハ(瑠璃立羽,タテハチョウ科)の幼虫はまだいませんでした.
 アワフキムシ(泡吹虫,アワフキムシ科)の泡を複数見つけて,泡を手にとって出てきた1cm弱大のアワフキムシを観察しました.樹液を吸って生きているそうですが,逆立ちをしてお尻から泡を出して全身を囲っているのだそうです.成虫は,ヨコバイ(横這,ヨコバイ科)の一種で,蝉の仲間だという説明がありました.

イチモンジカメノコハムシ ネジキの花のつぼみ アワフキムシ

 ヤマコウバシ(山香ばし,クスノキ科)を見つけて,葉をとって皆でにおいをかぎました.菖蒲湯のショウブ(菖蒲,サトイモ科)のにおいだという人がいました.冬に枯れたまま葉が落ちないので,よく目立つという説明がありました.新緑のガマズミ(莢ずみ(ずみは草冠に迷),スイカズラ科)と赤い新芽をつけたヒサカキ(姫榊または非榊,ツバキ科)もありました.ヤマウルシ(山漆,ウルシ科)が,小さな小葉からなる羽状複葉(小葉が軸の両側に羽のようにつき全体として1枚の葉を形成しているもの)の下に円錐花序(花全体が円すい形になる)をつけ,黄緑色の花を咲かせていました.最もかぶれやすい時期で,気をつけるようにとの注意がありました.このヤマウルシの一部の葉も虫に食われていました.

   【外部リンク】ヤマコウバシ(大阪百樹)

 オトシブミ(落とし文,オトシブミ科)のゆりかごを複数見つけて皆で観察しました.丁度葉を巻き始めた所を見つけた人もいました.完成まで2時間くらいかかるそうです.アベマキ(阿部槇,ブナ科)についている複数の蛾の幼虫を下から見ました.周辺の葉を集団で食べ尽くしていました.
 モリチャバネゴキブリ(森茶翅蜚?,チャバネゴキブリ科)が地面の落葉の下でたくさん動き回っていました.その近くにコナラ(木楢,ブナ科)の実生も数本ありました.

花を付けたヤマウルシ オトシブミのゆりかご

 ルリチュウレンジバチ(瑠璃鐫花娘子蜂,ミフシハバチ科)を見つけて,ペットボトルに入れて観察しました.近くの淡いピンク色の花を付けたモチツツジ(餅躑躅,ツツジ科)の花は,既に盛りを過ぎていました.木につるしてあるペットボトルで作ったスズメバチ(雀蜂,スズメバチ科)のトラップをはずして,中を見ました.ヤクルトのような発酵臭がしました.自宅の庭の蜂よけにも,ヤクルトに砂糖などを入れて,このようなトラップをぶら下げておくと良いという話がでました.連休明けから2週間くらいで,女王蜂を捕ってしまうのだそうです.それ以上おいておくと,かえってハチを呼び込むことになるそうです.平和公園のトラップは保健所の指導の下で,ボランティアが設置しているそうです.また,女王蜂も刺すので注意するようにとの説明がありました.

モチツツジ スズメバチのトラップ

 ウラジロノキ(裏白の木,バラ科)の花を観察しようとしましたが,花期は終わっており,花殻だけが多くありました.じっくり観察して,幹に近いところで,少しだけ残っている1.5cm大の白い花の写真を撮りました.葉の裏は白っぽく,名前の由来がよく分かりました.短枝から数枚の葉が出て輪生のように見えましたが,長枝の葉は互生でした.
 低木の樹上に2種の蜘蛛の巣があり,1つは典型的な皿状の網をはっているサラグモ(皿蜘蛛,サラグモ科)でした.もう1つは,網の形状が違いましたが,後でその1.5cm大のクモの写真を調べて,ムネグロサラグモ(胸黒皿蜘蛛,サラグモ科)であることを教えてもらいました.キバラモクメキリガ(黄腹木目切蛾,ヤガ科)の幼虫を見つけて,手にとって観察しました.
 エニシダ(金雀枝,マメ科)が2本あり,黄色い花をたくさんつけていました.イボタノキ(水蝋の木,モクセイ科)の白い花のつぼみも観察しました.トベラノキ(扉木,トベラ科)も新芽を出していました.

ウラジロノキの花 エニシダの花 イボタノキの花のつぼみ

 パンパスグラス(イネ科,和名:白銀葭)のある付近の水路は,水があふれていました.赤い花を付けたケシ(芥子,ケシ科,別名:ポピー)や紫色の蕾をつけたヤグルマギク(矢車菊,キク科)もありました.麻薬になるケシではないかと心配した参加もいました.水路近くの湿地には,黄色い2cm大の5弁の花と緑の実をつけたケキツネノボタン(毛狐の牡丹,キンポウゲ科)が群生していました.クリタマバチ(栗玉蜂,タマバチ科)の2cm大の虫えい(クリメコブズイフシ(栗芽瘤髄節))を複数観察しました.ミノムシ(蓑虫,ミノガ科)もついていました.センチコガネ(雪隠黄金,コガネムシ科)も見つけて観察しました.キバラケンモン(黄腹賢紋蛾,ケンモンガ科)の派手な色の5cm長の幼虫を見つけて,手にはわせた女性の参加者がいました.刺されないか心配する声があがりましたが,その女性は平気でした.また,大きな白い触覚だけが飛んでいるように見えるクロハネシロヒゲナガガ(黒翅白髭長蛾,ヒゲナガ科)を見つけて瓶に入れて観察しましたが,この時点では誰も名前を言えませんでした.

センチコガネ キバラケンモンの幼虫 クロハネシロヒゲナガガ

 感想会をした場所で,盛り上がった土を見て,何かという問いがありました.大きなミミズのフンでしたが,すぐに答えられる人は少なかったようです.感想会をしているときに,木の幹にヤニサシガメ(脂刺亀,サシガメ科)を見つけて,写真を撮りました.何度見ても虫たちの造作の巧妙さに感心させられます.子供たちは,感想会の間も,虫捕りなどをして走り回っていました.感想としては,多くの虫を見ることができてよかったというのが出ました.帰りにオトシブミのゆりかごが完成しているか見ていくという参加者もいました.

 虫たちが一斉に生まれ活動しているのを実感したさわやかな観察会になりました.

ヤニサシガメ

観察項目:イタチハギ,ミツバアケビの大きな葉.ダンゴムシ,アメンボ,ヤマコウバシ,オトシブミ,サルトリイバラ,アワフキムシ,ヒモワタカイガラムシ,元清風荘の湧き水,アメンボ,モリチャバネゴキブリ,ムラサキシキブ,イチモンジカメノコハムシ,ルリチュウレンジバチ,ウラジロノキ,ヤマウルシ,クロアゲハ,ヒメウラナミシジミ,アオスジアゲハ,ヤマトシジミ,モンキチョウ,ガマズミ,エニシダ,キバラモクメキリガの幼虫,カメノキ,カナヘビ,コメツキ,アズマヒキガエルのオタマジャクシ,ムネグロサラグモ,クリタマバチの虫えい(クリメコブズイフシ),ミノムシ,センチコガネ,クロハネシロヒゲナガガ,ヤニサシガメ(概ね観察順)

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子

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2009年5月度の観察記録です。
2009-8-15 621

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