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2009年 > 6月度の観察記録
6月度の観察記録
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 梅雨入りしたとは思えない程,1日中晴れでした.歩くと風がないため多少汗が出ましたが,木陰では大変気持ち良い観察会になりました.大半がスイレン(睡蓮,スイレン科)に覆われた新池のわずかに残っている水面上では,チョウトンボ(蝶蜻蛉,トンボ科),ギンヤンマ(銀蜻蜒,ヤンマ科),ナツアカネ(夏茜,トンボ科)が飛んでいました.カワセミ(翡翠または川蝉,カワセミ科)も一羽,新池の岸にきていました.鴨などの水鳥はいませんでした.ナワシロイチゴ(苗代苺,バラ科)の貧弱な赤い実が,新池のコンクリートブロック貼りの斜面にありました.歩道のツツジ(躑躅,ツツジ科)の中にもナワシロイチゴの実がありびっくりしました.歩道のキンシバイ(金糸梅,オトギリソウ科)とビヨウヤナギ(美容柳,オトギリソウ科)の花の盛りは過ぎていました.センダン(栴檀,センダン科)は,緑の実をたくさん付けていました.参加者は,子供6名を含めて42名でした.

ツツジの中のナワシロイチゴの実 センダン

 まず,先月の報告を集合場所で見ました.報告の中のハリエンジュ(針槐樹,マメ科)に関連して,2年前から国土交通省は外来種のハリエンジュの代わりに,地域性の木を植えているという話がありました.
 次に,参加者が持ってきた,70cm x 73cmの大きなキリ(桐,ゴマノハグサ科)の葉とこれも大きなハンテンボク(半天木,モクレン科)の葉を観察しました.このキリの葉は,切株から出てきたものだそうです.たしかにキリの幼木の葉は,成木より大きなこともありますが,こんなに大きな葉を見るのは初めてでした.豊臣政権の五奉行の一人である片桐勝元が,淀君に疎まれて,奉行を解任されたときに,自らの運命を自嘲して,また,豊臣政権の行く末を案じて作ったと言われている「桐一葉落ちて天下の秋を知る」という句を出した参加者がいましたが,こんなに大きな葉が落ちれば,確かに行く末が危ういというのに相応しいかもしれません.
 参加者が持ってきたナワシロイチゴの赤い実を,食べてもよいということで,子供たちもきそって食べました.

キリとハンテンボクの大きな葉

 前と同じように,竹で作った風車を持ってこられた参加者がいて,子供たちに風車をあげていましたが,今回は製作のための材料も持ってきており,観察会終了後に作り方を1時間くらいで教えるというアナウンスがありました.
 次に,自宅に置いてあったプラスチック容器についたキアシトックリバチ(黄足徳利蜂,ドロバチ科)の巣を観察しました.2cm大の泥でできた徳利形状の巣でした.トックリバチの本を持ってきた参加者がいて,その中に描かれた,ハチの幼虫のため,巣の中に仮死状態になって入っている餌の幼虫の絵を見ました.
 スズメ(雀,スズメ科)とツバメ(燕,ツバメ科)が最近少なくなったという話がでました.ツバメは,巣をかける場所が少なくなっており,かつ,巣を作るためのよい泥が周辺に無くなっているという説明がありました.
 最後に,自宅の梅の木の枝についたクサカゲロウ(草蜻蛉,クサカゲロウ科)の卵とまゆを持ってこられた参加者がいたので,それらを観察しました.これらの観察中に,頭上でコゲラ(小啄木鳥,キツツキ科)とムクドリ(椋鳥,ムクドリ科)がしきりに鳴いていました.

竹の風車 キアシトックリバチの巣

 10時過ぎになってやっと出発しました.今回は,まず,新池の生物調査を見学に行きました.途中で,池の角にあるクワ(桑,クワ科)の実を皆で食べました.思わず酸っぱいという感想も最初に出ましたが,濃い紫色になった実は甘くておいしいという感想も次に出ました.

 緑の上着か調査カードをつけて,新池のフェンスの中に入りました.水辺の大きなアカメガシワ(赤芽柏,トウダイグサ科)は表面が薄黄色に見えるほど花を咲かせていました.バケツにモクズガニ(藻屑蟹,イワガニ科)と亀を入れた子供がおり,見せてもらいました.モクズガニはおいしいと言う参加者がいました.新池の生物調査を,なごや東山森づくりの会と名古屋市環境局の人たちが協力して行っていました.先月,オオキンケイギク(大金鶏菊,キク科)で一杯だった土手は,きれいに草が刈り取られていました.最初に,土手の2ヶ所の10cm径の穴の説明がありました.亀が産卵しようとして,後ろ足であけた穴で,途中であきらめたものだそうです.うまく産卵できたときは,蛇などに食べられないように最後に土をかぶせるので,土がかぶっていないこの2つの穴はあきらめたものだそうです.亀の卵は約2ヶ月で孵化するそうです.イシガメ(石亀,イシガメ科)は3〜6個,クサガメ(臭亀,ヌマガメ科)は10個程度,そしてミシシッピアカミミガメ(密士失比赤耳亀,ヌマガメ科)は15個程の卵を1度に産むそうです.

クワの実

アカメガシワの花

新池のモクズガニ

亀が途中であきらめた産卵穴

 フェンスの外に戻って,ネズミ捕獲用のジャーマントラップの説明を受けました.アルミでできた直方体で,20個を仕掛けて4個にネズミがかかったそうです.トラップの外からにおいをかぐと獣くさいという説明でしたが,参加者がためしても餌のピーナッツバターの臭いしかしませんでした.よく跳ねるということで,ビニールの大きなゴミ袋の中で蓋を開けました.10cm長の小さなアカネズミ(赤鼠,ネズミ科)が飛び出てきました.ゴミ袋の上を縛って回覧したため,子供たちも怖がらずに観察しました.確かによく飛び跳ねていましたが,ビニール袋の上からネズミの体を持つと,ネズミはふるえていました.ビニール袋越しでも暖かいという感想がでました.ハツカネズミ(二十日鼠,ネズミ科)のように毛並みのよいかわいい感じのネズミでした.ただし,耳の近くでダニのようなものが動いていました.全部で4匹でしたが,1匹は研究者が軍手をつけて直接つかんで,封筒に入れて,専用のはかりで体重をはかりました.まだ,亜成体で29.5gでした.成体は50g〜70gだそうです.地域によって個体差があり,山間地では体重は小さいそうです.アカネズミは,特に池が好きという訳ではなく,普通は森の中で暮らしているそうです.平和公園から新池までの距離であれば簡単に移動するそうです.なお,体重をはかったこのネズミは,肛門と尿道口の間隔が大きいので雄という説明がありました.暑さに弱くトラップの中で死んでしまうこともあるそうです.寿命は3年くらいだそうです.ドングリ,昆虫,死体など何でも食べるそうです.

ジャーマントラップの説明

アカネズミ

封筒に入れたアカネズミの体重測定

 次に亀の説明を研究者から受けました.昨年の開堀調査で外来種のミシシッピアカミミガメを,駆除しましたが,まだ,相当残っていて新池で最近でも見ることができます.しかし,今回は在来種のイシガメクサガメしかトラップにかからなかったそうです.ミシシッピアカミミガメの方が頭が良いのではという人もいました.クサガメは,九州などの西の方に多く,甲羅に3つのうねがあり,イシガメはこの地域で多く,甲羅は真ん中に1本のうねがあり,後ろの方(臀甲板)がぎざぎざになっているので識別できるという説明がありました.雌雄のイシガメを並べて,雄が格段に小さいことの説明がありました.亀の年齢は,若いときは甲羅の甲板の年輪で分かりますが,年をとってそれらがすり切れるともう分からないそうです.首の模様も年をとると黒くなってしまうそうです.クサガメは,臭いのでその名前がついていますが,そけい甲板と腋下甲板に臭腺があるそうです.雄の尾は雌に比べると長く,総排泄孔(直腸・排尿口・生殖口を兼ねる器官)の位置も尾の先のほうにあるという説明が実物を示してありました.

  【外部リンク】カメのよくある質問(カメビアンコム)

 亀は甲羅に小さな穴をあけて,その位置の違いで個体識別をするそうです.何度も捕獲して,そのデータベースから生態を調査する方法です.甲羅の表面は皮膚で穴をあけると血が出るそうです.ただし,神経はないので痛くはないということでした.この説明をしてくれた研究者の夢は,東アジアに亀専用の保護センターを作ることだそうです.多くの質疑応答がされました.スッポン(鼈,カメ目スッポン科)と他の亀の違いを聞いた人もいました.スッポンの甲羅は軟らかく,一目みれば違いは分かるという説明でした.大航海時代は,ゾウガメ(象亀,リクガメ科)を蛋白質源として船に乗せたという話もでました.

イシガメとクサガメの比較

イシガメの雄と雌の比較

 この後,平和公園に農道から入りました.クワの木が入口に2本ありましたが,既に実はありませんでした.近くのオオシマザクラ(大島桜,バラ科)には,小さなサクランボがついていました.その横の2本のビワ(枇杷,バラ科)の木に,橙色の実がたくさんついていました,皆でとって皮をむいて食べました.みずみずしくて大変甘く,おいしいという声があがりました.片方のビワの木の葉に3cm大のカタツムリ(蝸牛)が5〜6個もついていました.
 ビワの木の根元付近にムラサキカタバミ(紫片喰または紫酢漿草,カタバミ科)とイモカタバミ(芋酢漿草,カタバミ科)が同じような小さな紫色の花を咲かせていました.イモカタバミは,花の真ん中が濃い紫色で,黄色い雄しべがありました.イモカタバミの根っこは塊茎(芋の形)で,ムラサキカタバミとは違うそうです.試しに掘ってみた参加者がいましたが,確かに塊になっていました.近くのトウカエデの葉の先端が白くなっており,何かの病気にかかっているようでした.

ビワの実

ビワの葉についたカタツムリ

ムラサキカタバミ

イモカタバミ

 芝生広場の前に行き,ガマ(蒲,ガマ科)の穂の観察をしました.茎の三日月形(蒲鉾形)に湾曲した横断面の内部に,隔壁細胞で仕切られた通気道があることをルーペで確認しました.ヒメガマ(姫蒲,ガマ科)とガマの違いが議論になり,ヒメガマの雌花穂がガマより少し細く,雄花穂との間があいて茎が見えることだという説明がありました.

   【外部リンク】ヒメガマ(植物園へようこそ)

ガマの茎

 トンボ池の奥のウスノキ(臼木,ツツジ科)を見に行き,付いていた赤い実を食べた参加者がいました.赤いブルーベリーという感想が出ました.NEXCO中日本が,地元の木を植えたいということで,このウスノキから接ぎ木をするという説明がありました.湿地の畦を歩いているときに,笹の葉を折り曲げたカバキコマチグモ(樺黄小町蜘蛛,フクログモ科)の巣がありました.

 感想会を芝生広場の作業場で行いました.木陰で大変気持ちのよい所でした.まず,名古屋市の開府400年の歴史を話してもらいました.今回は,アカネズミや亀が観察できてよかったという感想が多くでました.頭上でコゲラ(小啄木鳥,キツツキ科)とシジュウカラ(四十雀,シジュウカラ科)がしきりにさえずっていました.初夏の気持ちのよい観察会になりました.

ウスノキの実

観察項目:ナワシロイチゴ,キリの大きな葉,ハンテンボクの大きな葉,キアシトックリバチの巣,クサカゲロウの卵とまゆ,ダンゴムシ,クワ,アカメガシワ,モクズガニ,カメの放棄した産卵穴,イシガメ,クサガメ,アカネズミ,ビワ,トガリシロオビカビカミキリ,ムラサキカタバミ,イモカタバミ,ガマ,ウスノキ,カバキコマチグモの巣,コゲラ,ムクドリ(概ね観察順)

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子

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2009年6月度の観察記録です。
2009-8-15 524

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