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2010年 > 12月度の観察記録
12月度の観察記録
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 晴天で風もほとんどなく,12月とは思えないほど暖かい日でした.コートを着て日差しの中を歩くと少し汗をかくほどでした.歩道端にはヒメツルソバ(姫蔓蕎麦,タデ科)が薄いピンク色と白色の球形の花をまだ咲かせていました.朝8時過ぎの新池には,ヒドリガモ(緋鳥鴨,カモ科)(8),カルガモ(軽鴨,カモ科)(2),アオサギ(青鷺,サギ科)(1),カイツブリ(鳰,カイツブリ科)(1),バン(鷭,クイナ科)(3)が来ていました.カワセミと(翡翠.カワセミ科)(1)とメジロ(目白,メジロ科)(2)も土手の樹木に来ていました.水面を覆っていた新池のスイレン(睡蓮,スイレン科)はすっかりなくなっていました.周辺の常緑のクロガネモチ(黒鉄黐,モチノキ科)は,葉の間にいっぱいの赤い小さな実をつけていました.センダン(栴檀,センダン科)は,すっかり葉を落としてクリーム色の実だけになっていました.しかし,東星ふれあい広場横のイロハモミジ(伊呂波椛,カエデ科)は,まだ深紅の葉をつけていて秋の様相でした.

ヒメツルソバ クロガネモチ 紅葉したイロハモミジ

 里山の家の周辺のカナメモチ(要黐,バラ科)は,光沢のない赤い葉を先端につけていました.東星ふれあい広場北の斜面のツルウメモドキ(蔓梅擬,ニシキギ科)の実を5〜6羽のメジロがついばんでいました.背の低いコナラ(木楢,ブナ科)とアベマキ(阿部槇,ブナ科)の葉は紅葉していましたが,まだ落葉していませんでした.このまま冬を越してしまうかもしれません.団地前のメタセコイア(Metasequoia,スギ科)は,葉は変色していましたが,三角錐の樹形はまだ維持していました.一方,街路樹のトウカエデ(唐楓,カエデ科)は,紅葉していた葉をすっかり落として枝だけの冬景色でした.

 参加者は,集合場所では子供3名を含む28名でしたが,芋煮を食べた時には,子供8名を含む50名にふくれあがっていました.

ツルウメモドキの実を食べるメジロ

 集合場所の里山の家の大坂池側のケヤキ(欅,ニレ科)の樹皮の下に,クロウリハムシ(黒瓜葉虫,ハムシ科)が10数匹越冬していました.集合場所で,参加者が持ってきたカラスウリ(烏瓜,ウリ科)とトケイソウ(時計草,トケイソウ科)の橙色の5cm大の実をまず観察しました.カラスウリの実の方が少し細長い形をしていました.トケイソウの実は,ほぼ球状で,最初はキカラスウリ(黄烏瓜,ウリ科)の実と思った人もいました.

【外部リンク】トケイソウの実を食べました(お気軽花山魚菜)

クロウリハムシ カラスウリとトケイソウの実

 次に,ガガイモ(蘿芋,ガガイモ科)の実を観察しました.実の中の3cm長くらいの長い羽根毛がついた種を取り出して,子供たちが飛ばしました.次に,ツブラジイ(円ら椎,ブナ科)とスダジイ(首陀椎,ブナ科)およびその交雑種のドングリを比較しました.そのとき,1人の男の子が手に這わせた3cm長くらいのカギバアオシャク(鉤翅青尺,シャクガ科)の幼虫を見せてくれました.次に,参加者の持ってきたコナラとアベマキの葉も比較しました.鋸歯の形状が異なり,アベマキは針状のものが出ており,コナラは通常の鋸歯状でした.里山の家の近くの木から採ってきた葉は,その中間的な形状で,クヌギ(櫟,ブナ科)だという人もいましたが,葉の裏にはアベマキと同じようにフェルトのような毛がついており,クヌギではないという人もいました.

ガガイモの種 カギバアオシャクの幼虫 アベマキとコナラの葉

 ムクロジ(無患子,ムクロジ科,和名:延命皮)とヒシ(菱,ヒシ科)の実を,それぞれ持って来た参加者もいました.ムクロジの実の中の黒い1cm大の丸い種は,硬いので数珠や羽子板の羽根の玉に使うという説明がありました.また,種の周辺の黄色い果肉はサポニンが含まれているのでシャボン(エコ洗剤,soapnut)に使われるという話がでました.何故,このようなものが種に付いているかという質問に,乾燥を防ぐためだろうという回答がでました.生き物には毒であり,鳥や虫から食べられないようにしているという理由もあるようです.ヒシの実は硬くて人力では割れないという説明に,この実を食べるヒシクイ(菱喰,カモ科,日本ではオオヒシクイが多い)という冬鳥がいるという話がでました.ただし,まだ青みの残った軟らかい実を食べるようです.乾燥させたヒシの実は,忍者がマキビシとして使ったという話題も出ました.

【外部リンク】ヒシの群落の不思議(勇払原野の自然)

ムクロジの実 ヒシの実

 ここまでで既に10:00でした.先月の記録を見て,アブラコウモリ(油蝙蝠,ヒナコウモリ科)は既に骨格標本にしたかという質問に対して,ベンジンの中で油ぬき中という回答でした.フェイジョア(Feijoa,フトモモ科)は東山動物園に結構あるという報告がありました.カボチャのような形状のサツマイモ(薩摩芋,ヒルガオ科)に関しては,今年の暑さと水が少なかったためということでした.商品価値はないそうです.
 出発に際して,倉庫の中のリアカーを出して,芋煮会の必需品のリストを確認しながら,道具や食材を積みました.水田近くで,半年ぶりに来た参加者が平和公園の変化に驚きの声をあげました.林の中のナンテン(南天,メギ科)は,赤い実をたくさんつけていました.その周辺で,エナガ(柄長,エナガ科)の群に出会いました.少し前にヒレンジャク(緋連雀,レンジャク科)も来ていたそうです.炭焼広場に寄り,炭をリヤカーに載せました.

ナンテン

 昨年と同じ芋煮会の場所の周辺はまだ紅葉している樹木が多くあり,なかなかの景色でした.ススキ(薄,イネ科)もきれいな白い穂をつけていました.
 いつものように,芋煮のためにU字溝を水平に置き,新聞紙と枯枝を入れてライターで着火しました.U字溝の上に芋煮鍋を置き,まず水を入れました.
 同時に,用意された25個のパン生地を巻くための竹を切りに2名の子供を含む4名の参加者が竹藪に出向きました.枯葉を青のビニルシートに載せて集めてきた参加者もいました.バーベキューグリルの上で,パン焼きなどの為の熾(おき)を作り始めました.ある程度できたところで,持ってきた炭をその上にのせました.

芋煮会周辺の景色 ススキ

 今回は,準備をする参加者が多かったので,もう1人の男性の参加者と一緒に抜け出して,周辺の観察写真を撮りに行きました.最初にイボタノキ(水蝋の木,モクセイ科)の5〜7mmm大の楕円形の実を見つけました.葉がほとんどなくなっていました.コウヤボウキ(高野箒,キク科)の花は既に花殻だけになっていました.マンリョウ(万両,ヤブコウジ科)の実生も見つけました.大きさの違うナキリスゲ(菜切菅,カヤツリグサ科)の株をいくつか見つけ,垂れた柄の尖端に花穂が付いているのを確認しました.葉を指で持ってすべらすと,菜っぱも切れると言われるざらつきがありました.シロシキブ(白式部,クマツヅラ科)の実を探しましたが,既に枝だけになっていました.

イボタノキの実 コウヤボウキの花殻 ナキリスゲ

 奥池の向かいのヤシャブシ(夜叉五倍子,カバノキ科)の緑色の雄花を観察しました.緑色の徒長枝を出しているウメ(梅,バラ科)もありました.クリ(栗,ブナ科)の小さな新芽は,葉痕のすぐ上にあり,栗の実の形に似ていました.奥池横のパンパスグラス(Pampas Grass,イネ科)は白い羽根毛のような花穂をたくさんつけていました.ヤマハゼ(山櫨,ウルシ科)もすっかり葉を落とし,実だけが垂れ下がっていました.ハクサンボク(白山木,スイカズラ科)の光沢のある葉は,紫色になっていました.ミヤマガマズミ(深山莱蓬,スイカズラ科)の葉と似ていますが,ハクサンボクは常緑で冬でも葉が落ちないので区別できます.

ヤシャブシの雄花 クリの新芽 ヤマハゼの実 ハクサンボクの葉

 芋煮の場所に戻ると,男の子を連れた父親が枯木の中からヤスデ(馬陸,足亜門ヤスデ網)を見つけて,子供に見せていました.ヤスデは,1節から2対4本の足がでており,ムカデは1対2本の足が出ているという違いを説明してくれました.
 芋煮鍋にサトイモ(里芋,サトイモ科),ゴボウ(牛蒡,キク科)およびシイタケ(椎茸,キシメジ科)を入れて,灰汁(あく)取りをしてから,豚肉とコンニャク(蒟蒻,サトイモ科)を入れました.その後,味付けのために酒(鬼殺し)と醤油を入れました.最後に豆腐とネギ(葱,ネギ科)を入れてから味見をして,少しだけ醤油を追加しました.
 子供の数は8人になっていましたが,1人は生後3ヶ月のまるまる顔の赤ちゃんでした.抱かれてすやすやとずっと眠っていました.それ以外の子供たちは,竹の先端にパン生地を巻いて,グリルの上でパンを焼き始めました.最初は炭の火力がたりなかったため,パンは表面だけ焼けて中は粘りのある状態でした.それでもおいしい味でした.焼けたパンを皆で分けて,リンゴジャムをつけて食べた人もいました.

パン焼き

 参加者が持ってきた,アスパラナ(石?柏菜,アブラナ科)を生で食べました.シャシャンボ(子子ん坊,ツツジ科)ジャムを作ってきた人が,クラッカーの上に載せて机に並べました.人気があり,すぐになくなりました.剥いたリンゴ(林檎,バラ科リンゴ属)を持ってきてくれた人もいました.
 先月採ったサツマイモをスライスして,パン焼きをした後のグリルに網を載せて,その上に並べました.焼芋の後で,アップルパイを焼いたりマテバシイ(馬刀葉椎,ブナ科)や銀杏を炒ったりして食べました.
 芋煮ができあがり,各自がお椀によそって食べました.前に作った竹の容器を持ってきた親子もいました.何杯もお代わりをした子供もおり,芋煮は全て食べ尽くしました.子供も含めて唐辛子を入れて食べた人もいました.いつもユズ(柚,ミカン科)を持って来られる人が不参加でしたので,ユズはありませんでした.芋煮は,いつものように薄味でしたので,ユズがあったらよかったという感想がでました.食べ終わった後で,スコップで穴を掘り,熾を埋めました.

芋煮のできあがり

 周辺ではコゲラ(小啄木鳥,キツツキ科)の鳴き声がして,そよ風が吹いていました.まだ,秋かと思われるような気候のなかでの楽しい芋煮会になりました.
 帰りに寄った新池では,バンが3羽陸上にあがっていました.カワセミもまだいました.

観察項目:クロウリハムシ,カラスウリの実,トケイソウの実,ガガイモの実,ツブラジイとスダジイおよびその交雑種のドングリ,カギバアオシャクの幼虫,コナラとアベマキの葉,クヌギ(?)の葉,ムクロジの実,ヒシの実,エナガ,ナンテンの実,ススキ,イボタノキの実,マンリョウ,コウヤボウキ,ナキリスゲ,シロシキブ,ヤシャブシ,ウメ,クリ,パンパスグラス,ヤマハゼ,ハクサンボク,ヤスデ.

食べた物:芋煮(サトイモ,ゴボウ,シイタケ,豚肉,コンニャク,酒,醤油,豆腐,ネギ),パン,リンゴジャム,アスパラナ,シャシャンボジャム,クラッカー,リンゴ,焼芋,アップルパイ,パンケーキ,マテバシイのドングリ,スダジイのドングリ,銀杏.

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子

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2011-2-11 406

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