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2010年 > 11月度の観察記録
11月度の観察記録
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 曇りで少し寒いくらいでしたが歩くのには丁度よい日よりでした.新池周辺のサクラ(桜,バラ科),トウカエデ(唐楓,カエデ科),サルスベリ(百日紅,ミソハギ科)などが紅葉(黄葉)して,また,センダン(栴檀,センダン科)の実もクリーム色になって秋の深まりを感じさせました.新池の水面を,まだほとんど覆っているスイレン(睡蓮,スイレン科)は,既に元気なく暗緑色になっていました.わずかに残っていた水面では,9羽のヒドリガモ(緋鳥鴨,カモ科)が逆立ちをして藻を食べていました.
 今回から,集合場所が新池北の公園から里山の家に変わりました.迷う人がいるといけないので,早く来た参加者の1人が集合時間に新池北に行き,参加者を連れてきました.参加者は子供3名を含む24名でした.

新池土手の紅葉

 里山の家の大坂池側には,ハクセキレイ(白鶺鴒,セキレイ科),モズ(百舌鳥,モズ科)およびヒヨドリ(鵯,ヒヨドリ科)が来ていました.また,ツグミ(鶫,ツフミ科)も数羽上空通過をしていました.カエル池には,いつものように数羽のスズメ(雀,スズメ科)が来ていました.
 里山の家の中の机上には,花の色が赤,黄,ピンクの3種のカランコエ(Kalanchoe,ベンケイソウ科)が置いてありました.葉に触った時は,造花のような印象を受けるほど厚い葉でした.当初は,里山の家の中で待っていましたが,芋掘りと脱穀のイベントに来た人達との区別がつかなくなったので,里山の家の前に出て待ちました.道路に面していて,見るべきものがないので,来月からは大坂池側で集合することになりました.

 まず,参加者が持ってきたヤマノイモ(山の芋,ヤマノイモ科)とオニドコロ(鬼野老,ヤマノイモ科)を観察しました.葉の形はほぼ同じですが,出来る芋は,ヤマノイモが自然薯として珍重されるのに対して,オニドコロは,昨年12月に灰汁で煮ない限り苦くて食べられないことを実証しました.ヤマノイモは,葉が対生で,ついていた実は横長であることを確認しました.一方,オニドコロの葉は互生で,実は縦長であることが分かりました.オニドコロの根には髭が多いので,そのヒゲ根を長寿を祝い飾ることもあるという話がでました.オニドコロの蔓は,左巻き(進行方向に向かって,S字巻き)で,ヤマノイモは右巻き(Z字巻き)ということでした.実の中の種を取り出して比較して,中が丸いのが,ヤマノイモであることも確認しました.

【外部リンク】ヤマイモとオニドコロの見分け方(世話要らずの庭)

【外部リンク】つる植物の巻き方向(甲山森林公園の野鳥)

オニドコロとヤマノイモ

 先月の記録を見ながら,9月に観察したアカトンボはアキアカネ(秋茜,トンボ科)でなくヒメアカネ(姫茜,トンボ科)の可能性が高いという報告がありました.色でなく胸の模様の違いをもっと見分ける必要があるそうです.先月の記録の中のアオサギ(蒼鷺,サギ科)は何を食べるかという問いに,30cm以上の大きな魚を2度も飲み込んでいるのを目撃したという人がいました.小魚を飲み込むときは,あとで水を飲むという観察報告もでました.
 先月,東星ふれあい広場で見つけたウシガエル(牛蛙,アカゲル科)の骨格標本を作ってきた女性がいました.外来種なので,駆除も兼ねて,冷蔵庫で冷凍して,皮を剥ぎ,肉を眼科ばさみでそぎ取り,その後,入れ歯洗浄剤(ポリデント)で残った肉を溶かして,ハイターで漂白して,さらにベンゼンにいれて洗浄したそうです.細かい骨格が非常によくわかり,その大変な作業に対して参加者は感嘆していました.この骨格標本を作った同じ人が,守山で死んだアブラコウモリ(油蝙蝠,ヒナコウモリ科)をビニール袋に入れて持ってこられて回覧しました.この骨格標本もつくるそうです.里山の家から,前に作ったシマヘビ(縞蛇,ナミヘビ科)の骨格標本も出してきて,カエルの骨格標本と並べて観察しました.
先月の記録の中のクサギ(臭木,クマツヅラ科)を見て,各地でクサギの開花情報が出るという報告もありました.

ウシガエルの骨格標本 アブラコウモリ

 この後で,スダジイ(すだ椎,ブナ科),コナラ(木楢,ブナ科),アラカシ(粗樫,ブナ科)やクヌギ(櫟,ブナ科)などのドングリを持ってきた人がいたので,子供たちと一緒に観察しました.クヌギのドングリは,アベマキ(阿部槇,ブナ科)のドングリに似ていましたが,アベマキのドングリはもう少し細長いので,だるま型のこのドングリは多分クヌギだろうということになりました.
 フェイジョア(Feijoa,フトモモ科)の4cm大の実をたくさん持ってきた人がいました.東区の知人の庭にある木からもらってきたそうです.良い香りがして,食べられるという説明でしたので,早速食べた参加者もいました.まだ青くて,少し渋かったようです.この木の花の写真を見せて,花も食べられるという説明がありました.東山植物園にも,この木はあり,紅く熟すとグアバ(Guajava,フトモモ科)の実と同じフトモモ科なのでおいしいということでした.

種々のドングリ フェイジョアの実

 ここまでで,10:20になってしまい,早速出発しました.すぐに道路沿いのトウカエデの紅葉がきれいだということで,紅葉した落ち葉を拾って観察しました.男の子が名前は知らないが,カエデの仲間だと言いました.カエデの葉が蛙の手の形状をしていることから,「カエルデ」となりそれが転訛したものとされているという名前の由来が出ました.トウカエデは,個体差が大きく,真っ赤に紅葉した木と,まだ緑の木が混在していました.関連して,カナダ国旗(サトウカエデ,シュガーメイプル)やサトウカエデ(砂糖楓,カエデ科)の樹液を煮詰めたメイプルシロップの話が出ました.
 大坂池の南側を通り南尾根(西部)の方へすすみました.ヌカキビ(糠黍,イネ科)やクズ(葛,マメ科)が茂った中にスズメが数十羽いました.ヌカキビの小さな実をスズメは食べますが,どれくらい食べたらおなかが一杯になるのだろうかという疑問がでました.丁度そのとき,ノビタキ(野鶲,ツグミ科)が一羽出てきて,見やすいススキ(芒または薄,イネ科)の茎に止まりました.皆で双眼鏡も使ってじっくりと観察しました.足下には白い花とピンクの花をつけたミゾソバ(溝蕎,タデ科)がまだありました.尾根側からスモモ池から見ると,カルガモ(軽鴨,カモ科)が2羽来ていました.

ノビタキ

 元は畑であった所で小さな実を付けたマメガキ(豆柿,カキノキ科)と,その奥にそれよりはかなり大きな実をつけたカキ(柿,カキノキ科)を観察しました.カキは渋柿でした.すぐ向かえの畑の跡地にはキウイ(Kiwifruit,マタタビ科)が見えました.昔,栽培していた名残りのようでした.
 竹林の間に1本のチャ(茶,ツバキ科)の木があり,1つだけ花がついていました.カラスウリ(烏瓜,ウリ科)の橙色の実も竹林の中に見つけました.道の両側にはミント(Mint,シソ科)が群生したいました.ここで,アオマツムシ(青松虫,コオロギ科)を回覧した子供がいました.

チャの花 アオマツムシ

 道ばたにムラサキシキブ(紫式部,クマツヅラ科)を見つけて,紫色の小さな実を皆で食べました.ほのかに甘いという感想がでました.イナゴ(蝗または稲子,イナゴ科)を2匹つかまえビニール袋に入れて観察しました.
 紫色になった葉を持つガマズミ(莢迷,スイカズラ科)にヤマノイモとヘクソカズラ(屁糞葛,アカネ科)がからみついていました.早速,葉の付き方や蔓の巻き方を観察しました.ヘクソカズラの蔓は左巻き(S字巻き)でした.

ムラサキシキブの実 ガマズミに巻き付いたヤマノイモ

 炭焼広場に行き,サツマイモ(薩摩芋,ヒルガオ科)堀りを見ました.たくさんのサツマイモが収穫されており,青いビニルシートの上に,大きさ別に並べられていました.中には,カボチャのような形になった大きなサツマイモもありました.炭焼窯の横で,サツマイモを薄切りにして,網の上で焼いていました.皆でその焼芋を食べましたが,ベニアズマ(紅東)という品種で,甘くておいしい焼き芋でした.形は悪くても中身の詰まったおいしい芋でした.
 サツマイモ畑の土中でエビガラスズメ(蝦殻天蛾,スズメガ科)の茶色の4cm長のさなぎを見つけた人がいて,皆で観察しました.既に端が少し破れていて成虫にはならないだろうということでした.炭焼広場の前の水路に大きなスズメバチ(雀蜂,スズメバチ科)が飛んできて,石の上にとまり,水を飲んでいるようでした.

カボチャのようなベニアズマ エビガラスズメのさなぎ

 炭焼窯の中にコナラの丸太を詰めて,既に炭焼きの準備が出来ていました.窯の周辺には,刈ったイネが稲架(はさ)に干してありました.少しだけ穂をとって,胚芽がどちらに側についているかを確認しました.穂の付け根側に胚芽はありました.籾をとったのは玄米で,その後,精米をしていくと,胚芽米,白米,無洗米の順になります.もっと表面を削ってでんぷんのみにしたのが酒米ということでした.肌ヌカを完全に取った無洗米が環境に優しいとして,宣伝されていますが,とぎ汁から出るリンや窒素が環境に与える負荷はきわめて少ないという説明がありました.炭焼広場から見た湿地のナンキンハゼ(南京櫨,トウダイグサ科)は,まだ少ししか紅葉していませんでした.

【外部リンク】胚芽米のすべて(女子栄養大学)

イネ

 炭焼広場から少し東に行き,ボケ(木瓜,バラ科)の木のところで,蜘蛛を観察しました.数匹のジョロウグモ(女郎蜘,アシナガグモ科)を観察して,やせているのが多く,もう雄は1匹もいませんでした.シロガネイソウロウグモ(白銀居候蜘蛛,ヒメグモ科)は子供が見つけました.サツマノミダマシ(薩摩実騙,コガネグモ科)も1匹だけ網を作っていました.夜行性なのに珍しい姿でした.どこから糸を出しているのかとの子供の問いに,ジョロウグモのお尻の内側のイボ(糸イボ,ジョロウグモは4対8個)を指さして,ここからという回答がありました.各イボによって縦糸や横糸など異なる糸を出すようです.

【外部リンク】クモの糸とその性質(クモの巣と網の不思議)

サツマノミダマシ

 ボケの下草として,2mを超える長さのカニクサ(蟹草,フサシダ科)がありました.小葉がたくさんついていましたが,実は1枚の葉という説明でした.また,オオカマキリ(大蟷螂,カマキリ科)の卵のうを子供達が見つけました.卵のうの形からオオカマキリのものだと子供たちは断言しました.ここで,ユキムシ(雪虫は俗称(トドノネオオワタムシ),アブラムシ科)を捕獲して,小さな観察容器に入れて回覧しました.

カニクサ オオカマキリの卵のう ユキムシ


 蜘蛛を観察したボケの木の前で感想会をしました.モズ(百舌鳥,モズ科)の高鳴きを聞きながらの感想会になりました.ウシガエルの骨格標本に驚いたことと,ヤマノイモとオニドコロの違いが分かって興味深かったという感想がでました.歩く距離が短くなってしまいましたが,観察するものが多くあったということで,秋の深まりの中での楽しい観察会になりました.
 3台の脱穀機が,里山の家の前に用意されていました.2台は足踏みの回転ドラム式のもので,残りの1台は鉄の櫛がついた原始的なものでした.

脱穀機

観察項目:ウシガエルの骨格標本,ヤマノイモ,オニドコロ,種々のドングリ,フェイジョア,シマヘビの骨格標本,アブラコウモリ,トウカエデ,スズメ,ノビタキ,ヌカキビ,アオマツムシ,カルガモ,マメガキ,渋柿,チャ,カラスウリの実,イナゴ,ムラサキシキブ,ガマズミ,ヘクソカズラ,サツマイモ,エビガラスズメのサナギ,コメの胚芽,ジョロウグモ,サツマノミダマシ,シロガネイソウロウグモ,オオカマキリの卵のう,カニクサ,ユキムシ

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子

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2011-2-6 365

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