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2010年 > 10月度の観察記録
10月度の観察記録
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 前日の大雨がすっかりあがり,からっと晴れ上がり,気持ちのよい秋びよりとなりました.新池周辺の草むらでは,エンマコオロギ(閻魔蟋蟀,コオロギ科)とミツカドコオロギ(蟋蟀,コオロギ科)の鳴き声が,それぞれコロコロとリッリッリッリッリッと,また,アオマツムシ(青松虫,コオロギ科)がリーッリーッリーッと合奏していました.
 新池のわずかに残っている水面にはバン(鷭,クイナ科)が1羽のみいました.岸辺には,アオサギ(蒼鷺,サギ科)が1羽いました.集合場所では,シジュウカラ(四十雀,シジュウカラ科)とモズ(百舌鳥,モズ科)がしきりに鳴いていました.桜のうろのマツバラン(松葉蘭,マツバラン科)は,残念ながら無くなっていました.集合場所の上空ではウスバキトンボ(薄羽黄蜻蛉,トンボ科)とアキアカネ(秋茜,トンボ科)が飛んでいました.
 参加者は,秋の運動会の予備日で少ないのではと最初言っていましたが,最終的には子供4人と大人が24人でした.涼しくなったので,久しぶりに参加されたお歳の方もおられました.

アオサギ アキアカネ

 まず,参加者が持ってきた,約5cm径のヤマナシ(山梨,バラ科)と約2cm径のアイナシ(合梨,バラ科)の実を観察しました.ナシの原種で,アイナシは,イヌナシ(犬梨,バラ科)とヤマナシの交配雑種だという説明がありました.どちらも食用には適さず,アイナシは有毒だということでした.このとき,モズが銀杏(イチョウ)の尖端で高鳴きを始め,皆が注目しました.

ヤマナシとアイナシ

 次に,先月の報告を見て,タカサブロウ(高三郎,キク科)の由来が,まず話題になりました.目のただれの薬草としてまだ使われているかという疑問がでました.ウェブに,「ただれ目,血尿,血便の止血には,乾燥したタカサブロウの全草3〜10グラム,水0.6リットルで半量まで煎じて,洗眼及び服用する」という記述があり,中国や沖縄ではまだ使われているようです.関連して,アフリカ人に平和公園ではどのような薬草があるかと聞かれ,ドクダミ(?草,ドクダミ科)とヨモギ(蓬,キク科)しか答えられなかったという話しがでました.ここで,子供がナミアゲハ(並揚羽,アゲハチョウ科)の幼虫を回覧しました.ナガサキアゲハ(長崎揚羽,アゲハチョウ科)ではないかという人がいましたが,図鑑でナミアゲハの幼虫の特徴を確認しました.緑に白い横筋だけでなく頭の下に少し太い青色の横筋があることも観察しました.
 報告の中のウラギンシジミ(裏銀小灰蝶,シジミチョウ科)の幼虫を,後日探しに行って,クズ(葛,マメ科)の葉をたくさん観察しても見つからなかったという報告がありました.観察会で皆で行くと見つかるということでした.アメリカカワラケツメイ(亜米利加川原決明,マメ科)は,別名アレチカワラケツメイともいうという指摘もありました.また,水田のキクモ(菊藻,ゴマノハグサ科)が紅葉しているという報告もありました.セスジスズメガ(背筋雀蛾,スズメガ科)が新潟で大量発生しているという話もでました.子供が採ったイナゴ(蝗または稲子,イナゴ科)とクビキリギス(首切螽斯,キリギリス科)のようなバッタを観察瓶に入れて回覧しました.
 周辺にあった,シマスズメノヒエ(縞雀稗,イネ科)を観察して,どれが黒い縞かという説明がありました.すぐ横のオヒシバ(雄日芝,イネ科)とも比較しました.
 里山の家で,感想会と昼食の場所の予約をしているとのアナウンスがありました.来月から集合場所は,里山の家に変更することになりました.

シマスズメノヒエ

 集合場所を出発して,東星ふれあい広場に入りました.水路の周辺だけでなくノシバ(野芝,イネ科)の上にも水が浮いていました.水路には,トノサマガエル?(殿様蛙,アカガエル科)がたくさんいました.先日も見た,キンエノコログサ(金狗尾草,イネ科)以外に,ヌカキビ(糠黍,イネ科)とムラサキヒメススキ(紫姫薄,イネ科)も観察しました.また,白い5弁の小さな花を咲かせたイヌホオズキ(犬鬼灯,ナス科)もありました.アレチヌスビトハギ(荒地盗人萩,マメ科)は花を咲かせるとともに,ひっつき虫の実もつけていました.

キンエノコログサ イヌホオズキ

 ハンノキ(榛の木,カバノキ科)のある土手まで行き,その斜面のハンノキの実生(みしょう)を数えました.斜面全体では,苗木として使えるのは150本ほど有りました.11月21日に,大坂池(オサカイケ)の東側に移植するそうです.ここで,外来種のウシガエル(牛蛙,アカガエル科)を捕えた人がいました.このカエルのオタマジャクシは,2年間に渡って水の中にいて成長するそうです.さらに,ショウリョウバッタ(精霊飛蝗,バッタ科)を捕まえた人がおり,雄は飛ぶ時に翅がキチキチと鳴るので,キチキチバッタといわれているという説明もありました.
 周辺で,ミツカドコオロギがリッリッリッリッリッと鳴いていました.これは雄が,雌に対してここにいるという誘い鳴きだそうです.交尾後はおだやかに鳴くという説明でした.
 このとき丁度,先月翅を識別したハバヒロカマキリ(幅広蟷螂,カマキリ科)を捕獲して,上翅の白い紋が両側にあることを確認しました.

ハンノキの実生

 南尾根へ入るために入口斜面を登り始めたときに,木の根本に赤いマンジュシャゲ(曼珠沙華,ヒガンバナ科)の赤い花が20本くらいまとまって咲いていました.平和公園の中のシロバナマンジュシャゲ(白花曼珠沙華,ヒガンバナ科)は,赤い花より開花が早かったそうです.「花は葉知らず,葉は花知らず」ということをある参加者が言いました.
 すぐ近くで,エノキグサ(榎草,トウダイグサ科)を見つけました.葉がエノキ(榎,ニレ科)に似ているので,この名前がありますが,葉の付け根に穂状の雄花があり,その付け根に編み笠を裏返したような包葉(総苞)に包まれた雌花がありました.アミガサソウ(編笠草)という別名はこの包葉の形に由来するそうです.
 ツルウメモドキ(蔓梅擬,ニシキギ科)が緑色の実をつけていました.近くの木に,枯れ草色のオオカマキリ(大蟷螂,カマキリ科)が逆さにとまっていました.腹が大きい雌で,その腹に触った人が,絹布のような肌触りだと言いました.ツリガネムシ(釣鐘虫,ツリガメムシ科)を出そうとして,捕まえてお尻をコップの中の水につけましたが,結局何も出てきませんでした.アケビ(通草,アケビ科)の実が,木に数個ぶら下がっていました.少し割れ始めた実もありました.

マンジュシャゲ エノキグサ

 ハリエンジュ(針槐,マメ科)の葉で,オオエグリシャチホコ(大抉鯱蛾,シャチホコガ科)の幼虫を見つけた人がいました.葉が食害にあっていたので,周辺を探して見つけたそうです.近くで,背が緑色のサツマノミダマシ(薩摩の実騙,コガネグモ科)を捕まえて,蜘蛛の糸の先につけて,ヨーヨーのようにしました.ここまでで11時になってしまいました.

オオエグリシャチホコ

 早足で歩いて奥池に向かいました.道の端には,モクレン(木蓮,モクレン科)の幼木やチジミザサ(縮み笹,イネ科)の群生がありました.また,スフベタケ(燻茸,ホコリタケ科)の一種のキノコがたくさんありました.アベマキ(阿部槇,ブナ科)の葉に,カクモンハマキ(格紋葉巻,ハマキガ科)の幼虫を見つけました.この幼虫は,アベマキの葉の裏から食べていました.
 10cm背の真っ白なシロオニタケ(白鬼茸,テングタケ科)が2本ありました.白雪姫に出てきそうなキノコでした.シメジタケ(占地茸,シメジタケ科)のようなぬめぬめした笠を持つ小さな褐色のキノコが,枯れ木に群生していましたが,笠のてっぺんに黒い模様があり,マツカサタケ(松笠茸,マツカサタケ科)であるという説明がありました.どちらのキノコも食べられないと言う説明でした.近くのコバノガマズミ(小葉莢迷,スイカズラ科)が赤い実をつけていました.

シロオニタケ マツカサタケ コバノガマズミ

 アセビの花芽ヒヨドリバナ(鵯花,キク科)の白い花,およびオオイタドリ(大虎杖,タデ科)の実などを観察しました.道路の真ん中で,スズメバチ(雀蜂,スズメバチ科)がとまっていました.よく見ると,カマキリ(蟷螂,カマキリ科)が死んでおり,これにとりついて肉団子を造ろうとしていました.さらにいくと,15cm径近くの笠をもち,ひらひらのスカートをつけた臭いキノコを2つ見つけました.裏面を傷つけると酸化して色が変わりました.

アセビの花芽 ヒヨドリバナ オオイタドリ

 ハギ(萩,マメ科)の木に,オオミノガ(大蓑蛾,ミノガ科)の蓑が付いていました.平和公園でも既にオオミノガの蓑はめずらしくなっています.クサギ(臭木,クマツヅラ科)は,白い花は既になく,星状に開いた濃紅紫色のガクの中に青い実をつけていました.エノキ(榎,ニレ科)やノブドウ(野葡萄,ブドウ科)も観察しました.ノブドウは,緑,青,紫など種々の色の実をつけていました.イボタノキ(水蝋の木,モクセイ科)も見ました.

オオミノガの蓑 クサギの実 ノブドウ

 奥池に着いて,シロメダカ(白目高,メダカ科)を探しました.すぐに,群になっていてのを見つけて,50匹ではすまないということになりました.水生昆虫の餌として売られているのを,誰かが放したようです.3匹だけ網で捕獲して観察しました.倒れている朽ち木にたくさんのヒラタケ(平茸,ヒラタケ科)が付いているのを見つけて,コンビニ袋一杯に採取しました.今回食べられる唯一のキノコでした.ここで,先月も観察したイオウイロハシリグモ(硫黄色走蜘蛛,キシダグモ科)とアメリカザリガニ(亜米利加喇蛄,アメリカザリガニ科)も見つけました.

シロメダカ ヒラタケ イオウイロハシリグモ

 里山の家まで,水田を見ながら急いで帰りました.椅子に座って,弁当を食べながら感想会を行いました.アサギマダラ(浅葱斑,マダラチョウ科)を見つけられなくて,残念だったという感想がまず出ました.逆に,種々のキノコを見ることができて良かったという感想も出ました.屋根の下で弁当を食べるのは,弁当をテーブルの上に広げられて便利ですが,外で食べるのも良いと思いました.日差しは,まだ少し厳しかったですが快適な観察会になりました.

観察項目:ヤマナシの実,アイナシの実,マテバシイのドングリ,アオマツムシの鳴き声,モズの高鳴き,ミツカドコオロギの鳴き声,シマスズメノヒエ,オヒシバ,ヌカキビ,キンエノコログサ,イヌホオズキ,アレチヌスビトハギ,ハンノキ,ハンノキの苗木,ウシガエル,ミツカドコオロギの鳴き声,ハバヒロカマキリ,ショウリョウバッタ,ヒガンバナ,エノキグサ,ツルウメモドキ,オオカマキリ,オオエグリシャチホコの幼虫,サツマノミダマシ,シロガネイソウロウグモ,ジョロウグモ,カクモンハマキ,シロオニタケ,マツカサタケ,イロガワリのキノコ,チジミザサ,クサギ,ハギ,オオミノガの蓑,コバノガマズミ,ヒヨドリバナ,ヒラタケ,シロメダカ,アメリカザリガニ,イオウイロハシリグモ,ジャガイモ

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子

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