8月の観察会よりずっと厳しい日差しでした.新池土手の樹木を覆うように繁茂していたクズ(葛,マメ科)は,紫色の花をいっぱい咲かせ,むせかえるような香りを出していました.歩道の両側では,たくさんのアレチヌスビトハギ(荒地盗人萩,マメ科)が小さな赤紫の花を咲かせていました.水鳥のいない新池の水面は,スイレン(睡蓮,スイレン科)と藻で今年中で最も広く埋め尽くされていました.しかし,既に秋の気配もありました.蝉はツクツクボウシ(つくつく法師,セミ科)だけが,か弱く鳴くと同時に,コオロギ(蟋蟀,コオロギ科)などの虫の音が盛んにしました.また,桜の葉も一部ですが黄色くなっていました.暑いのにもかかわらず,参加者は意外に多く,子供5名を含む28名でした.
集合場所で,まず,トビモンオオエダシャク(鳶紋大枝尺,シャクガ科)の幼虫が3ヶ月半に渡り葉を食べて,やっとサナギになったことが話題になりました.セミは地中で7年間幼虫で過ごしますが,天敵の多い地上でこんなに長い幼虫期間をすごすのはめずらしいという感想でした.なお,キャベツにつく紋白蝶の幼虫は,すぐに成虫になるというイメージがありますが,実際は,約1ヶ月に4回脱皮してさなぎから蝶になります.
集合場所に来るときに拾った翅が,何のバッタの翅かという問題を出した参加者がいました.翅の半分は緑が濃く,比較的硬いので上翅だろうということになりました.白い紋があることが分かり,最終的にハバヒロカマキリ(幅広蟷螂,カマキリ科)の翅であるということになりました.「1つの翅だけで,このようなことが分かることに感心した」という声がでました.また,「今日はバッタを捕まえて翅をむしろう」と言った参加者もいました.
先月の記録を見ながら,星ヶ丘で男の子が捕ってきたオオタコゾウムシ(大蛸象虫,ゾウムシ科)を観察しました.外来種の象虫という説明がありました.先月の記録写真のスモモ池のカワセミ(翡翠,カワセミ科)はザリガニを餌としているのだろうということでした.また,奥池にはシロメダカ(白目高,メダカ科)が放たれてしまっているという報告もありました.
平和公園に入って,先月観察したカシノナガキクイムシ(樫長木喰虫,カミキリムシ科)にやられた大きなコナラ(木楢,ブナ科)が2本切られていました.その場所には,大きな空間が出来ていて,青空が見えるようになっていました.すぐ横のアベマキ(阿部槇または?,ブナ科)とコナラのドングリを観察しました.アベマキは2年,コナラは1年でドングリができることの説明がありました.
石をどけてチャバネゴキブリ(茶翅蜚(虫+廉),チャバネゴキブリ科)やダンゴムシ(団子虫,オカダンゴムシ科)を子供たちが探していました.子供たちは虫を少しも怖がらないのに,大きくなると多くの男女とも虫を怖がったり嫌いになったりすることに対しての疑問がでました.ある参加者は,実体験として自分の子供たちがそのような状況であるという説明がありました.人間は社会的生き物で,虫好きは変わり者として,嫌われるのを無意識に避けているのかもしれません.
先月観察したアカメヤナギ(赤芽柳,ヤナギ科)の葉についていたヤナギルリハムシ(柳瑠璃葉虫,ハムシ科)の成虫をまた観察しました.今回は幼虫はいませんでした.アカメヤナギは多くの葉が虫に食われていましたが,虫に全く喰われていない黄緑色の新葉を枝の先端に出していました.約5cm長のマイマイガ(舞舞蛾,ドクガ科)の幼虫もここで観察しました.丁度そのときにツクツクボウシが弱々しく鳴き始めました.
アメリカタカサブロウ(亜米利加高三郎,キク科)が白い小さな花を咲かせていました.実を手のひらの上でつぶして,種がとがっていて翼がなく表面がごつごつしており,葉が細長いこともあり,在来種のタカサブロウ(高三郎,キク科)でなく,外来種の方であることが分かりました.何故.高三郎という人の名前がついたのかという疑問がでました.
【外部リンク】タカサブロウ(松江の野草樹木シダの花図鑑)
タカサブロウは,古くから目のただれを治す薬草として知られていて,古名では皮膚のだだれなどを,タタラビと呼び,ただれを治す草であるので,タタラビソウと呼ばれ,タタラビソウから転じて,タカサブロウという名前になったという説があるようです.
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ヤナギルリハムシ |
マイマイガの幼虫 |
アメリカタカサブロウの花 |
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日時計が名古屋東ライオンズクラブの寄付でできていましたが,平和公園には似合わないという感想が出ました.
小坂池の南側の道を通り,通行止めが解除された南尾根に入りました.紫色の花を付けたクズが,ここでも繁茂していました.クズの花は,ファンタグレープの香りがするという人がいました.クズの葉は,昔は学校から帰ってきてから,子供たちが集めてヤギ,ウサギ,馬,牛などの家畜に与えていたという話がありました.花ではなく,葉の上に10mm長程度の小さなウラギンシジミ(裏銀小灰蝶,シジミチョウ科)の終齢の幼虫を見つけて,皆で観察しました.顔は「キィティちゃん」や「海牛」のようだという声が出ました.また,同じくクズの葉に10cm長の大きな緑色のトビイロスズメガ(鳶色雀蛾,スズメガ科)の幼虫を見つけて観察しました.男の子がほしいというので,葉と一緒に取ってやりました.太さは子供の指より大きく,まるまると太っていました.
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日時計 |
ウラギンシジミの幼虫 |
トビイロスズメガの幼虫 |
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ここで,種々のエノコログサ(狗尾草,イネ科)を周辺から採って見せて,それらの違いが説明されました.穂がたれているアキノエノコログサ(秋狗尾草,イネ科),穂が紫色のムラサキエノコログサ(紫狗尾草,イネ科),穂が金色のキンエノコログサ(金狗尾草,イネ科)と普通のエノコログサでした.ただし,キンエノコログサとムラサキエノコログサの違いはあまり明確ではありませんでした.近くには,ジュズダマ(数珠玉,イネ科),オオイヌタデ(大犬蓼,タデ科),アメリカセンダングサ(亜米利加栴檀草,キク科),および黄色い花をつけたアメリカカワラケツメイ(亜米利加川原決明,マメ科)などがありました.カワラケツメイ(川原決明,マメ科)は,ツマグロキチョウ(褄黒黄蝶,シロチョウ科)の食草で,絶滅危惧種になりそうでしたが,このアメリカケツメイを食草にすることにより,絶滅危惧種にならなかったということでした.竹藪にあるカラスウリ(烏瓜,ウリ科)は,まだ緑の縞のある実を付けていました.
前は畑であった場所で,マメガキ(豆柿,カキノキ科)を見つけて,青い実は食べられるかという質問がでました.もちろん熟せば甘くなって食べられます.近くに青い花を付けたツユクサ(露草,ツユクサ科)が群生していました.
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種々のエノコログサの観察 |
アメリカカワラケツメイ |
カラスウリ |
マメガキ |
網でアカトンボを捕まえて観察しました.アキアカネ(秋茜,トンボ科)かナツアカネ(夏茜,トンボ科)かを図鑑を見て調べました.アキアカネの頭部は,ナツアカネのようには赤くならず,アキアカネは,平地から山に移動して,また平地に帰ってくることや,ナツアカネは移動しないという解説がありました.結局,ここではどちらかわからず,撮影した写真を後で見て,胸の模様がとがっていることを確認してアキアカネということが分かりました.
【外部リンク】アキアカネとナツアカネの判別方法(いきもの通信)
湿地では,シラタマホシクサ(白玉星草,ホシクサ科)が白い花をたくさんつけていました.周辺では,シロバナサクラタデ(白花桜蓼,タデ科),ワレモコウ(吾木香,バラ科),ミソハギ(禊萩,ミソハギ科)などが花を咲かせていました.また,イオウイロハシリグモ(硫黄色走蜘蛛,キシダグモ科)が卵を抱えて草に隠れてじっとしていました.
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シラタマホシクサ |
ワレモコウ |
イオウイロハシリグモ |
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干上がった水田には,アキノウナギツカミ(秋鰻掴,タデ科),アメリカアゼナ(亜米利加畔菜,ゴマノハグサ科),キクモ(菊藻,ゴマノハグサ科)がありました.キクモは,薄いピンクの5mm径の花をたくさん付けていました.水田を引っかき回わしたので,これらの水田の草が復活したという説明がありました.イネ(稲,イネ科)も小さな白い花を咲かせていました.コナギ(小菜葱,ミザオイ科),ヌマガヤ(沼萱,イネ科),タマガヤツリ(玉蚊帳吊,カヤツリグサ科),ヒレタゴボウ(鰭田牛蒡,アカバナ科)も見つけました.横筋の入った10cm長の赤と黒色のセスジスズメガ(背筋雀蛾,スズメガ科)の幼虫も見つけて観察しました.
斜面を歩いているときに,アベマキの樹液を吸いに来ていた数匹の雀蜂がいました.気をつけて歩くように注意がありました.
芝生広場の日陰になっている作業場で,感想会をしました.コゲラ(小啄木鳥,キツツキ科)が頭上で鳴いていました.ウラギンシジミの幼虫を見ることが出来てよかったという感想がまずでました.小坂池の周辺は,地下鉄の掘削土で被覆してあるので,周辺からとんで来た外来種の植物多いという説明がありました.皆で一緒に歩くと新しい発見が多くできてよかったという感想が数名からでました.10月24日に稲刈を,11月の観察会では芋掘りをするというアナウンスがありました.暑い観察会でしたが,誰も調子悪くならず,多くの生き物を見ることができた快適な観察会になりました.
観察項目:ハバヒロカマキリの翅,オオタコゾウムシ,コフキゾウムシ,アカメヤナギ,ヤナギルリハムシ,マイマイガの幼虫,アメリカタカサブロウ,ウラギンシジミの幼虫,クズ,トビイロスズメガの幼虫,エノコログサ,アキノエノコログサ,ムラサキエノコログサ,キンエノコログサ,ジュズダマ,オオイヌタデ,アメリカセンダングサ,マメガキ,ツユクサ,アメリカカワラケツメイ,キクモ,アメリカアゼナ,コナギ,イネの花,ヌマガヤ,タマガヤツリ,ヒレタゴボウ,チョウジタデ,ウスバキトンボ,トノサマバッタ,クビキリギス,子持ちのイオウイロハシリグモ,カラスウリ,アキアカネ,シラタマホシクサ,ワレモコウ,アキノウナギツカミ,ヌマガヤ,シロバナサクラタデ,アジアイトトンボ,セスジスズメガの幼虫,コクワガタ
文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子
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