曇りがちの晴れで,8月にしては過ごしやすい日になりました.新池はスイレン(睡蓮,スイレン科)とオオカナダモ(大加奈陀藻,トチカガミ科)やマツモ(松藻,マツモ科)などの藻で埋まっていました.遮光シートの実験場では,あいかわらずスイレンの生育は阻止されていましたが,遮光シートの上の水中で藻が繁茂し始めていました.わずかに水面が出ている場所では,コシアキトンボ(腰空蜻蛉,トンボ科)とチョウトンボ(蝶蜻蛉,サナエトンボ科)がたくさん飛んでいました.新池周辺ではクマゼミ(熊蝉,セミ科)が盛んに鳴いており,ピンク色や白色のサルスベリ(百日紅,ミソハギ科)の花が咲き始めていました.東星ふれあい広場(新池北広場)と集合場所の間の柵はなくなっていましたが,その境界の桜が数本枯れてしまっていました.参加者は,東邦ガスの16名の人達が参加したため,子供8名を含む38名と大勢でした.
集合場所で,最初に「なごや平和公園の自然2009」の本の紹介がありました.図書館からの引き合いもあるそうです.本の8月の表紙写真は,シロガネイソウロウグモ(白銀居候蜘蛛,ヒメグモ科)でした.次に,先月の記録を見ながら関連の話がありました.新池で甲羅にマーキングしたニホンイシガメ(日本石亀,イシガメ科)が山崎川で捕獲されたという報告がありました.猫ヶ洞池を経由して移動したようです.また,5月に新池のアカメガシワ(赤芽柏,トウダイグサ科)で捕獲したトビモンオオエダシャク(鳶紋大枝尺,シャクガ科)が4ヶ月たってもまだ幼虫でいるという報告もありました.クサカゲロウ(草蜻蛉,クサカゲロウ科)の幼虫の写真を見ながら,どうして食べかすや脱皮殻を背中に載せているのかという疑問がでました.テントウムシ(天道虫,テントウムシ科)などの捕食者から見つけにくくする,あるいは襲われた時に逃れやすくするためなどと言われているようです.
周辺の草むらで,アオモンイトトンボ(青紋糸蜻蛉,イトトンボ科)を網で捕獲して観察しました.次に,3cmくらいの小さなトノサマバッタ(殿様飛蝗,バッタ科)を捕まえました.翅が伸びきっているので,小さくても大人(成虫)であると男の子が説明してくれました.すぐ後で,このトノサマバッタよりわずかに小さいトノサマバッタの子供も見つけて観察したところ,翅が非常に短いことがよく分かりました.トノサマバッタは,不完全変態をするためこのようになるようです.このトノサマバッタをつかんで見せているときに糞をし始めました.昆虫は,捕まるとよくこのような行動をしますが,身軽になって逃げやすくしているのではという推測が出ました.バッタの大きさは,周辺の環境に影響されやすく,トノサマバッタは群生して餌が少ないと小さな体のまま大人になるようです.10cmを超える大きなショウリョウバッタ(精霊飛蝗,バッタ科)もここで捕まえて,脚を持って機織りをさせ,関節の強さの説明がありました.子供の頃は,キチキチバッタと言っていたという話が出ました.上空を飛んでいたウスバキトンボ(薄羽黄蜻蛉,トンボ科)と草むらにいたアジアイトトンボ(亜細亜糸蜻蛉,イトトンボ科)も網で捕まえて観察しました.アジアイトトンボは,頭と胸が橙色でした.オオカマキリ(大蟷螂,カマキリ科)も2匹,草むらで捕まえて観察瓶に入れて観察しました.
平和公園の駐車場横の枯れた大きなコナラ(木楢,ブナ科)を観察しました.カシノナガキクイムシ(樫長木喰虫,カミキリムシ科)にやられ,根元だけでなく,かなり上の幹まで穿孔穴がありました.この周辺で,3cmくらいのコクワガタ(小鍬形,クワガタムシ科)を見つけた男の子がいました.朽木をどけると,下にはシロアリ(白蟻,シロアリ科)の群がいました.1cm長の細い小さなハサミムシ(鋏虫,ハサミムシ科)と5cm大のクワカミキリ(桑天牛,カミキリムシ科)を見つけた男の子もいました.また,尻尾がカラフルな小さなニホントカゲ(日本蜥蜴,トカゲ科)を捕らえた男の子もいました.すぐ後で,小さな地味な色のカナヘビ(蛇舅母,カナヘビ科)も捕まえて比較しました.
近くのアカメヤナギ(赤芽柳,ヤナギ科)の葉にヤナギルリハムシ(柳瑠璃葉虫,ハムシ科)の成虫だけでなく幼虫とさなぎがかなりの数ついていました.大きさは,幼虫,さなぎおよび成虫も全て5mm程度でした.成虫の翅の暗黒の瑠璃色がわずかに光りきれいでした.すぐ横のアベマキ(阿部槇,ブナ科)の小さなドングリも観察しました.マテバシイ(全手葉椎,ブナ科)のように2年かけてドングリが大きくなるという説明がありました.逃がしたクワカミキリが,このアベマキの上の方の葉にとまりました.
新たにできた作業場の倉庫から網を出して,子供たちに渡して,すぐ横のカエル池の水生昆虫などを探しに行きました.あっという間に,たくさんのウスバキトンボ(薄翅黄蜻蛉,トンボ科)とコシアキトンボ(腰空蜻蛉,トンボ科)のヤゴ(16匹),ハイイロゲンゴロウ(灰色源五郎,ゲンゴロウ科)(5匹)およびヒメガムシ(姫牙虫,ガムシ科)(3匹)を捕獲しました.透明なプラスチックの平べったい水生昆虫専用の観察容器に入れて,皆で観察し,図鑑と比較しながら種類を特定しました.3匹のハイイロゲンゴロウは,観察中に水面から飛んでいってしまいました.また,ヒメモノアラガイ(姫物洗貝,モノアラガイ科)とザリガニ(?蛄,ザリガニ科)(14匹)も池から捕りました.近くで捕獲したアカスジカメムシ(赤条亀虫,カメムシ科)の写真を撮ろうとしたら,飛んで逃げてしまいました.アメンボ(水黽,アメンボ科)を水面から捕まえた男の子もいました.ある大人の参加者から,飴のような甘い匂いがするから嗅いでみたらと言われていました.水がたまってから1ヶ月程度なのに,このように豊富な水中の生物が生息していることは驚きでした.ヤゴやゲンゴロウは分かりますが,ザリガニや貝は,どうやって移動してきたのだろうという疑問が出ました.
次に,スモモ池へ行き,カワセミ(翡翠,カワセミ科)を観察しました.下のくちばしが黒かったので雄のようでした.少しずつ移動しながら,小魚などをねらっていました.水に飛び込んで餌を取るところを写真に撮った人もいました.背中の青色が大変きれいでした,カワセミは渓流の宝石と言われますが,高原の清流にしかいないと思っていた人も多く,ここでカワセミが見られたことに驚きの声があがりました.
炭焼広場に行きました.炭焼窯から白い煙が出ており,炭がまた焼かれ始めたようでした.チェーンソーで炭焼のための燃料のコナラを切っていました.すぐ横の畑の先月見たコンニャク(蒟蒻,サトイモ科)は,葉を全て虫に喰われて全滅していました.サツマイモ(薩摩芋,ヒルガオ科)の葉もある程度喰われていましたが,問題となる程ではありませんでした.ここで,ルリタテハ(瑠璃立羽蝶,タテハチョウ科)を捕獲して,全く異なる翅の両面を観察しました.
湿地に行き,サギソウ(鷺草,ラン科)を観察しました.鷺の形をした白い花の数を数えて,40あるという報告がありました.近くに,シロバナサクラタデ(白花桜蓼,タデ科),ミズギボウシ(水擬宝珠,ユリ科),ヒヨドリバナ(鵯花,キク科)およびミソハギ(禊萩,ミソハギ科)が花を咲かせていました.水田では,イネの葉の上端が緑色の2cm長くらいの細長い幼虫にひどく喰われており,この幼虫などを餌にするために10数羽のツバメ(燕,ツバメ科)と30数羽のスズメ(雀,スズメ科)が群れていました.水田の中には,花は咲いていませんでしたがコナギ(小菜葱,ミズアオイ科)がありました.その他の野草も稲に混じって多くありました.4弁の黄色い花を咲かせたヒレタゴボウ(鰭田牛蒡,アカバナ科,別名:アメリカミズキンバイ)が,水田の畦にありました.タゴボウ(田牛蒡,アカバナ科,別名:チョウジタデ)は,5弁の黄色い花を咲かせるので,これは外来種の方でした.アオコウガイゼキショウ(青笄石菖,イグサ科)もたくさん畦にありました.
芝生広場の横の日陰の坂道で,感想会をしました.クロアゲハ(黒揚羽,アゲハチョウ科)が,丁度ひらひらと飛んでいきました.多くの生き物が観察でき,子供たちと楽しんだという感想が多くでました.真夏の観察会としては,それ程汗もかかず,快適な観察会になりました. 観察項目:マツバラン,アオモンイトトンボ,アジアイトトンボ,トノサマバッタ,ショウリョウバッタ,チョウトンボ,シオカラトンボのヤゴ,ウスバキトンボのヤゴ,コシアキトンボのヤゴ,ヒシバッタ,キリギリスの死骸,ニホントカゲ,カナヘビ,クワカミキリ,オオカマキリ,コクワガタ,ハサミムシ,アカメヤナギ,ヤナギルリハムシ,アベマキのドングリ,カナブン,ウスバキトンボ,オオシオカラトンボ,アカスジカメムシ,ヒメガムシ,ハイイロゲンゴロウ,ヒメモノアラガイ,カワセミ,サギソウ,シロバナサクラタデ,ミズギボウシ,ヒヨドリバナ,ミソハギ,ヒレタゴボウ,アオコウガイゼキショウ,ツバメ,スズメ,コナギ,ルリタテハ,クロアゲハ |
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| 2010-10-3 | 383 | |
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