曇りのち雨の天気予報通り,朝は曇りでその後パラパラと雨が降り,感想会の時に本降りになりました.多少カメラは濡れましたが傘をささずになんとか写真は撮れました.新池のスイレン(睡蓮,スイレン科)は白い花をたくさん咲かせていました.水面がほとんどスイレンで覆われており水鳥は全く来ていませんでした.その代わり,新池の遮光実験の目印の竿の先端に1羽のカワセミ(翡翠,カワセミ科)がとまり,水面近くの魚を何度か捕らえようとしていました.もうすぐ公開される新池北広場のノシバ(野芝,イネ科)は,種をたくさんつけていました.この広場には,他にハルノノゲシ(春の野芥子,キク科)やアレチヌスビトハギ(荒地盗人萩,マメ科)が芝の中に混じっていました.フェンス近くのヒメヒオウギズイセン(姫檜扇水仙,アヤメ科)が朱色の花を,またムクゲ(木槿,アオイ科)がピンクの花を咲かせていました.
参加者は,子供4名を入れて28名でした.COP10に関連してNHKプラネットの方が57市町村を回る一環で参加されました.観察会途中でもパラパラと追加参加があり,最終的には35名を越えたようです.
コゲラ(小啄木鳥,キツツキ科)が鳴くなかで,まず参加者の持ってきたヤブガラシ(藪枯らし,ブドウ科)の小さな花びらを観察しました.次に,半分に割れるように加工したペットボトルに入れた,2ヶ月前に捕獲した2匹のトビモンオオエダシャク(鳶紋大枝尺,シャクガ科)の幼虫を観察しました.10cm長近くの大きさになっていました.あまり尺取りを頻繁にしないのは何故かという問いがでました.餌のアカメガシワ(赤芽柏,トウダイグサ科)の葉を男の子が,周辺から取ってきてくれました.アカメガシワだけでなく,この幼虫は,多食生でフジ(藤,マメ科)やツゲ(柘植,ツゲ科)などの多くの他の植物にもつくため,園芸家にとっては天敵のようです.本邦初公開ということで,竹の葉についた数mm長のキモンホソバノメイガ(黄紋細羽螟蛾,ツトガ科)の幼虫を観察しました.竹の葉の表皮だけを食べていました.中国から最近入って来た外来種で,日本では豊田市と名古屋市だけで報告されているそうです.竹と一緒に入って来たのか,風に乗って来たのかということが話題になって,風に乗ってであれば,この周辺に限られるのはおかしいということになりました.
【外部リンク】キモンホソバノメイガ(私の蛾日記)
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ヤブガラシ |
トビモンオオエダシャクの幼虫 |
キモンホソバノメイガの幼虫 |
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昨年の観察記録をまとめた本「なごや平和公園の自然2009」の紹介があった後,8時50分に集合場所を離れて,専門家と一緒に新池の亀調査に向かいました.アカバナユウゲショウ(赤花夕化粧,アカバナ科)が群生している新池の北西角の水面にしかけたカメ用とブルーギル(Bluegill sunfish,サンフィッシュ科)用のトラップを引き上げました,カメ用のトラップの網には浮代わりにペットボトルが入れてあり,かかった亀が呼吸できるようにしてありました.ブルーギルは残念ながらかかっていませんでした.前日も2匹しか捕獲しておらず,最近は減少しているという説明でした.狭い中に隠れる性質があるので,ブルーギル用のトラップには餌はつけていないということでした.
カメ用のトラップには秋刀魚の干物が餌にしてありました.10cm弱大の小さな2歳のミシシッピアカミミガメ(密士失比赤耳亀,ヌマガメ科)と約15cm大の10歳のニホンイシガメ(日本石亀,イシガメ科)がかかっていました.年齢は腹側の甲羅の年輪(成長線)を数えました.ミシシッピアカミミガメは,甲羅がすり切れるので年輪は数えにくいそうです.イシガメはそんなに大きくならず,20cmにもなるともう珍しいそうです.このとき,子供がコカマキリ(小蟷螂,カマキリ科)を見つけて観察しました.
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干物を餌にしたカメ用のトラップ |
イシガメとミシシッピアカミミガメ |
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少し東側にしかけたもうひとつのカメ用のトラップも引き上げました.今度は,約10cm大のクサガメ(臭亀,イシガメ科)と小さなミシシッピアカミミガメが各1匹かかっていました.クサガメは4歳くらいで,独特の臭いを出していました.後ろ足の付け根に臭腺があるということで,順番に臭いを嗅ぎましたが,びっくりして飛びさる人,海の臭いだと言う人,また,全く臭わないとう人もいました.ミシシッピアカミミガメは雄でした.イシガメとクサガメを並べて観察しました.手に持つと,両者とも首を長くして逃れようとしました.どうして,甲羅の中に隠れないのかという問いに,まだ若いので甲羅に自信がなく逃げようとして首を出しているという回答でした.クサガメの幼体は,ゼニガメ(ゼニガメ,キンセンガメ,クサガメの順に変わる)とも言い,中国では表皮に金色の筋があるクサガメは縁起がよいそうです.ドラゴンボールの亀仙人もクサガメという説明でした.ニホンイシガメ,ニホンスッポン(日本鼈,スッポン科)とクサガメは日本固有種とされていましたが,クサガメは数百年前に入ってきた外来種かもしれないという説明もありました.植物の外来種の判定は明治期を境にしているそうですが,動物はという疑問がでました.長年かけて在来種と共存して多様性を高めたものはよいですが,最近人為的に入ってきて侵略的に在来種を駆逐してしまう外来種が問題で,ミシシッピアカミミガメもこの部類です.
亀の寿命に関して,50年くらいは生きるということで,世代をつないで飼う必要があるということになりました.ある参加者が,もう飼い始めてはいけない参加者が多いと言って苦笑いを誘いました.
この後で,前日に陸で歩いていたところを捕獲され,バケツに入れられた3匹の20cmを越える雌のミシシッピアカミミガメを見ました.かなり遠くまで歩き回るので,周辺に卵を産んでしまっているだろうということでした.ミシシッピアカミミガメに責任はなく,健気に生きているのに駆除するのはかわいそうという意見もでました.
平和公園に向かって出発して,新池北公園の土手のヌマトラノオ(沼虎尾,サクラソウ科)を先月と同じ場所でまた観察しました.このあたりが谷筋で湿地であった証拠ということでした.花の咲き方は,花穂(かすい)の下から咲いているので無限花序(逆は,有限花序)であるという説明がありました.
平和公園入口の駐車場付近が工事中で柵がしてあったので,大回りしてコナラ(木楢,ブナ科)の大木の下のハンゲショウ(半夏生,ドクダミ科)を見に行きました.夏至から11日目にあたる半夏生の頃,茎の先端に近い数枚の葉の表面が緑から白に変化して,同時に花が咲くことや,葉の姿形が半分だけ化粧したように見えることから,この名がついたといわれるものです.しかし,ここでは花は咲いておらず,葉も白くなっていませんでした.日陰になっているので,花も咲かず,花を目立たせて受粉を促す葉の白化もしていないということでした.日陰では化粧もしないという軽口がでました.
近くにアカメガシワの雄木と雌木が並んで花を咲かせていました.花は,よい香りがするということで試した参加者がいましたが,既に花はしぼみ始めており,よい香りはしなかったようです.
新設された休憩所横には,マンサク(満作,マンサク科),サザンカ(山茶花,ツバキ科)およびムクゲ(木槿,アオイ科)が1本ずつ植えられていました.カエル池は,少し掘削して遮水シートを設置したそうです.
カラスの水浴び場になっている大坂池(オサカイケ)の土手でスモモ(李,バラ科)の苗木を見ました.肥料をやっているので,ヒメジョオン(姫女苑,キク科)やヒメクグ(姫莎草,カヤツリグサ科)などに埋もれていました.このとき,背中にゴミをつけた約2mm大の幼虫を見つけて,観察瓶にいれて観察しました.そのときは何か分からなかったですが,昨年も観察したクサカゲロウ(草蜻蛉,クサカゲロウ科)の幼虫であることを,観察会後に教えてもらいました.
クヌギ(椚,ブナ科)とアベマキ(阿部槇,ブナ科)が並んでいる所で,両方の葉の特徴を比較しました.その後,東に向かって歩いていると,道の上をクロアゲハ(黒揚羽,アゲハチョウ科)とナガサキアゲハ(長崎揚羽,アゲハチョウ科)がヒラヒラと飛んでいました.なかなかとまってくれなくて,尾状突起のあるなしを注意して観察しました.
【外部リンク】アベマキとクヌギの見分け方(へんてこ樹木図鑑)
炭焼広場に行き,最後の段階で窯にヒビが入り,炭になりかけたものが再着火して5%くらいしか炭はできなくて,コナラの生木を再度準備しているという説明を聞きました.モンスズメバチ(紋雀蜂,スズメバチ科)が,早速窯の中に入ってきて巣を作ろうとしたため,網を窯の入口につけていました.
すぐ横の畑で,コンニャク(蒟蒻,サトイモ科)の黄緑色の苗を見ました.この畑の向かえの湿地で植物によるファイトレメディエーション(phytoremediation)によって鉛除去の試験をしている場所を見学しました.ミゾソバ(溝蕎麦,タデ科)とシロバナサクラタデ(白花桜蓼,タデ科)を緑化マットの上で栽培し,鉛を吸収したそれらを根ごと除去するものでした.
水田では,イネ(稲,イネ科)がかなり育っていましたが,雑草も多く,イネの背丈も不揃いでした.水田の水中にはアオミドロ(青味泥,ホシミドロ科)もありました.イネ科の雑草の根元がポリフェノールで赤いのに,イネの根元が赤くないのは何故かという問いを発した人がいました.ポリフェノールはまずいので,イネの品種改良でそうなったということでした.
少し戻って,キンカン(金柑,ミカン科)などの柑橘類を植樹した所で,ナミアゲハ(並揚羽,アゲハチョウ科)などの幼虫を観察しました.小さなコカマキリとハラビロカマキリ(腹広蟷螂,カマキリ科)などの昆虫もいました.ほとんどの木にアゲハの幼虫がいて,葉を食べていました.ある木には,蜘蛛の巣にかかったナミアゲハの翅がありました.1本の木にも植物と昆虫の世界が広がっているようでした.芝生広場横のクズ(葛,マメ科)の葉についたコフキゾウムシ(粉吹象虫,ゾウムシ科)を皆で観察しました.クズは,葉の端がギザギザになるくらい喰われていました.
小雨が降っており,すぐに本格的に降り出しそうでしたので,大坂池まで戻って,新設された作業場で雨宿りしながら感想会を行いました.その場所は風が通って涼しく感じました.アライグマ(浣熊,アライグマ科)や冬水田圃の話がでました.感想会の途中で予想通り大雨になりました.7月の観察会としては,そんなに暑くもなく,虫にもさされない快適な観察会になりました.
観察項目:トビモンオオエダシャク,キモンホソバノメイガ,ヒシ,ニホンイシガメ,クサガメ,ミシシッピアカミミガメ,ヌマトラノオ,ハンゲショウ,アカメガシワ,クロアゲハ,ナガサキアゲハ,クヌギ,アベマキ,コンニャク,センチコガネ,コフキゾウムシ,コカマキリ,ハラビロカマキリ,カナブン,ナミアゲハの幼虫,クビキリギス,アメンボウ,カメムシの卵,イネの雑草,シマヘビ?,ママコノシリヌグイ,ファイトレメディエーションの試験場,ナガコガネ,コオロギ,ヒシバッタ,メイガの幼虫,サルトリイバラの実
文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子
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