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2010年 > 6月度の観察記録
6月度の観察記録
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 午前中ずっと曇りで,日差しがなかったので歩いても暑くなく,観察会に最適な日でした.東海地方は,午後から梅雨入りしました.新池周辺の歩道のキンシバイ(金糸梅,オトギリソウ科)は,黄色い花をいっぱいつけていましたが,しおれた花と蕾も混在していました.ビヨウヤナギ(美容柳,オトギリソウ科)は既に花殻だけになっていました.新池の大半の水面は,白い花が咲き始めたスイレン(睡蓮,スイレン科)に占められ,水鳥は何も来ていませんでした.土手のセンダン(栴檀,センダン科)は,緑色の実を付け始めていました.アカメガシワ(赤芽柏,トウダイグサ科)は,地味な薄黄色の花を咲かせ始めていました.クワ(桑,クワ科)の実は大半が野鳥と人間に食べられ,ほとんど残っていませんでした.集合場所では,ムクドリ(椋鳥,ムクドリ科)とシジュウカラ(四十雀,シジュウカラ科)がさかんに鳴いていました.参加者は男の子と小さな女の子各1名を入れて23名でした.
 まず,参加者が持ってきたオオキンカメムシ(大金亀虫,キンカメムシ科)を観察しました.羽根や腹側の模様とそのあざやかな色を観察して,夜のネオン街のようだという感想が出ました.次に,同じく参加者が持ってきたノムラモミジ(野村椛,カエデ科)の実を観察しました,集合場所周辺のイロハモミジ(伊呂波椛,カエデ科)やトウカエデ(唐楓,カエデ科)の実と比べると大きなものでした.

オオキンカメムシ

 先月観察したカラスノエンドウ(烏豌豆,マメ科),カスマグサ(かす間草,マメ科)とスズメノエンドウ(雀豌豆,マメ科)を押し葉にして持ってきた参加者がいました.実のつき方や種の数などを比較しました.押し葉に花はついていませんでしたが,花の大きさが,順番に大中小ということがまず指摘されました.カラスノエンドウの大きなさや(豆果)は,葉の根元に1つだけつき,その中の豆は10個くらい入っていました.カスマグサは,葉腋(ようえき)から伸びた枝の先に小さな2個のさやがつき,それぞれに4個の豆が入っていました.スズメノエンドウは,小さなさやを4つくらいつけ,豆はそれぞれに2個入っていました.

【外部リンク】観察の目(岡山県自然保護センター)

 きれいな黄緑色のヤママユ(山繭,ヤママユガ科)の繭を観察しました.最終齢の時に日光にあたらないとこの色にならないという説明がありました.先月,新池の土手のアカメガシワの枝で見つけて持って帰った2頭のトビモンオオエダシャク(鳶紋大枝尺蛾,シャクガ科)を観察しました.5cm長くらいに大きくなっていました.顔がキティーちゃんのようだと言う参加者がいました.アカメガシワの葉を盛んに食べていました.先月みつけたクワコ(桑蚕,カイコガ科)の繭も観察しました.普通のカイコ(蚕,カイコガ科)の繭とは違って,ぞんざいな繭でした.

【外部リンク】トビモンオオエダシャク(幼虫図鑑)

トビモンオオエダシャクの幼虫

 このとき,15羽のエナガ(柄長,エナガ科)の群が甲高いチチーチーと鳴きながら,頭上の電線にとまりました.幼鳥も混じっていました.
 先月の観察記録を見て,キショウブ(黄菖蒲,アヤメ科)は,多すぎて駆除できないという話題がでました.また,遮光シートの下では,スイレンが腐ってヘドロになっており,それをどうするかということも話題になりました.クビキリギス(首螽斯,キリギリス科)の写真を見て,ネズミ男を連想するという感想も出ました.チガヤ(茅,イネ科)のおしべに関係して,虫媒花はおしべが先に出て,風媒花はメシベが先に出るという説明がありました.
 イネ科のアオカモジグサ(青髢草,イネ科),ノムギ(野麦,イネ科),ネズミムギ(鼠麦,イネ科),イチゴツナギ(苺繋,イネ科),スズメノカタビラ(雀の帷子,イネ科)およびカモガヤ(鴨茅,イネ科)を,比較のため押し葉にしてきた参加者がいました.これ以外にも似たイネ科の野草は多く,正確な同定は難しいということでした.
 10時過ぎに出発して,新池北広場の北側の一万歩コースの坂から平和公園に入りました.途中で,ヤマナラシ(山鳴らし,ヤナギ科),ヤダケ(矢竹,イネ科)およびリョウブ(令法,リョウブ科)を観察しました.リョウブは,蜜蜂の蜜源の1つだという説明がありました.蜜源として,レンゲ(蓮華,マメ科),ニセアカシア(贋Acacia,マメ科,別名:針槐)及びクロガネモチ(黒鉄黐,モチノキ科)などがありますが,それぞれの蜂蜜を100円ずつ安く差を付けて売っていたという話がありました.周辺のネジキ(捩木,ツツジ科)の釣り鐘状の白い花は,しおれて茶色になり始めていました.その後,ムラサキシキブ(紫式部,クマツヅラ科)の小さな紫色の花を見つけて,観察しました.近くのエビズル(蝦蔓,ブドウ科)の葉は濃い緑色をしていました.

ヤダケ リョウブ ムラサキシキブ

 ウラジロノキ(裏白木,ウラジロ科)の下の「ひこばえ」を見つけて,何故「まごばえ」ではないかという疑問を出した人がいました.太い幹に対して,孫(ひこ)に見立てて「ひこばえ(孫生え)」というので,ここでの「ひこ」は通常の孫の孫という意味とは違うようです.ユニーから,200万円の補助を得て,スモモ池周辺の植樹を,このような地域性のひこばえ(実生)を集めて行うという報告がありました.
 いつものトウカイコモウセンゴケ(東海小毛氈苔,モウセンゴケ科)を見に行きましたが,ピンクの蕾が1つあるだけで,まだ花は咲いていませんでした.その後,周辺に多くあったクサイ(草藺,イグサ科)を観察しました.また,道を横切っているザトウムシ(座頭虫,ザトウムシ科)を見つけて,皆で観察しました.

ウラジロノキ トウカイコモウセンゴケ クサイ

 斜面を藪こぎをして下り,湿地を横切って,炭焼を見に行きました.昨日から火入れをしたそうです.炭焼窯の後ろの煙突からは,白い煙が出ていました.炭焼を担当している東山森づくりの会の人から丁寧な説明を受けました.枯れ木だと燃えてしまうそうで,コナラ(木楢,ブナ科)の生木を1トン窯に入れたそうです.最終的には300kg程度の炭ができるそうです.まず,生木から水分を抜くために焚き口で枯れ枝を燃やしているそうです.白い煙が水分を多く含むことは,煙を触ってみてわかりました.煙のにおいはほとんどしませんでした.黄色い煙から,さらに青い煙になってから密封すると,1週間で炭ができるそうです.煙の色とにおいで作業の時期が経験的に分かるそうです.窯を壊して炭を取り出すと思った人もいましたが,狭い焚き口から中に人が入って炭を取り出すという説明がありました.

炭焼

 炭焼窯の横のサツマイモ(薩摩芋,ヒルガオ科)畑とコンニャクイモ(蒟蒻芋,サトイモ科)畑をみました.今月に入って雨が降らなかったので,水やりが大変だったようです.その後,炭焼広場の奥の放棄された養蜂箱を見に行きました.ギボシ(擬宝珠,ユリ科)やカキ(柿,カキ科)も植えられていました.ここで,小さな女の子が斜面を駆け下りて遊びました.周辺の大人達は心配そうでしたが,女の子は満足そうでした.

サツマイモ畑とコンニャクイモ畑

 水路(せせらぎ)の周辺に咲いていたママコノシリヌグイ(継子尻拭,タデ科),ヤノネグサ(矢の根草,タデ科),アキノウナギツカミ(秋の鰻掴,タデ科),スイバ(酸い葉,タデ科)などを観察しました.名前のママコ(継子)の意味が分からないという人もいました.また,植物のフキ(蕗,キク科)の名前の由来が「拭く」から出たということから,汲み取り便所で新聞紙を使ったという経験がほとんどの参加者にあることが話題になりました.
 真ん中に穴をあけたゴムマットを敷いて植樹がされている場所で,70cm丈の大きなシロザ(白藜,アカザ科)を見つけ,ホウレンソウ(菠薐草または法蓮草,アカザ科)の原種ということで,若芽を取って食べた人や,摘んで持ち帰った人もいました.胡麻和えにするとおいしいそうです.ギシギシ(羊蹄,タデ科),ネズミムギ(鼠麦,イネ科),イヌムギ(犬麦,イネ科),キュウリグサ(胡瓜草,ムラサキ科)だけでなく小さなアカジソ(赤紫蘇,シゾ科)も周辺にたくさんありました.紫色の花を付けたキキョウソウ(桔梗草,キキョウ科)もいくつか咲いていました.工事後の裸の盛土に,かなりの野草がはえ始めており,来年には緑でせせらぎ周辺も覆われそうです.

ママコノシリヌグイ シロザ ネズミムギ キキョウソウ

 田植えを終えた水田の横の泥を10羽近くのツバメ(燕,ツバメ科)が,巣造り用に取りに来ていました.どれくらいの距離を飛んで泥を取りにくるのかという疑問に,新宿のツバメが原宿まで泥を取りに行っている事例が紹介されました.
 せせらぎの斜面がグンバイナズナ(軍配薺,アブラナ科)だけで埋め尽くされている場所がありました.普通のナズナ(薺,アブラナ科)と違って背が高く,不思議な光景でした.枯れた薄茶色のヒメコバンソウ(姫小判草,イネ科)が,その横にたくさんありました.カラタチ(枳殻,ミカン科)には,数cm大の緑色の実がたくさんついていました.男の子が,実を1つとって大事そうににおいをかいでいました.

水田 カラタチの実

 奥池を経由して,北方向へ向かいました.エゴノキ(斉?果,エゴノキ科)を見た後で,鼓笛隊が練習をしていた公園のヤマモモ(山桃,ヤマモモ科)を食べに行きましたが,実はまだ熟していない状態でした.それでも食べた人がいて,渋くはないという感想がでました.来月の観察会では,鳥などに実は食べ尽くされているだろうという予想が出ました.
 公園北口近くから,ハンノキ湿地の方向に向かって歩き,日本固有のササユリ(笹百合,ユリ科)の花を探しに行きました.あきらめかけたときに大きな花をつけた1株を見つけました.種から5〜7年で白い花が咲くという説明がありました.花の咲いていないササユリは,少し離れた所にたくさんありました.近くにイヌザンショウ(犬山椒,ミカン科)の幼木もありました.葉を揉んでも香りはしませんでした.
 サルトリイバラ(猿捕茨,ユリ科),ミヤマガマズミ(深山莱蓬,スイカズラ科),ガマズミ(莱蓬,スイカズラ科)を見ながらハンノキ池につきました.排水口を10cm嵩上げしてもらい,湿地を増やすと同時に,池の水が枯れないようにしたそうです.
 ミスジマイマイ(三条蝸牛,オナジマイマイ科),イボタノキ(水蝋の木,モクセイ科),ゴンズイ(権萃,ミツバウツギ科)およびスミレ(菫,スミレ科)をハンノキ池周辺で観察しました.

ヤマモモの実 ササユリ ミスジマイマイ

 感想会は,ハンノキ池の横のユーカリ畑の端で行いました.10頭近くのモンシロチョウ(紋白蝶,シロチョウ科)が周辺を舞っており,コゲラ(小啄木鳥,キツツキ科)の鳴き声もしました.今回は最後の方でたくさん歩き,今後もそのようにしたいという参加者の感想がでました.周辺でキマワリ(木廻,ゴミムシダマシ科)を見つけて,男の子がしきりに遊んでいました.雨も降らず,蚊にも刺されず,汗もかかない気持ちの良い観察会になりました.

観察項目:オオキンカメムシ,トビモンオオエダシャク,クワコの繭と卵,ノムラモミジの実,ヤママユの繭,押し葉標本(カラスノエンドウ,カスマグサ,スズメノエンドウ,アオカモジグサ,ネズミムギ,イチゴツナギ,スズメノカタビラ,カモガヤ),ヤマナラシ,ヤダケ,リョウブ,ネジキ,ムラサキシキブ,エビズル,ノブドウ,ウラジロノキ,イソノキ,ウスノキ,トウカイコモウセンゴケ,クサイ,ザトウムシ,炭焼,ヤマコウバシ,サルトリイバラ,サツマイモ畑,コンニャクイモ畑,カキ,ギボシ,ルリハムシの幼虫,蜜蜂の巣箱,アキノウナギツカミ,ママコノシリヌグイ,シロザ,ヤノネグサ,ギシギシ,イヌムギ,キュウリグサ,アカジソ,キキョウソウ,水田,ツバメ,グンバイナズナ,カラタチの実,エゴノキ,コウガイゼキショウ,ヤマモモ,ハクサンボク,ササユリ,サルトリイバラ,ミヤマガマズミ,ガマズミ,ミスジマイマイ,イボタノキ,ゴンズイ,キマワリ,スミレ,モンシロチョウ

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子

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2010-8-14 339

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