もう初夏に近い気持ちのよい晴れの日になりました.新池周辺の木々の緑も濃くなってきていました.葉をつけ始めたセンダン(栴檀,センダン科)には,オビデオゾウムシ(帯出尾象虫?,ゾウムシ科)がついていました.集合場所の電線にとまっていたカワラヒワ(河原鶸,アトリ科)がしきりにさえずっていました.
新池横の歩道端には,たくさんのカタバミ(酢漿草,カタバミ科)が5mm 径くらいの黄色い5弁の花をつけていました.約15mm径の4弁の赤い花を付けた南アメリカ原産の帰化植物のアカバナユウゲショウ(赤花夕化粧,アカバナ科)も2〜3ありましたが,昨年までの勢いはなくなっていました.新池の水際のシラン(紫蘭,ラン科)とシロバナシラン(白花紫蘭,ラン科)は,きれいな花をつけていました.水面には,カワウ(川鵜,ウ科)とバン(鷭,クイナ科)だけしかいませんでした.集合場所のハリエンジュ(針槐樹,マメ科,別名:ニセアカシア)が白い小さな花をいっぱいつけていました.
参加者は子供3名を入れて31名でした.今回は大半の時間を新池周辺の観察で過ごしたので,平和公園の中で合流するつもりだったある参加者は,平和公園中を探し回って,最後に集合場所にきて11時頃にやっと合流しました.
まず,参加者が自宅の桜になったサクランボウ(桜ん坊または桜桃)を持ってきたので,皆で食べました.小ぶりでしたが,良く熟していたので賞味しました.1人の男の子は,特に気に入ってたくさん食べていました.先月の報告を見て,まず,北アメリカ原産の帰化植物のマツバウンラン(松葉海蘭.ゴマノハグサ科)が話題になりました.芝と一緒に日本に入って来て,ここ数年で名古屋のどこででも見られるようになりましたが,まだ,その存在を知らない参加者もいました.最大60cm の背丈の花茎の先の方に紫色の小さな花をつけ,群生するときれいに見えます.マツバウンランが,ゴマノハグサ科と知り,特定のゾウムシ(象虫,ゾウムシ科)がいるかもしれないとゾウムシを研究している人が言いました.次に,集合場所のモモ(桃,バラ科)が話題になり,この実はすぐに落ちてしまい食べられるまでに結実しないという説明がありました.説明のあったときに2羽のムクドリ(椋鳥,ムクドリ科)が近くまで餌を取りにきました.シマヘビ(縞蛇,ナミヘビ科)と幼虫の写真に写っていた男の子の手の豆がその他で話題になりました.
雌のクマバチ(熊蜂,ミツバチ科)の死骸を拾ってきた参加がいて,ビロードのような黄色い体を触りました.クマバチは,ほとんど刺しませんが,雌を素手で触るなどすると刺すようです.最近,真っ黒なタケクマバチ(竹熊蜂,ミツバチ科)が増えているという報告がありました.
男の子が集合場所で見つけた小石をしきりに見て,その種類を知りたがりました.水晶の小さな結晶がついた小石でした.今も昔も,子供にとっては,私もそうでしたが光る石はダイヤモンドのような貴重品であるようです.
10時前に,新池に向かいました.新池横の運動場のフェンスに蔓性のカロライナジャスミン(?羅来納茉莉花,マチン科)が5cm長くらいのラッパ状の黄色い花をたくさんつけていました.全体が有毒ですが,特に根は毒性が強いそうです.軟式野球の練習をしていた生徒達は,我々が通るときに練習をやめて,かつ,きちんと挨拶をしてくれました.池のほとりについたときに,水際にいたバンが驚いて飛び立ちました.岸には,黄色い花を付けたキショウブ(黄菖蒲,アヤメ科)が群生していました.特定外来種ではないですが,ヨーロッパ原産の帰化植物で,きれいな花をつけますが増えすぎるので歓迎されない植物です.
新池の200m2の実験区に遮光シートを沈めて,スイレン(睡蓮,スイレン科)の成長を止めている場所を観察しました.長方形の領域で,辺のところに浮かせたペットボトルを遮光シートと結んで位置が分かるようになっていました.きれいな長方形の水面が見えており,スイレンの成長を止めているのは一目瞭然でした.外来種のスイレンは増えすぎて水質を悪化させ,かつ,在来種の生物が住みにくくなるそうです.根を除去することが難しいことが分かったので,このような名古屋方式をとったそうです.池の水際に積んであった掘り出されたスイレンの根茎を折って断面をみました.レンコン(蓮根)と違って,空隙はなく普通の芋のようでした.通常は食用にしませんが,チップスにしたら食べられたという報告がありました.
池の土手で,厚さ10cm 程度の土と水を入れた6つのポリ容器でも実験をしていました.根茎の先端20cmくらいを,それぞれの容器に2つずつ入れたそうで,既に水面に数cm 大の小さな茶系色の葉が出ていました.葉が緑色になったら種々の遮光効果を実験するそうです.
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遮光シートの効果 |
スイレンの根茎の断面 |
スイレンの実験 |
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新池の土手の草原には,ヒメウラナミジャノメ(姫裏波蛇目,ジャノメチョウ科)やベニシジミ(紅小灰蝶,シジミチョウ科)などの蝶が飛んでいました.赤い芽が残っているアカメガシワの枝に,2匹のトビモンオオエダシャク(鳶紋大枝尺蛾,シャクガ科)の幼虫を見つけて,皆で観察しました.写真を撮ろうとしたとき,一瞬見失ってしまう程,枝の形に擬態していました.
近くで,長い白い湾曲した触角を持つクロハネシロヒゲナガガ(黒翅白髭長蛾,ヒゲナガガ科)を捕らえて,観察瓶にいれて観察しました.いつみても長い不思議な触角でした.緑色のクビキリギス(首螽斯,キリギリス科)も見つけて,捕獲して観察瓶に入れました.口もとが赤くて,強い顎を持っているので噛まれると痛いので注意して扱いました.実際に噛まれた経験がある参加者もいました.強い顎があるので,肉食ではという人もいましたが,植物食傾向の強い雑食性で,昆虫も食べますが,強い顎は硬い穂種子を食べるためのようです.アオイトトンボ(青糸蜻蛉,アオイトトンボ科)も捕獲して,観察しました.
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トビモンオオエダシャク |
クロハネシロヒゲナガガ |
クビキリギス |
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30cm 背丈の茎の先端に花をつけたノビル(野蒜,ユリ科)を見つけました.もう根茎はないのではと思いましたが,掘ると丸い根茎がありました.周辺で10個くらいの根茎を採取して,ビニル袋に入れて持ち帰った参加者もいました.花の咲く前であれば茎も食べられるということでした.群生しているチガヤ(茅・茅萱,イネ科)も見つけ,既に大きくなりすぎていましたが,穂(ツバナ,摘花菜;茅花)を抜いて食べた参加者がいました.子供の頃に食べた経験のある人はごく少数でした.穂が完全に出ているチガヤを見つけて,ルーペで雄しべを観察しました.
カスマグサ(かす間草,マメ科)とカラスノエンドウ(烏豌豆,マメ科)を観察して,両者を比較しました.花は全く違う様子をしていました.スズメノエンドウ(雀豌豆,マメ科)は周辺にありませんでした.
クロコガネ(黒黄金,コガネムシ科)を見つけて,甲虫の本を見て,種類を同定しました.その本を,持ち主に注文した参加者が数名いました.
11時を過ぎてやっと,新池から集合場所に戻って,新池北広場(清風荘跡地)の説明を聞きました.芝生を植えた跡地で,土壌が悪いのでマウントして植樹したエノキ(榎,エノキ科)は,近辺の人達から邪魔なので撤去を要請され,名古屋市は撤去の方針だそうです.このエノキを撤去すると,広場の中央が広くなるので球技をされるようになるのではないかと思いました.
中道を通って平和公園に入りました.大坂池(おさかいけ)では,カラス(烏,カラス科)が水浴びをしていました.まさにカラスの行水でした.1羽のコサギ(小鷺,サギ科)が水の中でなく,土手の斜面の上部にいました.少しずつですが,むき出しの土の部分に草が生え始めていました.カエル池の周辺ではアヤメ(菖蒲,アヤメ科)が紫の花を咲かせていました.
中道を東に進んで,炭焼広場まで行き,建設中の炭焼窯にかぶせあった青いシートを部分的にはがして中を見ました.手造りで,重い耐火煉瓦で内張りしてあり,外側を粘土とユーカリの横木で窯がつくってあり,煙突もできていました.屋根は今後造るそうです.焚き口は狭いですが,1トンの炭が焼けるそうです.
ここで,ナガサキアゲハ(長崎揚羽,アゲハチョウ科)の雄を網で捕獲した女の子がいました.写真を撮ってから放したところ,私の腰にとまって,歩きだしてもじっとしていました.他の参加者が写真を多く撮りました.尾状突起が無いので,クロアゲハ(黒揚羽,アゲハチョウ科)ではなくナガサキアゲハであり,食草はミカン類という説明がありました.
先月見た石のひき臼のある所に行って,キリ(桐,ゴマノハグサ科)の筒状の淡い紫色の花を観察しました.たくさんの花が,既に落下していました.キリの花を初めて見たという参加者もいました.エノキ(榎,ニレ科)と2本のシンジュ(神樹,ニガキ科)も隣にありました.
湿地に行き,カキツバタ(杜若,アヤメ科)とショウブ(菖蒲,サトイモ科)の花を観察しました.地味な穂状のショウブの花を初めて見た参加者もいました.池の中のオオフサモ(大房藻,アリノトウグサ科,英語名:Parrotfeather)に関して,南アメリカ原産の特定外来種で,オオキンケイギク(大金鶏菊,キク科)と同じで,「入れない」,「捨てない」そして「広げない」ということが法律で決まっているという説明がありました.
【外部リンク】外来生物法(環境省)
湿地から,キリの木の前に戻って感想会をしました.カワラヒワの鳴き声が周辺でしきりにしていました.感想会の途中で,2羽のカルガモ(軽鴨,カモ科)が飛び立ち参加者をびっくりさせました.ハルジオン(春紫?,キク科)とヒメジョオン(姫女苑,キク科)の違いについて,茎が空洞かどうかで確認したという話がありました.イグサ(藺草,イグサ科)の花も話題になりました.観察会の説明の中で出てきた,「5月6日の菖蒲(あやめ)と9月10日の菊」という意味が分からない人がいて,5月6日の菖蒲は端午の節句に間に合わず,9月10日の菊では重陽の節句に一日遅れで間に合わないところから,野暮な事をさすという説明がありました.カイコの原種のクワコ(桑蚕,カイコガ科)が観察のため回覧されました.
生き物が湧き出るような季節になり,あまり歩きませんでしたが快適な観察会となりました.
観察項目:サクランボウ,クマバチ,ニセアカシヤ(ハリエンジュ),ナンキンハゼ,スイレンの根茎,遮光シートで覆われた新池,実験中のスイレン,キショウブ,トビモンオオエダシャク,ノビル,チガヤ,ヒメホシカメムシ,ヒメウラナミジャノメ,クロハネシロヒゲナガガ,クワコ,クビキリギス,アオイトトンボ,カスマグサ,カラスノエンドウ,スズメノヤリ,ブタナ,カロライナジャスミン,ハルジオン,アヤメ,ミツバアケビの花,カラスの行水,炭焼窯,ナガサキアゲハ,ギンメッキゴミグモ,コサギ,カキツバタ,ショウブ,オオフサモ,キリの花,シンジュ,エノキ,イグサ,クロコガネ
文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子
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