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2010年 > 4月度の観察記録
4月度の観察記録
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 曇りから小雨になり,最後は日差しのある心地よい晴れの日になりました.歩道端には,マツバウンラン(松葉海蘭,ゴマノハグサ科),オオキバナカタバミ(大黄花酢漿草,カタバミ科)やカラスノエンドウ(烏豌豆,マメ科)などが花を咲かせていました.新池はスイレン(睡蓮,スイレン科)が水面の大半を覆うようになりました.その中を,バン(鷭,クイナ科)とカワウ(川鵜,カワウ科)が各2羽いました.カワウは,浮き上がっても首だけしか出ませんでしたが,スイレンに阻まれて動きにくそうでした.池の奥の方に,カルガモ(軽鴨,カモ科)とカイツブリ(鳰,カイツブリ科)が各1羽とヒドリガモ(緋鳥鴨,カモ科)が1つがいいました.新池周辺のサクラ(桜,バラ科)から池に向かって花吹雪が飛んでいました.集合場所のムクゲ(木槿,アオイ科)やイチョウ(銀杏,イチョウ科)がきれいな新緑の新芽を出していました.また,イロハモミジ(伊呂波椛,カエデ科(新しいDNAに基づく分類ではムクロジ科))は,小さな花をつけていました.参加者は子供3名を含む25名でした.

マツバウンラン イロハモミジの花

 集合場所の樹上では,カワラヒワ(尉鶲,ツグミ科)とシジュウカラ(四十雀,シジュウカラ科)がしきりに鳴いていました.先月の報告を見て,最初に集合場所のモモ(桃,バラ科)の花が話題になり,今は小さな実がなっているという説明を聞いて,数名がすぐに見に行きました.ウシガエル(牛蛙,アカガエル科)は,まだ産卵していないという報告もありました.ヒキガエル(蟾蜍,ヒキガエル科)が寒さで産卵をあきらめたかもしれないという記述に関連して,外来種のアマゾントチガガミ(亜馬孫鼈鏡,トチカガミ科)が,今年の寒さで全滅したという報告もありました.モグラに関連して,名古屋城のお堀にいるコウベモグラ(神戸土竜,モグラ科)の調査に参加した人から,小西式トラップで捕獲したコウベモグラが21cmと大きかったという話がありました.理由はわかりませんが,お堀の中で孤立化して巨大化したそうです.なお,先月の自動カメラには人間以外は写っていなかったそうです.

モモの実

 その後,参加者が持ってきたものを皆で観察しました.まず,細長い段ボール箱に入った,シマヘビ(縞蛇,ナミヘビ科)の標本を見ました.中道で前回見つかった工事車両に轢かれたシマヘビの皮と骨格標本でした.皮の真中の4本の黒縦縞が名前の由来だそうです.皮の方が骨より長い状態でした.皮は,表側より裏側の方が光沢があることに驚きの声があがりました.骨格標本を見ると,肋骨は確かに尻尾が始まる位置まででした.皮の切断には,先の細い解剖用のハサミを使ったそうです.このヘビは,アオダイショウ(青大将,ナミヘビ科)ではという指摘があったそうです.両者は区別しにくい場合があるそうですが,目が赤かったので,シマヘビでよいということになりました.ヘビにかまれると4点の噛み跡がつくという話もありました.
 次に,白川郷へ行ってきた参加者が持ってきた,スギ(杉,スギ科(新しい分類ではヒノキ科))の実と,それをモモンガ(摸摸具和,リス科)がかじった実,先端からみるとバラの花のように見えるカラマツ(唐松,マツ科)の実とアカマツ(赤松,マツ科)の実を観察しました.リスに食べられた実もありました.実を全部は食べないので,種の機能を残した例も示されました.単に,まずいところを残しているのではという指摘もありました.

シマヘビの標本 白川郷の木の実

 次に,ある参加者が自宅の庭から持ってきたサンショウ(山椒,ミカン科)の雄木の小枝とノムラモミジ?(野村椛,カエデ科(ムクロジ科))の小枝を観察しました.このサンショウは雄木で種はならないそうですが,ミカン科のため香りがよいので葉などは料理に使うそうです.サンショウの棘は表皮が変化したものですが,対生についていました.ノムラモミジの葉は春でも赤く,夏になると緑になり,秋には紅葉してまた赤くなるそうです.集合場所のイロハモミジと比べましたが,葉と花も大きめでした.

【外部リンク】DNAもとに植物の新しい仲間分け(科学面にようこそ)

 清風荘跡地では,ツバメ(燕,ツバメ科)が4羽,低く飛んで虫を捕っていました.

 10時10分にやっと出発して,里山の家まで行き,マメナシ(豆梨,バラ科)の実生(みしょう)をまず見ました.30粒くらいの種から1株だけ発芽したものでした.次に,里山の家の前の歩道で小さな花を咲かせたキュウリグサ(胡瓜草,ムラサキ科)とオランダミミナグサ(和蘭耳菜草,ナデシコ科)を観察しました.なお,ここで「なごや東山の森ガイドブック」が100円で配布されました.

オランダミミナグサ

 中道から平和公園に入り,炭焼広場まで行き,満開の菜の花畑を観察しました.ミツバチ(蜜蜂,ミツバチ科),ハナアブ(花虻,ハナアブ科),クマバチ(熊蜂,コシブトハナバチ科),モンシロチョウ(紋白蝶,シロチョウ科)やベニシジミ(紅小灰蝶,シジミチョウ科)などの多くの昆虫が来ていました.ミツバチの中には脚に肉団子を抱えているものもいました.このナノハナ(菜の花,アブラナ科)は,観賞用のものなので,葉を食べてまずかったという報告がありました.菜の花畑の端の方で,ゴギョウ(御形,キク科,別名:ハハコグサ),ホトケノザ(仏の座,シソ科),ヒメオドリコソウ(姫踊子草,シソ科),ヤエムグラ(八重葎,アカネ科)を観察しました.ホトケノザとヒメオドリコソウの違いの説明がありました.このとき向かえの水のたまった段々畑に4羽のカルガモが飛んできました.

ナノハナとミツバチ ホトケノザの花

 元は廃材置き場になっていた場所に80cm大の石のひき臼がありました.どこかの家屋を壊したときに一緒に持ってきたものだろうということでした.表面にはかなり深い溝がついており,大きさからして人間ではなく牛などの動物に挽かせたもので,普通の穀物ではなく,トチノキ(栃の木,トチノキ科)の実などを挽いたのではということになりました.

 男の子がクワゴマダラヒトリ(桑胡麻斑灯蛾,ヒトリガ科)の幼虫を持っていたので,皆で観察しました.この蛾は,蝶のように食草が決まっていなくて何でも食べるそうです.さらに,菜の花畑で,ビーティングネットを使って捕ったアルファルファタコゾウムシ(アルファルファ蛸象虫,ゾウムシ科)とダイコンサルゾウムシ(大根猿象虫,ゾウムシ科)を,観察瓶に入れて観察しました.養老孟司が監修したゾウムシの本を持ってきた人がいて,比較しました.1ページに大きくゾウムシの写真があり,その姿の精妙さに感心して,この本の購入を頼んだ参加者が数名いました.このとき,すぐ横の木に,1羽のコゲラが来て,幹を登りながら,「ギィーギィー」といういつもの鳴き声だけでなく,「キィキィキィキィキィ」という繁殖期の澄んだ鳴き方もしました.

石のひき臼 クワゴマダラヒトリの幼虫 ダイコンサルゾウムシ

 湿地まで行き,斜面のウスノキ(臼木,ツツジ科)を観察しました.地味な小さな花が下向きにたくさん咲いていました.赤い実は上向きになるという説明がありました.近くには,満開のコバノミツバツツジ(小葉の三葉躑躅,ツツジ科)がたくさんありました.水の中のオタマジャクシは,ヒキガエル(蟾蜍,ヒキガエル科)が大半で,アカガエル(赤蛙,アカガエル科)も少しいました.ウシガエルのオタマジャクシはいませんでした.畦のヒサカキ(姫榊,ツバキ科)の花を観察して,雄木は見つかりましたが,雌木は花が既に枯れていてよくわかりませんでした.斜面に入って,ヤマブキ(山吹,バラ科)とミツバアケビ(三葉通草,アケビ科)を観察しました.このあたりにヤマブキが多いのは昔ヤマブキ畑があった名残だそうです.ミツバアケビの雄花はすぐに見つかりましたが,雌花は探すのに時間がかかりました.濃紫の花の色は,光の当たり方によって見え方は異なりますが,美しいものでした.棘をたくさん持つハリギリ(針桐,ウコギ科)が新芽を出していて,天ぷらにするとおいしいという説明があり,新芽を摘んで持って帰った参加者がいました.ハリギリのすぐ横のヤマハゼ(山櫨,ウルシ科)の葉痕を見て,モンローの口に見えると言われているという説明がありました.

ウスノキの花 ヤマブキの花 ハリギリの新芽 ヤマハゼの新芽と葉痕

 ノキシノブ(軒忍,ウラボシ科)と苔がついたウメ(梅,バラ科)の老木で,数ミリ大のギンメッキゴミグモ(銀鍍金塵蜘蛛,コガネグモ科)を観察しました.ルーペで見ると背中が銀色に見えました.少し先に行って,背丈ほどのボケ(木瓜,バラ科)の花が満開でした.赤とピンクと白の花が混在していました.苔に覆われた地面に10cm大の2つのコロニーのカンアオイ(寒葵,ウマノスズクサ科)がありました.ここで,カケス(懸巣,カラス科)の羽根が落ちていました.片側がきれいな青色の横縞模様をしていました.周辺には,名古屋市がワイルドフラワーガーデンとするため花の種を蒔き,生き残ったデイジー(Daisy,キク科,和名:雛菊)が,落ちたサクラの花びらの中で咲いていました.

ギンメッキゴミグモ ボケの花 カケスの羽根

 いつも観察するカラタチ(枳,ミカン科)が白い花を咲かせ始めていました.ここで,北原白秋の「からたちの花(山田耕筰作曲)」と島倉千代子の「からたち日記」の2つの歌を合唱した女性の参加者達がいました.天使の歌声だという人もいました.白秋の歌を知らなかった人もかなりいました.「からたち日記」は,初恋の別れを歌ったものですが,「からたちの花」は,カラタチの花,棘および実を歌っているだけでなく,10歳の時に父を亡くし,夜学に通いながら住み込み工であった山田耕筰が,体を壊すほどの仕事と先輩印刷工からいじめられたつらさを垣根のカラタチに隠れて泣いた経験に,白秋が同情して作詞したものでした.日本の昔の若者の苦労を背負った歌であり,郷愁だけでない意味があります.カラタチの木の下には,スノーフレーク(ヒガンバナ科,別名:大待雪草または鈴蘭水仙)が1株だけ小さな鈴のような花をたくさん付けていました.

【外部リンク】からたちの花(ああ我が心の童謡)

カラタチの花

 周辺のタンポポを観察して,在来種とセイヨウタンポポ(西洋蒲公英,キク科)が混在しているのを観察しました.大阪市立自然史博物館による新しいタンポポの分類の話も出ました.男の子がセイヨウタンポポの綿毛(冠毛)を飛ばしました.球状の1つの綿毛には200程度の種がついているそうです.セイヨウタンポポは,札幌農学校(北大の前身校)の農園から広がったという説明もありました.ちなみに,駆除対象になっている野生のアライグマ(浣熊,アライグマ科)は1962年に日本モンキーセンターから12頭が逃げたのが最初であるとの話もありました.

【外部リンク】ノコギリソウ調査結果報告会

 感想会は,カラタチの木から少し東に歩いて,日当たりのよい広い場所で行いました.日の当たった背中が少し暑く感じられた程でした.周辺では,ウグイス(鶯,ウグイス科),シジュウカラ(四十雀,シジュウカラ科),コゲラ(小啄木鳥,キツツキ科)などが鳴いていました.まず,シマヘビ標本が見られて良かったという感想がでました.また,ゾウムシに関連して,米櫃のコクゾウムシ(穀象虫,オサゾウムシ科)から連想して,「象虫」を「蔵虫」と勘違いしていたという話もでました.木の芽の天ぷらで,おいしい順は,コシアブラ(濾油,ウコギ科),タラノキ(?木,ウコギ科),ハリギリという話題もでました.春の豊かな生き物に出会った観察会になりました.

観察項目: シマヘビの標本,カラマツの実,アカマツの実,スギの実,ノムラモミジ,サンショウ,モモの実,キュウリグサ,オランダミミナグサ,マメナシ,ナノハナ,石のひき臼,クワゴマダラヒトリの幼虫,ミツバチ,ハナアブ,クマバチ,アルファルファタコゾウムシ,ダイコンサルゾウムシ,ヒメオドリコソウ,ホトケノザ,タネツケバナ,ウスノキ,ヤマブキ,コバノミツバツツジ,ケキツネノボタン,ヒサカキ,ミツバアケビの花,ハリギリの新芽,ヤマハゼの葉痕,ギンメッキゴミグモ,カケスの羽根,コゲラ,エナガ,ウグイス,コサギ,カルガモ,ボケ,カラタチ,ミツバ,カンアオイ,アゲハ,ベニシジミ,タンポポ,コガタルリハムシ,ヒメコブシ,コブシ

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子

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2010-5-5 480

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