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2011年 > 1月度の観察記録
1月度の観察記録
2011年1月度の観察記録です。

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 雲は多かったですが一日中晴れでした.かなり寒くなりましたが,例年の名古屋の1月の寒さとしては,さほどでもなく,藪こぎをして歩くのには丁度よい気温でした.新池には冷たい風が吹き,さざ波がたっており,ヒドリガモ(緋鳥鴨,カモ科)(6),バン(鷭,クイナ科)(2),カイツブリ(鳰,カイツブリ科)(2)およびマガモ(真鴨,カモ科)(2)が北側の張り出した樹木の下の水面に隠れていました.土手にも8羽のヒドリガモがいました.周辺の樹木では,多くのヒヨドリ(鵯,ヒヨドリ科),ムクドリ(椋鳥,ムクドリ科),モズ(百舌鳥,モズ科),ウグイス(鶯,ウグイス科),ツグミ(鶫.ツグミ科)が活動していました.さらに,雄のカワセミ(翡翠.カワセミ科)が1羽,西側の樹木の枝にとまり,じっとしていました.フェンスに近いため,くちばしの色が確認できる近さでした.餌場として最適なのか,このカワセミは昼過ぎの観察会の帰り時にも同じ木にとまっていました.土手のセンダン(栴檀,センダン科)のクリーム色の実をヒヨドリがしきりに丸飲みしていました.参加者は,男の子1名を含む24名でした.

新池のカワセミ

 今回は,この観察会を当初後押したKさんの娘さんがきて,お父さんの死について報告がありました.Kさんは,5年くらい前に観察会にも顔をだされましたが,初期の愛知県の野鳥の会を支えた人でもあり,満足した人生を送られたそうです.

 まず,参加者が持ってきたキカラスウリ(黄烏瓜,ウリ科)の実を切断して,中の柿の種に似た種を観察しました.カラスウリの種の形とは違うので,財布に入れてもお金持ちにならないという話がでました.種の周辺の果肉を食べた人もいました.アケビ(通草,アケビ科)ほどではないですが,十分食べられるようです.キカラスウリはカラスウリと違って午前中にも花を見ることができるそうです.天白川や庄内川の河川敷に多くあるという説明がありました.

 里山の家から縁台を出して,その上に女性の参加者が作ってきたアブラコウモリ(油蝙蝠,ヒナコウモリ科)の骨格標本を載せて観察しました.骨格標本の下には,コウモリの形をかたどった黒紙が敷いてありました.手足の5本の指の骨がよく見え,その精細さに驚嘆の声があがりました.後ろ足は逆向きであり,さらに尾膜を制御するための小骨がありました.

   【外部リンク】骨格標本:アブラコウモリ(生物教材製作所)

   【外部リンク】コウモリってなにもの!?(東京工業大学大学院岡田研究室)

 先月の報告を見ながら,種々の話題がでました.その間に大坂池でハクセキレイ(白鶺鴒,セキレイ科)が鳴きながら飛び立ちました.その大坂池の水面は西側半分が凍っていました.

キカラスウリの実の断面 アブラコウモリの骨格標本 凍った大坂池

 10:10になって,藪こぎをしてよく歩くために出発しました.いつもは歩かないコースですが,カエル池から北へ向かって林に入りました.まず,葉の形が独特なホウオウチク(鳳凰竹,イネ科)を観察しました.斜面を昇ったところで,背の高いアカマツ(赤松,マツ科)を支えにした(やぐら)の回りで,その由来や目的を話しました.昨年の8月頃に造られ,戦争ごっこの見張り台か上で寝るためのもののようでした.明らかに大人の仕事でした.櫓の下には,パイプで造った梯子も放置されていました.木でできた櫓の梯子を登ろうとした参加者もいましたが,赤松と一緒に揺れて,あまり安全な工作物ではないようでした.早めに撤去した方がよいものでした.
 カクレミノ(隠れ蓑,ウコギ科),アオキ(青木,アオキ科),ヒイラギ(柊,ヒイラギ科)などの実生のある斜面を下ると,猫洞通のバス停の前に出ました.途中で日当たりのよい場所で,枯れ葉の間で緑のノビル(野蒜,ユリ科)もありました.

ホウオウチク カクレミノ

 日当たりの良い南斜面に出たときに,藪こぎをしたため参加者の服にはアレチヌスビトハギ(荒地盗人萩,マメ科)やイノコズチ(猪子槌,ヒユ科)の実がいっぱいついていました.特に,男の子は体中にひっつきむしをつけていました.プラスチックカードでひっつきむしをそぎ落とした参加者もいました.ここで,踏まれたばかりの2cmくらいの茶色のナワキリガ(なわ切蛾,ヤガ科)を見つけた参加者がいました.腹から体液が出ているのを見て食べてみたらという人もいました.蚕の幼虫はエビの味がしておいしいと言われていることの類推だろうと思います.言った人も実際には食べた経験はなく,今回ももちろん誰も試みませんでした.観察中にその蛾を下に落としてしまいました.枯れ草が茂っていたので,なかなか見つかりませんでした.そのナワキリガを探しているときに,2匹のツチハンミョウ(土斑猫,ツチハンミョウ科)を捕まえました.男の子が,この虫の名前を知っていました.普通のハンミョウ(斑猫,ハンミョウ科,別名:ミチオシエ)とは違うという説明でした.何を食べるかという疑問がでて,周辺のアブラムシと一緒に観察瓶に入れた人がいました.捕獲されて驚いているので,それどころではない様子でした.
 枯れ草色のトノサマバッタ(殿様飛蝗,バッタ科)も捕まえて観察しました.折角日当たりのよい所で冬の寒さに耐えているのに,虫たちにはいい迷惑ではという声もあがりました.

ひっつきむし ナワキリガ ツチハンミョウ トノサマバッタ

 鉛対策のため覆土した1m幅くらいの小道を歩きました.砂を固めて平らになっているので,坂道では滑って大変歩きにくいという感想がでました.両側のロープの柵もいらないという意見も出ました.

鉛対策のため覆土した道

 元は畑だった場所で,何の野菜か分かりませんでしたが,薄黄緑色の菜葉がたくさんありました.クスノキ(楠,クスノキ)の実生や牛糞のように見えるホコリタケ(埃茸,ホコリタケ科)を見つけた斜面を下って「桜の園」の前にでました.周辺では,センリョウ(千両,センリョウ科)やしおれたカミヤツデ(紙八手,ウコギ科)がありました.道路沿いに歩いてチップセンターへ行き,表面に霜柱ができたチップの山でカブトムシ(兜虫,コガネムシ科)の幼虫を探しました.見つかったのはゲジ(蚰蜒,ゲジ科,ゲジゲジは通称)とカブトムシの雄の死骸だけでした.

ホコリタケ センリョウ カミヤツデ ゲジ

 かなり急な斜面の藪こぎをしました.平均年齢の高い参加者に,こんな急な斜面を藪こぎさせても良いのかという意見がでましたが,皆無事でした.硬い芽をつけたタカノツメ(鷹爪,ウコギ科)やわずかに実を残したソヨゴ(冬青,モチノキ科)を観察しました.蜘蛛の糸を見つけてその強さも確認しました.大きな枯れた切株を裂いて,虫を探したところ,じっとしている大量の黒いアリを見つけました.切株全体がアリの巣になっていました.観察後は元に戻しておきました.
 斜面を登りきったところで,ヒサカキ(姫榊,ツバキ科)の根元にボクトウガ(木蠹蛾,ボクトウガ科)の幼虫の糞を見つけました.1〜2mmの粒状のものを手にとって観察して,軟らかくてカステラのようだという感想がでました.本当に1匹のボクトウガの幼虫の糞かどうか,来月に木を切断して確認することにしました.

タカノツメ アリ ボクトウガの幼虫の糞

 石段を下りて,大坂池に戻りました.石段の端には,先月も見たナキリスゲ(菜切菅,カヤツリグサ科)がありました.秋に穂が出るという説明がありました.大坂池の氷は,日に当たってすっかりとけていました.大坂池の土手では,霜柱がとけた跡もありました.周辺の土手には,挿し木で作った苗木が植樹されていました.コリヤナギ(行李柳,ヤナギ科)とネコヤナギ(猫柳,ヤナイ科)でした.

植樹したコリヤナギ 植樹したネコヤナギ

 大坂池の日当たりのよい斜面で感想会をしましたが,座りにくいという感想がでました.ツチハンミョウの名前を男の子が知っていたことに対して,その名前を知らなかった父親は,かえってうれしそうにそれに関して感想を言いました.
 手製の干柿とイタリア菓子が回され皆で賞味しました.懐かしい味の干柿は妙丹柿という種類で,北限の柿だそうです.手製のイタリア菓子は,ナッツや干しブドウを入れた硬いおいしいクッキーでした.

   【外部リンク】南部地方伝来のカキ「妙丹柿」(まるごと青森)

 感想会の中で,単身赴任の夫が2年ぶりに帰って来ることになってうれしいという話がでて,種々の意見で盛り上がりました.別の女性参加者は夫を疎ましく思った.また,ある男性参加者からは6年間の単身赴任から帰って,夫婦仲を修復するのに同じ年限が必要だったというような話も出ました.単身赴任を当たり前としている日本社会は異常ですが,夫婦仲については,それぞれ事情が違いますが,相手から大事にされるためには,まず,相手を大事にすることが最初なのかもしれません.男の子は,この話にはもちろん参加せず,池の水辺でしきりに遊んでいました.
 藪こぎをしてたくさん歩いたことに対して,いつものように良かったという意見と疲れたという意見の両方がでました.
 多くの参加者にとっては,観察項目は少なかったですが,快適な冬の藪こぎを楽しんだ観察会になりました.

感想会

観察項目:キカラスウリの実,アブラコウモリの骨格標本,ハクセキレイ,ホウオウチク,櫓,カクレミノ,アオキ,ヒイラギ,ノビル,ナワキリガ,ツチハンミョウ,トノサマバッタ,エナガ,アレチヌスビトハギ,イノコズチ,アメリカセンダングサ,ゲジ,カブトムシの雄の死骸,霜柱,アリの巣の切株,覆土された散策路,クスノキ.ホコリタケ,センリョウ,タカノツメ,ボクトウガの幼虫の糞,ナキリスゲ,コリヤナギ,ネコヤナギ

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子

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