このサイト内の検索   
SmartSection is developed by The SmartFactory (http://www.smartfactory.ca), a division of INBOX Solutions (http://inboxinternational.com)
2011年 > 2月度の観察記録
2月度の観察記録
2011年2月度の観察記録です。

Untitled Page

 快晴でしたが風は冷たく,日陰では真冬に戻ったようでした.新池の水鳥たちは,北の岸辺の葉のない木の下で浮き寝状態でした.岸に上がっているヒドリガモ(緋鳥鴨,カモ科)もいました.木の下にいるのは,鷹に上から襲われないためという説もありますが,今回は寒かったためと思います.ヒドリガモが23羽,バン(鷭,クイナ科)が2羽,カイツブリ(鳰,カイツブリ科)が1羽でした.木の枝に1羽だけコサギ(小鷺,サギ科)も来ていました.4羽のムクドリ(椋鳥,ムクドリ科)は,草が刈りとられた土手で,しきりに何かをついばんでいました.これらを見ているときにカワウ(川鵜,ウ科)が1羽飛んできました.ハクセキレイ(白鶺鴒,セキレイ科)も2羽,南側のフェンス横に来ました.新池の土手のセンダン(栴檀,センダン科)は,既に実をすっかり落としていました.先月あれほどあったクロガネモチ(黒鉄黐,モチノキ科)の赤い実ももうありませんでした.東星ふれあい広場の土手のハンノキ(榛の木,カバノキ科)の近くの柵に,メスのルリビタキ(瑠璃鶲,ツグミ科)が1羽とまっていました.参加者は,子供5名を含めて28名でした.

バン

 まず,参加者が持ってきたカラスウリ(烏瓜,ウリ科)とキカラスウリ(黄烏瓜,ウリ科)の種を観察しました.カラスウリの種は独特の形で,「大黒様」,「打ち出の小槌」または「カマキリの顔」などに見えるという説明がありました.キカラスウリの種は,先月観察したように,柿の種を小さくしたような普通の形状でした.どこから芽がでるかということで,種を歯で噛んで胚乳を出して食べた人がいました.クルミ(胡桃,クルミ科)のように脂肪分が多く,穀物ではないという感想がでました.カラスウリの種の両側の耳の部分は空洞でした.そのため,水に浮くという説明もありました.

 先月の報告を見ながら,カワセミ(翡翠,カワセミ科)の雌雄は,下のくちばしが黒いのが雄で赤いのが雌という説明がありました.センダンの写真を見て,センダンの実の多くが下に落ちており,鳥たちが食べきれないのは,まずいためだろうかという疑問がでました.アブラコウモリ(油蝙蝠,ヒナコウモリ科)の骨格標本の写真を見て,その精妙さにまた驚きの声があがりました.平和公園の風景写真展を見てきた参加者がいましたが,その写真展の宣伝用葉書を里山の家は,個人の宣伝はしないとして断ったという話がありました.

カラスウリとキカラスウリの種

 東に向かって出発して,水田まで行き,カラスが10数羽群がって土をほじくっているのを見て,何をしているのだろうかという問いがでました.

水田に集まるカラス

 水田を少し過ぎたところで,キラニン広場への登り南斜面を藪こぎしました.斜面には紅葉したナンテン(南天,メギ科)や独特の形の緑葉のヒイラギ(柊,ヒイラギ科)の実生が結構多くありました.また,葉を落としたハリエンジュ(針槐,マメ科)とノイバラ(野茨,バラ科)には棘があり,藪こぎがしにくくなっていました.センリョウ(千両,センリョウ科)およびマンリョウ(万両,ヤブコウジ科)の実生も所々にありました.フユノハナワラビ(冬の花蕨,ハナヤスリ科)も一株だけ見かけました.

紅葉したナンテン センリョウ マンリョウ フユノハナワラビ

 キラニン広場に到着して,北斜面の下りの藪こぎをする前に,平和公園に詳しくない業者が設置したと思われる矢印の方向が少し違う看板を見ました.ここで,藪こぎの好きな順に一列に並んで下り斜面を藪こぎするという提案がありましたが,ほとんどの人は動きませんでした.前後の人に話しかけて親しくなる手法ですが不発でした.
 キラニン広場の北斜面の藪こぎは,急な斜面ですが,5名の子供たちは枯れ葉の上を滑ったりして,転がるように喜んで進みました.2人の男の子を先導させましたが,すぐに見えなくなってしまいました.小さな女の子も,付き添いの参加者の手を振りきって1人で転がるように楽しんで降りていきました.藪こぎの間に数回コゲラの鳴き声がしました.コゲラ(小啄木鳥,キツツキ科)がたくさん穴をあけた倒木も転がっていました.

藪こぎ コゲラが穴をあけた倒木

 斜面の途中で,ソヨゴ(冬青,モチノキ科)の根元にボクトウガ(木蠧蛾,ボクトウガ科)の幼虫の木くず糞がありました.ネジキ(捩木,ツツジ科)の場合は,木くず糞は橙色でしたが,今回は白っぽいものでした.早速,木くず糞をどけて,入り口の穴を観察しようとしましたが,蛾に詳しい女性参加者は,最後尾でしたので,到着するまでに「大きな木(The Giving Tree),シェル・シルヴァスタイン著,村上春樹訳」という本の紹介がありました.この本に対しては,子供だけでなく大人の絵本でもあるという書評があります.

 木くず糞を手にとってこすると粉のようになりました.木くず糞をどけると,数ミリ径の穴が幹の根元にありました.前日の子供森づくり隊で用意した,幼虫に入られた別の木の幹片を2つ観察しました.1つは幹を切断して,ボクトウガの幼虫があけた穴に色のついた針金を通して,わかりやすくしたものでした.

ボクトウガの木くず糞 針金を挿入したボクトウガの幼虫があけた穴 ボクトウガのあけた穴

幹の横から入って細いトンネルを掘って上に行き,また,下に戻ってさらに反転していました.根元の方が栄養をとりやすいようだとの説明がありました.ボクトウガの幼虫は,肉食でもあり,侵入穴から出る樹液を吸いに来る小さな虫を補食するそうです.逆にサシガメ(刺亀,サシガメ科)や野鳥にボクトウガの幼虫が食べられることもあるそうです.木くず糞をトンネルの中ですれば,トンネル穴が詰まってしまうので,木くず糞を外へ出すためには,後退するか,回帰するトンネルが必要という指摘がありました.また,どこでさなぎになるかという質問もでました.もう1つの幹片には,数回周する食痕があり,縦に半割りした断面にはトンネルもありました.こちらは,コウモリガ(蝙蝠蛾,コウモリガ科)の幼虫の例だという説明がありました.侵入穴を木くず糞で覆って外敵が侵入しないようにしているそうです.両方の蛾の成虫標本を,蛾に詳しい女性が持ってきていて,回覧して興味深く観察しました.コウモリガは,翅を広げると7cm大と大きく,トンボのようでした.あまり進化していない古いタイプの蛾という説明でした.コウモリガは,空中で卵を散布して,落ちた卵からかえった幼虫は,最初は草を食べ,その後木へと移るという説明がありました.

   【外部リンク】コウモリガ(病害虫図鑑)

ボクトウガ コウモリガ

 いつものカンアオイのコロニーへ行く途中で,花芽のついたシュンラン(春蘭,ラン科)を一株見つけました.

花芽のついたシュンラン

 カンアオイのコロニーどうしは,昨年度より接近しているように見えました.これまで,2種類のカンアオイとしていましたが,実は3種類で,ヒメカンアオイ(姫寒葵,ウマノスズクサ科)とスズカカンアオイ(鈴鹿寒葵,ウマノスズクサ科)の他にこれまで葉に斑(ふ)がないヒメカンアオイと思われていたゼニバサイシン(銭葉細辛,ウマノスズクサ科)があるとの説明がありました.ゼニバサイシンは小さい葉で斑がなく,葉の先端に切れ込みあるという特徴がありました.スズカカンアオイは葉が大きくて細長く,花も他より大きなものでした.葉と花の数を数えたところ,葉の数はゼニバサイシン,ヒメカンアオイおよびスズカカンアオイでそれぞれ413,821,20でした.花は,それぞれ73,222,6でした.昨年は,ヒメカンアオイ(ゼニバサイシンを含む)の葉と花は,それぞれ769と150で,スズカカンアオイは,10と4でした.数える時期にもよりますが,多少増える傾向にあることは確かでした.

ヒメカンアオイ ヒメカンアオイの花 スズカカンアオイ スズカカンアオイの花
ゼニバサイシン ゼニバサイシンの花

 男の子たちは,数えるのに飽きて,枯れ枝を振ってチャンバラ遊びをしていました.カンアオイをギフチョウ(岐阜蝶,アゲハチョウ科)が食草にしており,平和公園でも1960年代までは成虫標本がたくさん採れたそうです.ギフチョウには,ヒルトッピング(hilltopping)をする場所やスプリング・エフェメラル(Spring ephemeral,春植物)が必要だそうです.また,ツツジ(躑躅,ツツジ科),ミカン(蜜柑,ミカン科),サクラ(桜,バラ科),ショウジョウバカマ(猩々袴,ユリ科),カタクリ(片栗,ユリ科)などの蜜を吸うという説明がありました.青色や紫色の花を好むので,ギフチョウの採取に青いネットを持つ人もいるそうです.名古屋市内には,残念ながらもうギフチョウは生息していないそうです.

チャンバラ遊び

 藪こぎをして,ハンノキ湿地まで行きましたが,いつも野鳥写真家がいる野鳥の水飲み場には水はありませんでした.ハンノキ池には水がありましたが,嵩上げした排水口の周辺には全く水がなく,いつもより遙かに低い水位でした.ここから,早足で覆土された道と石段を歩いて,12:05に大坂池につきました.

水のないハンノキ湿地

 感想会は里山の家の中で行いました.腐葉土の上は歩きやすく,藪こぎが楽しかったという意見が多く出ました.子供たちが最も楽しんだようでした.観察会では常に何らかの発見がありおもしろいという感想もでました.里山の家の外ではハクセキレイが地面を跳ねていました.よく歩き藪こぎをした楽しい冬の観察会になりました.


観察項目:カラスウリとキカラスウリの種,カラス,ハリエンジュ,ノイバラ,ナンテン,ヒイラギ,ソヨゴ,フユノハナワラビ,センリョウ,マンリョウ,シュンラン,コゲラがあけた穴のある倒木,ソヨゴ,ボクトウガの木くず糞,ボクトウガとコウモリガの成虫標本,ヒメカンアオイ,スズカカンアオイ,ゼニバサイシン,ハクセキレイ

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子

  この記事を PDF フォーマットで見る 記事を印刷する 記事をメールで送信

この記事の添付ファイル
ファイル名 掲載日 ヒット
ファイルをダウンロード 2月度の観察記録
2月度の観察記録(印刷用PDFです)
2011-5-9 432

ページ移動
良く読まれた記事 1月度の観察記録 3月度の観察記録 次の記事