このサイト内の検索   
SmartSection is developed by The SmartFactory (http://www.smartfactory.ca), a division of INBOX Solutions (http://inboxinternational.com)
2008年 > 9月度の観察記録
9月度の観察記録
Untitled Page

 台風が近づいており,雨を心配しましたが,時折日差しがある曇りとなりました.それ程暑くもなく,観察会日和になりました.開掘りの効果もなく,新池の水面はスイレン(睡蓮,スイレン科)によって大半が覆われ,残りのわずかの水面もオオカナダモ(大カナダ藻,トチカガミ科)やマツモ(松藻,マツモ科)などで覆われていました.水鳥は今月もいませんでした,先月あれ程いたトンボも,ほとんど飛んでいませんでした.
 新池の周辺では,アレチヌスビトハギ(荒地盗人萩,マメ科)とカタバミ(片喰または酢漿草,カタバミ科)が,紫と黄色の小さな花をそれぞれ咲かせていました.ニホンミツバチ(日本蜜蜂,ミツバチ科)とヤマトシジミ(大和蜆,シジミチョウ科)が,花の蜜を吸っていました.新池のフェンス近くには,既に花の盛りの過ぎたノアズキ(野小豆,マメ科)がありました.周辺は.ツクツクボウシ(つくつく法師,セミ科)とエンマコオロギ(閻魔蟋蟀,コオロギ科)の鳴き声で埋まっていました.たくさんのクマバチ(熊蜂,ミツバチ科)がアベリア(スイカズラ科,別名:ハナゾノツクバネウツギ(花園衝羽根空木))とムクゲ(木槿,アオイ科)の花の蜜を盛んに吸っていました.
 県内のある高校の放送部の4名が,観察会のビデオ撮影に来ていました.今回の参加者は,子供7名と高校生4名を入れて44名でした.

アレチヌスビトハギとニホンミツバチ ノアズキの花 アベリアとクマバチ ムクゲとクマバチ
アレチヌスビトハギとニホンミツバチ ノアズキの花 アベリアとクマバチ ムクゲとクマバチ

 いつもの公園のテーブルは,2ヶ所とも自転車で来ていた男性達が寝ていて占拠されていたので,手前のベンチの所で集合しました.まず,先月の記録を見て,最初にセミの鳴き声についての話題がでました.豊田市では,ミンミンゼミ(セミ科)が鳴きますが,名古屋市内では,このセミの鳴き声を聞いた人はいませんでした.ミンミンゼミは東京では代表的なセミで,漫画家は東京出身が多いので,漫画の中ではセミの鳴き声を「ミンミン」とするということでした.せみの鼓膜の位置に関しての説明もありました.トンボとカエルが,生物多様性を確保するための大事な指標になるという説明もありました.トンボの中では,コシアキトンボ(腰空蜻蛉,トンボ科)が,環境がある程度よくなると最初に出てくるということでした.先月捕まえた2匹のニホンアカガエル(日本赤蛙,アカガエル科)は,東山動物園に引き取られたそうです.

 今回は,珍しく誰からも観察物の持込がなかったので,9:45に平和公園に向けて出発しました.里山の家の近くの元大坂池付近がトラ柵でフェンスが造ってあり,今後,湿地と水田を復活させるために重機を入れるという説明がありました.このとき,オニヤンマ(鬼蜻蜒,オニヤンマ科)が,スイスイと頭上を飛んでいきました.
 名古屋市の動物園再生事業に,約400億円がかけられ,その一部が,この湿地復活と鉛除去にも使われるそうです.同じ場所で,アオスジアゲハ(青条揚羽,アゲハチョウ科)が弱ったクスノキ(樟または楠,クスノキ科)の周りを飛んでいるのを見つけました.そのクスノキの葉の裏に,蛾の卵が集団で産み付けられているのを見つけて観察しました.アオスジアゲハは,1つずつ卵を離して産みますが,ほかの蝶では,集団で卵を産み付ける種類もあるという説明もありました.このとき,ウラギンシジミ(裏銀小灰蝶,シジミチョウ科)が,先月のようにミネラル補給のために,参加者の周りをまとわりついて飛んでいました.すぐ近くにあったエノキ(榎,ニレ科)の若木が切られているのを見つけた女の子は,残念がっていました.

クスノキの葉に産み付けられた蛾の卵
クスノキの葉に産み付けられた蛾の卵

 里山の定義について質問があり,農業生産と関連した場所という説明がありました.なお,環境省の定義は以下のようです.
「里地里山とは,都市域と原生的自然との中間に位置し,様々な人間の働きかけを通じて環境が形成されてきた地域であり,集落をとりまく二次林と,それらと混在する農地,ため池,草原等で構成される地域概念」
→ 一般的に,主に二次林を里山,それに農地等を含めた地域を里地と呼ぶ場合が多いが,言葉の定義は必ずしも確定しておらず,ここでは全てを含む概念として里地里山と呼ぶ.(「日本の里地里山の調査分析について( 中間報告,環境省)」)

【外部リンク】日本の里地里山の調査・分析について(環境省)

 平和公園に入って,オタマジャクシ池の前で雄のキリギリス(螽斯,キリギリス科)を捕まえて,高校生に名前を知っているかという問いをした人がいました.バッタ(飛蝗)という回答がでましたが,キリギリスという回答はでませんでした.枝の先にネギ(葱)をつけてキリギリスを釣るという話もでました.キリギリスを,餌として鳥にやるときには,頭を切って与えるという説明もありました.噛み付くと離さないからだそうです.近くのコナラ(木楢,ブナ科)の葉の裏に,ホソバシャチホコ(細羽鯱,シャチホコガ科)の幼虫を見つけて観察しました.独特の複雑で美しい模様が背にありました.

ホソバシャチホコの幼虫
ホソバシャチホコの幼虫

 オタマジャクシ池の前の野原にクズ(葛,マメ科)が沢山茂っていたので,その大きな葉をとって皆でクズ鉄砲をしました.大きなクズの葉を,こぶしを横にした上に載せ,真ん中を押さえて空洞をつくり,上から別の手のひらで思いっきりたたくと,ポンという高い音がでるというものです.空洞を作らずに,葉を水平においたままでも音は出ましたが,よい音ではありませんでした.高校生たちは初めてやったようで,あまりよい音は出ず,よい音を出している小さな子供にやり方を教えてもらっていました.
 イチモンジセセリ(一文字?,セセリチョウ科)がサルトリイバラ(猿捕茨,ユリ科)にとまっているのを見つけて観察しました.翅の模様から,チャバネセセリ(茶羽?,セセリチョウ科)などと区別する方法の説明が蝶に詳しい参加者からありました.

クズ鉄砲 イチモンジセセリ
クズ鉄砲 イチモンジセセリ

 湿地に行き,オオシオカラトンボ(大塩辛蜻蛉,トンボ科)とシオカラトンボ(塩辛蜻蛉,トンボ科)を捕まえて,2つを並べてその違いを観察しました.オオシオカラの目は黒い色で,シオカラの目はエメラルド色でした.大きさの違いだけでなく,こんなに目の色が違うのを初めて知った人が多かったようです.シオカラのヤゴは,オオシオカラに比べて,きれいな水を必要とするそうです.
 溝の淵に約3cm長の比較的小さなミノガ(蓑蛾,ミノガ科)の蓑を2つ見つけました.1匹は,今まさに羽化しようとしていました.ただし,少し触ったら,引っ込んでしまいました.

シオカラトンボとオオシオカラトンボ ミノムシ
シオカラトンボとオオシオカラトンボ ミノムシ

 近くに,小さなピンクの花をつけたイボグサ(疣草,ツユクサ科)とアキノウナギツカミ(秋の鰻攫,タデ科)がありました.湿地には,多くのシラタマホシクサ(白玉星草,ホシクサ科)が,白い花をつけていました.小さなカノコガ(鹿子蛾,カノコガ科)がヒヨドリバナ(鵯花,キク科)の白い花にじっととまっていました.紫色の花をつけたサワギキョウ(沢桔梗,キキョウ科)も少しでしたがありました.ミズギボシ(水擬宝珠,ユリ科)も青白い花を足下で咲かせていました.高校生の参加者は,この時点で,暑さでかなりへたっていました.

イボグサ アキノウナギツカミ カノコガとヒヨドリバナ ミズギボシ
イボグサ アキノウナギツカミ カノコガとヒヨドリバナ ミズギボシ

 先月に感想会を行った所に行き,ハギ(萩,マメ科)とシラハギ(白萩,ハギ科,別名:シロハギ)を観察しました.ツクツクボウシが,どのように鳴いて,何回連続して鳴くかという議論がおきました.「オーシンツクツク」と鳴いて,最後に「ツクツクボウシ」と鳴くということで,最長32回続けて鳴いたことを確認した人がいました.また,オオカマキリ(大蟷螂,カマキリ科)を捕まえて,下翅が黒紫色であることを確認しました.
 ヤハズソウ(矢筈草,マメ科)が小さな紫色の花を咲かせていました.外来種のアオマツムシ(青松虫,コオロギ科)を捕まえて観察しました.うるさく街路樹で鳴いているのは,よく聞きますが,初めて実物を見た人が多くいました.共鳴器官もなく,背中をこするだけで,何故あんなに大きな音が出せるのだろうという感想がでました.そのとき,人間も歯ぎしりをする人は,他の人が寝られないほど大きな音を出すという話が出ました.

ハギの花 シラハギの花 オオカマキリの観察 アオマツムシ
ハギの花 シラハギの花 オオカマキリの観察 アオマツムシ

 モグラ穴とおぼしき穴が複数開いていましたが,はっきりとは,その正体は分かりませんでした.周辺では樹液の匂いを大変きつく感じました.カマキリ(蟷螂,カマキリ科)の卵嚢をとってきた人がおり,触ってみると,手に泡のようなものがついてしまいました.タマムシ(玉虫,タマムシ科)の1枚の翅を見つけた子供がいました.結局,終了時間がきてしまい,先月と同じこの場所で,感想会を行いました.

カマキリの卵嚢
カマキリの卵嚢

 感想として,まず,種々の花などの自然を楽しんだというものがでました.蝶の食草を再生させようという提案もありました.周辺の木でヤマガラ(山雀,シジュウカラ科)がしきりに鳴いていました.ここでも,ツクツクボウシが何回連続で鳴くかを数えて,32回まで数えた参加者がいました.感想会の周辺にきれいな丸い大きなスポンジケーキのようなキノコを見つけた子供もいました.

いろいろな昆虫や植物に出会い,にぎやかな観察会になりました.

キノコ 感想を言う子供 虫捕り
キノコ 感想を言う子供 虫捕り

観察項目:クスノキの葉についた蛾の卵,ウラギンシジミ,アオスジアゲハ,オニヤンマ,キリギリス,ホソバシャチホコ,ショウリョウバッタ,クズ鉄砲,イチモンジセセリ,オオシオカラトンボ,シオカラトンボ,オオカマキリ,イボグサ,アキノウナギツカミ,ミノムシ,ヒヨドリバナ,カノコガ,ケツユクサ,ミズギボシ,カキツバタ,サワギキョウ,シラタマホシクサ,ヒメタイコウチ,ハギ,シラハギ(シロハギ),ツクツクボウシ,クズ,ウメモドキ,ヤハズソウ,アオマツムシ,ジョロウグモ,タマムシの翅,モグラ穴,カマキリの卵嚢,アシナガバチ(概ね観察順)

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子

  この記事を PDF フォーマットで見る 記事を印刷する 記事をメールで送信

この記事の添付ファイル
ファイル名 掲載日 ヒット
ファイルをダウンロード 2008年9月度の観察記録
プリント用のPDFファイルです。
2008-10-13 632

ページ移動
良く読まれた記事 8月度の観察記録 10月度の観察記録 次の記事