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2008年 > 10月度の観察記録
10月度の観察記録
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 すじ雲(巻雲)はありましたが,おおむね晴れでした.少し小寒く,冬が忍び寄って来ている感じでした.街路樹のサクラ(桜,バラ科)やトウカエデ(唐楓,カエデ科)は,一部紅葉を開始していました.新池は,相変わらずスイレン(睡蓮,スイレン科)やオオカナダモ(大カナダ藻,トチカガミ科)などで水面がほとんど覆われていましたが,出水口の近くの水面に2羽のカルガモ(軽鴨,カモ科)が来ていました.近くには,2羽のハクセキレイ(白鶺鴒,セキレイ科)もいました.コサギ(小鷺,サギ科)も上空を1羽飛んでいました.スイレンは元気がなくなっていましたが,その中をコイ(鯉,コイ科)がもぞもぞ動いていました.周辺はエンマコオロギ(閻魔蟋蟀,コオロギ科)の鳴き声で一杯でしたが,モズの高鳴きも時折聞こえました.ムクゲ(木槿,アオイ科)やアベリア(スイカズラ科,別名:ハナゾノツクバネウツギ(花園衝羽根空木))の花はまだ残っていましたが,先月いたクマバチ(熊蜂,ミツバチ科)はもういませんでした.集合場所周辺のクワクサ(桑草,クワ科)が,約2mm大の小さな花を咲かせていました.また,ヒロハホウキギク(広葉箒菊,キク科)は,冠毛をもった種が球形になっていました.参加者は,小さな女の子1人と男の子2人を含んで37名でした.

ヒロハホウキギク

 先月と同じく自転車で来て,毛布にくるまって寒そうに寝ている男性にテーブルが占拠されていたので,集合はベンチで行いました.まず,先月の報告を見て,クスノキ(樟,クスノキ科)の葉の裏に密集して産卵された卵は,蛾の卵でなくカメムシ(椿象または亀虫,カメムシ科)などの卵だろうということになりました.蛾の幼虫は,卵から孵ったときに,その殻を食べてしまうそうで,今回の卵は,穴のあいたままで,殻を食べていないということでした.ホソバシャチホコ(細羽鯱,シャチホコガ科)の報告の写真を見て,緑のチョッキを着たような模様という感想がでました.
 今回,参加者によって持ち込まれたのは,ツマグロキチョウ(褄黒黄蝶,シロチョウ科)の食草で,そのサナギの脱皮殻の付いたカワラケツメイ(河原決明,マメ科)の2つの植え込みと,アケビ(通草,アケビ科)の3つの実でした.アケビは,自宅で実ったものを持って来られました.カワラケツメイは,平和公園や東山植物園の周辺にも,まだあるということでした.出来れば平和公園でもっと増やしたいとして,カワラケツメイの種も持って来られました.

カワラケツメイについたツマグロキチョウのサナギ殻 カワラケツメイの実 アケビの実

 平和公園に向けて出発して,最初にアサギマダラ(浅葱斑,タテハチョウ科)捕獲用のネットを里山の家で借りました.残念ながら,今回はアサギマダラには1頭も出会いませんでしたが,別の貴重なチョウの捕獲ができました.山側の道を行こうとして,入口前の草原で,野草の観察をしました.1m2くらいの範囲で,ヒメクグ(姫莎草,カヤツリグサ科),ホシアサガオ(星朝顔,ヒルガオ科),タカサブロウ(高三郎,キク科),ザクロソウ(石榴草,ザクロソウ科)などを見つけました.ヒメクグの茎の断面が三角形であることを触って確認しました.茎の先端に多数の小穂からなる球形の花穂の下には,大きな髭のような2枚の葉と小さな1枚の葉がついていました.帰化植物のホシアサガオは,5角形の約2cm径の淡紅紫色の花を咲かせていました.タカサブロウは,その名前の由来が話題になりました.別名をボクトソウ(墨斗草)と呼び,搾汁が黒色になり字が書けるというので,実際に茎を使って紙に文字を書いた参加者がいました.そんなに明瞭な文字にはなりませんでした.すぐ横のコナラ(木楢,ブナ科)にはドングリが沢山付いていました.孫に持って帰るためにドングリを集めている参加者もいました.

ヒメクグ ホシアサガオの花 タカサブロウで文字を書く コナラのドングリ

 焦げ茶色になった5cm長のコカマキリ(小蟷螂,カマキリ科)を捕まえて観察しました.前脚の縞模様が特徴的でした.チビタマムシ(ちび玉虫,タマムシ科)とオジロアシナガゾウムシ(尾白脚長象虫,ゾウムシ科)を捕まえた男の子に,それらを見せてもらいました.今回は,クモを観察する予定でしたが,数匹のジョロウグモ(女郎蜘蛛,アシナガグモ科)とナガコガネグモ(長黄金蜘蛛,コガネグモ科)を見つけただけでした.小径脇の樹木の葉に隠れるようにミツバアケビ(三葉通草または三葉木通,アケビ科)の実が2つなっているのを見つけました.

脚の模様が特徴のコカマキリ オジロアシナガゾウムシ

 葉の表面に毛があって葉柄がないコバノガマズミ(小葉莢迷,スイカズラ科)と葉の先端が尖っており表面に毛がなく,葉柄があるミヤマガマズミ(深山莢迷,スイカズラ科)が並んでいるのを見つけて,比較しながら観察しました.後で,ガマズミ(莢迷または鎌酸実,スイカズラ科)も見つけて葉の形の違いを観察しました.ガマズミの赤い実を食べて,まずいという声があがりました.実のなかで大きくて白いカビがはえたようなガマズミミケフシ(鎌酸実実毛五倍子)も観察しました.ガマズミミケフシタマバエ(鎌酸実実毛五倍子玉蠅,タマバエ科)が,虫こぶを作らせる原因だそうです.

   【外部リンク】マズミミケフシ(千葉県立中央博物館)

コバノガマズミ ミヤマガマズミ

舗装した小径から,また藪こぎをしてセキヤノアキチョウジ(関屋の秋丁子,シソ科)の青白い花を見に行きました.近くにアマチャヅル(甘茶蔓,ウリ科)が数株あり,その葉を皆で食べました.男の子が食べて,「甘苦い」という感想を出しました.赤い実を沢山つけたウメモドキ(梅擬,モチノキ科)もありましたが,この実は食べられないということでした.

セキヤノアキチョウジ

 ここから下りの藪こぎをして湿地に行きました.淡いピンクの花をつけた大変可憐なミゾソバ(溝蕎麦,タデ科)が一面にありました.沢山のニホンミツバチ(日本蜜蜂,ミツバチ科)が蜜を吸っていました.紫の花を付けたサワギキョウ(沢桔梗,キキョウ科)は先月より多くありました.また,黄色い花を咲かせたスイラン(水蘭,キク科)と白い球形の花を咲かせたシラタマホシクサ(白玉星草,ホシクサ科)が混在していました.白い花を付けたサワヒヨドリ(澤鵯,キク科)やニッポンイヌノヒゲ(日本犬髭,ホシクサ科)もありました.
 斜面にヤノネグサ(矢根草,タデ科)が淡いピンクの花を咲かせていました.アキノウナギツカミ(秋鰻攫,タデ科)とよく似ていましたが,葉の付け根が水平の形をしていました.
 斜面には赤い実をつけたウメモドキと濃紺の実をつけたサワフタギ(沢蓋木,ハイノキ科)が並んでありました.薮こぎをして斜面を登ったときに,マンリョウ(万両,ヤブコウジ科)の幼木があり,葉の裏を観察しました.
 斜面を登りきって,舗装道に出て,石垣の間から生えている沢山の小さな白い実をつけた大きなイタドリ(虎杖,タデ科)を観察しました.この実を食べた人もいましたが,まずかったようです.
 近くに白い釣り鐘状の残り花をつけたネジキ(捩木,ツツジ科)もありました.ネジキの根本には,2株のヒヨドリバナが白い花を咲かせていました.

ミゾソバとミツバチ スイランとシラタタマホシクサ ヤノネグサの花

 切り株の樹皮を剥がして,ウバタマコメツキ(烏羽玉米搗,コメツキムシ科)と白いアリ(蟻,アリ科)の幼虫を見つけました.ウバタマコメツキは男の子に渡されて,飛び跳ねるのを観察しようとしましたが,なかなか動きませんでした.男の子が下の方を持つと,上半身がぴくぴくと動きました.近くにトリノフンダマシ(鳥糞騙,コガネグモ科)の丸い卵嚢が1つだけありました.エンマコオロギとマメコガネ(豆黄金または豆金亀子,コガネムシ科)を観察ビンに入れて観察しました.
 このとき,大きな声で新発見のクロマダラソテツシジミ(黒斑蘇鉄蜆,シジミチョウ科)のメスがいるという声を聞いて,皆でとんでいきました.インドシナ半島にいる蝶で,最近沖縄へ進出して大発生したものですが,名古屋では初めて観察されたものであることが分かりました.普通のシジミチョウに似ていますが,模様が違っていました.アサギマダラのために用意したネットで捕獲して,皆びっくりしながら観察しました.後で新聞に投稿することになりました.

ウバタマコメツキ クロマダラソテツシジミ クロマダラソテツシジミ

 さらに,小径を進みミツバアケビの実が沢山ぶら下がっている場所に行きました.ウルシ(漆,ウルシ科)の木につるが巻いて10個ほどの実がありました.かぶれることを忘れて,皆で木を引っ張って取りました.あざやかな紫色の表皮のアケビの実がとれ,男の子は嬉しそうな顔をしていました.

ミツバアケビの実

 下りの藪こぎをして先月に感想会をした場所を目指しました.途中で,コウヤボウキ(高野箒,キク科)を数株見つけました.先端に花の蕾をつけたものもありました.竹は,弓矢を作る材料になるので,信長に禁止されたのではという推測がでましたが,「高野山には竹,梨,胡桃,桃などの竹木がありませんでした.利潤を得る行為を戒めるという意味で,商品作物の栽培が禁じられていたのです.それで竹箒が作れず,代わりにこの木の枝を束ねて箒を作ったことから「高野箒」の名が付いたといわれています.」という記述がWWWにありました.

  【外部リンク】コウヤボウキ(とんび岩通信)

 結局,3ヶ月続けて同じ場所で感想会を開くことになりました.すぐ横には,カラタチ(枸橘,ミカン科)とカキノキ(柿の木,カキノキ科)があり,両方とも実を付けていました.ルリタテハ(瑠璃立羽,タテハチョウ科)が,鳥につつかれたカキノキの実の果汁を吸っていました.カラタチの実を見て,確かにミカン科であることを納得しました.

カラタチの実

 その場所で,アケビの天ぷらと,それに付けて食べる肉みそが,ある参加者から振る舞われました.リンゴとナシの果物も出ましたが,2種類の味付けをしたミルワーム(mealworm,ゴミムシダマシ科)の素揚げが出たときには参加者は,びっくりして大騒ぎになりました.参加者の中には,「虫の味」(八坂書房)と「楽しい昆虫料理」(ビジネス社)という本を持っている人がおり,その中でミルワームは9位にランクされているという報告がありました.周辺で,トリフのようなホコリタケ(埃茸,ホコリタケ科)を10個くらい集めた参加者もいました.

 いろいろな秋の実りを食べた稔り多い観察会になりました.

アケビの皮のテンプラ

観察項目:アケビの実,カワラケツメイ,ツマグロキチョウのさなぎの殻,ホシアサガオ,タカサブロウ,チョウジタデ,ザクロソウ,トキワハゼ,イヌガラシ,ヒメクグ,カヤツリグサ,ジョロウグモ,コカマキリ,ミヤマガマズミ,コバノガマズミ,ガマズミ,ガマズミミケフシ,ヤノネグサ,ミゾソバ,ニホンミツバチ,サワヒヨドリ,スイラン,シラタマホシクサ,シロサワギク,ニッポンイヌノヒゲ,セキヤノアキチョウジ,アマチャヅル,イタドリ,ネジキ,ウバタマコメツキ,トリノフンダマシの卵嚢,シャシャンボ,コウヤボウキ,アケビ,チビタマムシ,オジロアシナガゾウムシ,イナゴ,ナガコガネグモ,アオマツムシ,クロマダラソテツシジミ,サワギキョウ,ツマグロヒョウモン,ルリタテハ,ホコリタケ(概ね観察順)

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子

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