雨を心配しましたが,ずっとどんよりとした曇りでした.きれいな写真は撮れませんでしたが,大変歩きやすい観察会でした.街路樹のサクラ(桜,バラ科)は,葉を落とした木と,きれいに紅葉や黄葉した木がありました.トウカエデ(唐楓,カエデ科)はもっと極端な個体差があり,真っ赤にきれいに紅葉した木とまだ緑のままの木が並んでいました.センダン(栴檀,センダン科)の実は,まだ表面に皺はありませんでしたが淡黄色くなっていました.新池には,カイツブリ(鳰,カイツブリ科)が2羽とコガモ(小鴨,カモ科)が8羽来ていました.コガモは,しきりに藻を食べていました.モズ(百舌鳥,モズ科)とセグロセキレイ(背黒鶺鴒,セキレイ科)の鳴き声がしました.弱々しいコオロギの鳴き声もしました.集合場所のフェンスの外側にノコンギク(野紺菊,キク科)が小さな白い花を咲かせていました.参加者は,ボーイスカウト風(女性も入っていた)の団体さんも来て,59名と大人数になり,その内,2歳くらいから中学生までの子供は16名でした.
まず,先月の記録を皆で見ました.カワラケツメイ(河原決明,マメ科)の近親にアレチケツメイ(荒地決明,マメ科)があり,本来はアレチカワラケツメイという名にすべきで,区別はDNAによらなければ分からないという話がありました.
スダジイ(すだ椎,ブナ科)の煎ったドングリを沢山持ってこられたので,皆で少しずつ分けて食べました.「そんなにうまくない」という感想と「うまい」という感想の両方がでました.ツブラジイ(円椎,ブナ科)の5mm大の小さな丸い2つのドングリも比較のため並べました.マテバシイ(馬刀葉椎または全手葉椎,ブナ科)の大きなドングリを観察して,このドングリは2年がかりで実るという話があり,今回は1年ものを後で観察することにしました.東京などでは,クヌギ(櫟,椚または橡,ブナ科コナラ属)が代表格のドングリですが,名古屋にはクヌギはなく,代わりにアベマキ(阿部槙または?,ブナ科)のドングリが代表格であるという説明がありました.見分け方は,アベマキのドングリは先が尖っているということでした.葉を比べられれば,アベマキは葉の裏に毛があるので,すぐに分かります.マテバシイとコナラ(木楢,ブナ科)のドングリの見分け方も話題になり,後で確認することにしました.もちろん,食べてみればすぐに分かりますが.小さな子供達は,ひっつきむしが付くのもかまわず,集合場所の草の上を転げ回っていました.
10時15分になって,やっと持ち寄ったものの観察が終わり出発しました.今回は,参加人数が多くて非常にゆっくり歩いたため,観察項目が少なくなりました. いつもの農道から,平和公園に入りました.来月から,ここからは入れないというお知らせがありました.鉛除去のため工事が始まるそうです.南と北の尾根からは平和公園に入れるそうです.ここで,ある参加者が小学校でドングリを使った工作をしているとクリシギゾウムシ(栗鷸象虫,ゾウムシ科)の幼虫が8匹も出てきて困ったという話がありました.クリシギゾウムシの幼虫がドングリの中でかりかりと囓る音がするとう話もありました.小学校の教諭である私の家内によると,ドングリで工作をするときは,かわいそうですが事前にゆでてから使うとよいそうです.
湿地に着いて,ナンキンハゼ(南京黄櫨,トウダイグサ科)の紅葉と白い実を見ました.15年ぐらい前に生え始めたときに切ろうとして,紅葉がきれいだとの理由で残したものが大きくなった木と,その種で増えた小さな木の2本のナンキンハゼがありました.あんなに沢山の実があるのに,1本しか増えないということに驚きがありました.枝から実をとって観察しました.硬い実がはじけて,中の白い種が出ていました.とって食べましたが,白い種皮の下は硬い殻で,中に子葉が入っていました.小さくかみ砕いた殻が固く口の中に広がって,中の子葉の味はよくわかりませんでした.香ばしくて,クルミ(胡桃,クルミ科)のようだという参加者もいました.キジバト(雉鳩,ハト科)が大好きな実ですが,鳥達は種の周辺の白い蝋質のみを食べ,種は食べないそうです.後で種子の油は有毒だという記述を発見して驚きました.和蝋燭のろうはこの殻の表面の白い種皮の部分から作るそうです.
湿地からキラニン広場に向かうアスファルト舗装された道端で,ウンヌケ(牛の毛のなまったもの,イネ科)とススキ(薄,イネ科)が並んでいるところで,両者の違いを観察しました.ススキに似た最近少なくなったウンヌケは,元々中国大陸からインドにかけて分布しており,日本と大陸が陸地でつながっていた証拠ともいえる植物だそうです.ウンヌケの葉は,表側が白く,普通の植物の逆でした.ウンヌケの穂の数はススキに比べて少ないようでした.葉がねじれて裏で光合成をしているようでした.近くに,きれいに紅葉したヌルデ(白膠木,ウルシ科)があり,この時期のヌルデは,そんなにはかぶれないと言って平気で触る参加者がいました.
キラニン広場に行き,シャシャンボ(小小坊,ツツジ科)の実とマツ(松,マツ科)の実をとって食べました.シャシャンボの濃紺の実はそれ程甘くなく,酸っぱいといった方がよいくらいでした.次回の芋煮会用にジャムを作りたい人がおり,皆で実をビニール袋に集めました.マツの実は,開いたマツボックリでは既に種は飛んでしまっているので,硬い殻のものをとって,中から小さな種を取りました.食べても味が分からないほどの大きさでした.種を数個とって女の子が飛ばすと,くるくると回りながら落ちていきました.カエデの種と同じ様相でした.開いた松かさは,水につける元に戻るということでした.つまみに出てくるマツの種はもっと大きいですが,それは別種の松のものだろうということになりました.
ここで,終了時間になってしまい多少風で寒かったですが,キラニン広場で感想会を行いました.近くでとってきたウバメガシ(姥目樫または馬目樫,ブナ科)のドングリのついた枝が回覧されました.ゾウムシが出てきた穴のあるドングリも回覧されました.2人の男の子は,お弁当を食べた後で,シャシャンボの実を取りに行って,昔の子供のように口の回りを真っ黒にして食べていました.食べ過ぎてお腹を壊さないか心配しました.
観察項目:ムベの実,スダジイのドングリ,マテバシイのドングリ,ツブラジイのドングリ,カラスウリの実,オオウラジロの実,マンジュサゲ,キクイモ,アベマキのドングリ,オオオナモミ,ナンキンハゼ,イナゴ,ジュズダマ,ヨウシュヤマゴボウ,ウンヌケ,ススキ,イソノキ,シャシャンボ,マツの実,クズの実,コナラ,ウバメガシ,ヨメナ(概ね観察順) |
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2008年11月度の観察記録
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| 2009-1-18 | 599 | |
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