風も弱く芋煮会びよりの晴れでした.例年に比べれば,それ程寒くなく初冬というより晩秋の感じでした.街路のオシロイバナ(御白粉花,オシロイバナ科)も種がとっくにできて落ちていましたが,まだ花のつぼみもありました.オッタチカタバミ(おっ立傍食,カタバミ科)やノコンギク(野紺菊,キク科)も花を咲かせていました.ユキヤナギ(雪柳,バラ科)は先月と同じく,点々と季節外れの花を咲かせていました.センダン(栴檀,センダン科)は,すっかり葉が落ちて実だけが目立ちました.新池のスイレン(睡蓮,スイレン科)は,水面からほぼなくなり,16羽のヒドリガモ(緋鳥鴨,カモ科)が水面を自由に行き来して,逆立ちをしながら餌をとっていました.オオバン(大鷭,クイナ科)も1羽だけヒドリガモと一緒にいました.新池の土手ではウグイス(鶯,ウグイス科)が地鳴きをしていました.
参加者は,出発するときは,子供7名と大人32名でした.その後,順次増えて,芋煮を食べたときは,畑作業をしていた人たちも呼んだので100名近くになりました.
まず,先月の観察記録を見ました.ジョウビタキ(上鶲,ヒタキ科)の鳴き声を「ヒィーヒィー」と書きましたが,「ヒッ,ヒッ,ヒッ」と聞こえるという声があがりました.ルリビタキ(瑠璃鶲,ツグミ科)も似たような鳴き方ですが,ジョウビタキの方がきつい鳴き方として区別します.カブトムシ(兜虫,コバネムシ科)の幼虫は,頭かお尻のどちらから潜るかという問いがでました.12月10日の皆既月食が話題になりました.名古屋はきれいな皆既月食が見られたそうですが,曇っていたので早めに寝てしまった人がいて残念がっていました.津島市では直前までは見られましたが,最後の皆既になるところで雲に阻まれました.次に国内で観測できる皆既月食は,3年後の平成26年10月というアナウンスがありました.
次に,参加者が持ってきたものを観察しました.最初に,トカドヘチマ(十角糸瓜,ウリ科) が紹介されました.
角筋が10あるかどうか,子供達が数えて確認しました.果肉は食べられるそうです.10cm大のカリン(花梨,バラ科)の実と3cm大のプラタナス(Platanus,スズカケノキ科)の実を次に見ました.フウセンカズラ(風船葛,ムクロジ科)の実の袋を破いて中の5mm大の種を観察しました.白いハート型の模様があり,猿の顔にも見えました.アマチャズル(甘茶蔓,ウリ科)の丸い黒い実に白い線の入った大目玉が付いていました.へたの跡だという説明がありました.3〜5cm大の小さなザクロ(柘榴,ザクロ科)の実も2つ見ました.不思議な形のホコリタケ(埃茸,ホコリタケ科)を見ました.もう触っても胞子は出ませんでした.胞子が出る前は,バター炒めにするとおいしいそうです.説明を聞いているときに,ハクセキレイ(白鶺鴒,セキレイ科)が2羽,鳴きながら頭上を通り過ぎました.
スズメバチを持ってこられた人がいて,種類を問われました.モンスズメバチ(紋雀蜂,スズメバチ科)ということになりましたが,キイロスズメバチ(黄色雀蜂,スズメバチ科)などとの区別はその特徴を注意深く見る必要があるようです.
【外部リンク】スズメバチの成虫8種の見分け方(都市のスズメバチ)
【外部リンク】福島のハチ駆除はスズメバチ博士におまかせ
アオツヅラフジ(青葛藤,ツヅラフジ科)の実と間違えて,ヘクソカズラ(屁糞蔓,アカネ科)の実を持ってきた人がいました.里山の家の中から,アオツヅラフジを持ち出して,中の種を観察しました.よくアンモナイトのようだと言いますが,図鑑には,英名がsnailseedまたはmoonseedと書いてあり,カタツムリの形というのがよいという説明がありました.「ツヅラ(葛籠)」の意味を問う人がいました.元々は,ツヅラフジのつるで編んだ蓋つきの籠の一種であり,後に竹を使って網代に(縦横に組み合わせて)編んだ四角い衣装箱をさして呼ぶことが一般的になったようです.「つづらおり」のつづらという人もいましたが,「つづれ織り」はありますが,「つづら織り」はなく,よく使う「つづら折り」とは山岳用語で「九十九折り」などとも書かれるように,幾度も折れ曲がって登る坂道をいい,「つづら(葛籠)」とは関係ないようです.
子供が鞄にブラジル産の玉虫の入ったペンダントをつけていました.名和昆虫博物館で買ってきたという事でした. 紙に書かれた芋煮会で準備すべきリストを確認しながら倉庫から道具を出して,リヤカーに積んで出発しました.先日収穫したサツマイモ(薩摩芋,ヒルガオ科)も載せました.林の中からモズの?睫弔?が聞こえました.途中の炭焼広場で畑作業をしている人達から,堀ったばかりの新ジャガをもらいました.
芋煮会の場所に着いて,作業を開始しました.新ジャガをまず洗いました.パン焼きのために竹を子供達が親と一緒に取りにいきました.また,例年使っているU字溝を使って,芋煮鍋を置きました.直ぐ近くで,スコップで穴を掘り,パン焼きのために枯木などを燃やし,熾き作りを始めました.準備をする人達がたくさんいたので,昨年と同じように,途中でもう1人の参加者と周辺を歩いて12月の植物などを観察しながら写真を撮りました.
まず,ヤブツバキ(藪椿,ツバキ科)の白い花とその花芽を見ました.雄株のスギ(杉,スギ科)がたくさんの黄色い花粉を付けているのを見て,鼻がむずむずしました.すぐ横のアベマキ(阿部槇,ブナ科)は,枯れた葉が落ちずについたままでした.
クロガネモチ(黒鉄黐,モチノキ科)は赤い実をびっしりと付けていました.ヤマハゼ(山櫨,ウルシ科)は,独特のかたちで実をたれ下げていました.イロハモミジ(伊呂波椛,カエデ科)は,やっと真っ赤に紅葉していました.
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クロガネモチの実 |
ヤマハゼの実 |
紅葉したイロハモミジ |
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東の方に向かって歩き,奥池とは違ったパンパスグラス(pampas grass,イネ科)の白い穂を見ました.トウネズミモチ(唐鼠餅,モクセイ科)の実は遠くから見るとシャシャンボ(小小ん坊,ツツジ科)のように見えました.すぐ横のヒサカキ(非榊,ツバキ科)も小さな黒い実をたくさん付けていました.人間は苦くて食べられませんが,メジロ(目白,メジロ科)は好んで食べるようです.
近くのモッコク(木斛,ツバキ科)は既に赤い実は付いていませんでしたが,別の日当たりの悪い場所のモッコクには多くの赤い実が付いていました.
ナラ枯れの大きなアベマキにカワラタケ(瓦茸,サルノコシカケ科)がたくさんついていて,もうじき倒れそうでした.足下のナキリスゲ(菜切菅,カヤツリグサ科)には花が咲き,上部に短い雄花群があり,その下に雌花群がありました.コウヤボウキ(高野帚、キク科)は時期が既に遅く果実と冠毛もわずかしか残っていませんでした.
芋煮会場に戻って 周辺を観察しました.まず,シャシャンボについた毛虫を観察しました.蛾の幼虫ですが,名前をいえる人はいませんでした.イボタノキ(水蝋の木,モクセイ科)の濃紺の実を食べた参加者がいましたが,ただ苦いだけという感想が出ました.
芋煮の鍋のふたをあけて灰汁の泡を取りました.豚肉を切らずにパックから直接入れました.子供達がうちわであおって火力を上げてくれました.その後,ゴボウ(牛蒡,キク科),コンニャク(蒟蒻,サトイモ科),豆腐を順番に入れ,パックのお酒をいれてからネギ(葱,ネギ科)を入れ,醤油で味付けしました.できあがって,最初に私が試食しましたが,薄味ですが大変よい味でした.七味唐辛子を入れて食べた人も多くいました.残念ながら,ゆずを持ってきた人はいませんでした.炭焼広場の畑作業の人たちも呼んで,芋煮を食べたため,最終的には芋煮の鍋が空になりました.
熾き作りが進んだので,その上にサツマイモと新ジャガを載せました.大きなサツマイモは薄く切ってのせました.その上に燠きをさらにかぶせました.芋煮のU字溝の中の燠きもとってきて載せました.
さらにその上にスダジイ(すだ椎,ブナ科)のどんぐりを入れたフライパンを載せて,ドングリを煎りました.すこしたつと栗を焼いた時と同じようなよいにおいがしてきました.皆で分けて食べ始めましたが,ドングリは手のひらに載せても大変熱く,少しやけどをしてしまいました.いそいで,水の中に手を入れて冷やしました.
シャシャンボジャムを持ってきた人が2人いたので,焼けたパンやクラッカーに乗せて食べました.砂糖をシャシャンボの7割入れたものと,もっと少ない砂糖のジャムがありましたが,どちらもおいしいものでした.子供たちが寄ってきて,競って食べました. 竹にパン生地を巻いて子供達がパンを焼きましたが,真っ黒にしてしまった子供もいました.遠火でじっくりと焼くのがこつのようでした.
おいしい大根の漬け物を持ってきた人もいました.残念ながら買ってきたものでした.リンゴ(林檎,バラ科)をむいて持ってきた人もいました.多少,酸化して茶色くなっていましたが,味はすこぶるよいものでした.レンコンチップも大変人気でした.
拾ってきた銀杏をはぜないように歯で殻を割ってから,熾きの上で煎って食べました.
この後,時間を見計らって熾きの中からジャガイモとサツマイモを取り出しました.アルミ箔を使わないので表面は黒くなっていましたが,子供達は競って食べていました.
すぐ横で,アオツヅラフジ,クズ(葛,マメ科),オニドコロ(鬼野老,ヤマイモ科)の蔓を取ってリースを作る参加者がいました.ナンテン(南天,メギ科)の赤い実をさらに巻きつけていた人もいました.
今回の食材の分担金は,大人200円,子供100円でした.畑仕事の人は無料でした.
火の周りで感想会をしました.子供達は集まってせせらぎの近くで遊んでおり,甲高い遊ぶ声が大変心地よく聞こえました.まず,準備していただいた方への感謝の言葉がでました.自然の恵みをたくさんもらい若返ったという感想もでました.半日楽しんで,遊ぶ喜びを知ったという感想もありました.1年にこれしか参加しない人も多くいましたが,来年も来たいということでした.周辺では,コゲラ(小啄木鳥,キツツキ科)の鳴き声がしました.放射線測定器を持ってきた参加者がおり,0.06マイクロシーベルト/時という測定値を知りました.通常の自然放射線量でした.参加者全員が満足した大変楽しい芋煮会になりました.
帰りに,大坂池で5羽のコガモ(小鴨,カモ科)が来ているのを見ました.
観察項目:トカドヘチマ,カリンの実,プラタナスの実,フウセンカズラの実,アマチャズルの実,ザクロの実,ホコリタケ,モンスズメバチ,アオツヅラフジの実,ヘクソカズラの実,ヤブツバキ,アベマキ,ヤマハゼ,イロハモミジ,パンパスグラス,トウネズミモチ,モッコク,カワラタケ,ナキリスゲ,コウヤボウキ,シャシャンボについた毛虫,イボタノキ,芋煮(サトイモ,ゴボウ,コンニャク,トウフ,ネギ,酒,醤油),ジャガイモ,サツマイモ,スダジイのドングリ,シャシャンボジャム,大根の漬物,リンゴ,レンコンチップ,銀杏,クズ,オニドコロ,ナンテン(概ね観察順)
文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子
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