筋雲のある秋晴れで,気持ちの良い日になりました.厚着のまま歩くと,少し汗が出るくらいでした.最近の異常な気温変化で,ユキヤナギ(雪柳,バラ科)が枝の先端にまばらに白い小さな花を咲かせていました.街路樹のトウカエデ(唐楓,カエデ科)は,個体差はありますが,見事な紅葉をしていました,スイレン(睡蓮,スイレン科)の勢いがなくなった新池の真ん中でアオサギ(青鷺,サギ科)が一羽,しきりに餌を捕っていました.新池の端の水面ではヒドリガモ(緋鳥鴨,カモ科)の雌雄がゆったりと浮いていました.また,スイレンの遮光実験場の近くでバンが3羽,頭を水中に突っ込んで餌をとっていました.土手のセンダン(栴檀,センダン科)の実は,薄黄みがかかったクリーム色になってきていました.参加者は,季節のよい11月としては少なく,子供4名と大人20名でした.
集合場所の里山の家の屋根の上を1羽のハクセキレイ(白鶺鴒,セキレイ科)が鳴きながら,独特の飛び方をしているときに観察会が開始されました.まず,先月の報告を皆で見ました.先月のフジ(藤,マメ科)の実を持って帰った人から,室内で実が割れて種が飛び出しているという報告がありました.関連してINAXギャラリーの「種子のデザイン」の紹介がありました.また,先月マーキングしたアサギマダラ(浅葱斑,タテハチョウ科)が3日後に内海で再捕獲されマーキングされたという報告もありました.約3日で70km移動したことになります.他の例では,1日で100km以上の長距離記録もあるそうです.2ヶ月で函館から下関という記録もあるそうです.この報告をしているときにカエル池の方向から,ジョウビタキ(尉鶲または常鶲,ヒタキ科)のヒィーヒィーという鳴き声がしました.
次に,参加者が持ってきた5cm大の食い違い石を観察しました,
中央構造線南設楽鳳来町で,昔取ってきたものだそうです.断層によって,石がせん断で破壊され,その後そのまま膠着した石でした.もちろん今は採取禁止だそうです.次に,参加者の持ってきたアレチウリ(荒れ地瓜,ウリ科)を観察しました.毛のついた実がついていました.特定外来種に指定されているものです.
キジバト(雉鳩,ハト科)の繁殖期に関する質問がでました.ある樹木周辺の整備をしようとして,キジバトがどかないので,繁殖活動をしているのではということでした.ここでは,回答が出ませんでしたが,ウェブで調べると2月から11月の長きにわたって繁殖するそうです.もちろん,春に繁殖する例が多いそうですが,虫や木の実を直接雛に与えるのではなく,そ嚢(そのう)で乳をつくり、口から吐き出してヒナに与えるので,このような長い期間の繁殖が可能になっているようです.
【外部リンク】キジバトはなぜ、いつでも産卵できるのか(Hiroyuki Uchiyama動物探検ワールド)
この後,複数の絵葉書などを入れるポケット付きの透明なビニールの壁掛けに枯葉を入れて持ってきた参加者がいました.さっそく,紙に葉の樹木名を書いて中に入れました.リョウブ(令法,リョウブ科),アカメガシワ(赤芽柏,トウダイグサ科),サクラ(桜,バラ科),ハンノキ(榛の木,カバノキ科),イチョウ(銀杏,イチョウ科),ヤマナラシ(山鳴らし,ヤナギ科),ナンキンハゼ(南京黄櫨,トウダイグサ科),ツタ(蔦,ブドウ科),アベマキ(阿部槇,ブナ科),コナラ(木楢,ブナ科)そしてトウカエデ(唐楓,カエデ科)の葉でした.今回の観察会で紅(黄)葉した木の葉を集めて,新しい壁掛けを作ることにして10:05に出発しました.
大坂池のすぐ東のスモモ池で1羽のアオサギが歩きながらザリガニをとっていました.池の横で,探鳥会の人が写真を撮っていました.
フィールドスコープに取り付けたデジカメにはベニマシコ(紅猿子,アトリ科)が写っていました.このとき,急に飛び立った小鳥がいて,最初,モズ(百舌鳥,モズ科)かと思いましたが,木のてっぺんにとまった姿でホオジロ(頬白,ホオジロ科)だと分かりました.
少し東に進んで,マメガキ(豆柿,カキノキ科)の数cm径の実が,鈴なりになっていたので,数人の参加者がとって食べました.最初は,甘いと言っていたのですが,後味が非常に渋いという感想になりました.マメガキの奥の林の中からモズの?睫弔?がしました.カラスウリ(烏瓜,ウリ科)の赤い実を見つけて,草はらに分け入って取ってきて,中の種を観察しました.種をなめて付いている果肉を取り除きました.甘いという感想がでました.種の形は,見る向きによって大黒様やカマキリ(蟷螂,カマキリ科)の頭などに似て見えるという感想が出ました.お金がたまるという説に従って,種を財布に入れて持ち帰った参加者が数名いました.小銭しかたまらないと言う参加者もいました.近くで赤い実をつけたニシキギ(錦木,ニシキギ科)の小枝を採取した人もいました.
葉が全て落ちて赤い実だけが鈴なりになったウメモドキ(梅擬,モチノキ科)が小径の脇にありました.その奥の方には,赤い実をつけたナンテン(南天,メギ科)もありました.
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スモモ池のアオサギ |
マメガキ |
カラスウリの種 |
ニシキギの実 |
ここで,背に白い斑点のあるカメムシ(亀虫,カメムシ科)を捕まえた人がいて,皆で観察しました.その後,水田の近くの紅葉し始めたナンキンハゼを見に行きました.白い木蝋で覆われた5mm大の小さな種もできていました.この実は,キジバトなどが好んで食べますが,人間には毒と言われています.それでも食べてみた人も多くいました,胡桃の味がするという感想がでました.
水田近くの木の幹の下方に大きなスズメバチ(雀蜂,スズメバチ科)が1匹とまっていました.急に飛び立ったとき,皆動かないでやりすごしました.
水田にレンゲソウ(蓮華草,マメ科)の種を蒔いたそうで,刈り取られた水田の泥の上に小さな新芽がたくさん出ていました.
さらに東に向かい,カキノキ(柿の木,カキノキ科)を見つけて,黄葉した葉を皆で集めました.紅葉した葉はほんとんどなく,下に落ちたごく一部の葉だけが紅葉していました.どの葉も黒い点々がついており,葉自体はきれいでないという人もいて,柿の葉寿司に使えるようなものはありませんでした.白い花が咲いたような数本のシンジュ(神樹,ニガキ科,別名:ニワウルシ)を見て,何だろうという参加者がいました.シンジュの白い翼果でした.その近くの名前が不明とされていた樹木は,葉がつるつるなので,ハゼノキ(黄櫨または櫨木,ウルシ科)だろういうことになりました.よく似たヤマハゼ(山櫨,ウルシ科)の葉は表面がざらざらだそうです.2本あるイロハモミジ(伊呂波椛,カエデ科)はどちらも木の先端の葉が少し赤くなっているだけで,紅葉とはほど遠い状況でした.
ここで,ヤマノイモ(山の芋,ヤマノイモ科)の蔓を見つけてムカゴ(零余子)を探しました.既に時期的に遅いのか,あるいは誰かに既にとられてしまっていたのか,少しだけしか見つかりませんでした.
生で食べて,おいしいという感想が出ました.
いつも観察するカラタチ(枳,ミカン科)を見ましたが,黄色い実はわずかしか残っていませんでした.直ぐ横のウメモドキが多くの赤い実を付けていましたが,このウメモドキには葉もまだたくさんついていました.子供森造りの会がアベマキとコナラを植えた場所で,バケツの中の腐葉土の下にいるカブトムシ(甲虫または兜虫,コガネムシ科)の幼虫を見せてもらいました.カブトムシの幼虫を初めて見る参加者もいました.子供達は大変喜んで,触らせると,「モチのように柔らかい」とか「ひんやりしている」という感想がでました.幼虫にとって人間の体温は,やけどするような状態であるという話もでました.小ぶりなのが雌で,大きいのが雄という説明がありました.幼虫の胴体の横にある気門を指さして,ここに牛乳を垂らすと死んでしまうという説明もありました.このとき,ちょうど1匹の幼虫がうんちをしました.1cm長くらいの細長いチョコレートのような糞でした.どちらが頭かと言う質問に子供達は,一斉に黒い点がある方と答えていました.取り出した5つの幼虫を腐葉土の上に置いて,腐葉土の中に潜る様子を観察しました.個体差があり,直ぐに潜った幼虫と死んだふりをしてじっとしていて,潜るまでに相当時間が必要な幼虫もいました.
奥池にいく途中で,ハクサンボク(白山木,スイカズラ科)の濃い紫色の葉と赤い実を見ました.常緑ですが,冬はこのような色の葉の色になります.奥池は池干しされていましたが,しみ出た水が少しだけありました.池干しでウシガエル(牛蛙,アカゲル科)が10匹駆除されたそうです.オタマジャクシはいなかったので,親になってからどこかから移ってきたようです.アメリカザリガニ(亜米利加喇蛄,アメリカザリガニ科)も40数匹見つかり,大半を食べたという報告がありました.ヒメダカ(緋目高,メダカ科)も駆除されたようです.
池の中にある大きなアカメヤナギ(赤芽柳,ヤナギ科,別名:マルバヤナギ)の幹の数カ所にヒラタケ(平茸,ヒラタケ科)がついていました.1人の男の子が木に登って取りにいきました.両手に余るほどの大きさのヒラタケを幹からとって,岸にいる大人に投げて渡そうとしましたが,水の中に落ちてしまいました.その大人も,落ちたヒラタケを拾おうとして岸から水の中に落ちてしまいました.男の子は,さらに上の方のヒラタケを取りに行って,今度は別の大人が木に登って受け取りに行きました.とったヒラタケは,ほしい人で分けて持ち帰りました.大味なので炊き込みご飯はおいしくなく,バター炒めにするとよいそうです.
パンパスグラス(Pampas Grass,イネ科)横の数本のモチノキ(黐木,モチノキ科)に1cm径の比較的大きな赤い実がたくさん付いていました.周辺では,エンマコオロギ(閻魔蟋蟀,コオロギ科)が鳴いていました.オオバヤシャブキ(大葉夜叉五倍子,カバノキ科)には濃緑の冬芽がついていました.木の下でフユノハナワラビ(冬の花蕨,ハナヤスリ科)が黄色の胞子を付けていました.
ここから,かなり急な斜面を藪こぎして,キラニン広場まで行きました.そこでまず,ヌルデ(白膠木,ウルシ科)の実を食べました.
実の表面の白い塩のようなリンゴ酸カルシウムは,なめると塩辛いという感想がでました.
キラニン広場のシャシャンボ(小小ん坊,ツツジ科)の実を皆で集めてビニール袋に入れました.ジャムにして,来月の芋煮会で振る舞うことになりました.砂糖は,シャシャンボの実と同量を入れるとよいそうです.
サルマメ(猿豆,ユリ科)の赤い実が地面近くにできているのも観察しました.また,周辺に数株のタカサゴユリ(高砂百合,ユリ科)の実ができていて,1株だけアスファルトの上に倒れて種がいっぱいこぼれていました.
里山の家に向かって歩き,途中で数本のウバメガシ(姥目樫,ブナ科)がドングリを付けているのを観察しました.キチョウ(黄蝶,シロチョウ科)が2頭,その回りで飛んでいました.
12:05に里山の家へ着いて,中で感想会をしました.今回は,秋の実を皆で食べましたが,「食べる」は「神から賜る」から来たという説明をした参加者がいました.また,ソヨゴ(冬青,モチノキ科)の実を食べて,非常にえぐいことを実感したという感想も出ました.感想会の最中にノートに小さな尺取り虫を発見して子供達に見せました.
多くの人が秋の実りを実感した,気持ちのよい観察会になりました.
観察項目:食い違い石,アレチウリ,アオサギ,ホオジロ,カラスウリ,ニシキギ,ウメモドキ,ナンテン,ハゼノキ,ナンキンハゼ,レンゲソウの芽生え,モクレンの葉,カキノキの葉,イロハモミジの葉,シンジュ,スズメバチ,カラタチ,ヤマノイモのムカゴ,カブトムシの幼虫,ヒラタケ,モチノキ,オオバヤシャブシ,アレチヌスビトハギ,ヌルデ,ハゼノキ,シャシャンボ,シャクトリムシ,ウバメガシ,アオハダ,タカサゴユリ,テントウムシの幼虫(概ね観察順)
文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子
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