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2011年 > 10月度の観察記録
10月度の観察記録
2011年10月度の観察記録です。

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朝家を出るときに少し寒かったので,重ね着をしましたが,平和公園では天気がよく陽差しに当たると少し汗ばみ,上着を脱ぐ程でした.しかし,既に秋の様相で,街路の桜の葉はかなり落ちていました.また,水鳥が来ていない新池の水面を覆っていたスイレン(睡蓮,スイレン科)も勢いをなくしていました.周辺には,ヒヨドリ(鵯,ヒヨドリ科),ムクドリ(椋鳥,ムクドリ科),ドバト(土鳩または堂鳩,ハト科),スズメ(雀,スズメ科),カラス(烏,カラス科),コゲラ(小啄木鳥,キツツキ科)などの標準種ばかりでした.先月たくさんあったフェンスに巻きついたノアズキ(野小豆,マメ科)の花も数個しか咲いていませんでした.ムクゲ(木槿,アオイ科)の花もすっかり落ちて,根元のヒガンバナ(彼岸花,ヒガンバナ科)の花は枯れて無残な姿でした.参加者は,子供6名と大人26名でした.

気持ちがよいので,里山の家の前に縁台を出して,その周りで集合しました.まず,桜の園から拾ってきたダイオウショウ(大王松,マツ科)の数個の大きな松かさを観察しました.風で枝が折れて,一緒に落ちた松かさでした.松かさの間から種を取り出して観察しました.まさに裸子植物で,松かさは被子植物の果肉部分に相当するという説明がありました.最近は,赤松や黒松の交雑種のアイグロマツ(間黒松,マツ科)が多いそうです.そのため,見ただけでは松の種類は判断しにくいそうです.アイグロマツは,松枯れの原因であるマツノザイセンチュウ(松材線虫,アフェレンコイデス科)に強いという説明もありました.葉が2本組と3本組が混在する松を見たという参加者もいました.

ダイオウショウの松かさ

次に参加者が持ってきた3種のドングリを観察しました.まず,スダジイ(すだ椎,ブナ科)のドングリを割って皆で食べました.煎らなくても天日で干してあるので,殻が割れやすく,生で食べてもおいしいものでした.2倍以上大きなマテバシイ(馬刀葉椎または全手葉椎,ブナ科)のドングリと比較しました.マテバシイのドングリは,2年かけて成熟します.また,シリブカガシ(尻深樫,ブナ科)のドングリを観察してから殻斗(かくと)」を取りました.マテバシイのドングリは殻斗を取った跡は平面ですが,シリブカガシのドングリは殻斗を取った跡は深く(くぼみに)なっており,シリブカ(尻深)の意味がよく分かりました.
ここで関連して,新池隣のスポーツセンター前のクヌギ(椚,ブナ科)が,アベマキ(阿部槇,ブナ科)でなく本当にクヌギかどうかという宿題がでました.大きなクヌギの木は,名古屋では桃厳寺(本山)と名城にしかないそうです.葉の裏に毛があるかどうかを確認すればわかるそうです.

シリブカガシとマテバシイのドングリの比較

実のついたヒノキ(檜,ヒノキ科)とスギ(杉,スギ科)の小枝を観察して比較しました.ヒノキとスギの実は,大きさや形も大きく違いました.また,赤っぽい花のフジバカマ(藤袴,キク科)も観察しました.白花や紫青色の花のフジバカマもあるようです.

【外部リンク】フジバカマ(Garden Vision)

フジバカマ

スイフヨウ(酔芙蓉,アオイ科)の4つの花を観察しました.色が白からピンクに変わる1日花で,2つは白で,2つはピンクでした.芙蓉峰は富士山のことで,芙蓉はハス(蓮,ハス科)の花を指すこともあるようです.当日話題になった芙蓉(ふよう)グループの芙蓉は,中核の富士銀行の富士の古語読みという説明がWebにありました.最後に,フジ(藤,マメ科)の実を観察しました.鞘を裂いて円盤状の種も観察しました.鞘はベルベットのようだという人がいました.ベルベット(英: velvet)とビロード(ポルトガル語: veludo)の違いが話題になり,ベルベットは絹でビロードは綿だという人がいました.調べてみると,どうやら言語が違うだけで同じもので,元々は絹でできていて,柔らかな感触と光沢がでるバイル織りのことを言い,今は化繊でも作られるようです.綿でできたものは別珍(綿ビロードともいう)というようです.フジの鞘はねじれて種を飛ばすわけではないことを強調する参加者がいました.寺田寅彦のエッセイでフジの種の飛翔が扱われているのが有名です.堅い種はお手玉にするとよい音がするそうです.最後に,7〜8mmの球状のムカゴをたくさん茹でて来た人がいて,皆で分けて食べました.苦くなくおいしい里芋の味でした.ムカゴは雌雄の株に関係なくできるそうです.

スイフヨウ フジの種

先月の報告を見て,写真のウバタマムシ(姥玉虫,タマムシ科)は雄であるという説明がありました.このとき,外でモズ(百舌鳥,モズ科)が鳴きました.ここまでで,10:10になり大坂池に向かって出発しました.
大坂池の周辺には,多くのバッタがいて,歩くと足下の草むらから次から次に飛び出しました.まず,大坂池の南側で群生しているカゼグサ(風草,イネ科)を観察しました.紫色の花穂が大変きれいでした.細長い葉の途中の折れ目のような「へそ」についての説明がありました.関連してダーウィンの耳についての話も出ました.次に,ヨメナ(嫁菜または夜目菜,キク科)を観察しました.ノコンギク(野紺菊,キク科)との違いの説明に花びらを一枚取って,その端に毛があるなしで見分けるという説明がありました.ヨメナの語源は種々の説があるようですが,女性が好んで摘んだからという説もあるようです.次に,メヒシバ(雌日芝,イネ科)の小さな花と黄色いヤクを観察しました.このとき,男の子がコフキゾウムシ(粉吹象虫,ゾウムシ科)を捕獲して回覧しました.近くに,まだ十分に花が咲いていないセイタカアワダチソウ(背高泡立草,キク科)も群生していました.

カゼグサのへそ メヒシバの花

少し進んで,竹藪の横で黄色い小さな花を咲かせたカタバミ(片喰または酢漿草,カタバミ科)が群生しているのを見つけました.10円玉を出して,皆で銭磨きをしました.1人の男の子は一生懸命に葉で表面を磨き,葉に含まれるシュウ酸の働きで10円玉全体をぴかぴかにしていました.近くでヤブマメ(藪豆,マメ科)の花と鞘状の実を観察しました.真っ赤な花をつけたミズヒキ(水引,タデ科)もありました.竹藪の中に,緑の縞のついたカラスウリ(烏瓜,ウリ科)の実と橙色のカラスウリの実を見つけました.瑠璃色や緑色などの種々の色のイシミカワ(石見川または 石実皮,タデ科)の実も見つけて,先月のように葉柄の付き方を観察しました.

ヤブマメの花と実 イシミカワの実

カナムグラ(鉄葎,クワ科)にたくさんのニホンミツバチ(日本蜜蜂,ミツバチ科)が群がっていました.花粉をお尻に付けていると言った参加者がいましたが,よく観察すると両方の脚の腿に付けていることが分かりました.鞘状の実をつけたツルマメ(蔓豆,マメ科)もあり,大豆と同じように鞘の表面に毛がついていることを確認しました.鞘の中のマメを食べた参加者もいました.真っ赤な実を付けたウメモドキ(梅擬,モチノキ科)を観察しました.ここで,サツマノミダマシ(薩摩実騙,コガネグモ科)を捕まえて回覧しました.赤い実を付けたガマズミ(莢?,スイカズラ科)も観察しました.

ニホンミツバチとカナムグラ サツマノミダマシ

登りの藪こぎを始めたところで,緑色の実を付けたナンテン(南天,メギ科)がありました.日陰になっているので,赤くならないのだろうという感想が出ました.途中,アベマキの樹液を吸いにきているスズメバチ(雀蜂,スズメバチ科)を避けながら進みました.藪こぎを終えて,小径に出たときに,アシナガバチ(脚長蜂,スズメバチ科)の巣を拾った人がいました.巣の黄緑色の色からアシナガバチの種類を同定しようした参加者がいましたが,これは巣の素材(樹皮)の色だろうということになりました.小径の両側には,紫色の花を付けたハギ(萩,マメ科)がたくさんありました.大乗寺の私有地との境界に,柵と掲示板がありました.ヤマガラ(山雀,シジュウカラ科)が境界の石積みの端にいました.薄黄緑色のヤママユ(山繭,ヤママユガ科)のまゆを見つけて,皆で観察しました.マテバシイの木を見つけて,今年の新枝に非常に小さいドングリの元が付いているのを確認しました.

アシナガバチの巣 ハギ ヤママユ マテバシイの新枝の実

ルリタテハ(瑠璃立羽,タテハチョウ科)を網で捕まえた人がいて観察瓶に入れて,羽の青い筋を観察しました.周辺でルリタテハの食草のサルトリイバラ(猿捕茨,サルトリイバラ科)も見つけました.このとき,近くで弱々しいツクツクボウシ(つくつく法師,セミ科)の鳴き声がし始めました.
奥池の直ぐ横のキンモクセイ(金木犀,モクセイ科)の大きな木に黄色い花が満開でした.奥池の水面はアオミドロ(青味泥,ホシミドロ科)で覆われ,その中でウシガエル(牛蛙,アカガエル科)が顔を出していました.誰かにヒメダカ(緋目高,メダカ科)を池に入れられてしまったので,池干しを近々する予定だそうです.

ルリタテハ キンモクセイの花

ここで,ツマグロヒョウモン(褄黒豹紋,タテハチョウ科)とウラギンシジミ(裏銀小灰蝶,シジミチョウ科)を見つけて写真を撮りました.先頭集団から遅れてきた参加者達が,アサギマダラ(浅葱斑,マダラチョウ科)を捕獲して持ってきたので,捕まえた男の子にマーキングをしてもらいました.羽の片側の上半分に場所と名前を書きました.4回まで,マーキングができるようにとの配慮でした.マーキングした後,放蝶しようとしても少しの間死んだふりをしていました.アオギリ(青桐,アオギリ科)の心皮の縁辺に数個の実が付いたものも観察しました.

ツマグロヒョウモン ウラギンシジミ アサギマダラ アオギリの実

終了時間が近くなったので急いで里山の家に戻り始めました.途中でアケビ(木通,アケビ科)の実を見つけました.ちょうど表皮が割れて食べ頃で,まだ,虫もついていなかったので,参加者の1人が採って,里山の家まで持ち帰りました.途中の湿地で,シラタマホシクサ(白玉星草,ホシクサ科),サワギキョウ(沢桔梗,キキョウ科),アカバナ(赤花,アカバナ科),ヒヨドリバナ(鵯花,キク科),アキノウナギツカミ(秋鰻掴,タデ科)を観察しました.稲穂が実った水田に漫画の「ワンピース」の主人公のかかしが増えていました. 里山の家の中で感想会をしました.名古屋市によって草刈りが広範囲に行なれており,イングリッシュガーデン風でよいと言う人と,手を入れない方がよいという人がいました.リラックスして,自然観察することで癒やされるという人もいました.感想を言っていた12:45に5人が遅れて里山の家に帰ってきました.アメリカキンゴジカ(亜米利加金午時花,アオイ科)などを持って来て回覧しました.また,ある女性の参加者から夫のために作ったコレステロールのない卵白と落花生とアーモンドで作った煎餅が提供されました.昔懐かしい味がしました. 秋の実りと多くの蝶を観察した気持ちのよい観察会になりました.

観察項目:ダイオウショウの松かさ.スダジイのドングリ,マテバシイのドングリ,シリブカガシのドングリと花,スイフヨウの花,フジの実.スギとヒノキの実,ムカゴ,カゼグサ,ヨメナ,メヒシバ,コフキゾウムシ,カタバミ(ゼニミガキグサ),カラスウリ,ミズヒキ,イシミカワ,スズメバチ,モズの鳴き声,ニホンミツバチ,カナムグラ,ツルマメ,カニグモ,アケビ,ガマズミ,ウメモドキ,ハギ,ルリタテハ,サルトリイバラ,サツマノミダマシ,アオマツムシ,モチノキ,ツマグロヒョウモン,ウラギンシジミ,アサギマダラ,マテバシイ,ヤママユ,アシナガバチの巣,キンモクセイ,アオミドロ,ウシガエル,アオギリの実,シラタマホシクサ,アカバナ,ゴンズイ,ハクサンボク,アメリカキンゴジカ

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子

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2012-1-3 284

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