快晴で,日陰は寒さがぶり返していましたが,日が当たっている場所では,すでに春でした.コートを脱いでマフラーもはずして歩きました.平和公園入口のユキヤナギ(雪柳,バラ科)は,小さな緑葉が出て花もわずかですが開花し始めていました.
ただし,サクラ(桜,バラ科)は冬景色でつぼみもまだ堅い様子でした.新池には,樹木にとまった3羽のコサギ(小鷺,サギ科)の他に,オオバン(大鷭,クイナ科)2羽,ヒドリガモ(緋鳥鴨,カモ科)8羽とカイツブリ(鳰,カイツブリ科)1羽が水面にいました.土手のセンダン(栴檀,センダン科)は実をすっかり落とした木とまだたくさん残している木の両方がありました.参加者は,子供5名と大人28名でした.
集合場所で,愛嬌のある男の子が大きな捕虫網を大人の頭にかぶせて,「逮捕」と言って遊んでいました.集合場所の里山の家と大坂池の間の泥土になっている場所で,いたる所の足跡の峰の部分が金色に光り,縞模様になっていました.もちろん砂金ではなく黄銅鉱のようでした.
まず,先月の報告を皆で見ました.報告の外来種に関連して,ミシシッピアカミミガメ(密士失比赤耳亀,ヌマガメ科)の輸入量が日本では年間30万匹ですが,外国から輸入障壁と言われるので政府は禁止できない状況であるという報告がありました.ワシントン条約の絶滅危惧種の国際取引制限のように,外来種抑制の国際条約が必要なのでしょう.
先月観察したタラヨウ(多羅葉,モチノキ科,別名:葉書の木)の直立的な樹形はおかしいという意見がでて,人工的に植えられたものであり,タラヨウの原型ではということになりました.7福の種をまた持ってこられて,複数の参加者に配っていました.もし,宝くじが当たったら,一部寄付をという声も出ました.
参加者が拾ってきた落ちていた枝を観察しました.一部,小さな赤紫色の花も咲いていました.雌雄異株のカツラ(桂,カツラ科)の枝でした.春告木の1つで,碁盤の材料に使われるという説明がありました.雄木の方が早く花が咲くという報告もありました.
【外部リンク】樹木の個性を知る、生活を知る カツラ(ゑれきてる)
次に,ホオノキ(朴の木,モクレン科)の花殻を見ました.また,それぞれの解説文の上にビニール袋に入れた古代米(緑米)とキビ(黍,イネ科)およびアワ(粟,イネ科)の実を観察しました.実の大きさには大きな差がありました.米は緑米が混じってしまうと,価格が安くなってしまうので,雑種ができないように緑米の栽培には注意が必要だそうです.棒で突いて脱穀するのに時間がかかったという報告がありました.胚芽がついているので,籾をとった玄米でも発芽するという話もでました.
次に,ビニール袋に入れたスギ(杉,スギ科)の花粉を持ってこられた人がいました.また,他の植物の花粉のカラーの偏光顕微鏡写真もいっしょに持ってこられました.色も形も奇抜で大変興味深いものでした.自然の造形美の極みでした.杉の花粉自体は地味な形だそうで,写真はありませんでした.福島のスギ花粉のセシウム含有量について農水省の中間報告は出ましたが,2月の最終報告は出ていないそうです.代わりに筑波大学などの他の機関が公表しており,飛散分布も出ているそうです.人体に直接影響のない範囲ですが,蓄積する体内被曝を考えると問題なのかもしれないという指摘がありました.
最後に,東山のゆでたタケノコ(竹の子)を皆で分けて食べました.柔らかくて春の味でした.名古屋の料亭では,鹿児島産などを初物として12月や1月に食べさせますが,地元のタケノコもなかなかのものでした.
まず,オタマジャクシ池のあった北側の畑跡に行き,春告草を探しました.角地に,ナバナ(菜花,アブラナ科)をまず見つけました.これは誰かが食べるために栽培したもののようでした.オオイヌノフグリ(大犬陰嚢,ゴマノハグサ科)の青い花が畑の端に一面にありました.ヒメオドリコソウ(姫踊子草,シソ科)とホトケノザ(仏座,シソ科)もピンクの花を咲かせていました.
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オオイヌノフグリの花 |
ヒメオドリコソウ |
ホトケノザ |
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水路でニホンアカガエル(日本赤蛙,アカガエル科)のオタマジャクシが泳いでいたので,バットに取って,体長を女の子が分度器で慎重に測りました.13mm でした.ここで,ミリは補助単位で1000分の1のことで,後にメートルを付けないと寸法にならないという話がでました.
コハコベ(小繁縷,ナデシコ科)の白い花を見つけて花弁の数を数えました.10弁という回答でしたが,花びらをぬき取ると根元でつながっており.正確には5弁であることを確認しました.ミドリハコベ(緑繁縷,ナデシコ科)とウシハコベ(牛繁縷,ナデシコ科)およびノミノフスマ(蚤の衾,ナデシコ科)との違いがいろいろ出ました.コハコベは,ガク(萼)が花より大きいところで,見分けるそうです.トノサマバッタ(殿様飛蝗,バッタ科)を男の子が捕まえたので写真に撮りました.背が低いツクシ(土筆,トクサ科)を見つけて,ノートの上に並べた人がいました.生えているところを探して,頭だけが出ているツクシを見つけました.後で,別の日当たりのよい場所で,背の高いツクシの群生も見つけました.
前回見つけられなかったゴギョウ(御形,キク科,別名:ハハコグサ)も見つけました.つぎに白い花を付けたタネツケバナ(種浸花,アブラナ科)を観察しました.アカバナダイコンサルゾウムシ(赤鼻大根猿象虫,ゾウムシ科)がつく草ですが,今回はまだこの象虫はついていませんでした.アブラナ科ということで白い花と葉を食べた人から,辛みがあっておいしく,タマゴサンドに入れたらおいしいという感想が出ました.タネツケバナの名称の由来が話題となり,図鑑の「種籾を水に入れ苗代を作る準備をする時期に花が咲く」という記述を1人の参加者が読み上げました.
カキドオシ(垣通,シソ科)のピンクの花を水路の土手で見つけました.次に,畑の端のヌルデ(白膠木,ウルシ科)の実を食べました.最初は酸っぱくて,その後塩辛く感じるという感想がでました.普通の塩ではなくリンゴ酸カルシウムです. 葉痕を見て,葉柄内芽であり,新芽が葉痕の中で膨らんでいるのを観察しました.冬のヌルデはかぶれないということでした.また,畑にあった2つの切り株の樹種を鑑定しました.最初,シンジュ(神樹,ニガキ科,別名:ニワウルシ)だと思った木は,葉痕の形からセンダンと判明しました.もう1 本はニレ(楡,ニレ科)ということになりました.
【外部リンク】センダンの冬芽葉痕(里山再生計画)
この畑跡で1時間程もいたことになり,11:10に出発して水田に向かいました.途中でヤマツツジ(山躑躅,ツツジ科)の狂い花を見つけました.次に,濃い紅色のハナウメ(花梅,バラ科)の花を観察しました.下を向いて花が咲いており,昔からそのような状態の年の稲は不作だと言われていたそうです.この近くで,ガクが花より小さいウシハコベを見つけた参加者がいました.
【外部リンク】なんでも梅学(梅の月向農園)
水田近くでは,シジュウカラ(四十雀,シジュウカラ科)がしきりに鳴いていました.池の中ではニホンアカガエルの卵塊の上に10数mm 長のオタマジャクシがたくさんいました.
池全体では昨年よりはずっと数が少ないように感じました.水田の中のレンゲソウ(蓮花草,マメ科)はほとんど大きくなっていませんでした.それでも葉は少しずつ増えているという観察結果が報告されました.暖かくなれば一面にレンゲソウの花が咲くだろうという人とまばらにしか咲かないという人がいました.
ムラサキシジミ(紫小灰蝶,シジミチョウ科)を網で捕まえた子供がおり,観察瓶に入れてきれいな紫色の羽を観察しました.近くに,満開の背の高いハクバイ(白梅,バラ科)がありました.赤い筋のあるエゾギシギシ(蝦夷羊蹄,タデ科)と赤茶けたスイバ(酸葉,タデ科)もありました.2mを超える棒状のキリ(桐,ゴマノハグサ科)が一本だけありました.葉も枝もなく,親木は近くで枯れていました.
さらに東に歩き,苔の上にヒメカンアオイ(姫寒葵,ウマノスズクサ科)が1葉だけあるのを見つけました.その横でシキミ(樒,シキミ科)が小さな花をいっぱい咲かせていました.花のにおいをかいでも臭くはありませんでした.いつものカラタチ(枳殻,ミカン科)を観察しましたが,アゲハチョウ(揚羽蝶,アゲハチョウ科)の蛹は付いていませんでした.とげの根元に新芽が付いていましたが,丸いのが花芽だという説明がありました.
大きなサザンカ(山茶花,ツバキ科)がたくさんの花びらを下に落として地面が赤紫色になっていました.トウチク(唐竹,イネ科)をバックにヤブツバキ(藪椿,ツバキ科)も白い花を咲かせていました.
大きなコブシ(辛夷,モクレン科)の木の葉芽と花芽を観察しました.花芽の数がいつもより少なく感じました.昨年の実を根元で見つけて,中の種を引っ張ると長く糸をひきました.種を割って食べた人からほんのり甘いという感想が出ました.鳥になった気分のようでした.直ぐ横のモモ(桃,バラ科)の木は,まだ花は咲いていませんでした.新芽に毛が付いており,梅や桜の新芽と区別できるそうです.となりのムクゲ(木槿,アオイ科)の枝先には花殻が付いていました.
12:10になり急いで里山の家に向かいました.スモモ池ではカルガモ(軽鴨,カモ科)2羽が逆立ちをして藻を食べていました.少し離れてヒドリガモも4羽いました.ヤナギ(柳,ヤナギ)の新芽を観察して,12:20に里山の家に着きました.
感想会では,多くの春を感じた楽しい半日であったという感想がまずでました.子供達も感想を言いました.春の息吹を感じた楽しい観察会になりました.
観察項目:カツラの冬芽と花,ホオノキの花殻,古代米(緑米),ヒエの実,アワの実,タケノコ,コハコベ,ホトケノザ,ヒメオドリコソウ,オオイヌノフグリ,ツクシ,カキドオシ,ナバナ,ゴギョウ,タネツケバナ,ギシギシ,スイバ,ヌルデ,アカガエルのオタマジャクシ,センダン,ニレ,ヤマツツジ,ハナウメ,ウシハコベ,レンゲソウ,ムラサキシジミ,トノサマバッタ,シキミ,白花のヤブツバキ,サザンカ,トウチク,カラタチ,コブシ,モモ,ムクゲ,ヤナギの新芽
文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子
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