晴天で風もほとんどなく芋煮会日和になりました.新池にはアオサギ(青鷺,サギ科)1羽,ヒドリガモ(緋鳥鴨,カモ科)2羽およびカイツブリ(鳰,カイツブリ科)3羽が来ていました.カイツブリは,スイレン(睡蓮,スイレン科)のなくなった水面からさかんに潜って餌をとっていました.土手のアカメガシワ(赤芽柏,トウダイグサ科)は葉をすっかり落とし,冬芽を出していました.センダン(栴檀,センダン科)の実はクリーム色になり,ヒヨドリ(鵯鳥,ヒヨドリ科)とムクドリ(椋鳥,ムクドリ科)が食べに来ていました.街路のサクラ(桜,バラ科)やトウカエデ(唐楓,カエデ科)もすっかり葉を落とし,冬景色でした.参加者は,集合場所では子供11名と大人34名でしたが,芋煮を食べに来た人は70名を越えました.
集合時間の前に平和公園の中を1時間ほど散策して写真を撮りました.草地には霜がおりていて,池は凍っていました.50羽以上のスズメ(雀,スズメ科)が葉を落とした木にとまり,遠くから見ると葉のように見えました.その周辺ではウグイス(鶯,ウグイス科)の地鳴きが数ヶ所で聞こえました.アオジ(青鵐,ホオジロ科)もかぼそく鳴いていました.奥池へ行く途中で,ガマズミとよく似た葉ですが,つやのある紫色のハクサンボク(白山木,スイカズラ科)の写真を撮りました.水田近くのナンキンハゼ(南京櫨,トウダイグサ科)は,葉をすっかり落とし,白い実がたくさんついていました.2羽のハシボソガラス(嘴細烏,カラス科)が盛んにそれを食べていました.近づくと実のついた枝を口にくわえて飛んでいきました.
集合場所で,まず前日に猫ヶ洞池で採取した10cm大のゼリー状のオオマリコケムシ(大鞠苔虫,オオマリコケムシ科)の3つの群体を観察しました.北米産の外来種で,日本では1972年に河口湖で初めて見つかったそうです.水鳥の足に引っかかって運ばれるようです.ゼリー状の群体の表面近くに外肛動物で1.5mm程度の個虫が点々としていました.きちんとした呼吸器系や循環器系を持っていませんが神経系や骨格系は持っているそうです.近くにはイルカ池にもいるという報告がありました.水没している岩や根について繁殖しますが浮いているのを目撃することもあるようです.乾燥させてゴマ油で炒めて食べられるそうです.生で食べた人の感想として,うまくなく,全く味はしなかったという報告がありました.
次に,キカラスウリ(黄烏瓜,ウリ科)とそれより半分以下の大きさの赤いカラスウリ(烏瓜,ウリ科)を持ってきた人がいて比較しました.カラスウリの種は,打ち出の小槌の形をしており,財布に入れるとよいと言われていますが,キカラスウリの種にはご利益はないということを言う人がいました.キカラスウリの根からシッカロールを取ったという話も出ました.天白川の川縁にキカラスウリは多いという報告もありました.黄色い実を半割りして,種の周辺の果肉を数名の人が食べました.最初は甘いですが後で渋いという感想でした.食べて大丈夫かという意見に対して,ウリ科や「〜菜」という植物は一般に無毒であるという説明がありました.
インテリアとして,ソバ(蕎麦,タデ科)とワタ(綿,アオイ科)を花瓶に入れて持ってきた人がいました.ワタの実がはじけて綿が出ていたので,中の種の数を数えました.7〜8個の種がはじけた実に入っていました.実の内果皮の部分が綿だという説明がありました.ソバとワタの種の中を食べた人から,ワタの実の方がソバの実よりうまいという感想でしたが,最後は苦いということでした.ワタの種からは使用量は多くないですが食用油として使われる綿実油が取られます.日本のワタは繊維が短く切れやすいので,デカン高原の長い繊維のワタに品質的に負けているということでした.子供の頃,蒲団の上に乗らないように言われたのは繊維が切れてしまうためという話がありました.
芋煮会の資材をリストを見ながら倉庫から出してリアカーに載せました.燃料としての枯木を拾いながら進むことになりました.子供達だけでうれしそうにリアカーを引きました.子供達にとって初めての経験のようでした.
芋煮鍋の竃用の穴を掘っているときに,炉(ろ)と竈(かまど)の違いを指摘した火事の専門家がいました.囲炉裏(いろり)のように囲っていないものは炉で,竃は周辺を囲って釜などを載せるものという定義だそうです.昨年まではU字溝を使っていましたが,今年からは鉄製の竃を堀った穴の周辺に置き,その上に芋煮鍋を置きました.新聞紙を丸めて竈に入れて,火をつけました.途中で竈に入れた枯枝からアリが出てきて,担当していた人が急いで竈から取り出してアリを助けました.鍋の中には,最初に里芋と水を入れました.新しい竈は,火つきはよくなかったですが熱効率がよいようで,昨年より早く沸騰しました.豚肉,ゴボウ(牛蒡,キク科),蒟蒻(こんにゃく),お酒,豆腐,醤油,ネギ(葱,ネギ科)を順に入れました.準備されたきざんだネギは多すぎて半分近く残しました.
パンを焼くための熾(おき)をつくるため,芋煮鍋の横でバーベキューグリルを土の上におき,枯枝を燃やしました.親子連れで,パンを焼くための竹を切りに行きました.パン生地は今回は60個用意されていました.グリルの両横には,パン生地をつけた竹棒を支える竹竿を横に渡しました.竹竿は,のこぎりで刻みを付けて,熱で竹が爆発しないようにしました.準備ができる前に子供達は絵本の読み聞かせをしてもらっていました.その後,子供達はパン生地を付けた竹棒を持って,競争でパンを焼き始めました.
その間に,周辺の自然観察を2人で行ってきました.マユミ(真弓,ニシキギ科)のピンクの花がたくさん咲いていました.ヒイラギ(柊,モクセイ科)やセンリョウ(千両,センリョウ科)の常緑の木が大きな樹木の下で目立ちましたが,センリョウにはわずかの赤い実しかついていませんでした.コウヤボウキ(高野箒,キク科)の多い小径も通りましたが,花期が終わって,花殻だけが残っていました.
芋煮鍋が煮える前に,パンが焼け始めたので,参加者が準備してきたシャシャンボジャム,ユズジャム,梅シロップジャムおよびカリンジャムをつけて子供達が最初に食べ始めました.どれもおいしく食べましたが,ユズジャムがもっとも評判がよかったようです.アカジゾゼリーも子供達は喜んで食べていました.
観察項目:
オオマリコケムシ,キカラスウリ,カラスウリ,ソバ,ワタ,サツマイモ,アベマキの葉についた虫こぶ,芋煮鍋(里芋,豚肉,コンニャク,ゴボウ,豆腐,酒,醤油,ネギ),パン,ユズジャム,シャシャンボジャム,カリンジャム,梅シロップジャム,アカジソゼリー,漬物,マユミ,センリョウ,ヒイラギ,コウヤボウキ,ウソ |
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ファイル名 | 掲載日 | ヒット | |
2012年12月度の観察記録
2012年12月度の印刷用観察記録です。
| 2013-4-11 | 308 | |
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