観察会としては,6〜7年ぶりの雨になり,カメラをぬらさないため,蒸し暑い中,長靴とカッパを着て,さらに傘をさして歩
きました.カッパは汗を蒸発させず,上半身の下着と上着がぐっしょりとなりました.
まず,里山の家の前で,先月の報告を見ました.実らなかったヒタチアキソバ(常陸秋蕎麦,タデ科)の代わりに,炭焼広場の
ソバ畑に信濃1号(秋そば)を植えたという報告がありました.75日程度で収穫の予定です.ハチノスツヅリガ(蜂巣綴蛾,メイガ科)の幼虫は,サナギにな
り羽化を始めたという報告がありました.一部は標本にしましたが,成虫の大きさは2cm弱大だそうです.手羽先の中には,成長ホルモンのせいで肉が骨から
取れやすいものがあるという報告がありました.外国では生長(女性)ホルモンを使う場合があり,それらの手羽先の食べ過ぎで,女の子が初潮を早めたり,男
性が豊胸になったりの例があるという話がでました.
10:00丁度に出発して,まず,大坂池の近くでコオロギの鳴き声を聞きました.コロコロと鳴くエンマコオロギ(閻魔蟋
蟀,コオロギ科)とリーリーリーと鳴くツヅレサセコオロギ(綴刺蟋蟀,コオロギ科)でした.ミツカドコオロギ(三角蟋蟀,コオロギ科)はいませんでした.
大坂池土手のアレチヌスビトハギは小さなきれいな花をたくさん付けていました.よく見ると受粉していない花も多く,それら
には実がついていませんでした.関連して,稲は基本的に風媒花ですが,開花する前から自家受粉するという話も出ました.開花しても2時間ほどしか受粉でき
ないそうです.モチマイ(糯米,イネ科)とウルチマイ(粳米,イネ科)の間では,ウルチマイが優性で,交雑するとモチマイもウルチマイになってしまうそう
です.赤米や黒米は劣性で問題ないですが,緑米は優性で,これが混じると米の商品価値が非常に下がるので,緑米の作付けは厳しく制限されているそうです.
ヒメムカシヨモギ(姫昔蓬,キク科)にバッタの死骸が付いているのを見つけて,前に紹介されたバキュロウィルス(Baculoviridae,バキュロ
ウィルス科)の話しがまた出ました.
アベマキ(阿 部槇,ブナ科)のすぐ横に背丈が1.5m程度のズミ(酢 実,バラ科リンゴ属)を男性の参加者が見つけました.この辺りにはないと皆が思っていたものでした.花は綺麗で青リンゴのようだという人がいました.道の 逆側に植えられた背の低いアベマキは,非常に大きな黄緑色の新葉を出していました.濃緑の古い葉の2倍程度の大きさがありました.
水田に着き,稲穂を付け始めた稲の中にイ
ヌビエ(犬稗,イネ科)などの野草がたくさん混じっており,稲より背が高いので非常に目立ちました.昨年よりずっと野草が多く
びっくりしました.イヌビエは一番下の水田が最も少なかったですが,除草を上の水田から順番にしたので,一番下の水田のときには見分けが慣れて効率的に除
草できたそうです.完熟期の今はもう水田には入れないそうです.水田の端にあるイヌビエを引き抜こうとした人がいましたが,1人ではびくともしませんでし
た.イヌビエやケイヌビエ(毛犬稗,イネ科)はイネに擬態して,穂が出るまでは稲との違いはわかりにくいそうです.抜けにくいとか根元が赤いとか毛がある
なしで判定するそうですが,これだけ残っているところを見ると簡単ではないようです.
水田から離れて,坂道を登りフェンスと側溝の間のウンヌケ(牛毛,イネ科)を見に行きました.
日本が大陸とつながっていた
証拠の植物で,アジアの草原性植物の代表だそうです.すぐ横にあるススキ(薄,イネ科)は穂を出していましたが,ウンヌケはまだ穂を出していませんでし
た.そのため,ススキとの区別が難しかったですが,ウンヌケの葉の表裏が逆であることを確認しました.
湿地へ行き,シラタマホ シクサ(白玉星草,ホシクサ科)を見に行きました.サギソウ(鷺草,ラン科)はすっかりなくなり, 代わりに湿地一面にシラタマホシクサの小さな白い花が咲いていました.これまでの世話のたまものでした.ワレモコウ(吾亦紅,バラ科)とアキノウナギツカ ミ(秋鰻掴,タデ科)も花を咲かせていました.先月見たイソノキ(磯の木,クロウメモドキ科)の実の 色付きもよくなっていました.湿地の山側にある道端 で,ウスノキ(臼の木,ツツ ジ科)の赤い実を見つけて,数名の人が食べました.あまり甘くなかったようです.林の中には多くのキノコがありましたが,白い ラッパ状の7〜8cm大のキノコもありましたが,調べても名前はわかりませんでした.
里山の家への帰り道で,松の幹に2匹のコ
シロシタバ(小白下翅,ヤガ科)を見つけました.男の子が枝で触って1匹ずつ飛ば
すように言われました.残念ながら,素早く飛んでしまったので下の羽の模様は見えませんでした.さらに進んでいったときに,大きなカヤキリ(萱螽斯,キリ
ギリス科)を見つけて捕獲して,ビニル袋に入れて観察しました.昆虫少年がすぐに名前を言いあてました.クビキリギスの幼虫も男の子が見つけたので比
較し
ました.昨年度に報告したサトクダマキモドキと大きさは似ていますが,形は違っていました.
里山の家に帰ってきたときに雨が降り止みました.感想会を里山の家の中で行いました.雨でも来てよかったという感想が出ま
した.私のインドネシア土産の乾燥マンゴ(Mango檬果,ウルシ科)とパパイヤ(Papaya万寿果,パパイヤ科)の練り物を回しました.パパイアの匂
いを心配しましたが,ういろう(外郎)のような感じで,わずかにパパイアの味がしただけでした.現地の品質の良い生のパパイアは大変美味しかったです.感
想会終了後に,先月と同じように,子供達のために紙芝居の読み聞かせがありました.雨が降っても楽しい観察会になりました. 文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子 |
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2013年9月度の観察記録
2013年9月度の印刷用観察記録です。
| 2014-2-9 | 260 | |
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