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10月度の観察記録
2013年10月度の観察記録です。

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さわやかな風の吹く秋晴れでした.新池は,相変わらず水面がスイレン(睡蓮,スイレン科)に覆われ水鳥は来ていませんでし た.土手の樹木上でハクセキレイ(白鶺鴒,セキレイ科)2羽がホバリングをして虫を捕っていました.周辺では,セイタカアワダチソウ(背高泡立草,キク科) の花が全盛を迎えていましたが,ノコンギク(野 紺菊,キク科)の白い花も少しだけありました.センダン(栴 檀,センダン科)の実はクリーム色になり,枝に鈴なりになっていました.表面がしわしわになった実が数個下に落ちていました.

ニホンミツバチとセイタカアワダチソウ ノコンギク センダンの実

サルスベリ(猿滑または百日紅,ミソハギ科)には,わずかに花が残っていましたが,ムクゲ(木槿,アオイ科)の花はすっかりなく なって実が付いていました.並木のサクラ(桜,バラ科)とト ウカエデ(唐楓,カエデ科)が紅葉し始めていました.平和公園入口のユキヤナギ(雪柳,バラ科)の中から,引っ付き虫になった 茶色のアレチヌスビトハギ(荒地盗人萩,マメ科)が飛び出ていました.蝉の鳴き声はすっかりなくなり,エンマコオロギ(閻魔蟋蟀,コオロギ科)の鳴き声だ けが響いていました.参加者は,母親に抱かれた5ヶ月(8kg)の赤ちゃんを含め子供4名と大人22名でした.

ムクゲの実 紅葉を始めたトウカエデ

まず,最初に昆虫が好きな女性参加者が,海洋堂のイモムシのフィギュアの付いた6種のストラッ プを披露しました.クロメンガタスズメ(黒面形天蛾,スズメガ科),アケビコノハ(通草木葉蛾,ヤガ科),シンジュサン(神樹蚕,ヤママユガ科),アオバ セセリ(青羽?,セセリチョウ科),ナミアゲハ(並揚羽,アゲハチョウ科),アサギマダラ(浅黄(葱)斑,タテハチョウ科)の6種でした.1個300円 で,ガチャガチャで買うと全種類を集めるのは難しいので,直接購入したそうです.幼虫のフィギュアはよくできていて,曲げて形を変えることもできました. イモムシハンドブック(文一総合出版,安田守著)を参照しているということを書いた解説の紙もありました.ただし,大きさが本物と多少違うものがあること と,本物の方が色が鮮やかであるという指摘がありました.
里山の家からクロメンガタスズメの幼虫と 成虫を出してきてフィギュアと比較しました.本物の幼虫はもう終齢で茶色になっており,フィギュアの緑色とは違いましたが形状はそっくりでした.ストラッ プの紐がなければ本物と見間違う程でした.本物の幼虫には,黒い点々が不揃いに付いていて,蜂か蠅に寄生されているかもしれないということでした.

イモムシのフィギュア クロメンガタスズメの幼虫とそのフィギュア

先月の報告を見て,花にアブの付いた写真が話題になりました.また,ズミ(酢実,バラ科)も話題になりました.
自宅で幼虫から育てたイラクサギンウワバ(刺 草銀上羽,ヤガ科)の成虫を持って来た参加者がいました.透明容器の中で飛び回っていました.2006年から始めた灯火採集ですが,2012年と2013 年に集めた立派な標本が披露されました.「灯火に飛来し た甲虫」という題目がついていました.昨年は数が少なく,今年は多かったという報告でした.アオドウコガネ(青胴黄金,コガネ ムシ科)がたくさん標本になっており,昔は黒色のドウガネブイブイ(銅鉦??,コガネムシ科)が普通で,最近になって緑色のアオドウが支配的になっている ことの説明がありました.

イラクサギンウワバ 灯火に飛来した甲虫の標本

最近,話題となった外来種のハラビロカマキリ(腹広螳(蟷)螂,カマキリ科)を今回見つけるという課題がでました.外来種 の定義は何かということで,動植物に本来境界はなく,人間が介在したかどうかで判定すべきと言う意見が出ました.
黒っぽくて細長く,マテバシイ(全手葉椎,ブナ科)より少し大きいドングリを持ってきた参加者がいました.ヨーロッパナラ(オーク)(欧羅巴楢,ブナ 科)のドングリでした.最後 に,ムベ(宜,アケビ科)の 葉の付いた枝を観察しました.時期が早いので実はついていませんでした.「むべなるかな(いかにもそのとおり)」は,「宜乎」と記述して,「かな(乎)」 は感嘆詞のようです.天智天皇が近江八幡に行幸した際に,ある老夫婦に長寿の秘訣を尋ね,老夫婦はこの地で秋にとれる「むべ」の果実を食するからだと答 え,天智天皇が「むべなるかな」と言ったのが,この言葉の始まりという説があるようです.日本語検定問題にあるように品詞分解すると,肯定を表す「宜」 に、助動詞ナリと助詞カナとなります.

【外部リンク】きょうの日本語検定

ヨーロッパナラのドングリ ムベ

10:05に出発して,せせらぎで産卵している小ぶりのアカトンボのつがいを見つけました.ヒメアカネ(姫茜,トンボ科) という人もいましたが,マユタテアカネ(眉 立茜,トンボ科)だろうということになりました.残念ながら写真を拡大しても頭の模様のわずかな差は確認できませんでした.

【外部リンク】マユタテアカネ(とんぼ観察図鑑)

【外部リンク】ヒメアカネとマユタテアカネ(カイツの一日)

つがいの前がオスで赤く,後ろはメスで黄色と黒色の縞模様でした.しきりにせせらぎの水面に産卵していました.ヒメアカネの雌は泥中に強く産卵管をつきさ すように産卵するという図鑑の記述と平和公園にはマユタテアカネが多いということがマユタテアカネとした根拠でした.

マユタテアカネのつがい

次に,先月観察したズミをまた見ました.すぐ隣の青色の実を付けたサワフタギ(沢蓋木,ハイノキ科)と赤い実を 付けたガマズミ(莢?,スイカズラ科)があり,複数の人がその実を食べました.サワフタギの青い実は,まずかったようです.ガマズミの赤い実は,そこそこ うまいという感想がでました.

サワフタギ

炭焼広場へ行き,サトイ モ(里芋,サトイモ科)とサ ツマイモ(薩摩芋,ヒルガオ科)が植えられているのを見ました.サトイ モを見て,ホウレンソウ(菠薐草,アカザ科)だという男の子もいました.2株のサツマイモを引き抜いて,葉と芋の数を数えていました.ベニハルカ(紅はる か)という品種で,種芋は高いですが味がよくて育ちやすい品種だそうです.大きい方の株は,238枚の葉がついていて,芋は2つだけでした.効率が悪いと いう感想がでました.芋と上部の茎と葉の重さが同じだった経験のある参加者がいました.神事にはサトイモは供えますが,サツマイモやカボチャ(南瓜,ウリ 科)は供えないという話しが出て,昔から栽培している根野菜の歴史を継承しているということでした.ただし,果物としてパイナップル(Pineapple 鳳梨,パイナップル科)やトマト(Tomato,ナス科)も供えるようですので,神様はもっと心広いかもしれません.

サトイモの観察 サツマイモの観察

湿地へ行き,シラタマホ シクサ(白玉星草,ホシクサ科)が全盛なのを確認しました.黄色い花のスイラン(水蘭,キク科)と 紫色の花のサワギキョウ(沢桔梗,キキョウ科)も混じっていました.昨年もやったように,シラタマホシクサを一本取って,下から茎をしごいて花が回転する のを皆に見せました.茎はらせん状にねじれていて,しごいてよりを戻すと,時計回りに茎の先頭の白い花が回りました.このとき,湿地は日陰になっており, これを改善するために山側のコナラ(小楢,ブナ科)を切る予定だそうです.

シラタマホシクサ シラタマホシクサの中のスイラン

水田で 数十羽の雀が騒がしく鳴いていて,人が行くとすぐ横の樹木に待避しました.水田の籾(もみ)から中のコメを取り出し,胚が下(根元)の方についていること を皆で確認しました.米の中心に黒い点があるものがあり,これはカメムシ(椿象または亀虫(総称),カメムシ科)がかんで吸汁した痕で,斑点米として等級 落ちして屑米になってしまうという説明がありました.実の入っていないシイナ(粃または秕)の籾も多く,病気か,雀が乳熟期の稲の実から乳液状のデンプン を吸汁してしまったようです.水田の雑草に見えるのはイヌビエ(犬稗,イネ科),ケイヌビエ(毛犬稗,イネ科)およびタイヌビエ(田犬稗,イネ科)である という報告がありました.
ここで,堅い殻のついた銀杏を 配って,籾と同じように胚を探して,下側にあることを確認しました.堅い殻の中の渋皮は上側が白で下側が茶色でした.
図を使って銀杏の構造の説明がありました.イチョウ(銀杏,イチョウ科)の実の表皮は,1枚しかない珠皮の一番外側の層から出来ていて,内側の硬い殻は珠 皮の最内層から出来ているそうです.触るとかぶれる果肉の部分は,その中間の層に由来し,堅い殻を割ったときに現れる渋皮は珠心の外側の層に由来するそう です.私達の食べる銀杏は,種子の中心部分に過ぎないということです.熱を加えると,水分の多い胚のある下側の殻が割れるという参加者からの指摘もありま した.学歴のない東京大学(当時は帝国大学)技手の平瀬作五郎が発見したイチョウの精子の動く様子はウェブ(NHKミクロワールド)で見られます.春につ いた花粉から2つの精子が作られ秋に泳いで受精する様子は一見の価値があります.

【外部リンク】精子が泳ぐ イチョウの不思議(NHKforSchool)

コケ(苔)からシダ(羊歯)になりイチョウなどの裸子植物と被子植物に分かれた,植物の分類が話題になりました.お葉付きイチョウは,葉が2裂して,片方 が葉,片方が胚珠となり実になりますが,イチョウの祖型と考えられるようです.

【外部リンク】植物の世界「花が実になるまで」(GREEN & LUCKY NET)

水田 銀杏の胚

里山の家への帰り道で,カマキリ(蟷螂,カマキリ科)を皆で一生懸命探しましたが,外来種のハラビロカマキリだけでなく, 他のカマキリも一匹も見つかりませんでした.途中で,コ ムラサキシキブ(小紫式部,クマツヅラ科)の実がたくさんなっていたので,複数の人が食べて少し甘いという感想が出ました.
里山の家で感想会をしました.小学校4年生まで参加していた男の子が,高校1年生になって久しぶりに参加して,歓迎されていました.天気が良くて風が気持 ちよいという感想がまず出ました.カマキリは見つからなかったですがアサギマダラの写真を撮った人がいました.オオタカ(大鷹,タカ科)やミサゴ(鶚,タ カ科)を上空に見た人もいました.私は電子蚊取りを付けていたにもかかわらず手を4ヶ所も蚊に喰われてしまいました.それ以外は秋のさわやかな観察会にな りました.

コムラサキシキブ ミゾソバ

観察項目:6種の幼虫のフィギュアのストラップ,クロメンガタスズメの幼虫と成虫,灯火に飛来した甲虫の標本,ヨーロッパ ナラのドングリ,ムベの葉,マユタテアカネ,ズミ,ナツハゼ,サワフタギ,サツマイモ(ベニハルカ),サトイモ,サワギキョウ,スイラン,シラタマホシク サ,ギンナン,コメ,ニホンミツバチ,ルリタテハ,スズメバチ,ハナアブ,ウラギンシジミ,オオタカ,ミサゴ,アサギマダラ

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子

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2014-2-9 392

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