早朝は曇っていましたが,集合時間には陽差しがきつい晴れになりました.木陰は気持ちのよい風が吹いていましたが,既にヤ ブ蚊が多くいました.白い花を咲かせたスイレン(睡蓮,スイレン科)に水面を覆われた新池には水鳥はおらず,周辺にコゲラ(小啄木鳥,キツツキ科),スズ メ(雀,スズメ科),ムクドリ(椋鳥,ムクドリ科)などがいました.土手には,一昨年ほどは多くないですが,駆除対象のオオキンケイギク(大金鶏菊,キク 科)の黄色い花がまた目立つようになっていました.また,クズ(葛,マメ科)の蔓が伸びて,土手の樹木を覆い始めていました.元集合場所のアジサイ(紫陽 花,アジサ科)花壇には,大きな花が咲いていました.周辺に整備された植栽はガ クアジサイ(額紫陽花,アジサイ科)でした.里山の家の屋根には,枯れたカラスノエンドウ(烏豌豆,マメ科)と勢いのあるセイ タカアワダチソウ(背高泡立草,キク科)とクズが育っていました.参加者は,子供3名と大人16名でした.
集合場所で,まず先月の報告を見ました.報告の中のカイガラムシ(貝殻虫,カイガラムシ科)の成虫は,どのようなものかと いう質問が出ました.誰も正確には答えられませんでした.カイガラムシは,400種くらいの種類があり,色々な特性を持ったものがいるようです.足が退化 して固着性を持ったメスと翅を持ったオスがいる場合が多いですが,単性生殖するものもいるようです. 先月,エノキ(榎,ニレ科)の幹を降りていたヒオドシチョウ(緋縅蝶,タテハチョウ科)の幼虫は,次の日も同じ状態だった
という報告がありました.ここで,種々の蝶をプリントした男の子のTシャツが注目されました.羨ましいと言う参加者もいました.徳重のヒルズウォークで
買ったそうです.
次に,自宅のサザンカ(山茶花,ツバキ科)の木で見つけた15cm大の巣を持ってきた参加者がいました.中心は,半球形に
枯れ草を上手に編んでありましたが,外側は近所の建前に使われた白い紙が巻かれていて芸術作品のようでした.メジロ(目白,メジロ科)の巣より大きく,多
分ヒヨドリ(鵯,ヒヨドリ
科)の巣だろうということに
なりました.再利用はされないので,取ってしまっても問題ないようです.
小さな水槽に,タマミジンコ(玉微塵子,タマミジンコ科)とアオウキクサ(青浮草,ウキクサ科)が入ったものも参加者が
持ってきていました.
道路を渡って猫ヶ洞池に隣接した公園へ入りました.オオバコ(大葉子,オオバコ科)が,一面に群生していました.サクラ
(桜,バラ科)の木の幹にいたキマワリ(木
廻,ゴミムシダマシ科)を見つけました.触って,どちら周りに動くか試した参加者がいました.関連して,コリオリの力は台所のシンクの排水口の渦の向きに
は関係ないという話題もここで出ました.コリオリの力は小さいので,海流などの大きな現象には効きますが,小さな水の渦には関係ないということです.アフ
リカの赤道直下で,洗面器を使って,赤道をまたいで渦の向きが変わるというパフォーマンスを見たことがありますが,手で微妙に操作しているようでした.
リョウブ(令 法,リョウブ科)の白い花のつぼみとネズミモチ(鼠 餅,モクセイ科)の花を観察しました.さらに,アオハダ(青 膚,モチノキ科)を見つけて,名前の由来である青肌を出すため十円玉で幹の樹皮を剥いた参加者がいましたが,白い髄が見えてしまいました.別の参加者がナ イフでひと皮だけ剥いて緑色の表皮を出しました.雌木で緑の小さな実が付いていました.
下にあるクマザサ(熊
笹,イネ科)は,昨年の葉には茶色の枯れた縁取りがあり,今年の葉には全体が緑で縁取りはありませんでした.真ん中の細長く巻いていた新葉芽を抜いて,そ
の根元を食べた人がいました.おいしいという感想でした.
木の幹でサシガメを一匹見つけました.ヨコズナサシガメ(横綱刺亀,サシガメ科)だという人がいましたが,白い縁取りでな く,赤い縁取りがついており,図鑑で調べて,アカシマサ シガメ(赤縞刺亀虫,サシガメ科)かアカヘリサシガメ(赤縁刺亀,サシガメ科)のどちらかと迷って,結局,アカシマサシガメと いうことになりました. トウネズミモチ(唐
鼠黐,モクセイ科)の花を観察して,普通のネズミモチとの差について話しました.葉を裏側から見て葉脈が分かるのがトウネズミモチという説明がありまし
た.アオギリ(青桐,アオギリ科)の幼木の大きい葉を見つけ,その横にキレハノブドウ(切葉野葡萄,ブドウ科)の大きな葉のついた蔓も見つけました.
猫ヶ洞池に着き,水面にヒシ(菱,ヒシ科)とカイツブリ(鳰,カイツブリ科)が2羽いることを確認しました.土手で,サワ
フタギに似た背の低い2本のクロミノニシゴリ(黒
実の錦織木,ハイノキ科)を紹介した参加者がいました.サワフタギ(沢蓋木,ハイノキ科)の葉の裏はザラザラで,クロノミニシゴリの葉の裏はツルツルで,
葉柄に毛がないので分かるといことでした.秋になって,黒い実がなるか瑠璃色の実がなるかで最終的に判定することになりました.クロミノニシゴリは貴重種
で,東海丘陵要素植物の1つで,絶滅危惧種になっています.クロミノサワフタギ(黒の実沢蓋木,ハイノキ科)というのも図鑑に載っていましたが,この地方
にはないそうです.クロミノニシゴリの別名と記しているHPもありました.
猫が洞池の南側の金網の中にあるホソバノイヌビワ(細葉犬枇杷,クワ科)とその実を観察しました.直ぐ横には普通のイヌビワ(犬枇杷,クワ科)もありました.ま
だ青い実を試食した人もいました.苦くてうまくなかったようです.イヌビワの実を割って,中にイヌビワコバチ(犬枇杷小蜂,イチジクコバチ
科)の羽のある成虫を見つけました.卵からかえった小さく動くものも複数見つけました.雌花にメスのイヌビワコバチが無理やり入る時に,翅や触覚もとれま
すが,受粉をして,卵を産み,その卵から生まれた幼虫は花粉を食べて成虫になり,雄のイヌビワコバチが穴をあけて入ったときに,その穴から出て行くという
説明がありました. ヨコズナサシガメが, 木の幹にいるのを見つけました.表面に白い縁取りがありました.
いつもの終了時間になり急いで,里山の家に戻りました.途中で,アカツメクサ(赤詰草,マメ科)とタイワンフウ(台湾楓,
フウ科)を観察しました.タイワンフウの実は,アメリカフウ(亜米利加楓,フウ科)の実より一回り小さく,実にとがりもありませんでした.コトネアスター
(Cotoneaster,バラ科)も複数植わっていました.名大にもたくさんあるものです.ウツギ(空木,ユキノシタ科)もすぐ横にありました.白い花
が少しだけ残っていました. 文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子 |
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2014年6月度の印刷用観察記録
2014年6月度の印刷用観察記録です。
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