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2016年 > 4月度の観察記録
4月度の観察記録
2016年4月度の観察記録です

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平和公園周辺の並木のサクラ(桜,バラ科)の花は散っていましたが,まだかなり残っていました.空は曇っており,日差しがなかったので,暑くはならず歩きやすい日になりました.スイレン(睡蓮,スイレン科)の葉で水面がほぼ埋まった新池では,アオサギ(青鷺,サギ科)とオオバン(大鷭,クイナ科)がそれぞれ2羽,カワウ(川鵜,ウ科)が3羽とカイツブリ(鳰,カイツブリ科)が1羽来ていました.土手では,カワラヒワ(河原鶸,アトリ科)が鳴きながら移動していました.ムクドリ(椋鳥,ムクドリ科)やヒヨドリ(鵯,ヒヨドリ科)も周辺を飛んでいました.東星広場奥の遠景の桜は,なかなかのものでした.参加者は,子供7名と大人28名でした.最後の方は2つのグループに分かれました.

平和公園周辺のサクラ アオサギ

まず,里山の家の前で,先月の報告を見ました.昨年の観察記録をまとめた本の紹介もありました.1年や2年で,平和公園の動植物の変化は分からないという話題が出ました.報告の中にあったイリエワニ(入江鰐,クロコダイル科)の卵はタイのものだったそうです.カンアオイ(寒葵,ウマノスズクサ科)の花が食べられていた件で,ナメクジ(蛞蝓,ナメクジ科)が日本固有のものから大きなタイワンナメクジ(台湾蛞蝓,ナメクジ科)に入れ替わっているという報告がありました.また,種々の植物が盗採にあっていることに対して,注意はしても,何をされるか分からないので係争しないようにとのことでした.大高緑地の竹林ではルールを決めて,筍掘りを認めているという報告もありました.
根が絡まった人参をご自分の畑から持ってこられた人がいました.根の成長点が2つあったためで,成長方向を見て右巻きに根が絡まっていました.巻き方に関連して,風呂の排水の水の渦巻が北半球で右巻きで,南半球で左巻きという話しがまた出ました.赤道直下のアフリカでは,赤道を挟んで,渦の方向が変わるというパフォーマンスを見たことがありますが,コリオリの力は非常に小さく,渦潮のような巨大なものには効果がありますが,風呂の排水程度のものには効かないと物理学的には考えられています.

根が絡まったニンジン

季節によって葉の色が変わる園芸種のノムラカエデ(野村楓,カエデ科,別名:ノムラモミジ)を持ってきた人がいて,その小さな花を観察しました.モモチョッキリ(桃丁切,オトシブミ科)の標本を持ってきた人もいました.自宅のバケツの水に飛び込んできたそうです.小幡緑地の桃の木で採取された経験があるそうです.象の鼻のように見えるのは口吻で,先端に顎がついており,ものを切るときは少しずつ囓り回るそうです.
次に,10cm大の珪質頁岩(シェール)を観察しました.1000万年前のもので,放散虫がマリンスノウとなって堆積したもので,石油(oil shale)が含まれているそうです.秋田県の鮎川油ガス田では,日本でもオイルシェールを採掘していると言ってもよいかもしれないようです.
最後に,以前に中道で捕獲した6頭のホソオチョウ(細尾蝶,アゲハチョウ科)の幼虫から,1頭が孵化したので標本にして持って来られました.この蝶は余り飛翔距離は長くないので,人間がアジア大陸東部(韓国)から移動させたものということでした.

ノムラカエデ モモチョッキリ 珪質頁岩(シェール) ホソオチョウ

ここまでで10時を過ぎて,出発して大坂池南側の道を歩き始めました.まず,オオシマザクラ(大島桜,バラ科)を観察して,白い花びらを唇に押し当てて,桜笛で遊びました.花をピンと張るのがこつのようで,口笛を吹けない女性参加者でもよい音を出していました.逆に,口笛を吹ける子供達が悪戦苦闘していました.
オオシマザクラの葉の葉柄にある赤い外蜜線を観察しました.普通は2つですが,1つだったり3つだったりしていました.アリ(蟻,アリ科)をこの蜜腺で呼び寄せて,葉を食べる蛾などの幼虫駆除に協力させているようです.このとき,大坂池の大きなアオサギがゆったりと飛び立ちました.

オオシマザクラの外蜜腺

ツチイナゴ(土稲子,イナゴ科)を捕獲して,瓶にいれて観察しました.昆虫少年が,「幼生のときは緑色と枯れ草色の2種があり,大きくなると皆,枯れ草色になる」という説明をしてくれました.ツバメシジミ(燕小灰蝶,シジミチョウ科)についても翅の赤い点で,ヤマトシジミ(大和小灰,シジミチョウ科)と区別できることを説明してくれました.何故,シジミ(小灰)という名前がついたかの問が出て,翅を広げるとシジミガイ(蜆貝,シジミガイ科)に似ているからという説明がありました.ただし,中国語からという説もあるようで,使う漢字は中国語源の小灰を使うという指摘もありました.また,ヤマトシジミはカタバミ(片喰または酢漿草,カタバミ科)が食草ですが,ツバメシジミはマメ科植物が食草です.飛ぶ時期は,どちらも3月から11月のようです. 
ケブカクチブトゾウムシ(毛深口太象虫,ゾウムシ科)とヒゲシロハサミムシ(髭白鋏虫,オオハサミムシ科)を見つけました.ヒゲシロハサミムシの触覚の先端は確かに白く見えました.図鑑はいつでも見られるので,子供たちに本物をよく見るように言いました. 

【外部リンク】ヤマトシジミ、ルリシジミの見分け方(『蝶の図鑑(www.j-nature.jp)』)

ツチイナゴ ツバメシジミ(腹側) ツバメシジミ(背側) ヒゲシロハサミムシ

大坂池を囲っている擬木の南側面にナナホシテントウ(七星天道虫,テントウムシ科)の蛹(さなぎ)を見つけました.一番危険な時期に,暖を取り早く羽化できるようにするためという説明がありました.周辺をよく観察すると,ナナホシテントウの蛹だけでなく,オレンジ色の卵,幼虫,脱皮したての蛹,および成虫もいました.餌は,アリマキ(蟻巻または?虫,アブラムシ科,別名:アブラムシ)を幼虫も成虫も食べているそうです.幼虫と成虫が同じものを食べるのは,完全変態の昆虫としては珍しいようです.網をカラスノエンドウ(烏豌豆,マメ科)の上で振って(スウィーピング),アリマキを捕獲しました.

ナナホシテントウの蛹 ナナホシテントウ アリマキ

ここで,ビロードツリアブ(天鵞絨吊虻,ツリアブ科)を見つけて観察しました.4月から5月にかけての短い期間しか見られませんが,何故か男の子の手から逃げないのでよい写真が撮れました.名前の由来を,図鑑を読み上げて説明がありました.蜜を吸っている姿が,釣りのよう見える,あるいは吊られているように見えるからということでした.
キタキチョウ(北黄蝶,シロチョウ科),モンシロチョウ(紋白蝶,シロチョウ科),ツマグロヒョウモン(褄黒豹紋,タテハチョウ科)を一緒に瓶に入れたところ,モンシロチョウがしきりに飛んでよい写真が撮れませんでした.このとき,周辺でウグイス(鶯,ウグイス科)が上手に鳴きました.足下に,紫色の花を付けたイモカタバミ(芋方喰,カタバミ科)が群生していました.オシベの葯(やく)が黄色いのがイモカタバミで,白い場合はムラサキカタバミ(紫方喰,カタバミ科)です.
2016年度箕面自由学園中学校第1回プレテストで,ナナホシテントウの食べるもの(アブラムシ)と同時に背中の星の位置を答えさせる試験問題が出たことが話題になりました.よく観察すると一番上の星は,頭の方から見るとハート形に見えました.テントウムシの背中の星の数は,種類によって0〜28個であることの説明がありました.

【外部リンク】第1回プレテスト 理科(箕面自由学園)


【外部リンク】テントウムシ類の星の数(ネタ袋)

ビロードツリアブ キタキチョウ イモカタバミ

少し奥まった所で,ゴヨウアケビ(五葉通草,アケビ科)の花が咲いており,写真を撮りましたが,他の参加者はテントウムシに夢中でした.交尾中のヒメカメノコテントウ(姫亀甲天道,テントウムシ科)を見つけ,瓶に入れて観察しました.雄雌の大きさがかなり違いました.背中の模様は,雌が背筋型で雄が斑紋型でした.逆の例もあるそうです.周辺にオヤブジラミ(雄藪虱,セリ科)がたくさん群生していました.ムーアシロホシテントウ(ムーア白星天道,テントウムシ科)も見つけました.ヨツホシテントウ(四星天道,テントウムシ科)もそこで見つけました.当初は,ベダリアテントウ(vedalia ladybird,テントウムシ科)ということでしたが,後でヨツボシテントウということが分かりました. 

ゴヨウアケビの花 交尾中のヒメカノコテントウ ムーアシロホシテントウ

ツマグロヒョウモンを捕獲して皆で観察しました.アカタテハ(赤立羽,タテハチョウ科)との違いが話題になりました.男の子達がカラスウリ(烏瓜,ウリ科)の4つの実をとってきたので,実の袋を割ると「ぽん」という音を出すものもありました.中は整然と種が並んでおり,女の子が蜂の子のようだと言いました.

ツマグロヒョウモン カラスウリの実

アカマツ(赤松,マツ科)の松ぼっくりを拾い,松かさの間に種があることを確認しました.コバノガマズミ(小葉莢?,スイカズラ科)のしわのよった新葉の緑が大変綺麗でした.近くのコナラ(木楢,ブナ科)の幼木の雄花を観察しました.雌花はまだ見つかりませんでした.ミツバアケビ(三葉通草,アケビ科)の花を採ってきた参加者がいて,濃い紫色の雄花と雌花を観察しました.

アカマツの松ぼっくり

水田の横のウスノキ(臼木,ツツジ科)の地味な下向きの花を観察しました.里山の整備で,この木を大事にする人がいるそうです.梅の木に,アカホシテントウ(赤星天道,テントウムシ科)の幼虫がたくさんいました.隠れ帯のついた小さなナガコガネグモ(長黄金蜘蛛,コガネグモ科)がこの木に網を張っていました.フランスから来ていたハーフの男の子がいたので,英語とフランス語でテントウムシはどう言うのかが話題になりました.英語は,Ladybird(マリア様の鳥,英),Ladybug(米),フランス語では,Coccinelle(コクシネル)というようです.Ladybirdは,7つの悲しみを持つマリア様が赤いマントを着ているように見えるところからきているそうです.ちなみに,テントウムシを天道虫と書くのは,テントウムシは飛び立つ時に,太陽に向かい木の枝先などに登る習性を『天への道』を教えてくれる虫とみなしたと言われています.

【外部リンク】テントウムシって英語でLadybirdとはどうして? (Jackと英語の木)


水たまりの中のアカガエル(赤蛙,アカガエル科)のオタマジャクシを男の子が網ですくい,透明容器に入れて里山の家に持って帰りました.
感想会を里山の家の中でしようとしましたが,先客で満員だったので,倉庫のコンクリートの三和土(たたき)に青シートを敷いて行いました.いつもの女性参加者から,抹茶入り若葉クッキーが提供されました.来月は,イモムシの形のお菓子が提供されそうです.テントウムシの研究者がいたので,種々のテントウムシを詳しく観察できてよかったという感想が出ました.春の楽しい観察会になりました.

観察項目:モモチョッキリ,ノムラカエデ,ニンジン,ホソオチョウ,珪質頁岩,オオシマザクラ,ツチイナゴ,ツバメシジミ,ナナホシテントウの卵,幼虫,蛹および成虫,ビロードツリアブ,ツマグロヒョウモン,ケブカクチブトゾウムシ,キタキチョウ,モンシロチョウ,ミツバアケビ,ゴヨウアケビ,コナラ,ヒゲシロハサミムシ,ヒメカメノコテントウ,ムーアシロホシテントウ,ヨツボシテントウ,アリマキ,モモブトカミキリモドキ,ヒメスジカミキリ,カラスウリの実,タネツケバナ,ツメクサタコゾウムシ,ヤマトシジミ,ムカデ,コナラの雄花,アカホシテントウ,アカガエルのオタマジャクシ

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子

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2016-7-9 140

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