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5月度の観察記録
2016年5月度の観察記録です

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雲は少しありましたが,日差しの強い晴天でした.街路樹のサクラ(桜,バラ科),イチョウ(銀杏,イチョウ科)),ユキヤナギ(雪柳,バラ科),トウカエデ(唐楓,カエデ科)の緑が大変きれいでした.新池土手のセンダン(栴檀,センダン科)は薄紫色の小さな花をいっぱい咲かせていました.ハリエンジュ(針槐,マメ科,別名:ニセアカシア)の白い花は,まだ少し残っていましたが,大半の花びらは下に落ちて積もっていました.新池の岸辺にはシラン(紫蘭,ラン科)とシロバナシラン(白花紫蘭,ラン科)が混じって咲いていました.スイレン(睡蓮,スイレン科)の葉が新池の水面を覆っているため,水鳥はいませんでした.蛙池には,今年もカダヤシ(蚊絶,カダヤシ科)がいました.その水面上をギンヤンマ(銀蜻蜒,ヤンマ科)の雄がゆうゆうと飛んでいました.里山の家と大坂池の間にはキアゲハ(黄揚羽,アゲハチョウ科)が一頭いて,泥土から吸水をしていました.参加者は,子供7名と大人28名でした.

センダンの花 キアゲハ

里山の家の中で,観察会を始めました.先月の報告と関連して,ホソオチョウ(細尾蝶,アゲハチョウ科)が既に平和公園で飛んでいるという報告がありました.外来種のホソオチョウの駆除は成功しなかったようです.NHKのアナウンサーは,ゴールデンウィークという用語は,大映の宣伝文句として1951年に作られた和製英語のため使わず,大型連休という用語を使うという話がでました.
 机の上のイスノキの虫こぶであるイスノキハタマムシ(柞葉玉付子)をまず観察しました.虫こぶをナイフで割って,中の黄色いヤノイスアブラムシ(ヤノ柞油虫,アブラムシ科)を確認しました.サクラの赤い鶏冠状の虫こぶであるサクラハトサカフシ(桜葉鶏冠附子,別名:サクラトサカフシ)も観察しました.サクラフシアブラムシ(桜附子油虫,アブラムシ科)が入っているそうです.エゴノキ(野茉莉,エゴノキ科)の虫こぶと有名なエゴノネコアシ(野茉莉猫足)の話題も出ました.最後に,平和公園で初めて見つけたという虫こぶであるコナラメリンゴフシ(小楢芽林檎附子)を観察して,ナイフで割ると,小さなナラメリンゴタマバチ(楢芽林檎玉蜂,タマバチ科)が出てききました.羽が4枚であるので,羽が2枚の蠅ではないことを確認しました.
葉に囲まれたヒメアカタテハ(姫赤立翅,タテハチョウ科)の蛹も観察しました.また,ホシミスジ(星三筋,タテハチョウ科)のさなぎが枯葉に擬態しているのも観察しました.周辺の緑の葉を食べ,残った枯葉と隣り合っていましたが,区別がつきませんでした.幼虫時の葉を丸めた巣もありました.

イスノキハタマムシ 虫こぶの中のヤノイスアブラムシ コナラメリンゴフシ ヒメアカタテハの蛹

10時過ぎに,出発しようとしたときに網を借りた男の子がクロスジギンヤンマ(黒条銀蜻蜒,ヤンマ科)の雄を捕獲してきました.通常のギンヤンマは,頭部が緑色ですが,このトンボは青色で,胸部に黒い条があり,腹部に青い斑点がありました.子供の頃,普通の雌雄のギンヤンマは名古屋でよく捕獲しましたが,このトンボは見たことがありませんでした.最近の北上種ではと言う人がいましたが,ウェブでは九州から北海道まで広く分布しているという記述があるので,その当時は名古屋に少なかっただけなのかもしれません.

【外部リンク】クロスジギンヤンマ(大阪府のトンボ)

クロスジギンヤンマの翅を子供達に持たせていたときに,指をかませて貴重な体験をさせたらという人もいましたが,血が出る可能性がありやめました.子供の頃ギンヤンマやオニヤンマ(鬼蜻蜒,オニヤンマ科)にかまれ,血がでて、痛い目にあったことを思い出しました.

クロスジギンヤンマ

里山の家の屋根の上には,ぎっしりと野草が繁っていました.これだけで,観察会ができると言う人もいました.セイタカアワダチソウ(背高泡立草,キク科)が多かったですが,チガヤ(茅萱,イネ科),クズ(葛,マメ科),オニタビラコ(鬼田平子,キク科),タカサゴユリ(高砂百合,ユリ科),オランダミミナグサ(和蘭耳菜草,ナデシコ科),マツバウンラン(松葉海蘭,ゴマノハグサ科),ススキ(芒、イネ科)などがありました.いつもはあるカラスノエンドウ(烏豌豆,マメ科)は見つけられませんでした.

オタマジャクシ池横のマサキ(正木,ニシキギ科)の花とノバラ(野薔薇,バラ科)およびサクランボ(桜桃)を観察しました.奥のバンブー(bamboo,イネ科)の周辺でタイワンタケクマバチ(台湾竹熊蜂,クマバチ科)を2〜3匹見つけました.昨年は,ブンブンともっと多くのタイワンタケクマバチが飛んでいましたが,今年は新しい巣穴もみつからず,まだ繁殖は少ないようでした.
男の子がシオヤトンボ(塩屋蜻蛉,トンボ科)を捕ってきました.シオカラトンボ(塩辛蜻蛉,トンボ科)かと思いましたが,昆虫少年が図鑑を調べて,腹部(尾)の先が黒くなく,小ぶりで胸部に黄色と黒色の条(すじ)がある特徴を確認しました.
オタマジャクシ池のショウブ(菖蒲,サトイモ科)には,地味な黄緑色の穂状の花がついていました.今年の連休に,私は浜名湖で根茎付きの菖蒲の入った温泉に久しぶりに入り,その香りで子供の頃を思い出しました.まだ,この子供の成長を願う習慣が廃れていないのをうれしく思いました.

マサキの花 サクランボ シオヤトンボ ショウブの花

大坂池横のシロツメクサ(白詰草,マメ科)の白い花に蜜蜂が来ていました.全てセイヨウミツバチ(西洋蜜蜂,ミツバチ科)の雌でした.雄は2倍くらい大きいそうです.黄色で横滑り的な飛び方をしており,多分東山ハニーと呼ばれている蜜蜂で,半径2kmくらいを飛び回りますが,野生のままでは冬は越せないという説明がありました.嬢王蜂は異様に大きく形も違うそうです.ニホンミツバチ(日本蜜蜂,ミツバチ科)はセイヨウミツバチに比べて小さくて黒っぽく,のんびり飛ぶそうです.ニホンミツバチを飼っている人が参加しており,この前の冬に7群の内6群が全滅したという報告がありました.ミツバチは,死ぬときに歩いて巣箱を出てくるので,全滅した巣箱から嬢王蜂も出てきて凍えて死んでおり,巣箱の中は空になったそうです.「我々も死ぬときは,跡を濁さずとしたい」という声もでました.空腹で死んだのではという参加者もいましたが,季節を考えると寒さだろうという回答でした.全滅した理由は,ミツバチの気管に寄生して体液を吸汁するアカリンダニ(Acarapis woodi,ホコリダニ科),あるいはネオニコチノイド系農薬の可能性がとりざたされていますが,まだ不明な点が多いようです.

シロツメクサとセイヨウミツバチ

ウメ(梅,バラ科)に緑色の2cm大の実がついていました.葉がほとんど食べられたサワフタギ(澤蓋木,ハイノキ科)がありました.よく探すと1匹だけサワフタギを食餌植物とするシロシタホタルガ(白下蛍蛾,マダラガ科)の幼虫が見つかりました.姿がトトロのネコバスに似ているという参加者がいました.

ウメの実 葉を食べられたサワフタギ シロシタホタルガの幼虫

すぐ横で,スイカズラ(鶯神楽,スイカズラ科)が白色と黄色の花を咲かせていました.エノキ(榎,ニレ科)の幼木の葉も食べられていましたが,これを食樹としているテングチョウ(天狗蝶,タテハチョウ科)の幼虫は見つかりませんでした.セアカヒラタゴミムシ(背赤扁芥虫,オサムシ科)を子供が見つけて観察しました.ハルジオン(春紫?,キク科)の花にモモブトカミキリモドキ(腿太髪切擬,カミキリモドキ科)の雌が多くいました.腿が太い雄は見つかりませんでした.ウメ(梅,バラ科)にアカボシテントウ(赤星瓢虫,テントウムシ科)とタマカイガラムシ(球介殻虫,タマカイガラムシ科)がたくさんついているのを見つけました.アカボシテントウは,幼虫,前蛹および蛹がいました.幼虫は,カイガラムシを食べていました.前蛹と背中が割れた蛹が特定の枝にぎっしりとついているのは異様でした.

スイカズラの花 セアカヒラタゴミムシ モモブトカミキリモドキ アカボシテントウの蛹

ヒメアカタテハを網で捕獲して,瓶に入れて観察しました.丈の高いキリ(桐,ゴマノハグサ科)には紫色の花と昨年の実が混在していました.下に落ちていた花を集めた女性参加者もいました.近くのエノキの幼木でテングチョウの緑色の蛹を1匹見つけて写真を撮りました.
昆虫少年がカルピス原液にバナナの実を漬けたシロップを使ったトラップを木の幹にぶら下げていました.後で集まった昆虫を捕りにくるそうです.
登りの藪こぎをして舗装道路に出ました.途中でキビタキ(黄鶲,ヒタキ科)の大きな鳴き声がしました.大乗寺との境界の石垣の由来について説明がありました.

ヒメアカタテハ テングチョウの蛹

周辺のソヨゴ(冬青,モチノキ科)の成長具合を観察して,周辺の樹木が崖からしみ出していた水を吸い上げ,湿地帯であった場所が乾燥しているという説明がありました.露頭から少しだけ水がしみ出しており,その下にはモウセンゴケ(毛氈苔,モウセンゴケ科)がわずかですがまだありました.コモウセンゴケ(小毛氈苔,モウセンゴケ科)は見つかりませんでした.歩きながら途中で,一株のオオバノトンボソウ(大葉の蜻蛉草,ラン科)のありかを教えてもらい,写真を撮りました. 
道なりに歩いて,東星ふれあい広場の斜面に行き,点在している実生してから2〜4年目のマツ(松,マツ科)を観察しました.1年目の先端の雌花,昨年の雌花(松かさ)と3年目の松かさを観察しました.マツカレハ(松枯葉,マダラガ)の幼虫である松毛虫かマツノキハバチ(松葉蜂,ハバチ科)が昨年の古い葉を食べた跡を見つけました.これは益虫で,植木屋も前年の葉は摘むそうです.雄花も別のマツの木で見つけました.
この場所は12年前に撤去された清風荘の跡地で,当初建設予定の里山文化会館や森づくり交流センターはCOP10後,お金がなくなり幻となっています.ここで,キムネクマバチ(黄胸熊蜂,ミツバチ科)を捕獲して観察しました. 
ヒナギキョウ(雛桔梗,キキョウ科)とニワゼキショウ(庭石菖,アヤメ科)の小さな花も咲いていました.広場東端に植えられたヤマハンノキ(山榛木,カバノキ科)は,東北地方のもので,ここで実生しているハンノキ(榛木,カバノキ科)を移植すればよかったという話が出ました.ハンノキの雌花を観察しました.
ここで,ウンモンクチバ(雲紋朽葉,ヤガ科)を捕獲して,瓶に入れて観察しました.

ニワゼキショウ ウンモンクチバ

ここのシロツメクサの花にもミツバチが来ていて,ニホンミツバチを期待しましたが,最終的にはすべてセイヨウミツバチの雌であることを確認しました.ハンノキの葉にハバチ(葉蜂,ハバチ科)の幼虫を1匹見つけました.オオミズアオ(大水青,ヤママユガ科)が大繁殖したことがあるという説明もありました.

ハバチの幼虫

感想会は,里山の家の中で,2つの机を並べて,椅子を追加して行いました.瓶に入れたコムラサキ(小紫色,タテハチョウ科)が回ってきたので翅に紫色がでるように角度を変えて写真を撮りました.いつもの女性から先月の約束通り,アゲハのイモムシと朽葉の形と色をしたクッキーが振る舞われました.抹茶で色付けしたアゲハのイモムシの方は人気がなく,最後まで残っていました.今回の観察会では,イモムシが少なかったという感想がでました.クロスジギンヤンマも,子供の頃には名古屋で見たことがないことがまた話題になりました.さわやかな楽しい観察会になりました.
 
観察項目:イスノキハタマフシ,ヤノイスアブラムシ,ナラノメリンゴタマバチ,ヒメアカタテハ,ヨモギ,ホシミスジ,クロスジギンヤンマ,ショウブ,タイワンタケクマバチ,シロシタホタルガの幼虫,サワフタギ,キリの花,ウメ,アカボシテントウの幼虫,前蛹と蛹,トラップ,モウセンゴケ,テングチョウの蛹,モンキチョウ,シオヤトンボ, シオカラ,アオスジアゲハ,ナミアゲハ,ナガサキアゲハ,ヒメアカタテハ,キビタキ,カワセミ

文・写真:伊藤義人 監修:瀧川正子

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