曇りがちの晴れでした.日差しのあるときは大変暑く,里山の家に帰ったときは上着も汗だくになりました.新池周辺は,クマゼミ(熊蝉,セミ科)の大きな鳴き声一色でした.新池の水面はスイレン(睡蓮,スイレン科)と藻ですっかり覆われていました.出水口にわずかに残った水面上にチョウトンボ(蝶蜻蛉,トンボ科)とギンヤンマ(銀蜻蜓,ヤンマ科)が飛んでいました.新池土手のアカメガシワ(赤芽柏,トウダイグサ科)は黒い小さな丸い実をたくさんつけていました.サルスベリ(百日紅,ミソハギ科)は濃い紫紅色と白色の花が満開でした.参加者は大人13名だけでした.子供たちはお盆でどこかに遊びに出かけているようでした.
10:08に里山の家を出発しました.大坂池北側の元畑で,コナラシギゾウムシ(木楢鴫象虫,ゾウムシ科)の雌雄を捕獲して比較しました.口吻の長さは雌の方が少し長いようでした.口吻の途中から両側に長い触覚が出ていましたが,口吻の長さ方向の中間から出ているのが雄で,根元の方から出ているのが雌ということでした.雄は,交尾するだけでどんぐりに穴をあけない(働かない)のでこのようになっているという説明がありました.
アレチヌスビトハギ(荒地盗人萩,マメ科)を引き抜いて,根についた楕円球形の1mm大の根粒を観察しました.もっと大きな根粒を見るために,許可を得て炭焼広場の畑の大豆を引き抜いて数mm大の根粒を観察しました.マメ科だけでなくニレ科にも根粒菌はつきますが,どうしてかはわからないようです.窒素N2を固定してアンモニアNH3からNO3-を持つ硝酸塩にして宿主の生育に貢献する共生ですが,根粒菌には何の利益があるのかという質問が出ました.そこでは,窒素を還元してアンモニアを作るときにエネルギーをもらうということでしたが,この反応には逆にエネルギーがいるので,マメ科の植物から栄養をもらっているようです.
シマスズメノヒエ(島雀稗,イネ科)の紹介がありました.穂の黒い柱頭と葯(やく)あたりから粘液が出ていて,それを舐めた参加者から甘いという感想が出ました.ベトベト草として嫌がられている野草です.実際に手で触った女性参加者は,早く手を洗いたいと言っていました.甘いので発酵しているのではという説明でしたが,甘い粘液の正体はわからないということでした.後で調べると,これは付着散布のためシマスズメノヒエが出しているのではなく,穀物の病気(麦角病)で,バッカク菌科の菌におかされているということでした.他の穀物でも同じように,この菌がつくと細胞が溶けて甘い粘液になるようです.デンプンが糖になり発酵しているといってもよいようです.
湿地へ行き,いつもは数十ある白いサギソウ(鷺草,ラン科)の花が1つしかないことを確認しました.誰かが踏み荒らした跡もなく,理由はわかりませんでした.根につくラン菌がサギソウに栄養を与えますが,弱酸性を好むそうなので,酸性度が変わったのかもしれません.シラタマホシクサ(白玉星草,ホシクサ科)は,既に白いごく小さな玉を茎の先端につけていました.ミズギボウシ(水擬宝珠,ユリ科)やシロバナサクラタデ(白花桜蓼,タデ科)はいつものようにありました.
サルトリイバラ(猿捕茨,ユリ科)を観察した後で,日本で一番大きな蝶であるモンキアゲハ(紋黄揚羽,アゲハチョウ科)が飛んでいるのを見つけました.女性参加者が1度網で捕獲しましたが,網の縁から逃げてしまいました.お盆なので功徳を施したと思えばよいという慰めの言葉がでました.
稲の茎についた脱皮したてのショウリョウバッタ(精霊飛蝗,バッタ科)とその白い脱皮殻を見つけて観察しました.ショウリョウバッタは,非常に柔らかい状態でした.シオカラトンボ(塩辛蜻蛉,トンボ科)の脱皮殻も見つけました.アメリカザリガニ(亜米利加蜊蛄,ザリガニ科)が水田の出水路際にいました.
薄いピンク色のナツズイセン(夏水仙,ヒガンバナ科)の大きな花がたくさん咲いていました.花茎と花しかなく,ヒガンバナ(彼岸花,ヒガンバナ科)と同じでした.昔畑で栽培していた園芸種という説明でした.ここで,2匹のマメコガネ(豆黄金,コガネムシ科)の写真を撮りました.周辺では,10数羽のメジロ(目白,メジロ科)の群れが来ており,コゲラ(小啄木鳥,キツツキ科)の鳴き声もしました.
周辺でツクツクボウシ(寒蝉,セミ科)がもう鳴いていました.奥池から北へ少し行ったところでエゴノキ(野茉莉,エゴノキ科)の1cm大の球状の実を観察しました.バナナの房状の虫こぶのエゴノネコアシフシ(野茉莉猫足付子)が枝の先端に多くあるのを観察しました.猫の足のようにも見え,ネーミングの妙だと思いました.エゴノネコアシアブラムシ(野茉莉猫足油虫,アブラムシ科)による虫こぶであるという説明がありました.エゴノキにノブドウ(野葡萄,ブドウ科)が巻き付き,瑠璃色,緑色および紫色の5mm大の球形の小さな実をたくさんつけていました.この実からワインは出来るかという質問が出ましたが,この実はまずくワインはできないということでした.
オオウマノスズクサ(大馬鈴草,ウマノスズクサ科)のあるところでジャコウアゲハ(麝香揚羽,アゲハチョウ科)が飛んでいるのを見つけ,網で捕獲して写真を撮りました.オオウマノスズクサに数匹のジャコウアゲハの幼虫もいるのを見つけて皆で観察しました.ホシミスジ(星三筋,タテハチョウ科)も近くの葉にとまっていました.
ヤブガラシ(藪枯らし,ブドウ科)にとまったアオスジアゲハ(青条揚羽,アゲハチョウ科)が吸蜜をしていました.サトキマダラヒカゲ(里黄斑日陰,タテハチョウ科)も網で捕まえて,タテハチョウ科の特徴である前脚2本が退化して,見える脚が4本であるのを確認しました.どうして退化したのかという疑問がでました.退化した前足2本には感覚毛があり,感覚器官として機能しています.3節に分かれている胸部から一対ずつ脚が出るという基本は変えず,タテハチョウ科の蝶は前足の機能をカマキリ(蟷螂,カマキリ科)のように変化させているようです.マルバアオダモ(丸葉青?,モクセイ科)とヤマハゼ(山櫨,ウルシ科)の実を観察しました.カラスウリ(烏瓜,ウリ科)のしぼんだ花も見つけて写真を撮りました.
感想会を里山の家の中で行いました.いつもの女性から懐かしいシベリヤのお菓子が提供されました.羊羹(ようかん)や餡子(あんこ)をカステラで挟んだもので,最近のNHKの朝ドラで出てきたという説明がありました.今回は北海道産の南瓜のペーストの餡が挟んでありました.私は子供の頃,緑色の羊羹をはさんだ大きな三角形のシベリアを駄菓子屋で何度か買った覚えがあります. |
この記事の添付ファイル | |||
ファイル名 | 掲載日 | ヒット | |
8月度の観察記録
2016年8月度の観察記録です
| 2016-11-3 | 216 | |
ページ移動 | |
7月度の観察記録 | 9月度の観察記録 |