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8月度の観察記録
2016年8月度の観察記録です

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曇りがちの晴れでした.日差しのあるときは大変暑く,里山の家に帰ったときは上着も汗だくになりました.新池周辺は,クマゼミ(熊蝉,セミ科)の大きな鳴き声一色でした.新池の水面はスイレン(睡蓮,スイレン科)と藻ですっかり覆われていました.出水口にわずかに残った水面上にチョウトンボ(蝶蜻蛉,トンボ科)とギンヤンマ(銀蜻蜓,ヤンマ科)が飛んでいました.新池土手のアカメガシワ(赤芽柏,トウダイグサ科)は黒い小さな丸い実をたくさんつけていました.サルスベリ(百日紅,ミソハギ科)は濃い紫紅色と白色の花が満開でした.参加者は大人13名だけでした.子供たちはお盆でどこかに遊びに出かけているようでした.
里山の家の屋根は,タカサゴユリ(高砂百合,ユリ科)などの背の高い野草でいっぱいでした.観察会の集合は,暑いのでクーラーの効いた里山の家の中で行いました.まず,先月の報告を皆で見ました.報告の中のキアゲハ(黄揚羽,アゲハチョウ科)に関連して,セリ科の植物を食草にする幼虫を飼育したとき,パセリ(Parsely和蘭芹,セリ科)が好きでミツバ(三葉,セリ科)には見向きもしなかったという報告がありました.
平和公園で,従来いなかったトノサマガエル(殿様蛙,アカガエル科)が水田で見つかったという報告もありました.捕獲後に冷凍して駆除しているそうです.誰かが持ち込んだ可能性が高いですが,居着いてくれてもよかったのではという意見も出ました.外来種でも原産地で絶滅した場合は,種を残すという意味で,駆除は必要ないのではという意見もありました.
ハンゲツオスナキグモ(半月雄鳴蜘蛛,ヒメグモ科)を70〜80%のアルコールに浸けたものを持って来た人がいて観察しました.この程度のアルコール濃度が,昆虫などの保存によいそうです.同じ人が先日野焼きされた中でのカマキリ(蟷螂,カマキリ科)の複数の卵鞘から合計430匹のカマキリが生まれたという報告がありました.卵鞘の耐火性が証明されました.もちろん,孵化しなかった卵鞘もあったようです.どうやって孵化して動くカマキリを数えたのかという疑問が出ました.1匹ずつつぶしていけばできるという物騒な意見もでました.

ハンゲツオスナキグモ

10:08に里山の家を出発しました.大坂池北側の元畑で,コナラシギゾウムシ(木楢鴫象虫,ゾウムシ科)の雌雄を捕獲して比較しました.口吻の長さは雌の方が少し長いようでした.口吻の途中から両側に長い触覚が出ていましたが,口吻の長さ方向の中間から出ているのが雄で,根元の方から出ているのが雌ということでした.雄は,交尾するだけでどんぐりに穴をあけない(働かない)のでこのようになっているという説明がありました.

コナラシギゾウムシの雌雄

アレチヌスビトハギ(荒地盗人萩,マメ科)を引き抜いて,根についた楕円球形の1mm大の根粒を観察しました.もっと大きな根粒を見るために,許可を得て炭焼広場の畑の大豆を引き抜いて数mm大の根粒を観察しました.マメ科だけでなくニレ科にも根粒菌はつきますが,どうしてかはわからないようです.窒素N2を固定してアンモニアNH3からNO3-を持つ硝酸塩にして宿主の生育に貢献する共生ですが,根粒菌には何の利益があるのかという質問が出ました.そこでは,窒素を還元してアンモニアを作るときにエネルギーをもらうということでしたが,この反応には逆にエネルギーがいるので,マメ科の植物から栄養をもらっているようです.
すなわち,根粒菌は葉で光合成された糖をもらい,有機酸に換え,それを酸化してATP(アデノシン三リン酸)と還元剤にして,窒素を固定するための酵素(触媒)のニトロゲナーゼを活性化するようです.マメ科植物と根粒菌はお互いに栄養を与え合っている共生関係のようです.

大豆の根粒

シマスズメノヒエ(島雀稗,イネ科)の紹介がありました.穂の黒い柱頭と葯(やく)あたりから粘液が出ていて,それを舐めた参加者から甘いという感想が出ました.ベトベト草として嫌がられている野草です.実際に手で触った女性参加者は,早く手を洗いたいと言っていました.甘いので発酵しているのではという説明でしたが,甘い粘液の正体はわからないということでした.後で調べると,これは付着散布のためシマスズメノヒエが出しているのではなく,穀物の病気(麦角病)で,バッカク菌科の菌におかされているということでした.他の穀物でも同じように,この菌がつくと細胞が溶けて甘い粘液になるようです.デンプンが糖になり発酵しているといってもよいようです.

【外部リンク】シマスズメノヒ工の粘る実の正体 (神奈川県植物誌調査会ニュース)

シマスズメノヒエ

湿地へ行き,いつもは数十ある白いサギソウ(鷺草,ラン科)の花が1つしかないことを確認しました.誰かが踏み荒らした跡もなく,理由はわかりませんでした.根につくラン菌がサギソウに栄養を与えますが,弱酸性を好むそうなので,酸性度が変わったのかもしれません.シラタマホシクサ(白玉星草,ホシクサ科)は,既に白いごく小さな玉を茎の先端につけていました.ミズギボウシ(水擬宝珠,ユリ科)やシロバナサクラタデ(白花桜蓼,タデ科)はいつものようにありました.

サギソウ ミズギボウシ

サルトリイバラ(猿捕茨,ユリ科)を観察した後で,日本で一番大きな蝶であるモンキアゲハ(紋黄揚羽,アゲハチョウ科)が飛んでいるのを見つけました.女性参加者が1度網で捕獲しましたが,網の縁から逃げてしまいました.お盆なので功徳を施したと思えばよいという慰めの言葉がでました.
水田に行き,あぜを歩くと多くの小さな土色のヌマガエル(沼蛙,ヌマガエル科)が水田のなかに飛び込みました.ウシガエルのオタマジャクシも水中にいました.稲の茎の周辺でキイトトンボ(黄糸蜻蛉,イトトンボ科)が飛んでいました.1枚の田んぼの中の稲の生育が南北で大きく異なることの説明がありました.稲穂の付き方が悪く生育の遅い方の稲は,植えた時期が遅いのと,機械植えの苗を使ったからだという説明がありました.機械植用に作られた苗の根は痛められるそうです.

サルトリイバラ ヌマガエル 生育が違うイネ

稲の茎についた脱皮したてのショウリョウバッタ(精霊飛蝗,バッタ科)とその白い脱皮殻を見つけて観察しました.ショウリョウバッタは,非常に柔らかい状態でした.シオカラトンボ(塩辛蜻蛉,トンボ科)の脱皮殻も見つけました.アメリカザリガニ(亜米利加蜊蛄,ザリガニ科)が水田の出水路際にいました.

脱皮したショウリョウバッタと抜け殻 シオカラトンボの脱皮殻 アメリカザリガニ

薄いピンク色のナツズイセン(夏水仙,ヒガンバナ科)の大きな花がたくさん咲いていました.花茎と花しかなく,ヒガンバナ(彼岸花,ヒガンバナ科)と同じでした.昔畑で栽培していた園芸種という説明でした.ここで,2匹のマメコガネ(豆黄金,コガネムシ科)の写真を撮りました.周辺では,10数羽のメジロ(目白,メジロ科)の群れが来ており,コゲラ(小啄木鳥,キツツキ科)の鳴き声もしました.
奥池で汲み上げた地下水がせせらぎ(水路)の途中で止まってしまい,水田に水が流れてこないというので下流から調査することにしました.名古屋市からは,水路を掃除するように言われたということでした.せせらぎの途中では湧水による小さな流れがある部分もありました.
70L/分で地下水を汲み上げている奥池横の配電盤を見て,汲み上げポンプに10Aの電流が流れており,渇水でもないことをまず確認しました.次に,奥池への出水の塩ビ管を確認すると水が出ていないことが分かりました.以前に見たときは水は出ていたそうです.どちらにしてもポンプの調子が悪いかフィルターの問題で水量が減ったことが水田に水が行かなかった理由のようでした.

ナツズイセン せせらぎ 配電盤

周辺でツクツクボウシ(寒蝉,セミ科)がもう鳴いていました.奥池から北へ少し行ったところでエゴノキ(野茉莉,エゴノキ科)の1cm大の球状の実を観察しました.バナナの房状の虫こぶのエゴノネコアシフシ(野茉莉猫足付子)が枝の先端に多くあるのを観察しました.猫の足のようにも見え,ネーミングの妙だと思いました.エゴノネコアシアブラムシ(野茉莉猫足油虫,アブラムシ科)による虫こぶであるという説明がありました.エゴノキにノブドウ(野葡萄,ブドウ科)が巻き付き,瑠璃色,緑色および紫色の5mm大の球形の小さな実をたくさんつけていました.この実からワインは出来るかという質問が出ましたが,この実はまずくワインはできないということでした.

エゴノキの実 エゴノネコアシフシ

オオウマノスズクサ(大馬鈴草,ウマノスズクサ科)のあるところでジャコウアゲハ(麝香揚羽,アゲハチョウ科)が飛んでいるのを見つけ,網で捕獲して写真を撮りました.オオウマノスズクサに数匹のジャコウアゲハの幼虫もいるのを見つけて皆で観察しました.ホシミスジ(星三筋,タテハチョウ科)も近くの葉にとまっていました.
7〜8mm大のシロオビトリノフンダマシ(白帯鳥糞騙,コガネグモ科)を見つけて写真を撮りました.クリ(栗,ブナ科)の木に大きな実がたくさんついていました.

ジャコウアゲハ ジャコウアゲハの幼虫 クリ

ヤブガラシ(藪枯らし,ブドウ科)にとまったアオスジアゲハ(青条揚羽,アゲハチョウ科)が吸蜜をしていました.サトキマダラヒカゲ(里黄斑日陰,タテハチョウ科)も網で捕まえて,タテハチョウ科の特徴である前脚2本が退化して,見える脚が4本であるのを確認しました.どうして退化したのかという疑問がでました.退化した前足2本には感覚毛があり,感覚器官として機能しています.3節に分かれている胸部から一対ずつ脚が出るという基本は変えず,タテハチョウ科の蝶は前足の機能をカマキリ(蟷螂,カマキリ科)のように変化させているようです.マルバアオダモ(丸葉青?,モクセイ科)とヤマハゼ(山櫨,ウルシ科)の実を観察しました.カラスウリ(烏瓜,ウリ科)のしぼんだ花も見つけて写真を撮りました.

ヤブガラシとアオスジアゲハ サトキマダラヒカゲ マルバアオダモの実 カラスウリの花

感想会を里山の家の中で行いました.いつもの女性から懐かしいシベリヤのお菓子が提供されました.羊羹(ようかん)や餡子(あんこ)をカステラで挟んだもので,最近のNHKの朝ドラで出てきたという説明がありました.今回は北海道産の南瓜のペーストの餡が挟んでありました.私は子供の頃,緑色の羊羹をはさんだ大きな三角形のシベリアを駄菓子屋で何度か買った覚えがあります.
今回は,観察したものを記録した後,子供達が参加しなかったので,個人の感想を言うのはやめました.71年前の翌日に思いをいたし,観察会をする平和公園の自然の豊かさに感謝したいと思います.

観察項目:カマキリの卵鞘 ,ハンゲツオスナキグモ,コナラシギゾウムシ,アレチヌスビトハギの根粒,大豆の根粒,ヤハズソウ,シマスズメノヒエ,サギソウ,シラタマホシクサ,ミズギボウシ,シロバナサクラタデ,ヌマガエル,ウシガエルのオタマジャクシ,ショウリョウバッタとその抜け殻,シオカラトンボの抜け殻,キイトトンボ,アメリカザリガニ,サワヒヨドリ,ギンヤンマ,オニヤンマ,ナツズイセン,モンキアゲハ,ジャコウアゲハ,ジャコウアゲハの幼虫,ホシミスジ,サトキマダラヒカゲ,シロオビトリノフンダマシ,ツクツクボウシ,エゴノネコアシフシ,マルバアオダモ,ヤマハゼ,カラスウリの花

文・写真:伊藤義人 監修:瀧川正子

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2016-11-3 116

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