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9月度の観察記録
2016年9月度の観察記録です

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曇り空でしたが観察会終了時には日が照ってきました.蒸し暑く,下着だけでなく上着も汗でぐっしょりになりました.スイレン(睡蓮,スイレン科)と藻に覆われた新池の出水口では,ギンヤンマ(銀蜻蜓,ヤンマ科)とクロアゲハ(黒揚羽,アゲハチョウ科)が飛んでいました.新池の土手に繁茂したクズ(葛,マメ科)は紫色の花を咲かせていました.新池の鉄フェンスには,ノアズキ(野小豆,マメ科)が数年ぶりに黄色い花を付けていました.東星ふれあい広場では,サッカーやバトミントンを20数名の高校生がしていました.周辺では,サルスベリ(百日紅,ミソハギ科)の3種の花が満開でした.参加者は,大人25名と捕虫網を持った子供5名でした.

ノアズキ 3種のサルスベリ

まず,先月の報告を皆で見ました.クロスジギンヤンマ(黒筋銀蜻蜓,ヤンマ科)に関連して,私が子供の頃多かったギンヤンマの方の比率が2割と少数派になっているということでした.湿地のサギソウ(鷺草,ラン科)は,花が咲く前に持っていかれたのではと言う人もいるという報告でした.シマスズメノヒエ(島雀の稗,イネ科)が甘かった原因について,植物が麦角菌に冒された病気ということが話題になりました.先月確認した地下水のくみ上げが止まっていたのは,ポンプが故障していたのが原因で,交換されたそうです.水田の水が少なくなって,大きなアメリカザリガニ(亜米利加蝲蛄,ザリガニ科)がたくさん育っていることが分かったそうです.
カラスウリ(烏瓜,ウリ科)の花の写真を見て,長い実を付けるセイロンウリ(錫蘭瓜,ウリ科)の花とよく似ているということでした. 
蝉の抜け殻調査をして,アブラゼミ(油蝉,セミ科),クマゼミ(熊蝉,セミ科),ツクツクボウシ(つくつく法師,セミ科),ニイニイゼミ(蟪蛄,セミ科)のそれぞれの雌雄の抜け殻を標本にしたものが披露されました.クマゼミには腹の真ん中にでっぱり「へそ」があり,表面が茶色,こげ茶色,白の3色で,アブラゼミは茶色と焦げ茶の2色であり,腹にでっぱりはないという判別方法の説明がありました.「へそ」は何のためについているのかという疑問が出ました.セミの雌雄は,先月に説明があったように産卵管の痕である「たらこ」があるかどうかで見分けられました.
セミの抜け殻調査では,地中から雄が先に出てくるという結果だったそうです.ニイニイゼミは数少なかったですが,水辺に近い所を好み,抜け殻は泥にまみれて,水辺の特定の木で多く見つかったという報告がありました.

セミの抜け殻調査

自宅で飼育しているキアゲハ(黄揚羽,アゲハチョウ科)の幼虫の写真を持って来た参加がいて,食草のフェンネル(Fennel,和名:ウィキョウ茴香,セリ科)やパセリ(parsley,和名:和蘭芹,セリ科)などのセリ科植物が無いのでコスモス(秋桜,キク科)の葉を食べている三齢幼虫でした.キク(菊,キク科)やミカン(蜜柑,ミカン科)の葉も食べるそうです.基本的に黒色と緑色の縞模様ですが,脱皮するごとに斑点の色が変わり全体の様子が変わるようです.
  
【外部リンク】キアゲハの幼虫の観察(僕らはみんな生きている)

次に,クワ(桑,クワ科)の葉の上に置かれた1匹のクワコ(桑子,カイコガ科)が紹介されました.カイコ(蚕,カイコガ科)の原種と言われるもので,繭は作りますがカイコのような立派なものではないそうです.オオスズメバチ(大雀蜂,スズメバチ科)が集まっている所をカメラの液晶画面で見せられました.関連して,クロスズメバチ(黒雀蜂,スズメバチ科)に刺された経験のある人が,毒の絞り出しと水洗いでなんともなかったという報告がありました.個人差があり,直ぐに病院に行った方がよいという意見もでました.

キアゲハの幼虫の写真 クワコ

台湾産のムクロジ(無患子,ムクロジ科)と洗衣藤の実と種が披露されました.実は長さが30cmくらいの鞘状であり,中に5cm大の円盤状の種が数個入っていました.ムクロジとこの種は砕いてシャボンに出来るという説明がありました.

ムクロジの種 洗衣藤の実 洗衣藤の種

紙パックにイヌビエ(犬稗,イネ科),ケイヌビエ(毛犬稗,イネ科),カゼグサ(風草,イネ科)およびヌカキビ(糠黍,イネ科)を挿したものが披露され,名前の確認がされました.女の子が網で捕まえたウスバキトンボ(薄羽黄蜻蛉,トンボ科)を皆で観察しました.周辺の上空では数十匹のウスバキトンボが飛んでいました.北海道でエゾジカ(蝦夷鹿,シカ科)の脊椎を拾ってきた女性参加者もいました.真ん中の空洞を見て,別の参加者から中の脊髄で作った脊髄ハンバーグがうまかったという感想がでました.ここまでで,10:20になってしまい,急いで出発しました.

ケイヌビエ ヌカキビ ウスバキトンボ エゾジカの脊椎

出発して直ぐの里山の家の前で,女の子が網で捕まえた2匹のウスバキトンボが飛べなくなったのを観察しました.まだ,胸は動いていました.網に化学薬品でも塗ってあったのかと思いましたが,男性参加者が同じ網でトンボ捕まえても,何ともないということで,網の端が当たってショック状態で動けなくなったのだろうということになりました.
2匹のトンボの色合いが違うので,図鑑で大きさ,羽の形,腹の形などでフローチャートに従って識別して,ショウジョウトンボ(猩々蜻蛉,トンボ科),アカトンボ(赤蜻蛉,トンボ科)そしてウスバキトンボが候補になりました.結局,最終的に2匹ともウスバキトンボということになりました.トンボの色は個体差や雌雄によって差があり,また,死ぬと直ぐに色も変わるので,モノクロ写真でトンボは識別した方がよいと言われているそうです.
大坂池の柵の外側で,スズメノヒエ(雀稗,イネ科)の穂が黒ずんで一部がべたべたしていました.なめてみて甘くはないという感想がでました.小さな花の咲いたアレチヌスビトハギ(荒地盗人萩,マメ科)と,まだ花のないケブカヌスビトハギ(仮称,まだ名前がついていない)を比較しました.この新種のヌスビトハギは,1983年には既に認識されていたそうです.

スズメノヒエ

大坂池の南の畑に植林したイボタノキ(水蝋の木,モクセイ科)の葉に,緑色の約4cm長のサザナミスズメ(漣雀,スズメガ科)の幼虫を見つけました.子供達に触らせた所,ぶよぶよだという感想がでました.小さな尾角もついていました.どちらが頭かという問に,子供達は正確に回答していました.頭の下は,小さな橙色の足がついていました.別のイボタノキで黒色の中に鮮やかな黄色い斑点のあるセスジスズメ(背筋雀,スズメガ科)も見つけました.セスジスズメの食草はブドウ科やサツマイモ科で,イボタノキは食草ではないので,移動中ではということになりました.

サザナミスズメの幼虫 セスジスズメの幼虫

小さなミノムシ(蓑虫,ミノガ科)とセイバンモロコシ(西蕃蜀黍,イネ科)も観察しました.男の子がアオモンイトトンボ(青紋糸蜻蛉,イトトンボ科)を捕まえて,大人の参加者が図鑑で名前を調べました.近くで,ママコノシリヌグイ(継子尻拭い,タデ科)とイシミカワ(石実皮,タデ科)の花,ヒメウラナミジャノメ(姫裏波蛇目,タテハチョウ科),オオカマキリ(大蟷螂,カマキリ科),シオカラトンボ(塩辛蜻蛉,トンボ科),およびコムラサキ(小紫,クマツヅラ科)の実を観察しました.
また,群生しているヤブマメ(藪豆,マメ科)に小さな花がたくさん咲いていました.そこでは,ツルマメ(蔓豆,マメ科)との区別は出来ませんでした.別の場所で,実のついた大豆の原種のツルマメを見つけて,ヤブマメと一緒に里山の家に持ち帰って比較しました.

ミノムシ アオモンイトトンボ オオカマキリ ヤブマメ

10cm以上の長さの黒いオオムカデ(大百足,オオムカデ科)がアブラゼミを食べているのを発見した男性参加者がいて,皆で観察しました.アブラゼミの羽は動いていませんでした.水の少なくなった池にヌマガエル(?)(沼蛙,ヌマガエル科)のオタマジャクシがたくさんいました.今の時期に,これまでいなかった種類のカエルのオタマジャクシであり,きちんと同定するため飼育しているという参加者がいました.

アブラゼミを食べるオオムカデ ヌマガエルのオタマジャクシ

湿地の通路の両側で,実がまだ緑色のイノコズチ(猪の子槌,ヒユ科),白い花を咲かせたシロバナサクラタデ(白花桜蓼,タデ科)およびガガイモ(鏡芋,ガガイモ科)の花を観察しました.同じ場所で青色の花をつけたツユクサと空色に白の縁取りの花をつけたメガネツユクサ(眼鏡露草,ツユクサ科)を見つけました.花の大きさや形が同じなので,ツユクサ(露草,ツユクサ科)の花の色があせたのではという人もいましたが,昨年も既にメガネツユクサはあったそうです.直ぐ横に大きな葉のブタクサ(豚草,キク科)もありました.
水田の3つのカカシ(案山子)を見て,雀などは直ぐに慣れて驚かないのにどうしてカカシを水田に置くのかという質問がでました.人を寄せつけないためというシニカルな回答が出ました.水田のイネは一本の苗から26本に分蘖(ぶんげつ)しているという説明がありました.
 いつもの湿地で,シラタマホシクサ(白玉星草,ホシクサ科),サワギキョウ(澤桔梗,キキョウ科),ヒヨドリバナ(鵯花,キク科),ミゾカクシ(溝隠,キキョウ科)が花を咲かせていました.

ガガイモの花 メガネツユクサとツユクサ サワギキョウ

里山の家で感想会をしましたが,後ろを歩いていた第2陣が10分くらい遅れてきました.ムネアカハラビロカマキリ(胸赤腹広蟷螂,カマキリ科)が東山公園でも見つかり,平和公園でも直に見つかるという予想がだされました.メガネツユクサは平和公園の別の場所でもあるとのことでした.いつも提供されるお菓子は,観音はちみつを使ったアーモンドタルトでした.生地の中に蜂蜜が入っており,さらに刷毛で蜂蜜を塗ったものでした.すっきりとした甘さでおいしいお菓子でした.ツクツクボウシの鳴き声が至るところで聞こえる夏の終わりの充実した観察会になりました.
 
観察項目:セミの抜け殻,キアゲハの幼虫の写真,クワコ,ムクロジの実,洗衣藤の実と種,クワコ,ウスバキトンボ,スズメノヒエ,アオモンイトトンボ,サザナミスズメ,セスジスズメ,ヒガンバナ,ヤブマメ,ツルマメ,ミント,カラスウリの実,アレチヌスビトハギ,ケブカヌスビトハギ(仮称),アブラゼミを食べているオオムカデ,アキノウナギツカミ,イシミカワ,ママコノシリヌグイ,シロバナサクラタデ,ヌマガエルのオタマジャクシ?,ガガイモ,メガネツユクサ,ツユクサ,シラタマホシクサ,ミズギボウシ,サワギキョウ,ミゾカクシ,ワレモコウ,カダヤシ

文・写真:伊藤義人 監修:瀧川正子

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2016-11-3 141

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