快晴で,風もなく11月としては日差しが強く,木陰が心地よい程でした.街路樹のトウカエデ(唐楓,カエデ科)は,すっかり紅葉したものからまだ緑色の葉のままのものまで色々でした.紅葉して小さな翼果の実をたくさん付けている1本のトウカエデに20羽くらいのエナガ(柄長,エナガ科)の群れが来ていました.メジロ(目白,メジロ科)も数羽混じっていましたが,マヒワ(真鶸,アトリ科)やイカルガ(斑鳩,アトリ科)はいませんでした.新池の南端の出水口付近では,4羽のオオバン(大鷭,クイナ科)と,オオバンが潜って取ってくる藻のおこぼれをもらおうと5羽のヒドリガモ(緋鳥鴨,カモ科)が直ぐ横にいました.参加者は,子供4名と大人20名でした.
参加者が皆集まる前に,里山の家の中で,数名の人が持って来た観察物をテーブルに広げました.チョウセンカマキリ(朝鮮蟷螂,カマキリ科)の卵鞘とミドリシジミ(緑小灰,シジミチョウ科)の卵のついた枝のやりとりがありました.この後,いつもより少し遅れて,里山の家の中で,観察会は始まりました.
今年は,蛾などの虫が少なくジョロウグモ(女郎蜘蛛,ジョロウグモ科)があまり太っていないということ,また,エナガ(柄長,エナガ科)の群れによく出会うという感想がでました.アサギマダラ(浅黄斑,アゲハチョウ科)とガガイモ(羅摩,ガガイモ科)の花が無関係という話しも出ました.
次に,オオスズメバチ(大雀蜂,スズメバチ科)のまだ生きている弱った雄を観察しました.蜂の巣の5%くらいが雄になり,集団で飛んで,次の女王バチと交尾をするときに,複数の雄は生殖器ごと取られて死んでしまい,交尾しなくて巣に帰って来た雄も追い出されて死んでしまうということでした.巣の中の働き蜂も最終的には全て死んで,残るのは交尾した女王バチだけで,成虫越冬して,次の春に新たな巣を作るという説明でした.雄は,働き蜂(雌)に比べ,多少大きく,黄色が深く,髭が長いという説明でした.
次に奈良公園で捕ってきた3mm大の真っ黒なミカドテントウ(帝天道,テントウムシ科)を観察しました.イチイガシ(櫟樫,ブナ科)の葉の裏で越冬する珍しいテントウムシという説明でした.観察していて,イチイガシの葉の表皮を食べているということでしたが,テントウムシは肉食のはずでカイガラムシなどを食べているはずいう指摘がありました.ただし,キイロテントウは,うどん粉病菌(一種のカビ)を食べる例もあり,葉についている菌を食べているのかもしれません.
10時をかなり過ぎてから出発しました.大坂池周辺では,コゲラ(小啄木鳥,キツツキ科)とジョウビタキ(尉鶲,ヒタキ科)の鳴き声がしていました.まず,大坂池の土手の野草を観察しました.セイタカアワダチソウ(背高泡立草,キク科)は,風で種が飛んできて,アレチヌスビトハギ(荒地盗人萩,マメ科)は人や動物によって運ばれてきたのだろうという推測が出ました.紫色の小さな花を付けた20cm丈のヤマラッキョウ(山辣韮,ヒガンバナ科ネギ属,旧ユリ科)を1株見つけて、根を掘って球根を観察しましたが,ノビル(野蒜,ヒガンバナ科ネギ属,旧ユリ科)の球根と同じように見え,多分食べられるという感想がでました.しかし,味がよくなく食用にはされないようです.
ムネアカハラビロカマキリ(胸赤腹広蟷螂,カマキリ科)の卵鞘を2つ,土手のウメ(梅,バラ科)の木などで見つけました.卵鞘の付いたウメの枝を切って,後で冷凍して駆除することにしました.子供達に,卵鞘を触らせると,硬いという感想がでました.
実をつけたタラヨウ(多羅葉,モチノキ科,別名:ハガキノキ)に痩せた雌のジョロウグモが網を張っていました.めずらしく雄はいませんでした.この時,モズ(百舌鳥,モズ科)の大きな鳴き声がしました.
クダマキモドキ(管巻擬,キリギリス科)の死骸を男の子が見つけて,平気で手で持って見せてくれました.ミヤマガマズミ(深山莢?,レンブクソウ科)の赤い実を観察しました.食べられますが,今回は誰も食べませんでした.アオハダ(青肌,モチノキ科)の綺麗に黄葉した木を歩きながら見ました.直ぐ横のアカマツ(赤松,マツ科)は,上の方に松かさをたくさん付けていましたが,もうじき枯れると指摘する参加者がいました.
木の葉に隠れていたオオカマキリ(大蟷螂,カマキリ科)の卵鞘を見つけた女性参加者がいました.盛んに子供達が蝶を補虫網で捕獲していたので理由を聞くと,中学生の昆虫少年が,ハナカマキリ(花蟷螂,ハナカマキリ科)を飼っており,その餌を集めているということでした.ランの花に偽装している頭に近づいた蝶を食べるそうです.トンボは,ハリガネムシ(針金虫,ハリガネ目の総称)に感染する可能性があるのでやらないそうです.コオロギ(蟋蟀,コオロギ科)やミルワーム(mealworm,ゴミムシダマシ科の幼虫の総称)はやることもあるそうです.ミルワームやアカムシ(赤虫,ユスリカ科の幼虫)は,成長抑制剤(ホルモン)が与えられていることがあり,気をつけないといけないという話しがまた出ました.
キラニン広場から南斜面を下りの藪こぎをしました.斜面で,オオカマキリの卵鞘をまた見つけました.藪こぎを終えたところで, 雄のジョウビタキを見つけました.人を見ても,直ぐには逃げませんでした.クチナガチョッキリ(口長短裁象虫,オトシブミ科)がアオツヅラフジ(青葛藤,ツヅラフジ科)の実に穴をあけているのを見つけました.5mm 大の実に卵を産み付けても,大きくなれないのではという心配がでました.また,幼虫は果肉を食べるのか種を食べるかの疑問も出ました.クチナガチョッキリは,体が小さいので,来春に種を食べて十分大きくなれると,ゾウムシを研究している人が言いました.ムラサキシジミ(紫小灰蝶,シジミチョウ科),ミノウスバ(蓑薄翅蛾,マダラガ科),ウラギンシジミ(裏銀小灰蝶,シジミチョウ科)などを観察しながら,里山の家に戻りました.
感想会は里山の家の中で行いました.ホンカリン(本花梨,マメ科)のパウンドケーキが,いつもの女性から提供されたので,2切れをおいしく食べました.感想としては,クチナガチョッキリに関するものが多く出ました.秋深い快適な観察会になりました. |
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11月度の観察記録
2016年11月度の観察記録です
| 2016-12-29 | 224 | |
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