7月度の観察記録 - 2017年

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7月度の観察記録

2017年7月度の観察記録です

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曇り空で蒸し暑い日でしたが，雨は降らず比較的快適な観察会でした．新池横の歩道では，アガパンサス（Agapanthus，ユリ科，和名：紫君子蘭）の薄青色の花が真っ盛りでした．水鳥が来ていない新池周辺ではクマゼミ（熊蝉，セミ科）が１匹だけ鳴いていました．わずかな開水面の上では，チョウトンボ（蝶蜻蛉，トンボ科）とコシアキトンボ（腰空蜻蛉，トンボ科）がたくさん飛んでいました．周辺では，ムクゲ（木槿，アオイ科）の薄紫の花が咲き，センダン（栴檀，センダン科）は緑の実を付け始めていました．元の集合場所では，東星中学が植えたアジサイ（紫陽花，アジサイ科）の花はほとんど終わり，そのかわりにアザミ（薊，キク科）の花が咲いていました．参加者は，子供３名と大人28名でした．


アガパンサス	アザミ

いつもより少し遅れて，里山の家の中で観察会を始めました．最初に，A3用紙２枚の先月の報告を皆で見ました．東山南部の天白渓から保護し，卵塊から育てたカスミサンショウウオ（霞山椒魚，サンショウウオ科）は，一昨日に元に戻したそうです．中学生の男の子も，サンショウウオのエラの形状変化などについて報告しました．
毒蟻のヒアリ（火蟻，アリ科）が話題となり，現在４ヶ所で発見されていますが，１０年前から警告されており，驚くにあたらないという意見が出ました．ヒアリの蟻塚は，他の種類のアリがいるとできにくいという研究成果もあるということでした．
新池のスイレン（睡蓮，スイレン科）は名古屋市が入れて，増えすぎてしまい，また，除去を試みるそうです．水面がスイレンで覆われると，開水面（open water）が少なくなり，光が遮られ，他の水生生物が育たず生物の多様性が阻害されるようです．
猫ヶ洞池で今年はカイツブリ（鳰，カイツブリ科）が営巣したことが報告されました．琵琶湖は，別称「鳰海（にほのうみ）」と言われましたが，最近，カイツブリは少なくなったという報告がありました．オオムラサキ（大紫，タテハチョウ科）の写真を見て，どうして国蝶になったかという質問が出ました．ミカドアゲハ（帝揚羽，アゲハチョウ科），ギフチョウ（岐阜蝶，アゲハチョウ科），アゲハチョウ（揚羽蝶，アゲハチョウ科）なども候補だったようですが，1956年に切手の図柄としてオオムラサキが採用され，1957年に日本昆虫学会が国蝶としてオオムラサキを決定しました．アサギマダラ（浅黄斑，タテハチョウ科）も候補でしたが，外国にも渡るので除外されたという参加者もいました．香嵐渓にも食樹のエノキ（榎，エノキ科）があり，昔はそこでも見かけたということでした．
報告写真のイネミズゾウムシ（稲水象虫，ゾウムシ科）は，イネ（稲，イネ科）に害はあるかが話題になりました．成虫のイネの葉の食害はたいしたことはないようですが，その幼虫が根を食べることによる深刻な被害も報告されています．

【外部リンク】稲がおかしい（無農薬・自然菜園で自給自足Life）

マダニ（真壁蝨，マダニ科）の幼虫を小さなビニル袋に入れて持ってきた参加者がいました．愛知県ではまだ被害は出ていないようです．在来のイラガ（刺蛾，イラガ科）とその繭殻を持ってきた人がいました．８mm大の繭殻の表面の模様は独特でした．アベマキ（棈，ブナ科）の葉に，ウスタビガ（薄手火蛾または薄足袋蛾，ヤママユガ科）の四角の繭とヤママユ（山繭，ヤママユガ科）の丸い繭を観察しました．ウスタビガは，繭をつくるときにキューキューと鳴くそうです．幼虫は触わられても同じような反応をするようです．昆虫少年がキノボリトタテグモ（木登戸立蜘蛛，トタテグモ科）とチュウガタコガネグモ（中型黄金蜘蛛，コガネグモ科）の幼体を持ってきたので観察しました．ゴマダラカミキリ（胡麻斑髪切，カミキリムシ科）と，朝早くハンノキ（榛の木，カバノキ科）湿地で捕ってきた５cm大のノコギリクワガタ（鋸鍬形，クワガタムシ科）も披露されました．


マダニの幼虫	ウスタビガの繭	ヤママユの繭	ゴマダラカミキリ

水田からイチョウウキゴケ（銀杏浮苔，ウキゴケ科）を持ち帰り増やして，３つのシャーレに形の違うものを持ってこられました．ウェブを見ると陸生系もあるようです．

【外部リンク】イチョウウキゴケ（西宮の湿生・水生植物）

キンモクセイ（金木犀，モクセイ科）の枝を持ってきて，その花芽を紹介した女性参加者がいました．また，アゲハチョウの成長過程で，ほんの一握りしか成蝶になれないことを説明する図が紹介されました．

１０時をかなり回ってから，里山の家を出発しました．大坂池の南側のマルバヤナギ（丸葉柳，ヤナギ科）の幹で，コムラサキ（小紫，タテハチョウ科）が樹液を吸っていました．大人の手が丁度届かない高さで，近づいても逃げませんでした．翅をなかなか広げず，青色の表面は観察できませんでした．シロテンハナムグリ（白点花潜，コガネムシ科）もいました．


コムラサキ

この周辺で，オオカマキリ（大蟷螂，カマキリ科）の幼体，ヨツボシケシキスイ（四星芥子木吸，ケシキスイ科），交尾中のマメコガネ（豆黄金，コガネムシ科），ツユムシ（露虫，キリギリス科）を捕獲して観察しました．大坂池からは，ウシガエル（牛蛙，アカガエル科）の鳴き声がしました．平和公園では，ウシガエルの駆除を目指していますが難しいようです．


オオカマキリの幼体	ヨツボシケシキスイ	交尾中のマメコガネ	ツユムシ

大坂池土手の野草に，シオヤアブ（塩屋虻，アブ科）がとまっていました．スズメバチ（雀蜂，スズメバチ科）やオニヤンマ（鬼蜻蜒，オニヤンマ科）さえも後ろから奇襲する暗殺昆虫だという説明を昆虫少年がしてくれました．ササキリ（笹切，キリギリス科），交尾中のホシハラビロヘリカメムシ（星腹広縁亀虫，ヘリカメムシ科）もここで観察しました．テントウムシの専門家が，ススキ（芒，イネ科）の株をかき分けて，根元でナナホシテントウ（七星天道，テントウムシ科）を見つけようとしましたが，ここでは見つかりませんでした．ススキの株のなかは，気温が４～５度ほど低いそうです．避暑をして生存率をあげているということでした．


シオヤアブ	ササキリ	交尾中のホシハラビロヘリカメムシ

４cm大のセスジスズメ（背筋雀，スズメガ科）を捕獲して，シャーレに入れて観察しました．クズ（葛，マメ科）に覆われたナンキンハゼ（南京黄櫨，トウダイグサ科）の雄花を写真に撮りました．その手前で，ママコノシリヌグイ（継子尻拭，タデ科）の赤い花を見つけました．茎には小さな棘が付いていました．端に食痕のあるクズの葉の裏に，カメムシの幼虫，ヨツボシオオアリ（四つ星大蟻，アリ科）とアシナガバエ（足長蝿，アシナガバエ科）がいました．最も多くいたのは，頭がハンマー状のメダカナガカメムシ（眼高長亀虫，ナガカメムシ科）でした．マルカメムシ（円亀虫，マルカメムシ科）の幼虫もここで観察しました．


セスジスズメ	ママコノシリヌグイ

昆虫少年が，オオシオカラ（大塩辛，トンボ科）を網で捕獲したので，私が受け取り，男の子達に渡しました．ヨモギ（蓬，キク科）についたヒメジンガサハムシ（姫陣笠葉虫，ハムシ科）やクズについたイセノナミマイマイ（伊勢之並蝸牛，オナジマイマイ科）も観察しました．


オオシオカラ	ヒメジンガサハムシ

ハラキンミズアブ（腹金水虻，ミズアブ科）や寄生したコマユバチ（小繭蜂，コマユバチ科）の繭と，寄生されて弱ったシャクガ（尺蛾，シャクガ科）の幼虫を観察しました．泥のついたニイニイゼミ（にいにい蝉，セミ科）の抜け殻を見つけた参加者がいました．ウチワヤンマ（団扇蜻蜒，サナエトンボ科）が，草の尖端で止まっているのを見つけて，昆虫少年が網で捕獲しようとしましたが，逃がしてしまいました．どのように逃げるかを予想して網をふる必要があります．ガマズミ（莢迷，スイカズラ科）の葉の上の幼虫をアリ（蟻，アリ科）が食べているのを見つけました．巣へ移動させているのではなく，１１匹のアリが直接食べているように見えました．アメリカホドイモ（亜米利加塊芋，マメ科，別名：アピオス）の花を観察しました．根に芋ができるそうです．東北地方では，飢饉対策の植物としていたようです．ガマズミに緑色の小さな実ができ始めていました．


コマユバチの繭と寄生されて弱ったシャクガの幼虫	ニイニイゼミの抜け殻	アメリカホドイモの花

群生して花をつけたヒメヤブラン（姫藪蘭，ユリ科）の説明がありました．花はジャノヒゲ（蛇髭，キジカクシ科）に似ていました．水田南のウスノキ（臼木，ツツジ科，別名：カクミノスノキ）には，赤い臼状の実が数個ついていました．
セグロアシナガバチ（背黒脚長蜂，スズメバチ科）を捕まえてシャーレに入れて観察しました．キリ（桐，キリ科）の昨年と今年の実を観察しました．直ぐ横のムクノキ（椋木，ニレ科）に実がついていましたが，まだ青く食べられませんでした．１つの実をとって実の中を観察しました．
ナンキンハゼの大木があり，１０cm長くらいの穂状の黄色い雄花を観察しました．雄花の根元に雌花もあるですが，確認できませんでした．ナンキンハゼを観察しているときに，クロアゲハ（黒揚羽，アゲハチョウ科）を追いかけて，昆虫少年が飛び込んできましたが，クロアゲハは逃げてしまいました．


ムクノキの実

ケラ（螻蛄，ケラ科）を見つけて，プラスチックケースに入れて観察しました．ケースに水を入れて，泳ぐ姿も観察しました．「掘る」，「走る」，「跳ねる」，「飛ぶ」，「よじ登る」，「泳ぐ」，「鳴く」の７つの能力があることが紹介され，そのどれもたいしたことがなく器用貧乏として扱われていることが話題になりました．お金がないことをオケラとも言いますが，ケラを正面からみるとお手上げのように見えるからという説が有力です．

里山の家の中が一杯だったので，納屋のたたき（三和土）で感想会をしました．いつもの女性参加者から，ビワ（枇杷，バラ科）の実の入ったパウンドケーキが振る舞われました．昆虫少年が，イエオニグモ（家鬼蜘蛛，コガネグモ科），ツユムシ，オオカマキリの幼体，アオメアブ（青目虻，ムシヒキアブ科），シオメアブ（塩目虻，ムシヒキアブ科，別名：シオヤアブ）をシャーレに入れて見せてくれました．
多くの昆虫が観察できた気持ちの良い観察会になりました．


ケラ	イエオニグモ

観察項目：マダニの幼虫，イラガ，イラガの繭殻，アベマキ，ウスタビガの繭，ヤママユの繭，キノボリトタテグモ，チュウガタコガネグモ，ゴマダラカミキリ，ノコギリクワガタ，イチョウウキゴケ，キンモクセイ，マルバヤナギ，コムラサキ，シロテンハナムグリ，オオカマキリの幼体，ヨツボシケシキスイ，マメコガネ，ツユムシ，ウシガエルの鳴き声，シオヤアブ，ササキリ，ホシハラビロヘリカメムシ，ススキ，セスジスズメ，クズ，ナンキンハゼ，ママコノシリヌグイ，カメムシの幼虫，ヨツボシオオアリ，アシナガバエ，メダカナガカメムシ，マルカメムシ，オオシオカラ，ヨモギ，ヒメジンガサハムシ，ハラキンミズアブ，コマユバチの繭，シャクガの幼虫，ニイニイゼミの抜け殻，ウチワヤンマ，ガマズミ，アメリカホドイモ，ヒメヤブラン，ウスノキ，セグロアシナガバチ，キリ，ムクノキ，クロアゲハ，ケラ，イエオニグモ，アオメアブ

文・写真：伊藤義人　監修：瀧川正子，田畑恭子

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