少し暑さが和らぎましたが,まだ,水の補給が必須な夏の観察会でした.街路のキバナコスモス(黄花秋桜,キク科)の花は全盛でしたが,ランタナ(Lantana,クマツヅラ科,和名:七変化)は花と実が混在するようになっていました.スイレン(睡蓮,スイレン科)で水面が覆われた新池のまわりでは,ツクツクボウシ(つくつく法師,セミ科)が一斉に鳴いていました.新池北側の土手の樹木は花を付けたクズ(葛,マメ科)ですっぽりと覆われていました.その横でウスバキトンボ(薄羽黄蜻蛉,トンボ科)が20数匹群れて飛んでいました.土手のアレチヌスビトハギ(荒地盗人萩,マメ科)の小さな花と実も混在していました.参加者は大人18名と子供3名でした.いつも来ている高校1年生になった,切り紙昆虫で新聞に載ったりしている昆虫大好き少年は無断欠席でした.
外でツクツクボウシが盛んに鳴いている里山の家の中で集合しました.先月の報告をまず皆で見ました.チッチゼミ(ちっち蝉,セミ科)は桃巌寺や平和公園の尾根道で鳴いているという報告がありました.ミンミンゼミ(みんみん蝉,セミ科)を5年前に名古屋でも鳴き声を聞いている参加者がおり,抜け殻もあったそうです.報告の中のクワカミキリ(桑天牛,カミキリムシ科)が話題になり,名古屋市の絶滅危惧種にはシロスジカミキリ(白筋天牛,カミキリムシ科)の方がよいのではという意見がでました.何かを見たという報告だけでは信用できず,GPS機能付きのカメラの写真などが必要という意見もでました.ジャコウアゲハ(麝香揚羽,アゲハチョウ科)は,今年飛んでいているのを見ましたが,ホソオチョウ(細尾蝶,アゲハチョウ科)を見た参加者はいませんでした.先月のジャコウアゲハの卵の近くの白い卵は,寄生されていたようで孵化せず何か分からなかったそうです.
アオツヅラフジ(青葛藤,ツヅラフジ科)の実とその中の種を持ってきた参加者がいました.小さな種はアンモナイト(鸚鵡螺化石,デスモセラス科)のような形をしていました.別名をカミエビ(神衣比,神のエビヅル)といい,英名snail seed(巻き貝形の種)といい,実はアルカロイド系の毒を持っており,鳥も食べず,昔は利尿剤として使ったという説明がありました.ピンピンカズラやチンチンカズラともいうようです.クチナガカミキリ(吻長天牛,カミキリムシ科)やヒメエグリバ(姫抉羽,ヤガ科)が食草としているようです.盆栽として人気ですが,実をつけさせるのは難しいそうです.
10時過ぎに里山の家を出発して,大坂池の南側を通りました.男性参加者の袖にクルマバッタモドキ(車飛蝗擬,バッタ科)がとまりました.大坂池の土手の中のムラサキシキブ(紫式部,シソ科)とズミ(酸実,バラ科)を観察しました.以前,多かった外来種のアレチケツメイ(荒地決明,マメ科)が見つからず,土手の中に入ってやっとアレチケツメイを見つけてきた参加者がいました.カワラケツメイ(河原決明,マメ科)と比べ,花は小さく,蜜腺が葉から離れてつき,黒っぽいのが特徴という説明でした.アレチケツメイは,蜜腺が赤い色のカワラケツメイの代わりに,ツマグロキチョウ(褄黒黄蝶,シロチョウ科)の食草になっています.
以前,蛙池で観察したヌルデ(白膠木,ウルシ科)の5cm大ほどの虫こぶ(ヌルデノミミフシ(白膠木耳五倍子)を,ここで5〜6個観察しました.ヌルデシロアブラムシ(白膠木白油虫,アブラムシ科)が原因で,虫こぶを作りますが,今回もこの虫こぶをナイフで切って中の黄色い小さな幼虫を観察しました.
すぐ横にウメモドキ(梅擬,モチノキ科)が赤い実を付けていました.ブタクサ(豚草,キク科)を見つけ,棒で触った人がいて,白い花粉が吹き上がりました.イシミカワ(石実皮,タデ科)の実もここで観察しました.カナムグラ(鉄葎,クワ科)の葉にいたヒメゾウムシ(姫象虫,ゾウムシ科)の写真を撮りました.赤と白の花を付けたミズヒキ(水引,タデ科)とすぐ横の黄色い花を付けたキンミズヒキ(金水引,バラ科)も観察しました.クズの葉の上のツマグロオオヨコバイ(褄黒大横這,ヨコバイ科,別名:バナナムシ)も数匹見つけました.
マメガキ(豆柿,カキノキ科)の緑色の実を見せて,子供に何かを問いました.ブドウ(葡萄,ブドウ科)という回答があり,家でマスカット(Muscat,ブドウ科)ばかり食べさせているのではと言う参加者がいました.
別のヌルデの葉の全面にぶつぶつの虫こぶが付いていました.ヌルデハイボケフシ(白膠木葉疣毛付子)でヌルデフシダニ(白膠木付子壁蝨,フシダニ科)が原因のものです.
登りの藪こぎを始めたときに,木の根元にヒメカンアオイ(姫寒葵,ウマノスズクサ科)の群生を見つけました.先月のマンネンタケ(万年茸,マンネンタケ科)の付いた切株の所まで行きました.先月の観察の後で,マンネンタケの上にいた虫を捕獲して,キノコムシ(茸虫,オオキノコムシ科)ではなくゴミムシダマシ(塵虫騙,ゴミムシダマシ科)であると確認されたことが報告されました.今回の観察会の後で,さらに詳しく調べヒラツノキノコゴミムシダマシ(平角茸塵虫騙,ゴミムシダマシ科)であるという知らせを受けました.ゴミムシダマシ科であることは間違いないようですが,名前にキノコも入ってくると,騙されたようにも感じますが,ネーミングの妙というべきでしょう.今回は,マンネンタケの表面には何もいませんでした.裏側にいると思い,棒でかき出そうとしましたが,うまくいかず,ビーティングネットをマンネンタケの下に差し入れて,上から叩き,7〜8匹のゴミムシダマシを捕獲しました.雌雄のヒラツノキノコゴミムシダマシが捕れ,雄には角があることを確認しました.
切株のすぐ後ろにスズメバチ(雀蜂,スズメバチ科)の冬虫夏草がありました.4匹のスズメバチの冬虫夏草を掘り出しました.以前に,ここで既に10個掘り出したそうで,合計14個の冬虫夏草がここに集まっていたことになりました.個別の冬虫夏草は,これまでにも観察しましたが,集団で観察したのは初めてでした.どうしてここに集まっているのかという疑問がだされました.
大きなハラビロカマキリが頭上の幹にいたので,捕獲してビニル袋に入れました.胸が赤く,体形から外来種のムネアカハラビロカマキリ(胸赤腹広蟷螂,カマキリ科)でした.腹には翼のようなものがあり,卵をだいているようでした.ここで,小さなヌマガエル(沼蛙,ヌマガエル科)も見つけました.餌の昆虫がとれるので,水がなくてもここにいるようです.
小径に出て,1万歩コースの「地点5」の里程標がありました.100mごとに付けられているそうです.「地点68」まであると言う参加者にどうして「地点100」でないかという質問がでましたが,一歩は約70cm(身長×0.45)なので,問題がないことがわかりました.
観察項目: シロヤマブキ,アオツヅラフジの実と種,アレチケツメイ,ヌルデノミミフシ,ヌルデシロアブラムシの幼虫,ウメモドキ,ブタクサ,カナムグラ,ヒメゾウムシ,ミズヒキ,キンミズヒキ,クズ,ツマグロオオヨコバイ,マメガキ,ハナムグリ,ハラビロカマキリ,ツチイナゴの幼体,ヤブガラシ,ショウリョウバッタ,シンジュ,シンジュキノカワガの繭と幼虫,ヌルデハイボケフシ,ガマズミ,ツマビロキエダシャク,ヒメカンアオイ,マンネンタケ,ヒラツノキノコゴミムシダマシ,スズメバチの冬虫夏草,タマムシの翅,サトキマダラヒカゲ,コシロシタバの翅,サトキマダラヒカゲの翅,カブトムシの翅,ムネアカハラビロカマキリ,ヌマガエル,ウラジロガシ 写真:伊藤義人 監修:瀧川正子,田畑恭子 |
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9月度の観察記録
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| 2017-10-1 | 230 | |
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