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雲はありましたが晴れで，少し汗ばむ感じでした．街路のサクラ（桜，バラ科）は，半分くらい葉を落とし，残っている葉は黄葉し始めていました．ランタナ（Lantana，クマツヅラ科，和名：七変化）は，先月と同じように花と実が混在していました．新池の土手のセンダン（栴檀，センダン科）の実は，大きくなり少し黄みがかかってきました．クロガネモチ（黒鉄黐，モチノキ科）の実も赤くなり始めました．東星ふれあい広場では，２００名くらいの色とりどりのスポーツウェアのジョッギンググループが集まっていました．参加者は，大人22名と子供３名でした．
里山の家の中で，観察会を始めました．最初に先月の報告を皆で見ました．女の子が網でアオスジアゲハ（青条揚羽，アゲハチョウ科）を捕獲して持ってきました．チッチゼミ（ちっち蝉，セミ科）は，今日も鳴いていたという参加者がいました．HPに写真が掲載されているそうです．ヌルデノミミフシ（白膠木耳五倍子）からお歯黒を作る為には，鉄焙染が必要という説明がありました．切り株近くの１０数匹のオオスズメバチ（大雀蜂，スズメバチ科）の冬虫夏草は，多分，オオスズメバチの巣が軒並みにやられた可能性があり，もっと掘れば多くの冬虫夏草が出てくるということでした．
自宅についたセグロアシナガバチ（背黒脚長蜂，スズメバチ科）の巣を持ってきた女性参加者がいました．旦那さんが殺虫剤をかけた可能性があり，２匹の死骸もついており，背中の黒い模様からキアシアシナガバチ（黄脚脚長蜂，スズメバチ科）ではなくセグロアシナガバチと同定されました．モリモトシギゾウムシ（森本鷸象虫，ゾウムシ科）の雌雄の標本ができていました．ハンノキ（榛の木，カバノキ科）の雄花に産卵するという説明がありました．一斉に飛びたち，偶然，食樹のハンノキに辿りついた個体が繁殖するという説明でした．来年は全滅している可能性もあるそうです．
野生のヤマナシ（山梨，バラ科）の５cm径くらいの数個の実と市販のナシ（梨，バラ科）の黒い種を持ってきた人がいました．こんなに大きなヤマナシの野生の実はないので，アイナシ（間梨，バラ科）の実ではという参加者もいました．ヤマナシの実の１つをナイフで半割りして，中の茶色っぽい種を出して，市販の種と比較しましたが，大きさはほぼ同じでした．
実の付いたアリドオシ（蟻通し，アカネ科，別名：一両）とヤブコウジ（藪柑子，サクラソウ科，別名：十両）を持ってきた男性参加者がいました．アリドオシは花が２つずつ付き，赤い小さな実は，人の顔に見えるという説明がありました．
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| 野生のヤマナシの実 |
市販のナシの種（黒）と野生のヤマナシの種（茶） |
アリドオシ（一両） |
ヤブコウジ（十両） |
中津川から捕ってきたアカスジキンカメムシ（赤条金亀虫，キンカメムシ科）の幼生を観察しました．人が笑った顔に見えました．コブシ（辛夷，モクレン科）に付いて，普通のカメムシと違って臭くなく，このまま越冬するそうです．クサギカメムシ（臭木亀虫，カメムシ科）などは，青葉アルデヒドを出し（きゅうりの腐ったような臭い），狭い所では自分の匂いで死ぬという話がでました．アサギマダラ（浅黄斑，タテハチョウ科）のマーキングをする準備をして10:10に出発しました．
大坂池の周辺には，ノビタキ（野鶲，ツグミ科）を狙って大きな望遠のついたカメラをもった人が２人いました．すぐ横を，２０〜３０名の集団のジョッギンググループが何組か通り過ぎました．
里山の家を出て，倉庫の壁とケヤキ（欅，ニレ科）の木で，クヌギカメムシ（櫟亀虫，クヌギカメムシ科）とキマダラカメムシ（黄斑亀虫，カメムシ科）を観察しました．また，綺麗なルリタテハ（瑠璃立羽，タテハチョウ科）が倉庫の壁にとまって翅を広げたり閉じたりしていたので，写真を撮りました．倉庫のコンクリートの三和土（たたき）の上で１０cm大のゆっくり歩くタイワントビナナフシ（台湾飛竹節，トビナナフシ科）を見つけて観察しました．アオスジアゲハの緑色の蛹も壁に付いていました．丁度，網でアオスジアゲハの雌を捕まえた女の子がいたので一緒に観察しました．
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| クヌギカメムシ |
キマダラカメムシ |
ルリタテハ |
アオスジアゲハの蛹 |
オタマジャクシ池の奥のアメリカセンダングサ（亜米利加栴檀草，キク科）の花に数頭のツマグロヒョウモン（褄黒豹紋，タテハチョウ科）の雄が蜜を吸いにきていました．水路近くでコカマキリ（小蟷螂，カマキリ科）を見つけました．前足の鎌に白黒の模様がありました．早速，コカマキリの尻を水に浸けましたが，ハリガネムシ（針金虫，ハリガネムシ目に属する生物の総称）は出てきませんでした．片方の鎌をなくしたオオカマキリ（大蟷螂，カマキリ科）もここで見つけました．水路の近くに，数株のアカバナ（赤花，アカバナ科）が小さな花を咲かせていました．
大坂池の土手のハナモモ（花桃，バラ科）に，季節はずれの花が４つ付いていました．ハンノキで，モリモトシギゾウムシとクリイロクチブトゾウムシ（栗色口太象虫，ゾウムシ科）を見つけて観察しました．蜘蛛の卵嚢をみつけて，ナガコガネグモ（長黄金蜘蛛，コガネグモ科）ではということになりましたが，上部が徳利状ではないので，チュウガタコガネグモ（中型黄金蜘蛛，コガネグモ科）ではないかということになりました．後で調べてトリノフンダマシ(鳥の糞騙,コガネグモ科)の卵嚢である可能性が高いことが分かりました．
クビキリギス（首切蟋蟀，キリギリス科）の雌雄を昆虫大好き少年が捕獲したので，並べて写真を撮りました．ここで，最近は珍しいカマキリ（蟷螂，カマキリ科，旧チョウセンカマキリ）も見つけました．
土手のクコ（枸杞，ナス科）を観察して，実，つぼみ及び花が先月と同じように混在しており，花の雄しべが５本であることを確認しました．クロスズメバチ？（黒雀蜂，スズメバチ科）が，このクコの花に来ていました．この時，ツクツクボウシ（つくつく法師，セミ科）が鳴き始めました．周辺の野草の中にクコの実生が５〜６本ありました．近くで，オオクチブトゾウムシ（大口太象虫，ゾウムシ科）も見つけて写真を撮りましたが，ピンボケでした．
アベマキ（��，ブナ科）の葉に一杯付いた虫こぶのクヌギハケタマフシ（櫟葉毛玉附子）を見て気持ち悪いと言った女性参加者がいました．カキノキ（柿の木，カキノキ科）の根元に近い葉に下に，１つだけ細長い実がなっていました．木の下には，美味しそうに見えるキノコが数本ありました．
女の子がアカトンボを網で捕ったので，事前に用意された資料を使って同定しました．翅の模様からヒメアカネ（姫茜，トンボ科）かマユタテアカネ（眉立茜，トンボ科）ということになり，胴などの模様からマユタテアカネということになりました．ヒメアカネは，このあたりでは滅多にいないのでという人もいました．オオカマキリ（大蟷螂，カマキリ科）の雌もここで見つけました．
緑色の実の付いたムクノキ（椋木，ニレ科）の葉の上で，ツマグロオオヨコバイ（褄黒大横這，ヨコバイ科）とツヤアオカメムシ（艶青亀虫，カメムシ科）を観察しました．ムクノキの葉はざらざらでヤスリの代わりにできるという説明がありました．アオマツムシ（青松虫，コオロギ科）の雌雄をここで捕獲して写真を撮りました 周辺で虫が鳴いていましたが，アオマツムシは夜行性なので，別の虫の鳴き声だということでした．クダマキモドキ（管巻擬，キリギリス科）を見つけたときに，また，ツクツクボウシが鳴き始めました．
湿地に行き，シラタマホシクサ（白玉星草，ホシクサ科）などを見に行きました．シラタマホシクサは，例年より少ない感じでした．男性参加者が，１本だけ抜き取って，捩っている茎を指で挟んで上下させ，花が回転するのを見せました．既に小さな種ができていました．湿地には，紫色の花を付けたサワギキョウ（沢桔梗，キキョウ科），黄色の花のスイラン（水蘭，キク科）とミズギク（水菊，キク科）もありました．白い花を付けたヒヨドリバナ（鵯花，キク科）とミゾソバ（溝蕎麦，タデ科）も周辺にたくさんありました．ジョロウグモ（女郎蜘蛛，ジョロウグモ科）が小さな雄を従えて三面の網をはっていました．
ササキリ（笹蟋蟀，キリギリス科），エンマコオロギ（閻魔蟋蟀，コオロギ科）およびウマオイ（馬追，キリギリス科）を昆虫大好き少年が捕獲したので，写真を撮りました．トホシオサゾウムシ（十星長象虫，オサゾウムシ科）がヒヨドリバナの白い花の上にいました．小さな花にピントがあって，ゾウムシの綺麗な写真は撮れませんでした．
中学生の男の子が先日見つけた内臓が透けて見えるヌマガエル（沼蛙，ヌマガエル科）を水田で探しました．腹が白くなく透けていて，内部の黒っぽい内蔵が見えるものでした．結構たくさんいるようで，１つの卵塊全体が突然変異したものであった可能性があります．普通の白い腹を持つヌマガエルも捕まえて，比較しました．南米ではグラスフロッグとして,全身が透けて見えるカエルもいるようです．
【外部リンク】内臓が透けて見える『グラスフロッグ』（NAVERまとめ）
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| 内蔵が透けて見えるヌマガエル（左）と普通のヌマガエル（右） |
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畦のホコリタケ（埃茸，ハラタケ科）を触ろうとする女の子に，まだ成長するので触るのを止めました．青い花のツユクサ（露草，ツユクサ科）の周辺で白花のツユクサもありました．前に見たメガネツユクサ（眼鏡露草，ツユクサ科）はありませんでした．水田では稲穂が垂れ下がっていました．スズメ（雀，スズメ科）が集団で防鳥ネットに乗り，その重さで稲穂に近づき，ネットの隙間から稲を食べるので，洗濯バサミでネットをピンと張ったという説明がありました．
白い卵を抱えたキクヅキコモリグモ（菊月子守蜘蛛，コモリグモ科）を透明容器にいれて観察しました．腹が２つあるように見えました．ここで，昆虫大好き少年が，マツムシ（松虫，コオロギ科）とカナヘビ（金蛇，カナヘビ科）も捕獲しました．この昆虫大好き少年が，せせらぎの近くで，大きなハラビロカマキリ（腹広蟷螂，カマキリ科）を捕獲して，尻を水につけたところ，カマキリの体長より長い２０cm長くらいのハリガネムシがすぐに出てきました．ハリガネムシをシャーレに入れて皆で観察しました．真っ黒でなく，錆びたような不等間隔の縞がありました．腹腔のなかで，ハリガネムシはとぐろを巻いているのではという参加者がいました．指で挟んで，ハリガネムシがピンと立つのを観察した男の子もいました．希に人に寄生するという記述が図鑑にありました．
里山の家の中は，いっぱいだったので，倉庫の三和土にブルーシートを敷いて，感想会をしました．早速，ローゼル（Roselle，アオイ科）とすりおろし紅玉で造ったジャムを付けたクッキーが，いつもの女性から提供されました．水は使わなかったということでした．
感想として，アサギマダラは上空通過したのを見ただけで，マーキングができず残念というのがでました．ヒヨドリ（鵯，ヒヨドリ科）の渡りを見た参加者もいたようです．教室に入ってきたハチだけでなくアオドウコガネ（青胴黄金，コガネムシ科）でさえ嫌がる生徒が増えていることが話題になりました．
ヌマガエルの突然変異種への感想が多くでました．ハリガネムシを数年ぶりに見たという感想もでました．ハリガネムシに寄生されたカマドウマ（竈馬，カマドウマ科）が水に飛び込み，サケの餌になるという行動操作の話がありました．これにより，他の水生昆虫が助かるという感想も出ました．渓流のサケ科の魚が年間に得る総エネルギー量の6割くらいに相当するカマドウマを食べていたという研究成果もあるようです．カマキリも自分で水を飲みにいくとは思えないので，ハリガネムシに行動操作されている可能性が大です．
【外部リンク】カマドウマの心を操る寄生虫ハリガネムシの謎に迫る（Webナショジオ）
たくさんの昆虫を観察した，秋の快適な観察会になりました．
観察項目：
マタタビの実，モリモトシギゾウムシの標本，ヤマナシの実と種，ヤブコウジ，アリドオシ，ウスタビガの繭，セグロアシナガバチの巣，アカスジキンカメムシの幼生，クヌギカメムシ，キマダラカメムシ，ルリタテハ，タイワントビナナフシ，アオスジアゲハ，アオスジアゲハの蛹，アメリカセンダングサ，ツマグロヒョウモン，コカマキリ，オオカマキリ，アカバナ，ハンノキ，モリモトシギゾウムシ，クリイロクチブトゾウムシ，トリノフンダマシの卵嚢，クビキリギス，カマキリ，クロスズメバチ？，ツクツクボウシの鳴き声，オオクチブトゾウムシ，アベマキ，クヌギハケタマフシ，カキノキ，マユタテアカネ，オオカマキリ，ツマグロオオヨコバイ，ツヤアオカメムシ，ムクノキ，アオマツムシ，クダマキモドキ，シラタマホシクサ，サワギキョウ，スイラン，ミズギク，ヒヨドリバナ，ミゾソバ，ジョロウグモ，ササキリ，エンマコオロギ，ウマオイ，トホシオサゾウムシ，普通のヌマガエル，内蔵の見えるヌマガエル，ツユクサ，シロバナツユクサ，キクヅキコモリグモ，ハラビロカマキリ，ハリガネムシ，アサギマダラ，ヒヨドリ
写真：伊藤義人 監修：瀧川正子，田畑恭子
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10月度の観察記録
9月度の観察記録
