平成31年 3月 10日(日)9:30〜12:50 作成:田畑恭子 監修:村松憲一,瀧川正子 今月の自然観察会は特別なプログラムが用意されていました。講師に村松憲一さんをお招きして、「平和公園の大地の生い立ち」と題した講座を案内していただきました。一方で今回も多くの子どもたちの参加があり、所々で早春の生きものの様子も観察しながら歩きました。
まず里山の家を出てまもない地点で、東海層群矢田川層猪高部層の様子を観察しました。猪高部層は平和公園周辺の土台となっている地層とのことです。砂やシルトの中に礫(石ころ)が含まれているのがわかり、礫の色は白をはじめ黒っぽい物も見られました。次に01番の場所で観察した猪高部層は、先ほど見た礫層の下のシルト層が目立ちました。シルトは粘土よりも少しザラザラした粒で、難透水の性質を持つものの焼きものにするには粒が大きく不向きということでした。少し移動して道路を渡ったところで、かつては唐山層の火山灰層が見られたという場所が紹介されました。この頃から小雨が降り始め、しばらくは降ったりやんだりが続きました。
続いて02番の唐山層を見に行きました。唐山層は八事層に覆われているため、斜面の中ほどで観察されました。含まれる礫が大きいのが特徴とのことで、大人の手のひらほどの大きさのものが目立ちました。道具を使って礫の表面を少し削ると白色や茶色の肌が現れました。多くは風化が進んだ「クサリ礫」となっているそうです。この大きな礫のほかに、硬い岩石の代表であるチャートも含まれていました。
くらしの森エリアに戻り、03番の大崖を目指しました。北尾根への道の脇で根が浮き上がって倒れかけたカシの木を見ました。浮き上がった根はあまり長くなく、礫が多いので根が張れないのだろうとのことでした。大崖の周辺では基準値を超える鉛が土壌から検出されたエリアに柵が施され、地層に近づくことができないので遠くから観察しました。そして村松先生から提供された1985年撮影の写真を見ながら説明を聞きました。この場所では唐山層は見られず、上から八事層の礫層、次いで八事層の最下部である砂層、そして矢田川層猪高部層の順に見られることが紹介されました。フィールドスコープで観察していると砂層の中ほどにカワセミの巣穴が見つかりました。穴が掘りやすいせいかここではよく見られるとのことです。
最後に炭焼き広場に移動し04番の猪高部層を観察しました。礫層とその下のシルト層が見られました。そして炭焼き広場の石垣に使用されている石が濃飛流紋岩類であることが紹介され、角が取れ丸みを帯びる特徴を確認しました。濃飛流紋岩類は愛知県では石材として流通しておりいろいろな所に使用されているそうです。
以下ではその他の観察項目の中から簡単に紹介します。02番の唐山層の付近ではユズリハ、ヤツデの実などを見ました。その後くらしの森へ移動する道沿いではコブクザクラが花をつけているのを観察しました。
北尾根へ上がる道沿いでは、この日どこを歩いてもその花の匂いが漂っていたヒサカキを見ました。池では孵化したばかりのニホンアカガエルのオタマジャクシをすくって観察しました。炭焼き広場のイザヨイザクラはちょうど満開で、初めて見たという参加者からおしべが長いのが目立つとの感想が聞かれました
天候の悪化が心配されましたがなんとか最後まで小雨で済み、傘をさすほどの降りにはなりませんでした。一見動かない地層ですが、長い時間の単位でみると緩やかな動きの中にあり、その動きは何かしらの事象や事件を伴っていることがわかりました。いつもは動き回る虫たちに気を取られがちな自然観察会ですが、今回の講座を機に地層にも関心を持った参加者も多かったようです。新しい発見に恵まれた春の観察会となりました。
|
この記事の添付ファイル | |||
ファイル名 | 掲載日 | ヒット | |
3月度の観察記録
2019年3月度の観察記録(PDF)です
| 2019-3-16 | 245 | |
ページ移動 | |
2月度の観察記録 | 4月度の観察記録 |