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2007年 > 8月度の観察記録
8月度の観察記録
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 ほとんど雲もない晴天で,強い日差しの中での観察会になりました.新池周辺のサルスベリ(百日紅,ミソハギ科)とムクゲ(木槿,アオイ科)の花が,強い日差しに映えていました.クマゼミ(熊蝉,セミ科)のシャーシャーという鳴き声があたりを席巻していました.アブラゼミ(油蝉,セミ科)も,木々にとまっていましたが,その鳴き声はほとんど聞こえませんでした.新池は,水面をスイレン(睡蓮,スイレン科),オオカナダモ(大カナダ藻,トチカガミ科)およびコオニビシ(小鬼菱,ヒシ科)でほとんど覆われていました.オオカナダモの中で,数匹のコイが背を見せて藻を食べながらゴソゴソと動いていました.水面上では,チョウトンボ(蝶蜻蛉,トンボ科),コシアキトンボ(腰空蜻蛉,トンボ科)およびアカトンボ(赤蜻蛉,トンボ科)などが飛び回っていました.水鳥は,アオサギ(蒼鷺,サギ科)が1羽だけ来ていました.その他の鳥はツバメ(燕,ツバメ科),ヒヨドリ(鵯,ヒヨドリ科),ドバト(土鳩,ハト科)およびカラス(烏,カラス科)などの1年中いるものしか周辺にいませんでした.
 参加者は,当初は少数精鋭になると言っていましたが,最終的には子供2名を含む17名となり,8月の観察会としては例年程度でした.

平和公園入り口のサルスベリ ムクゲの花 アブラゼミ アオサギ

 いつもの集合場所の新池北の公園のテーブルは,昼(朝?)寝をしている人に占拠されていたため,横のベンチの所で集合しました.参加費を入れる缶がなかったため帽子を代わりに使いました.自然観察会の緑の旗をフェンスに取り付けましたが,まだ,観察会の名前は書き入れてありませんでした.
 まず,先日行われた新池の予備調査について報告と今後の予定について説明がありました.トンボが11種も見つかったそうです.その後,今回は植物などを持ってきた参加者がいなかったため,先月の観察会の報告を丁寧に見ました.マメナシ(豆梨,バラ科)の花が,枕草子「木の花」の段で楊貴妃の泣いた姿を連想させるという記述に関連して,松尾芭蕉がネムノキ(合歓木,マメ科)の花について,奥の細道の中で「中国の越の国から,呉の国王へ送られた西施(せいし)という美女」を連想しているという話が出ました.

  象潟(きさがた)や雨に西施(せいし)がねぶの花   (ねぶはネムノキのこと)

【外部リンク】KYT-TVコラムチャンネル「ネムノキの花」

 タマムシ(玉虫,タマムシ科)の写真を見て,タマムシの厨子のように,どうしてコガネムシ(黄金虫,コガネムシ科)の翅は使われなかったのかという話題が出ました.最近は翅のきれいな緑色のアオドウコガネ(青銅鉦黄金,コガネムシ科)が多いですが,昔は翅の黒いドウガネブイブイ(銅鉦ぶいぶい,コガネムシ科)などが大半だったから使われなかったということになりました.
 マメナシの写真に関連して,東海丘陵要素植物15種についてのパンフレットが回覧され,説明がありました.自然観察会の旗のデザインに使われているハナノキ(花の木,カエデ科),シデコブシ(四手辛夷,モクレン科),マメナシ(豆梨,バラ科),ハルリンドウ(春竜胆,リンドウ科),ウメバチソウ(梅鉢草,ユキノシタ科)などは平和公園にはなく,あるのはサギソウ(鷺草,ラン科),モウセンゴケ(毛氈苔,モウセンゴケ科)およびシラタマホシクサ(白玉星草,ホシクサ科,別名:金平糖草)だけということでした.
 出発の時に,棟上げの祝い手ぬぐいにツル(鶴,ツル科)と亀が印刷されているものを見せて,ツルはコウノトリ(鸛,コウノトリ科)の間違いという説明がありました.ツルは地面に巣をつくり,木の枝にはとまれないので,軒先に巣をかけるのはコウノトリということでした.昔の人は,ツルとコウノトリを区別していなかったのかもしれません.

 この後,新池の土手を一周しました.本来立ち入り禁止のフェンスの内側ですので,自己責任ということでした.フェンスの根元にコガヤ(小茅,イネ科:別名:カリヤス)がありました.多くの外来種の植物が日本に入って来ていますが,コガヤは逆に外国へ進出している植物だそうです.関連して,白川郷の合掌造りの屋根葺きに,昔は水はけのよいコガヤを使っていましたが,今はススキを使うという話題が出ました.コガヤを白川郷で増やそうとしているそうです.なお,カヤ(茅または萱)は,屋根葺きに使うイネ科の植物の総称で,カヤという植物があるわけではないそうです.

【外部リンク】京都精華大学(調査演習)「カヤネズミから見る人と自然の関係」

【外部リンク】素敵な宇宙船地球号「命輝く茅葺きの家」

新池 コガヤ

 池の水辺へ行くと,小魚やメダカが水中に沢山いました.ギンヤンマ(銀蜻蜒,トンボ科),チョウトンボ(蝶蜻蛉,トンボ科),シオカラトンボ(塩辛蜻蛉,トンボ科),イトトンボ(糸蜻蛉の総称,イトトンボ科)が水面上を飛んでいました.水辺近くの石垣の隙間に,3cm大で真中が暗赤色の5弁の白い花が咲いていました.外来種で,東山植物園から飛んできたキンゴジカ(金午時花,アオイ科)という外来種でした.
 池の中のスイレンは,温帯性の園芸種のスイレンで,日本古来のヒツジグサ(未草,スイレン科)や熱帯性のスイレンではないという説明がありました.観察したスイレンの根はレンコンのようなもので,横に広がっているそうです.スイレンの見分け方として,温帯性スイレンは,水に浮かぶ形で花が咲き,熱帯性スイレンは,ハスの花のように茎を伸ばして空中に花を咲かせるそうです.モネの絵の日本庭園のスイレンはどの種だろうかということが話題になりました.大原美術館や豊橋動植物園に,フランスから移植されたスイレンがあるそうですが,ホームページの写真をみても種別はよくわかりませんでした.

【外部リンク】高知県観光コンベンション協会「モネの庭の睡蓮」

【外部リンク】光と風と「モネのスイレン」

チョウトンボ キンゴジカの花 スイレン

 新池のスイレンは,ジェット水流で除去する予定だそうです.新池の水位は平均1mで,その下に80cmくらいの汚泥と,さらにその下には80cm程度の軟弱土があるそうです.水位は,猫ヶ洞池と新池はつながっているため,猫ヶ洞池のベルマウスと同じだそうです.人力では浚渫できないため,湿地ブルドーザーが必要だそうです.堰堤を壊して,重機を入れる価値があるかどうかが問われているそうです.白鳥のような雑食性の鳥や魚を入れたら良いという人もいるそうです.新池へ流入している下水は分流式ですが,大雨の時は糞尿も流入するそうです.
 池の際の水中でマツモ(松藻,マツモ科)を観察しました.松の葉の形に似ているため,この名前がついているそうです.金魚用に売られている藻です.少し岸から離れたところでは,オオカナダモが繁茂していました.
 水際に実のなったトウネズミモチ(唐鼠黐,モクセイ科)がありました.見分け方は,ネズミモチ(鼠黐,モクセイ科)より花期は遅く,ネズミモチと違って,葉脈がはっきり見えることだそうです.
 水際に大きなススキのような草が生えており,オギ(荻,イネ科)であるという説明がありました.カヤで屋根を葺くと40年,オギで葺くと100年持つといわれるものです.水辺では,アシからオギに移行し,最後にススキが植生するという解説がありました.近くにキショウブ(黄菖蒲,アヤメ科)もありました.春先に黄色い花を岸辺に沢山つけたものです.他の地域では除去するかどうか議論があるようです.

新池の堰 オギの断面 オギ

 クズ(葛,マメ科)が覆い茂った土手で,キイトトンボ(黄糸蜻蛉,イトトンボ科)とムスジイトトンボ(六条糸蜻蛉,イトトンボ科)を子供達が網で捕まえました.ムスジイトトンボは前回の調査で見つからなかったので,標本にしようとビニール袋を用意した参加者がいましたが,入れる前に逃げられてしまいました.子供達は,標本にするのを嫌がっていましたので,ちょうどよかったのかもしれません.イトトンボの観察で,目の色と胴体の色が同じだと子供達が言っていました.
 わずかに残っている水面に黄緑色の藍藻のようなものが浮いていました.顕微鏡で見ないと何かはよく分からないようなものでした.水中には,コオニヒシ(小鬼菱,ヒシ科)がありました.
 堰のコンクリートの割れ目にオオニシキソウ(大錦草,トウダイグサ科)が咲いていました.

 土手のフェンスをよじ登り集合場所の公園に戻りました.脚の短い人にとっては,少し大変でした.男の子が,大きなショウリョウバッタ(精霊蝗虫,バッタ科)を捕まえたので,後脚を掴んで,体が機織りのように動くのを観察しました.また,フェンスの近くにあるエノキ(榎,ニレ科)に小さな実がついているのを見つけました.まだ,十分熟してはいませんでしたが,熟すと食べられるそうです.この木に実がなるのは久しぶりだそうです.

クズの花 エノキの実

 ここまでで11時過ぎになり,急いで平和公園に入りました.入口近くの,ヤマナラシ(山鳴らし,ヤナギ科),ヌルデ(白膠木,ウルシ科)およびハギ(萩,マメ科)を観察しました.光が強過ぎるので,ハギの葉はしぼんだようになっていました.道の逆側に,エビズル(蝦蔓,ブソウ科)がありました.単葉の互生ですが,ツルがないのは2つおきでした.エビズルの実は,食べたり果実酒にするそうです.枕草子に出てくるえびぞめ(葡萄染)は,この実を使ったもので,えび色(赤みがかった紫)に染めるものです.周辺に花を咲かせたヒメヤブラン(姫薮欄,ユリ科)とタカサゴユリ(高砂百合,ユリ科)もありました.また,花は咲いていませんでしたがニヨイスミレ(匂菫,スミレ科)もありました.
 尻尾が青光りした小さなニホントカゲ(日本蜥蜴,トカゲ科)を子供が見つけて捕らえました.皆で回覧して見ている内に逃げ出して,残念ながら誤って参加者に踏まれて死んでしまいました.
 木にぶら下げてある,大きなペットボトルで造ったスズメバチ(雀蜂,スズメバチ科)のトラップを降ろして観察しました.発酵していて強い臭いがしました.スズメバチだけでなくゴミムシ(塵虫または芥虫,オサムシ科)やカナブン(金蚊,コガネムシ科)などの沢山の虫が入っていました.

エビズル スズメバチのトラップ

 トンボ池に行き,マツモムシ(松藻虫,マツモムシ科)を観察しました.水は赤っぽい色になっていました.湿地に,きれいな白い花を付けたサギソウ(鷺草,ラン科)が沢山ありました.花の数を数えた参加者によると,約80でした.ミズギボシ(水擬宝珠,ユリ科)やミソハギ(禊萩,ミソハギ科)も花を咲かせていました.また,畦にはワレモコウ(吾木香,バラ科)も咲いていました.湧き水の近くに,季節はずれのカキツバタ(杜若,アヤメ科)が1輪のみ紫色の花を咲かせていました.近くでツクツクボウシ(法師蝉,セミ科)が,鳴き始めました.

サギソウ

 芝生広場に行き,大乗寺横に建設中の22Fのマンションが東山タワーと並んでいるのを見て,景観論争がありました.「都市の森を我が手にする誇り」というような宣伝文句に対して,選ばれた人が住むという格差社会についての話に発展しました.
 感想会を,芝生広場の日陰で行いました.暑かったですが,参加人数が少なく説明がよく聞けてよかったという感想も出ました.イブキジャコウソウ(伊吹麝香草,シゾ科)とヒメツルソバ(姫蔓蕎麦,タデ科)を自宅の庭から持ってきて説明した参加もいました.ドライミストの開発に関係した参加者のテレビ放映に関する案内もありました.暑くて多少疲れましたが,楽しい真夏の自然観察会になりました.

観察項目:コガヤ,スイレン,キンゴジカ,オオニシキソウ,キンセンカ,ギンヤンマ,チョウトンボ,キイトトンボ,ムスジイトトンボ,シオカラトンボ,コシアキトンボ,トウネズミモチ,オギ,マツモ,オオカナダモ,コオニビシ,ショウリョウバッタ,アジアイトトンボ,キショウブ,エノキの実,ヤマナラシ,ヌルデ,ハギ,タカサゴユリ,エビズル,トカゲ,スズメバチのトラップ,ゴミムシ,カナブン,ヒメヤブラン,ニヨイスミレ,マツモムシ,サギソウ,ミソハギ,ワレモコウ,カキツバタ,ミズギボシ,イブキジャコウソウ,ヒメツルソバ(概ね観察順)

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子

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2008-7-19 890

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