2020年 2月 9日(日)9:30〜12:40 作成:田畑恭子 監修:瀧川正子 この冬は暖冬と言われてきましたが、この数日来は平年並みの寒さが続いていました。冷たい北風が吹く朝でしたが、相変わらず大勢の参加者で里山の家は大盛況でした。先月の予告通り、2月の観察会は恒例の藪こぎをして歩き、久しぶりにたくさんの距離を移動しました。
今日の目的は藪こぎなので、できるだけ寄り道を少なくして先を急ぐ必要がありました。しかし途中見つけた生きものについては知らせ合って共有しましょうとの声かけがありました。最初に一人の参加者の案内で、歩き始めてすぐのウメの木を観察しました。八重の花と一重の花が同じ木に咲いていました。理由はもともと一重のウメの木に八重の木を接ぎ木しているからでした。八重のウメと一重のウメ、どちらが好まれるかという問いかけには、さまざまな意見が出ました。また、一重の方が実がよくつくと言う参加者がいました。タラヨウの木の下では「ハガキの木」という別名を紹介されました。葉の裏を先の固いペン状のものでなぞると字が書けることでこの名前がつき、郵便局の前に植えてあることも多いそうです。
池に一羽のサギが来ていました。脚を小刻みに動かして池底の生きものを探す様子に注目しました。やがて飛び立ったその脚の黒い色によってチュウサギとわかりました。コサギの脚は黄色いそうです。池の中を見るとニホンアカガエルの卵塊がいくつも産まれていました。そのうちの一つをカップに移して直に卵に触ってみました。「プルプルしている」「タピオカみたい」などの感想が出ました。この日見かけた卵塊の数は全部で16でした。
子どもが池に張った氷を取り出してはしゃいでいました。湿地の脇の日陰では短いながら霜柱が立っており、近頃は暖冬続きで見かける機会が減っているので懐かしいとの声も聞かれました。中道沿いにたまった落ち葉の中を子どもたちが歩き、足が見えなくなっちゃった、と言って笑っていました。
せせらぎ沿いの木の割れ目ではヨコヅナサシガメの幼虫が集団で越冬している姿が見られました。何匹いるか数えてみようとしましたが、折り重なるように集まっていて数えられませんでした。道端に毛深い鞘に入ったマメ科の植物の実が落ちていて、ニセアカシアの実ではないかと話しましたが、調べてみるとニセアカシアの鞘には毛がないことがわかりました。この日は行く先々で冬に活動するガの仲間、シロフフユエダシャクのオスが見られました。メスは翅が退化していて夜に活動するそうです。
間伐された「子どもドングリの森」の前でその成り立ちの説明を聞きました。2006年に子どもたちが拾って育てたドングリの実生の苗を2008年に移植して以来管理され、間伐材はほだ木等に利用されているとのことでした。そして子どもドングリの森の奥の斜面を上がり、いよいよ藪こぎが始まりました。斜面にはコシダが群生していました。斜面を登りきった広場ではアカマツの松脂を観察しました。
またそのアカマツの樹皮を子どもたちが剥がすのを見て、一人の参加者から幹の成長によって外側の古い樹皮が剥がれていくことが説明されました。その後の坂を下りきった所でオオバヤシャブシの木を見上げると、実と雄花が青空をバックにくっきりと美しい造形を見せていました。藪こぎの途中で女の子が拾った朽ち木の中にシロアリが数匹見つかり、その形状は2種類に分かれました。その後調べると頭部の茶色いのが兵アリ、全身白いのは働きアリとわかりました。
続いてカワセミの巣穴を観察しました。切り立った崖状になった場所に2ヶ所作られていました。ヘビが登って来られないようにこうした場所に営巣するとのことでした。再び藪こぎに戻り、一昨年まで長年にわたって葉や花の数などを記録し続けてきたヒメカンアオイを見に行きました。周囲は腰の高さほどのササに一面覆われて、ヒメカンアオイには全く日の光が届かない状況でした。前日の下見でササの一部を刈って観察しやすくされており、花はいくつか確認することができましたが、葉は黒く溶けたようにしおれてしまっていました。あまりにも無残なその姿にショックを受けた参加者もいて、後日周辺の手入れをしようということになりました。その後久しぶりに訪れたハンノキ池では遠目にカワセミの姿を見ることができました。
つどいの丘のコウバイは早くも満開のピークを過ぎているようでした。最後に大坂池近くのハンノキを観察しました。枝が何本も払われていましたが、ミドリシジミの卵はかろうじていくつか発見できました。この日の藪こぎでは特大のゴミ袋を2つ持って、行く先々でゴミを拾い集めましたが、レジャーシートや空き瓶などがたくさん見つかり、2袋では足りないくらいでした。
朝から吹いていた冷たい風は森の中ではほとんど気になりませんでした。久しぶりに長い距離を移動し、大幅に予定時間をオーバーして里山の家に戻りましたが、今回は虫捕りができなかった子どもたちも山あり谷ありの冬の森歩きを楽しめたようでした。
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| 2020-2-24 | 264 | |
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