2020年 3月 8日(日)9:30〜12:00 作成:田畑恭子 監修:瀧川正子 2019年12月に中国で最初の症例が報告されて以降、急速に世界規模で流行を拡げる新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、今月の自然観察会は中止となりました。その代わりに2020年3月の記録を残すことを目的として自然観察指導員と有識者による記録会をおこないました。その記録を記します。
歩き始めて最初に目についたのは、アベマキの幹を泡が流れ落ちている様子でした。この日は随所でこの泡が見られ、長年この森を歩いている参加者も初めて目にする不思議な現象でした。この日降り続いていた雨と関係がありそうなことは予想できました。のちに調べたところ木の幹の表面を伝って落ちる雨、「樹幹流」が樹皮に付着したさまざまな物質を含んで流れ落ちることで泡立ちができるということでした。コバノミツバツツジは早くも花を咲かせていました。またタカノツメはちょうど芽吹き始めたところでした。
続いて観察したコクランは、暗い森の林床に現れることが多いとのことでした。トウカイコモウセンゴケ、ミズスギが同時に観察できる場所があり、そこは夏でも水が枯れず湿った状態が保たれているとのことでした。
モチツツジもつぼみがふくらみ、開花までもう少しと思われました。足元のノビルはネギの仲間の植物ですが、葉の内側がくぼんで溝ができているのが見分けるポイントとのことでした。開始時刻からオタマジャクシ池の上段で雨に濡れながら佇んでいたアオサギが、近づいて写真を撮ろうとすると飛び立ちました。
マサキのふくらんだ新芽とまだ固いつぼみ、そして去年の実がついているのを観察しました。足元に目を移すとヒメオドリコソウやムラサキサギゴケがピンク色の花を咲かせていました。ムラサキサギゴケは里山の家で見た図鑑にはゴマノハグサ科とされていましたが、のちに調べると新分類ではハエドクソウ科に移されたとありました。
また、カラスノエンドウとスズメノエンドウが混在している場所がありました。カラスノエンドウの葉は幅が広く丸みを帯びた印象ですが、スズメノエンドウは葉が細長く見分けるのは簡単でした。どちらも先端に巻きひげがついていました。そのすぐそばに別の場所から移植した柑橘類の木が3本ありました。そのうち大きな葉をつけた2本はナツミカンではないかとのことでした。
ビワの花はすでに終わり小さな実がつき始めていました。新芽は白っぽく真上に向かって立ち上がっており、触ってみると固い毛に覆われていました。周辺でツクシを探すと次々と見つかりました。またたくさんのヤブジラミが芽を出していました。
ヨモギもたくさん見つかりました。ヨモギの葉は裏が白っぽいのがよく目立ちました。その近くにある柑橘類はユズとのことでした。オタマジャクシ池の近くではタネツケバナが小さな花をつけているのが見られました。
2月の自然観察会で卵を観察したニホンアカガエルは小さなオタマジャクシになっていました。2月に見た卵の数に比べるとオタマジャクシはずいぶん数が少なく、この日見かけたアオサギも食べるかもしれないとのことでした。雑木林の中に入って越冬中のホホジロアシナガゾウムシを見に行きました。この日の参加者の一人が1月に見つけて以来観察を続けてきたものでした。雨に濡れていましたがカクレミノの枝にじっとしがみついていました。倒木の切り口にはサルノコシカケの仲間が生えていました。
その他ミヤマガマズミのつぼみ、ガマズミの新芽、イヌザンショウの冬芽を続けて観察しました。
冬に実をつけるヤブコウジですが、すでに落ちたあとなのか実は見当たりませんでした。同じ場所でマンリョウやヒイラギの実生が見られました。
炭焼き広場へ移動してイザヨイザクラを観察しました。ちょうど満開で、鼻を近づけるといい香りがしました。また東側の地層(東海層群矢田川層猪高部層)が礫層とシルト層に分かれているのを見ました。
炭焼き広場のユキヤナギは花が咲き始めていました。そのユキヤナギにはイセリアカイガラムシが多数ついていました。せせらぎ沿いに移動してカラタチの根元の実生の小さな木を確認しました。思いがけずたくさん生えていて、放っておくと大きく育つのが難しいので、保護することも検討しているとのことでした。
この日は終始雨が降り続いていましたが時折野鳥の声が聞こえていました。ジョウビタキやコサギ、カルガモの姿も見ることができました。
そのあとヒメカンアオイが定着している場所を見に行き、多数の葉や花を確認しました。最後にタマカイガラムシがたくさんついているハクバイの木を観察しました。一見カイガラムシの成虫だけが目立ちましたが、写真を撮って拡大すると孵化したばかりの幼虫がびっしりとついているのがわかりました。
雨の中でしたが寒さはそれほど気にならず、確実に季節が移っているのを感じました。天候のせいもあって昆虫の姿がほとんど見られず、久しぶりに多くの植物と向き合うことができました。新型コロナウイルスの今後は計り知れませんが、早く日常が戻って来ることを願うばかりです。
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2020年3月度の観察記録(PDF)です
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