2020年 5月 10日(日)9:30〜11:45 作成:田畑恭子 監修:瀧川正子
新型コロナウイルスの感染拡大予防のため、政府による緊急事態宣言が5月末まで延長され、残念ながら自然観察会を再開することはできませんでした。今月も個人的に歩いて取った記録を残します。 前日の夕方から降り始めた雨は強くはならないものの朝まで続いていました。幸い気温はあまり下がらず、傘が要らない程度の霧雨の中を歩き始めました。
雨に誘われてイセノナミマイマイが行く先々で活動していました。ツバキの葉には大きく成長したハスオビエダシャクの幼虫が体を伸ばして静止していました。またズミのつぼみが赤く色づき始めていました。
中道沿いのツツジの花を観察しました。モチツツジの木は花盛りでしたが雨のせいか訪れる昆虫の姿はあまり見られませんでした。また少しオレンジがかったピンク色の小ぶりなツツジの花も咲いていました。ゴミグモは食べカスなどのゴミで作った隠れ帯の真ん中にいましたが、手を近づけると警戒して隠れ帯から出てきました。
早春に花を咲かせていたソシンロウバイには実がついていました。ソシンロウバイの実は「偽果」と紹介されますが、子房だけが発達してできたものを真果(しんか)というのに対して、花床などが加わってできたものを偽果といい、ソシンロウバイの実をよく見ると花びらの付け根の痕が線状に残っています(写真の矢印の先の白っぽい線)。持参のカッターナイフでその偽果を半分に切って断面も観察しました。
4月にはギシギシの葉裏でコガタルリハムシの幼虫をたくさん確認しましたが、この日は成虫ばかりが見られました。ギシギシは幼虫にも成虫にも食べられて穴だらけでした。その近くでナナホシテントウの幼虫が歩き回っていました。この日はナナホシテントウの成虫も見られました。
畑の様子を見に行きました。ブロッコリーの収穫は済んでいましたが、残された2株には種が無数についていました。普段ブロッコリーを食べる時に、この野菜をアブラナ科の植物とはあまり意識しませんが、種のついた様子を見るとそれが明らかでした。畑の脇にはシロツメクサの花が一面に咲いていました。
つどいの丘のキリの木は花が真っ盛りで、木の下には咲き終わった花がたくさん落ちていました。花を開いてみると4本のおしべが見つかり、その先端をよく見ると袋状の葯(やく)が開いて花粉がこぼれているのが確認できました。
キリの木のそばで葉の上にヤナギハムシがいるのを見てその木がヤナギであることを知りました。ヤナギは柳絮(りゅうじょ)が飛ぶまでにはもうしばらくかかりそうでした。また同じ場所のムクノキの葉の陰でワカバグモが雨宿りしている様子を見ました。また、ハルジオンの花の上にヤブキリの幼虫がいました。4月にはタンポポの花に来ているのを見ましたが、ハルジオンの花粉や花びらも食べているのかもしれません。
田んぼを見に行く途中、足もとのハイネズの成熟した葉と新芽との美しい色の対比が目にとまりました。サワフタギの花が咲いていたので足を止めて見ていると、その葉に食痕がたくさんあることに気づき、シロシタホタルガの幼虫のしわざであることがわかりました。幼虫は次々と見つかり、ざっと数えただけで10匹以上はいるようでした。派手な色でよく目立ち、あとで調べるとこの幼虫は刺激を与えると毒のある体液を出すことがわかりました。
田んぼの脇のカキノキを見て、葉の様子がおかしいことに気づきました。すべての葉が緑の色素が抜けたような模様になっていて、木全体にも元気がないように見えました。樹幹か根に異常が起きているのではないかと予想しました。葉の裏に見慣れない虫がついていたので調べたところ、ワタカイガラムシの仲間のようでした。その幹を大きなアリが何かを口にくわえて降りて来ました。何を運んでいるのかはわかりませんでした。
田んぼにはまだ水が入っておらず、苗床にイネの苗が用意されていました。たくさんのツバメが訪れて、地面に降りていました。巣作りのための土を集めている様子でした。最近は巣の材料となる泥のある場所が減る一方なので、ツバメたちは思いがけず遠くから来ているのかもしれません。
カキツバタがちょうど開花のピークを迎えているようでした。周辺がきれいに手入れされ、一幅の絵画を見るような景色でした。しかしアシ原の奥にはキショウブも見えていました。日本の侵略的外来種ワースト100に指定されています。カキツバタの葉には大型のガガンボが美しい模様の翅を見せていました。あとでキバラガガンボとわかりました。
クズは相変わらずの勢いで蔓を伸ばして草むらを覆い始めていました。葉のところどころに食痕があり、見つかったのはコフキゾウムシでした。雨粒を背負って歩き回っていました。
最後に以前カンアオイを観察した谷地にスズカカンアオイを見に行きました。ヒメカンアオイやゼニバサイシンは葉の形が丸みを帯びているのに対し、スズカカンアオイの葉は大きくて先端がとがり三角形に近い形をしていました。花も大きく花びらが長いのが目立ちました。
この日は結局ずっと霧雨が降り続き、公園は訪れる人の数も少なく静かでした。ウグイスの声が時折聞こえてくる中、雨に濡れてひっそりと佇む木々の新緑や花の風情もまた目に優しく映るものでした。来月こそは事態終息の目途がある程度立って、いつもの自然観察会が開催できるよう祈りながら帰途につきました。
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5月度の観察記録
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| 2020-5-23 | 165 | |
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