2021年 5月 9日(日)9:30〜12:15 作成:田畑恭子 監修:瀧川正子 新型ウイルスの感染状況は改善しないどころか感染者数が過去最多を更新するなど深刻な事態が続いています。自然観察会を再開することはできず、以下を2021年5月の記録として残します。 大坂池を南側へ回り、里の道に向かって歩き始めました。最初に出会ったのは馴染みの深いツマグロオオヨコバイでした。また久しぶりに白い触角の目立つ昼行性のガ、クロハネシロヒゲナガと出会いました。触角が短いのでメスと思われます。
ズミの花が満開でいい香りがしていました。イボタノキの花が咲くにはまだ少し早く、つぼみがふくらんでいました。足元にはアメリカフウロの花が咲いていました。
イボタノキの近くにはハルジオンの花が一面に咲いていて、たくさんのモモブトカミキリモドキが訪れていました。モモブトカミキリモドキはオスの後ろ脚の付け根が太いためにその名がついていますが、この日見かけたものはほとんどがメスのようでした。またヤブキリの幼虫もあちこちで見られました。
ニシキギの花はもうほとんどが終わりかけていました。わずかに残った花を写真におさめました。その近くの草むらにはコスズメがいて、写真を撮るため草をかき分けてもほとんど動かずじっとしていました。
ノイバラの花もたくさん咲いていてコアオハナムグリが集まって来ていました。そのノイバラの根元にはイモカタバミが群生しており、年々少しずつ数を増やしているようだとのことでした。そこへホシミスジが飛んで来ました。その名の通り羽の3本の白い筋が目立っていました。
アケビの葉についた何かの虫の死骸に小ぶりのアリがたかっていました。よく見ると腹部に白い斑点がありました。またアケビの新芽をハバチの幼虫が食べていました。アケビコンボウハバチの幼虫でした。その近くのアベマキの葉には大きなイモムシがたくさんついていて、オオトビモンシャチホコというガの幼虫とのことでした。よく見ると体にはまばらに毛が生えていました。
オヤブジラミの花が清楚な姿を見せていました。中にはもう実になっているものもありました。ガマズミの花も咲き始め、たくさんの虫たちが訪れていました。中でもコアオハナムグリが数多く目立ちました。湿地にさしかかるところで、ウスノキの様子を見ました。花の時期は終わり、まだ青い実が頭をもたげていました。
いつもは2羽でいるのを見かけるカルガモが、この日は1羽だけで池の中にいました。人が近くにいてもあまり気にしていない様子でした。ニワゼキショウの花には色が白っぽいものと赤紫のものとがあるようですが、オオニワゼキショウ、コニワゼキショウなどの種があり、見分けられませんでした。
この日はセボシジョウカイという甲虫の仲間も何ヶ所かで見られました。頭部と前胸背板の黒い斑点が目印です。スイカズラの花も行く先々で咲いていて、優しい香りを放っていました。花の色は白いものと黄味がかったものとがあり、咲いたばかりの時は白く次第に黄味を帯びるとのことでした。ヤマウルシの花にも注意深く近づいてみましたが、香りは感じられませんでした。
湿地のそばのサワフタギには今年もシロシタホタルガの幼虫がたくさんついていました。アニメ映画に出てくる「ネコバス」にその姿が似ていると言われますが、ネコバスよりはるかにカラフルな色彩です。田んぼの近くでカヤツリグサ科の仲間を2種続けて見ました。ゴウソとアゼナルコです。アゼナルコはゴウソに比べて穂の部分が細長く垂れていました。
先月は花が1つだけ咲いていたカキツバタですが、この日はすっかり咲きそろっていました。湿地ではそのほかヒメギスの幼虫を観察しました。黒い体の側面に白いラインの目立つシックな配色です。
田んぼの近くでクロコムラサキ(コムラサキの黒化型)が見つかりました。普通のコムラサキの羽の模様は褐色の地色にオレンジ色の帯が入るのに対し、クロコムラサキの方は黒い地色に白い帯が入るので見分けるのは難しくないようです。
もう少し中道を進みました。キリの幹を見ると、複数の毛虫が動き回っていました。よく見ると樹皮を齧って食べているようでした。その場でイモムシの図鑑を調べると、地衣類を食べ物とする蛾、ウンナンヨツボシホソバの幼虫として掲載されている写真にそっくりでした。しかしヨツボシホソバの幼虫と酷似しているとのことで見分けるのは困難と考えて、ヨツボシホソバの仲間の幼虫としました。
トウチク林のそばでヒメコウゾの実がつき始めているのを確認して帰り始めました。途中で先月は花が咲いていたサルトリイバラに実がついているのを見ました。
炭焼き広場のアキニレの木の枝に不思議な形の生き物がくっついていました。カイガラムシの仲間と教えられ、名前はヒモワタカイガラムシと分かりました。これはメスで白い部分には蝋状の物質に包まれた卵が入っているとのこと。今までのこの観察会で見られたことのない昆虫でした。アキニレの葉裏ではコチャコガネが複数見つかりましたが、近づくとポトリと落ちて逃げてしまいました。また別のアキニレの木の葉ではアキニレハフクロフシという名の虫こぶも見られました。
炭焼き広場ではそのほかにゴミグモの様子を観察しました。張った網の真ん中でじっとしていたゴミグモを刺激するとさっと下の方へ逃げて行きましたが、そのまま少し待っているとまた元の場所にスルスルと上ってきて頭を下にしてとまりました。広場の脇ではソシンロウバイの木に今年もたくさん偽果がついていました。
この日別のルートで撮影された写真の中から興味深いものを記録として残します。アカマツの葉にオオワラジカイガラムシが刺さっている写真です。アカマツの下側の葉に5〜6匹のオオワラジカイガラムシが刺さっていたそうです。オオワラジカイガラムシは今年大発生していると見られていますが、アカマツのすぐ横のアベマキにオオワラジカイガラムシが多数いたそうです。下に落ちている死骸を試しにマツの葉にさしてみたところ容易にささることがわかったので、結論としてアベマキに発生したオオワラジカイガラムシが風に吹かれ落下したときに松葉に刺さったということが推測されたとのことでした。
もうひとつ大坂池に現れた北米原産のウチワゼニクサに関する情報が届きました。環境省の「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト」に掲載されており、水辺の生態系を守る観点から今後も注意深く対処していく必要がありそうです。
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5月度の観察記録
2021年5月度の観察記録(PDF)です
| 2021-5-22 | 145 | |
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