2021年 4月 11日(日)9:30〜12:10 作成:田畑恭子 監修:瀧川正子 新型コロナウイルスの感染状況が悪化し、またもや自然観察会を中止することとなりました。以下は2021年4月の記録として残すものです。 ここのところ、週末になると土日のどちらかは雨が降るという天候が続いていましたが、今週末は土曜日曜ともに気持ちのいい晴天となりました。里山の家の前のケヤキの木は近年徐々に弱り、枯れた枝は順番に払われてきました。盛り土の上に植えられていないため、地中の粘土層に阻まれて根が水を吸い上げられないとのことでした。
マサキの葉でミノウスバの幼虫の集団が見つかりました。ミノウスバは昼行性のガです。マサキは水分が多いので防火を目的に昔から生垣に用いられてきましたが、実際に延焼をくい止めるほどの効果があるかはわからないようです。足元にはゴミグモの巣があり、冬を越したゴミグモがゴミのリボンの中にいました。
辺りにはカラスノエンドウがたくさん花を咲かせていました。そして夥しい数のアブラムシがたかっていました。そのアブラムシを捕食するナナホシテントウの幼虫も見つかりました。カラスノエンドウには花の付け根に蜜腺がありアリを呼び寄せて葉を食べる虫から身を守っています。蜜腺の場所を舐めてみるとほんのりと甘さを感じました。
カラスノエンドウの花にはタコゾウムシの幼虫がついていました。近くをヒメカメノコテントウが交尾した状態で歩き回っていましたが、この虫もアブラムシを捕食します。オタマジャクシ池ではショウブの花が咲いていました。
少し移動して先月花を観察したアンズの木を見ると、オビカレハの幼虫が集団でいるのに気づきました。集団は同じ木の2ヶ所で見つかりました。そのすぐそばのウメの木では樹皮にナミテントウの卵が産みつけられていました。卵の集合は複数見つかり、写真に撮って数を数えてみると多いものは62個もありました。
ベニシジミがギシギシの葉にとまっていました。ギシギシはベニシジミの幼虫の食草なので産卵するかもしれないと思いしばらく様子を見ていましたが、産卵行動は見られませんでした。タンポポの花がたくさん咲いているので観察しました。タンポポは花の外側から咲いていくので、中心が開いているほど早く咲いた花ということになります。咲き終えるとさらに上に伸びるのは、綿毛を遠くへ飛ばすためにタンポポが備えた性質のようです。
キュウリグサの花が咲いていました。花序を観察すると花は下の方から咲いて、先の方はつぼみが並んで丸く巻いていました。1本摘み取って指先で揉んでから匂いを嗅ぐと、確かにキュウリのような匂いがしました。同じ場所にタチイヌノフグリも咲いていました。オオイヌノフグリと違って茎が枝分かれせず、直立していました。
中道沿いのロープ柵の杭に大きなガガンボがとまっていました。マダラガガンボでした。近づいてカメラを向けても動きませんでした。別の杭には小さな蛾がとまっていました。フタナミトビヒメシャクというシャクガの仲間でした。
せせらぎ沿いに咲く黄色い花を観察しました。ケキツネノボタンは花弁が5枚ですが、一部が落ちて4枚や3枚になっているものも多く見られました。花弁の表面は陽の光を受けてピカピカ光っていました。もうひとつの黄色い花はヘビイチゴでこちらも花弁が5枚、地面に近いところで咲いていました。
ロープ柵の杭のひとつでナナホシテントウが体の下の繭を守るようにじっとしていました。繭はテントウハラボソコマユバチというテントウムシに卵を産みつける寄生バチの繭で、ナナホシテントウの中で育った幼虫が外に出て繭を作ったあと、羽化する頃まで動けなくなるようコントロールされているのだそうです。
さらに進み、せせらぎの脇で見つけた小さな白い花はノミノフスマとのことでした。花弁は一見すると10枚ですが、よく見ると付け根のつながった2枚に見える花弁が5枚あることがわかりました。つどいの丘で先月アカホシテントウ交尾しているところを観察したウメの木を見ると、アカホシテントウの幼虫がたくさん歩いていました。
湿地の池をのぞき込むと、ニホンアカガエルのオタマジャクシがだいぶ大きく成長していて、後ろ足が生えているものもありました。網で捕らえたカエルはヌマガエルで、去年生まれた個体のようでした。田んぼの脇ではトキワハゼが花をつけていました。
くらしの森の田んぼではレンゲの数が減っているそうです。それでも土手沿いに花が咲き、中には花が終わって実をつけているものもありました。子どもの頃レンゲの花を食べたという人がいて、教えられるままに花弁をとっておしべとめしべだけにした部分を食べてみました。シャリシャリとした食感で、甘みがありました。
その場でウコギ科の植物を3種取り上げました。カクレミノは常緑樹、タカノツメは落葉樹、チドメグサは常緑の多年草ですが、すべてウコギ科だそうです。チドメグサは近年セリ科からウコギ科に変更になりました。でもチドメグサを噛んでみるとセリのような味がしました。
帰り道に通った湿地の道沿いにカキツバタの花が一つだけ咲いていました。道の脇のワレモコウは葉がよく育っており、ほかの雑草に紛れて草刈りの時に刈られてしまうのを心配する声もありました。
サルトリイバラの花が咲き、中には実になりかけているものもありました。その写真を撮っているとすぐ近くでアブの羽音が聞こえ、ビロードツリアブがヤマツツジの蜜を吸いに来ていました。
コナラが花盛りで、雄花と雌花の両方を確認しました。雄花の華やかさとは対照的に雌花は目立たない姿でした。
コバノガマズミの花はちょうど満開でした。同じガマズミ属のハクサンボクはつぼみが多く、満開までにはもう少し時間がかかりそうでした。
最後にエノキの芽吹きを遠目に眺めました。エノキは秋に葉が黄色くなりますが、新芽の色も緑色というより黄色い印象でした。
公園の人出は少な目で、静かな日曜日でした。ウグイスやシジュウカラの声がところどころで聞こえていました。本来ならば春爛漫の森の様子を多くの人と共有できるはずだったのですが、去年に続き今年も4月の自然観察会は中止となり残念です。
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4月度の観察記録
2021年4月度の観察記録(PDF)です
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