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2007年 > 10月度の観察記録
10月度の観察記録
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 すっかり秋らしくなり,朝夕は多少寒さを感じるようになりました.当日はずっと曇りで,歩いていても汗をかかない観察会日和でした.集合場所の近くでは,2羽のモズ(百舌鳥,モズ科)が甲高く鳴いていました.新池は開堀調査が進み,土手にテントに覆われた資材が置かれ,一部の藻は陸上げされて,堰の近くの水中には魚網も張られていました.水鳥はいませんでしたが,野鳥を先週から継続して調査しているビデオカメラを持った人がいました.センダン(栴檀,センダン科)の実は,多少黄色くなってきており,多分,内部は既に堅い種ができていそうでした.元清風荘には,まだムクゲ(木槿,アオイ科)とサルスベリ(百日紅,ミソハギ科)の花が寂しげに残っていましたが,例年より遅れたキンモクセイ(金木犀,モクセイ科)の花が強く薫っており,秋の気配が濃厚でした.
 参加者は子供7名を含む37名でした.夏の間暑くて休んでいた人や,2年間仕事で沖縄へ行かれていた蝶好きの人が名古屋に戻ってきて,参加されました.

キンモクセイ

 まず,先月の記録の報告がありました.記録の中で植物名と動物名に漢字表記もされていることに対して,名前の由来が分かり役に立つという感想がありました.
 次に,先月と先々月に話題になったエビズル(蝦蔓,ブドウ科)を参加者が持ってきたので,非常に小ぶりですが普通の葡萄のように付いていた実を早速食べてみました.5mm大の果実で小さな種が4つも入っており,果肉は非常に少なかったですが,ほんのりと甘く野趣もあり,エビズルが葡萄の原種であることがよく分かりました.平和公園のエビズルに花は咲いたそうですが,果実は確認されていません.
 ミツバアケビ(木通または通草,アケビ科)の実を,自宅の庭からコンビニ袋一杯に持ってきた参加者がおり,箸も用意されていたので,皆で少しずつ食べました.種が多くて食べにくかったですが,クリーミーでほんのりと甘く懐かしい味がしました.割れて果肉が見える10cm大のものより,しわしわのものの方が甘いそうです.アケビの皮と豚肉の炒め物などの料理をするとおいしいという話が出ました.

エビズルとミツバアケビの実

 参加者が持って来たギボシ(擬宝珠,ユリ科)も観察しました.アサギマダラ(浅葱斑または浅黄斑,タテハチョウ科)のマーキングの話の中で,蔵王で8/25にマーキングされたものが10/7に平和公園で捕獲され再マーキングされた例が出ました.東山でマーキングされたものが大阪で見つかった例もあるそうです.今年もアサギマダラのマーキングのために網が用意されました.
 アサギマダラが大好きなフジバカマ(藤袴,キク科)を自宅から持ってきた参加者がいました.自宅にいながらマーキングできるということで,皆にうらやましがられていました.白い小さな花を付けたヒヨドリバナ(鵯花,キク科)を近くで採ってきた人もいました.フジバカマに関連して,秋の七草の覚え方が話題になりました.「ハギ,ススキ,キキョウ,ナデシコ,オミナエシ,クズ,フジバカマ,これぞ七草(秋の七草)」というように五七調で覚えるだけでなく,「お好きな服は?」(オ ミナエシ/ス スキ/キ キョウ/ナ デシコ/フ ジバカマ/ク ズ/ハ ギ)というような受験生の語呂合わせのようなものも紹介されました.

 いつものように,ここまでで10時になり集合場所を出発しました.里山の家から平和公園に入り,まずススキ(薄,イネ科)を観察しました.ススキの穂にある黄色や赤っぽく見える葯(ヤク,花粉のつまった袋)のついたオシベを観察しました.小穂(しょうすい)の先端から曲がって出ているノギ(芒または禾)があるかどうかで,ススキとオギ(荻,イネ科)を見分けられるそうです.

  【外部リンク】大淀川の草花

ススキの葯

 畑のすぐ手前で,青色の5mm大の実を沢山付けたイシミカワ(石実皮,タデ科)を見つけました.畑の横で,ジョロウグモ(女郎蜘蛛,コガネグモ科)が網をはっていました.網には,1匹の大きな雌と1/3の大きさもない小さな2匹の雄が少し離れていました.また,2匹のシロガネイソウロウグモ(白金居候蜘蛛,ヒメグモ科)もいました.写真にも小さな白い点として写っており,確かに動いていました.

イシミカワの実 ジョロウグモの雌と雄

 畑の角で2cm大のマメガキ(豆柿,カキノキ科)がなっているのを見つけて,食べて見てはという誘いがあり,複数の人が試してみました.最初は甘いと言っていましたが,後で口の中が非常に渋くなったようでした.すぐ後ろのクロガネモチ(黒鉄黐,モチノキ科)は黄色い小さな実を沢山つけていました. 
 畑の生垣にタナグモ(棚蜘蛛または店蜘蛛,タナグモ科)が網をはっていました.大きな葉の裏で,コクサグモ(小草蜘蛛,タナグモ科)が蛾を捕まえて食事中でした.センゴクマメ(千石豆,マメ科)のまだ残っていた白い花にシジミチョウ(蜆蝶または小灰蝶,シジミチョウ科)が留まっていました.
 畑の横で,ツルマメ(蔓豆,マメ科)とヤブマメ(薮豆,マメ科)を見つけました.これまでは同じものとして見ていましたが,葉が細長くて,鞘(豆果)の比較的大きなツルマメと,葉が長くなくて小さな鞘のヤブマメを区別しました.ツルマメは大豆の原種だそうです.ヤブマメの鞘の表面はつるりとしておりエンドウ(豌豆または蚕豆,マメ科)のようでした.

  【外部リンク】福岡教育大学 福原のページ(植物形態学・分類学)

 さらに進んで,竹藪の中のカラスウリ(烏瓜,ウリ科)の実を観察しました.まだ,緑の縞模様のついているものばかりで,黄色くなっているものはありませんでした.近くで,ヤブガラシ(薮枯らし,ブドウ科)が濃い紫の実を付けていました.

ツルマメ

 高さが人の背たけ以上あるヌカキビ(糠黍,イネ科)がありました.小穂の形は背の低いカゼグサ(風草,イネ科)と良く似ていました.畑では,ハブチャ(波布茶,マメ科)が栽培されており,細長い実が沢山できていました.黄色い花も一部まだ残っていました.近くの柵の根元に,シソ(紫蘇,シソ科)がありました.まだ,葉は緑で,実も白っぽい色でした.実をつぶして食べ,シソの味を確認した人もいました.また,ヤマノイモ(山の芋,ヤマノイモ科)にムカゴが出来ているのを見て,おもわず食べた参加者がから確かにイモの味がするという感想が出ました.
 コオロギ(蟋蟀,コオロギ科)が鳴いていたので,捕まえて観察ビンに入れて観察しました.普通のエンマコオロギ(閻魔蟋蟀,コオロギ科)でした.花の咲いたカナムグラ(鉄葎,クワ科)に多くのニホンミツバチ(日本蜜蜂,ミツバチ科)が群がっていました.体の割に大きな黄色い花粉団子を両足に付けていました.近くにママコノシリヌグイ(継子の尻拭い,タデ科)の薄いピンク色と白色の小さな花もありました.

花粉を抱えたニホンミツバチ

 水田のある湿地の周辺に,ミゾソバ(溝蕎麦,タデ科)の小さな花が群生して咲いていました.湿地の中には,紫色の花をつけたサワギキョウ(沢桔梗,キキョウ科),黄色い花のスイラン(水蘭,キク科)およびシラタマホシクサ(白玉星草,ホシクサ科)が咲いていました.スイランをミズギク(水菊,キク科)と思っていた参加者がいましたが,花の時期がミズギクはもっと早いようです.ニッポンイヌノヒゲ(日本犬の髭,ホシクサ科)もこれらの下の方に咲いていました.沢山咲いていたのでシラタマホシクサを1本抜いて,茎を指で挟んで下からしごくことにより,先端の白い球状の花が少しずつ回転するのを見せてくれた参加者がいました.先端近くでゆっくりと指を放すと,逆方向に回転しました.茎をよく見ると,確かに螺旋状に捻れていました.まっすぐに細い茎を伸ばすための知恵であろうということになりました.

ミゾソバ ねじれた茎を持つシラタマホシクサ

 水田の横に,コバノガマズミ(小葉の莢?,スイカズラ科)が食べられる赤い実を付けていました.すぐ横にイソノキ(磯の木,クロウメモドキ科)もあり,黒い実をつけていましたが,この実も食べられるそうです.近くにきれいな瑠璃色の5mm大の実を付けているサワフタギ(沢蓋木,ハイノキ科)がありました.こちらの実は食べられないそうです.
 ここから薮こぎして斜面を登り小径に出ました.登ったところの小径の上でケバエ(毛蠅,ケバエ科)のコロニーを見つけました.数十匹の幼虫がうごめいており,昨年と同じように気持ち悪いという感想がまず出ました.腐葉土を食べて成長するそうです.子供達は,早速,枝を使って,このコロニーをかき回して遊んでいました.
 石垣にしがみつくようにしている大きなイタドリ(虎杖なたは痛取,タデ科)を観察しました.まだ,特徴的な白い花を沢山咲かせていました.すぐ横で,多くのハギ(萩,マメ科)が紫色の花を満開にしていました.ススキも近くにあり,まさに秋たけなわの感じでした.アセビ(馬酔木,ツツジ科)の木の下に背の低いヒヨドリバナ(鵯花,キク科)が沢山花を咲かせていました.
 ツバメシジミ(燕小灰蝶,シジミチョウ科)が,飛んだり翅を広げて留まったりしていました.表面と裏面の全く違う色に気づき,表面を撮った後で,裏面を撮ろうとしましたが,うまくいきませんでした.小径脇に,赤い実を付けたカマツカ(鎌柄,バラ科)があり,ワタゲカマツカ(綿毛鎌柄,バラ科)とカマツカの間のケカマツカ(毛鎌柄,バラ科)であるという説明がありました.

青い実のついたサワフタギ ヒヨドリバナ ツバメシジミ

 薮こぎをして斜面を下り,カラタチ(枸橘,ミカン科)とカキ(柿,カキノキ科)のある原っぱに行きました.実のなったカキにまとわりつくようにキタテハ(黄立羽,タテハチョウ科)が1頭飛んでいました.カキの木の発酵した樹液を吸うためだそうです.カラタチにも5cm大の実がたくさんなっていました.黒い大きな蝶が飛んできたので,網を持った女の子がクロアゲハだと言って追いかけて行きました.よく見ると尾のようなとがった部分がないのでナガサキアゲハ(長崎揚羽,アゲハチョウ科)の雄だろうと言うことになりました.残念ながら捕まえることは出来ませんでした.ナガサキアゲハは,前は平和公園にはいませんでしたが,温暖化と植木鉢などにより食草があるので北上しつつあるのだそうです.
 カゼグサ(風草,イネ科)の観察を皆でしました.光にかざすと小穂は大変きれいでした.いつものように風で折れたようなへそが葉の途中にあるのを確認しました.小さな葉の場合は分かりにくいようでした.ウクライナの学生がクサギ(臭木,クマツヅラ科)の実の写真を撮っていました.黒い果実とその周辺の濃紅色の萼片(がくへん)が大変可愛い形でした.葉が臭い匂いがするのでクサギ(臭木)という名前だと教えましたが,今の時期はそんなに臭くないようでした.

カゼグサ カゼグサの葉のへそ クサギ

 ここまでで,11時50分になり,この場所で感想会をすることになりました.モズの鳴き声を聞きながらの感想会になりました.シラタマホシクサの茎の捻れに対する驚きや,秋たけなわの自然を楽しんだという感想が多く出ました.途中で昆虫に興味のある参加者が,座っていた近くで,センチコガネ(雪隠黄金虫,センチコガネ科)やゴミムシ(塵虫または芥虫,オサムシ科)の消化された残りが混じった動物の糞をみつけて,皆で集まって観察しました.動物はどこで糞をするかが話題になりました.野鳥は,巣の中の糞を外に持っていって,蛇などにねらわれないようにしますが,哺乳動物などはなわばりを示すために,見晴らしのよい所でするのかもしれないという話も出ました.
 感想会が終わったときに,丁度アサギマダラが見つかり,女の子が網を持って追いかけて行きましたが,森の中に逃げられてしまいました.
 寄生蜂の繭を見つけた人もいました.私が写真を撮って,電子メイルで送ったところ,ホウネンタワラチビアメバチ(豊年俵ちびあめ蜂,ヒメバチ科)の繭だと分かりました.繭の形が俵と思いきや,イネの害虫フタオビコヤガ(二帯小夜蛾,ヤガ科,別名:イネアオムシ)の寄生バチであるがゆえ,豊年の名があるとウェブにあったそうです.この繭から必ずしもこの蜂が出てくるわけではなく,さらにこの蜂に寄生する寄生蜂が出てくる場合もあるそうです.

【外部リンク】虫ナビ フタオビコヤガ

同じ場所で撮ったコバネイナゴ(小翅稲子または蝗,イナゴ科)の写真も同様にして,判別されました.種々の実りを口に入れた秋たけなわの気持ちの良い観察会になりました.

ホウネンタワラチビアメバチの繭

観察項目:エビズル,ミツバアケビの実,ギボシ,フジバカマ,ヒヨドリバナ,ススキ,イシミカワ,カラスウリ,カタバミ,マメガキ,コクサグモ,ジョロウグモ,シロガネイソウロウグモ,ツルマメ,ヤブマメ,シソの実,ハブチャ,ヤマノイモ,ママコノシリヌグイ,エンマコオロギ,カラスウリ,サワフタギ,ウメモドキ,ケバエ,ハギ,テントウムシダマシ,シラタマホシクサ,ミゾソバ,サワギキョウ,スイラン,シロサワギク,ニッポンイヌノヒゲ,コバノガマズミ,イソノキ,アセビ,イタドリ,ツバメシジミ,ケカマツカ,ナツハゼの実,カラタチ,カキ,カゼグサ,ナガサキアゲハ,クサギ,ホウネンタワラチビアメバチの繭(概ね観察順)

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子

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2008-7-19 1848

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