2021年11月14日(日)9:30〜12:10 作成:田畑恭子 監修:瀧川正子 先月に続き自然観察会を実施することができましたが、なぜか参加者はいつになく少人数でした。開始時刻には空は薄い雲に覆われていましたが、時が経つにつれて晴れ間が広がり気温も徐々に上昇しました。風もなく絶好の観察会日和となり、さまざまな秋の表情を楽しみました。 作業棟の軒下には狩りバチの巣がいくつも作られていました。そのほとんどに穴が開いていて、中のハチは出たあとのように見えました。いくつかの巣がつなげられたものもあり、1つの巣を作ったメスのハチが、次の獲物を狩って同じ場所に帰ってくる能力に感心する声も聞かれました。マサキの枝には昼行性のガ、ミノウスバが集まっていました。交尾中の雌雄もいて、産卵中のメスのうしろには産みつけられた卵がずらりと並んでいました。
木の枝についたカマキリの卵はハラビロカマキリのものでした。最近は外来のムネアカハラビロカマキリの卵鞘ばかりが見つかっていて、在来種のものはあまり見かけなくなっています。ユズの木には黄色く色づいた実がなっていました。先月まだ緑色だったときにはもっとたくさんついていたので、色づいたものから誰かに持ち去られたのでは、と話しました。足元の草むらではベニシジミが見つかりましたが、気温が低いためかほとんど動けないようでした。
ヌルデは葉がほぼ落ちて枯れた実だけが枝に残っていましたが、中には夏の間にできた虫こぶがついているものもありました。ここでアブラムシを研究した参加者からこの虫こぶについての説明を聞きました。虫こぶはヌルデシロアブラムシによるもので、夏の間はヌルデで暮らして翅のないメスによる世代交代をし、秋になると翅をもつメスが生まれてチョウチンゴケに移動して冬を越し、次の春にまたヌルデに移動する、というものでした。中道に戻って歩き始めると、オオカマキリの卵鞘も見つかりました。
アンズやモチツツジには季節外れの花がまばらに咲いていました。「狂い咲き」とよく言われますが語感がよくないので「忘れ花」という風流な呼び方が紹介されました。俳句の世界では冬の季語となっています。小さい子どもが、地面の落ち葉の中から虫こぶのついたアベマキの葉を見つけました。アベマキの葉にはいろいろな種類の虫こぶが作られるようです。
この日は歩いていると秋の深まりを感じさせる色とりどりの木の葉や実が目に入りました。中でもヤマハゼの紅葉やヤマノイモの黄葉はよく目立ちました。ヤマノイモとは少し違う黄色のツル性植物があり、よく調べるとヘクソカズラの特徴である托葉が見られました。しかしまだ緑色の葉や茎をもんで鼻を近づけても、ヘクソカズラ特有の匂いは感じられませんでした。
コムラサキの小さな実もあちらこちらで目を楽しませてくれました。夏の間はいろいろな虫に葉を食べられるコムラサキですが、きれいな紫色の実をたくさんつけていました。
チャノキが実をつけていると聞いて見に行くことにしました。その道すがら、子どもの頃の思い出を参加者の一人から聞きました。通っていた小学校でチャノキが生垣になっており、その葉を積んで乾燥させて学校でお茶を沸かして飲んでいたということでした。平和公園にあるのは昔栽培されていたものの名残りとのことですが、この日見たのは小さな木で、2本確認することができました。そしてそのうちの1本につぼみが1つだけついていました。チャノキのそばには数年前に観察したヒカゲノカズラも健在でした。
時刻が11時半近くになり、里山の家に向けて戻り始めました。田んぼの近くの道を歩いているツチハンミョウを女性の参加者が見つけました。この虫の分泌液にはカンタリジンという強い毒が含まれているため、刺激しないよう注意が必要です。さらにこの虫には面白い生態があり、メスの成虫は田んぼの土などに何千という卵をうみつけ、孵化した幼虫は植物の花の上でハナバチが吸蜜に訪れるのを待ち運よく出会えれば乗り移って巣へ運ばれそこでハナバチの卵や集めた蜜を食べて育つという習性が紹介されました。つまり目当てのハナバチに出会えなければ生きていくことができいないという運まかせの生き方をするのです。
シャシャンボの木には実がたくさんついていました。真っ黒に熟しているように見えたので数人で食べてみました。少し未熟な実もありましたが、まずまず甘く、ジャムにしたら最高だと言う人もいました。またサルトリイバラには赤い実がついていました。地元では葉を利用したふ饅頭が有名ですが、実を食べようという意見は出ませんでした。
畑に移動するとハクサイが大きく育っていました。先月収穫を終えたサツマイモのあとにはタマネギが植え付けられていました。畑の上段の2年前に移植したカラスウリを見ると広範囲につるを伸ばしており、実もたくさんついていました。その足元にはイヌホオズキも花と実をつけていました。畑の奥にはセンナリホオズキも栽培されており、熟した実は食べられるそうですがその時期にはまだ早いようでした。最後に畑の脇のサザンカの花を見てから中道に戻りました。
先月に比べて動く生きものの数がぐっと少なくなり、子どもたちは「虫が全然いない」と残念そうでした。そんな中でもいろいろな葉や木の実が秋の色に染まり、多くの参加者が季節の移り変わりを実感する観察会となりました。
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