2022年 9月 11日(日)9:30〜12:00 作成:田畑恭子 監修:瀧川正子 9月に入っても残暑の厳しい毎日が続いています。それでも先月まで鳴いていたアブラゼミやニイニイゼミの声は聞こえなくなり、頭上ではツクツクボウシだけが鳴いていました。一方で草むらからはコオロギの声が聞こえ、行く先々で秋らしさを感じる観察会になりました。
日陰を求めて中道を歩く途中、アベマキの幹にニホントカゲを見つけて歓声が上がりました。捕らえようとするとどんどん上の方に移動してしまうので、子どもたちの虫網も使ってなんとか低い位置まで誘導しましたが、最後は逃げられてしまいました。この日は雨上がりのためか行く先々でキノコが目につきました。キノコに詳しい参加者の女性が、道端のキノコの丸い傘の裏がスポンジ状になっている特徴を確認して、イグチ科のキノコと教えてくれました。水路では交尾中のシオカラトンボが2匹連なったまま飛んでいました。近づくとすぐに飛び立ってしまうのですが、「2匹一緒には飛びにくいはずだからすぐにまた止まるよ」という参加者の言葉通り、近い場所で止まったところを観察しました。
昆虫好きの男の子がピンク色のマダラバッタを捕らえて見せてくれました。顔や胸、脚の部分がピンク色をしていました。一方でエンマコオロギはたくさん見つかりました。顔の模様からその名がついたと言われていますが、じっくりと観察した参加者からは「かわいい顔」との感想が聞かれました。
湿地の方へ移動する途中で、マツカサススキが紹介されました。数が少なく草刈りの時に刈り取られないよう注意が必要とのことでした。名前にススキとありますが、イネ科ではなくカヤツリグサ科の植物です。
湿地ではヒヨドリバナが咲き始めていました。また足元では教えてもらわなければ目に入らないほどの小さな黄色い花が見られました。コケオトギリと言うそうです。これも大切にしたい植物の一つとのことでした。
辺りで見られるツユクサを調べると、花が出ている部分(苞・ほう)に細かい毛が生えていることがわかりました。今までは特に区別なくツユクサと呼んできましたが、これはケツユクサという近縁種だそうです。
シラタマホシクサが満開でした。9月の自然観察会の観察項目の定番とも言うべき存在ですが、今回はひと株だけ根から抜いて、葉を調べてみることになりました。花がついている細い茎の半分ほどの長さの葉が根元から数枚伸びているのが確認できました。同時にモウセンゴケもひと株抜きました。こちらは細長く伸びた茎の先に種ができていました。どちらも観察のあとで湿地に戻しました。この日はどこへ行ってもツマグロオオヨコバイがたくさん見られました。
田んぼまで行くことにしました。途中道端の倒木に生えたカワラタケが目を引きました。また大学生が見つけた抜け殻をよく見ると、頭や胸の部分の特徴からハラビロカマキリのものと分かりました。
雑木林の中のアベマキでは子どもたちがクワガタを探していました。樹皮の割れ目の中にもぐっているコクワガタを発見しましたが、奥深くまで入りこんでいるようで引っ張り出すことは無理なように思われました。しかし最後にはなんとか捕らえることができました。
子どもたちがクワガタ採りをしているそばの足元では大きなゲジが見つかりました。また少し先の樹液の出ているアベマキの幹にはコガタスズメバチやオオスズメバチが来ていたため、参加者には立ち止まらず先に進むよう声がかかりました。
今年のなごや生物多様性保全活動協議会(なごビオ)の生きもの一斉調査のテーマは陸貝です。調査スタッフとなっている参加者も何人かいたため、この日は行く先々で陸貝を探すことに意識が働きました。葉の裏にくっついている小さなカタツムリにまで目が行き、普段なら見過ごしているサイズのものも観察対象となりました。
秋になるとひっつきむしの代表となってみんなから敬遠されるアレチヌスビトハギですが、この日は控えめな花をたくさん咲かせていい香りを放っていました。ナンキンハゼの木にガの幼虫が数頭ついているのを見つけた参加者がいました。食草から虫の名前を調べるのは比較的簡単で、ナンキンキノカワガの幼虫とわかりました。
田んぼの手前の水路沿いにはシロバナマンジュシャゲが咲いていました。田んぼではイネが実り、そろそろ頭が重そうに垂れてきている株もたくさんありました。まだ頭がまっすぐ上を向いた穂の若い実を一粒取って皮を剥がしてみるよう声がかかりました。少し弾力を感じるその実の皮を剥がすと乳白色の液が出て来ました。口に含むとほんのり甘く、イネのミルクと呼ばれると教えてもらいました。田んぼの鳥よけネットについていたヤゴの抜け殻はギンヤンマのもののようでした。
思いがけず暑い中を歩くことになり、終了時は里山の家まで戻らず田んぼの脇の木陰で振り返りをおこないました。自然観察会に参加すると、家族だけでこの森を訪れるのとはまた違った発見があるという感想が出ました。その点についてはこの観察会への参加の経験が長い人も同じ思いでいるようです。これからもたくさんの生きものとの出会いをみなさんと共有していきたいと思います。
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9月度の観察記録
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