2022年 10月 9日(日)9:30〜12:15 作成:田畑恭子 監修:瀧川正子 この1週間ほどで気温がぐんと下がり、急に秋らしい気候になりました。3連休の中日だからかいつもより少なめの参加者数でしたが、その分みんなで同じものを見たり匂いを嗅いだり音を聞いたりする体験を共有することができました。
里山の家を出てすぐ東のクスノキの幹を観察していた参加者がハエトリグモを2頭見つけました。シラヒゲハエトリとのことで、写真を拡大してみると全身毛むくじゃらでした。カエル池の周辺ではカゼクサをはじめアキノエノコログサ、チカラシバなどたくさんのイネ科の植物が穂をつけていました。葉の形状の特徴を手触りで確認していると、クビキリギスが現れました。口が赤いのが特徴で、口紅をつけていると表現する参加者もいました。クビキリギスは成虫で越冬します。
大坂池の周囲はきれいに草刈りがされていて、その中にオオオナモミが一株残されていました。オオオナモミは北アメリカ原産の外来種で、10年ほど前にはくらしの森で普通に見ることができましたが、今は数が少なくなりました。そばのタラヨウは別名「ハガキの木」と言われます。硬い小枝で葉の裏に字を書くとくっきりと残りました。
ミズヒキの花を観察すると、めしべのまわりにおしべが5本ありました。花びらに見えるのは萼だそうです。花が終わったあとにはめしべが伸びてその先はカギ状に曲がってひっつきむしになるとのことでした。
畑に移動して観察をしました。イモキバガの幼虫がクウシンサイの葉を巻いて綴って巣にしていました。クウシンサイはサツマイモと同じヒルガオ科の植物です。イモキバガはサツマイモにもついていました。
クウシンサイにはほかにもガの幼虫がついていました。調べるとナカジロシタバの幼虫でした。畑ではほかにナカグロクチバの幼虫も見つかりました。この2種は夏の灯火採集で採れるおなじみのガです。
畑の脇でカエルが飛び跳ねるのを子どもたちが追いかけていました。カエル好きの青年が捕まえてくれたのを見るとヌマガエルでした。ラッカセイは花が終わって子房が長く下に向かって伸びているものを観察することができました。「落花生」とは実のできる様子をよく言い表していると感心する声が聞かれました。
畑を上段まで上がるとカラスウウリの実がいくつも色づいているのが見られました。そのそばではスズメウリも実っていて、2種を並べて観察しました。
上段の畑ではアオイ科の植物が3種並んで栽培されていました。オクラは花がほとんど終わり、実がわずかに残っていました。ワタは実がいくつもはじけて白い綿毛がボール状についていました。ローゼルの花は淡いピンク色で、数えきれないほどの実がなっていました。この実を食べてみた人もいました。
あちこちでコミカンソウが見られました。畑では繁殖力の強い雑草として嫌われ者とのことでしたが、小さな実をつけた姿は多くの参加者の目に可愛らしく映ったようです。
参加者の青年が畑の周辺の側溝の蓋を上げると、たくさんの生きものが見つかりました。中でもセアカヒラタゴミムシは数頭捕獲されて、ケースに入れられました。ケースの蓋を開けると強烈な酸っぱい臭気を感じました。この臭いの正体の主成分は蟻酸だそうです。畑を離れる頃にニホンアカガエルが姿を現しました。
つどいの丘に移動してヤマノイモを調べていた参加者が、これを食草とするキイロスズメの幼虫がついているのを見つけました。丸々と太った大きな幼虫でした。刺激を与えると顔を引っ込めて静止する様子が紹介されました。
里の道を通って戻ることにしました。途中クチベニタケが見つかりました。袋状になった頭の部分を押すと胞子が煙のように放出される様子が観察できました。またススキの花が満開で、黄色いおしべが並んでぶら下がり風に揺れていました。シンジュの幹をよく見ると、シンジュキノカワガの空の繭がいくつも見つかりました。そして少し先のシンジュの葉には様々なサイズの幼虫もついていました。南方系のガで、名古屋では越冬できないと言われてきていますが今年はどうでしょうか。
昆虫好きの青年がマツムシのメスを捕らえて見せてくれました。鳴き声の大きさでもその数でも外来種のアオマツムシに圧倒されている印象のマツムシですが、姿を確認出来て良かったと言う参加者もいました。
今年もアメリカセンダングサの黄色い花がたくさん咲いていました。コセンダングサもすぐ隣に咲いていたので並べて写真に撮りました。どちらも外来種ですが、花の見分け方は周囲を取り囲む萼のように見える葉状の部分(苞)が大きく目立つのがアメリカセンダングサです。最後にヒメジュウジナガカメムシの大集団を観察しました。よく見ると成虫と幼虫が混在していて、このように集まるのは集合フェロモンの働きによるものとのことでした。
気温が下がって、飛んでいるチョウやトンボの姿はほとんど見られなくなってきました。このことについては「チョウやトンボがいなくなった」と表現しがちですが、実際には昆虫たちは冬越しの準備に入り、姿を変えて森のどこかで暮らしています。これからの季節はそんな姿に出会うのも楽しみの一つになりそうです。
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