2023年 3月 12日(日)9:30〜12:15 作成:田畑恭子 監修:瀧川正子 ここ数日は最高気温が20度を超え、記録的な高温が続いています。この日も朝から上着が要らないぐらいの暖かさでした。数組の初めての参加者を迎えて、たくさんの春の生きものに出会う楽しい観察会となりました。
先月18個のニホンアカガエルの卵塊を観察したオタマジャクシ池にその後の様子を見に行きました。予想では例年のように池の底が真っ黒になるくらいのオタマジャクシがいるものと思いましたが、目視で確認できたオタマジャクシは多くはありませんでした。どこかへ行ってしまったのか、水草の陰に隠れているのか不明です。この日はナナホシテントウにたくさん出会いました。見つけた人はみんな嬉しそうで、ナナホシテントウが人気者なのを実感しました。大坂池の北のアンズはまだ花芽が少しだけほころんだ状態で、去年の3月に満開の花を観察したことを思うと今年は花が遅いようです。
草むらではセイヨウタンポポのほか、オオイヌノフグリやヒメオドリコソウなど春の草花が花盛りでした。
参加者の男の子が、ヤママユの繭がついた枝が落ちているのを見つけました。繭は抜け殻で、中を調べてみると、蛹のかけらが入っていました。別の男の子が黒い甲虫を採ったのを見せてくれました。甲虫はコガタルリハムシで、見つけた植物の場所まで案内してもらうと、ギシギシの葉の裏に卵がたくさん産みつけられていました。
クズのつるが木に巻きついていたのをはがすと、葉痕がみんなの目に留まりました。ナマケモノの顔に見えるという意見が多数を占めました。炭焼き広場で満開のサクラは今まで長い間「イザヨイザクラ」と言われてきましたが、今回「シナミザクラ」であろうということになりました。サクラは種類が多く厳密に同定するのは難しいのかもしれません。このサクラのサクランボは食べられるそうです。
田んぼは荒起こしが済んで細かく切った藁が撒かれていました。くらしの森が整備されてこの田んぼの土やイネの苗を入れてから、希少種の水草類が育つようになったそうです。これらは言わば他の場所から持ち込まれた生きものであり、保護の対象とするかどうかは議論の分かれるところです。しかし中にはもともとの場所で絶滅の恐れが生じるものもあり、種レベルの保全の観点からは生きものの多様性を保つために時として外来種と言えども移入先での保護が必要な場合もあるという説明を聞きました。
田んぼに太陽の光が十分届くように南側のコナラが東山総合公園管理課によって除伐されていました。直径50cmにもなる大木で、切り株の年輪は58まで数えたそうです。処理された幹や枝が山のように積み上げられていました。
雑木林に入ると倒木の樹皮を剥がしたところにシロアリの巣が見つかりました。シロアリを初めて見たという参加者もいました。常緑樹のカクレミノは葉の形にばらつきがあり、じゃんけんの時の手の形になぞらえてグーチョキパーの木との別名があります。実際に3種類の形の葉を採って来て、子どもたちを交えてじゃんけんをして遊びました。
大きく樹皮を剥がされたアベマキがありました。ここでは去年の夏にはコクワガタを採取しましたが、昆虫に詳しい青年が、こんなふうに安易に広げて樹皮を剥がし取ると、樹液が出ないばかりかむしろ乾燥が進んでしまい、虫が隠れる隙間もないため昆虫採集は難しくなると話していました。
少し進むと枝に鳥の羽がひっかかっているのが見つかりました。初めはカラスかと思いましたがよく見ると黒くはないのでカラスではなく、しかも両方の翼の付け根がつながって残っている状態でした。おそらくオオタカに襲われたものであろうということで、後日この鳥はアオバトとわかりました。
地面に直径5cmくらいの穴が開いているのを見つけた子どもが何かの巣ではないかと話していました。30cmほどの小枝を差し入れてみましたが、まだ奥があるようで、一体何がこの硬い地面にこんなトンネルをつくったのかとみんなで考えましたが答えは見つかりませんでした。
次に倒木の下から、この観察会では初めて見る大きなナメクジが見つかりました。体長は5センチ以上あり丸々とした体つきで、外来種のナメクジだそうです。その大きさにはみんなびっくりでした。そのすぐ近くでは陸貝の一種であるキセルガイの仲間が見つかり、カタツムリと同じように目を出して歩く姿に驚く参加者もいました。
中学生の男の子が拾った鳥の羽を見せてくれました。キジバトの尾羽でした。拾った男の子は大事そうに持ち帰っていました。
毎年3月の自然観察会に特徴的なのはヒサカキの香りの中を歩く、ということです。この日も常にヒサカキの花の香りが漂っていました。男子大学生の参加者が持参の虫網を振って捕らえたキタテハを披露してくれました。キタテハは成虫で越冬するチョウで、翅の裏は表の模様からは想像できないほど地味です。翅を閉じて止まると枯葉のようで、目立たないように冬越しするのに適していると言えそうです。翅の裏には白くて小さな「c」の模様がありました。
最後に振り返りの場所のウメの枝に、この日最初の方で観察したベニヘリテントウが飛んで来ました。カイガラムシを捕食するテントウムシとのことでした。
この日は道沿いのあちこちでツクシをたくさん見かけました。大人も子どもも地面に顔を近づけて熱心にツクシを探す様子は、楽しい春の情景でした。
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