2023年 7月 9日(日)9:30〜12:00 作成:田畑恭子 監修:瀧川正子 前日から雨が降り続き、初めて3ヶ月連続の雨の自然観察会になるのではないかと思っていましたが、開始時刻には一旦止んでいました。雨は途中でまた降り出しましたが、高温多湿の中をたくさん歩いて奥池まで到達、終了時にはみんなかなりバテてしまいました。 開始前から奥池のそばにある植物を見に行きたいという声があり、できるだけ早く進むことを意識しました。しかしカエル池で足が止まるとたちまち草原で子どもたちの虫探しが始まり、次々と捉えたカマキリやショウリョウバッタ、ヤブキリの幼虫などを見せに来てくれました。中でも褐色のカマキリを捕らえた子どもが前脚の斑紋を見て「コカマキリ」と言ったところ、昆虫に詳しい大学生が確かにコカマキリの前脚にも斑紋があるけれども斑の様子からこれはオオカマキリで、オオカマキリは幼虫時代には前脚に斑紋があることを教えてくれました。
中道沿いの枯れた木にカワラタケの仲間が生えているのを見て、キノコに詳しい参加者がまだ生えたてなので通常のカワラタケより柔らかいと話していました。またシロハツモドキがいくつも生えていて、傘の裏でたくさんのハネカクシがこのキノコを食べているところを示してくれました。
雨に濡れたササの葉の上をコウガイビルが這っていました。この観察会でよく見るオオミスジコウガイビルではなく、クロイロコウガイビルという種のようでした。すぐ近くでササキリの若齢幼虫も見つかりました。頭部はオレンジ色、胸や腹部は黒褐色でツヤツヤです。成虫になるにつれてこの体色は失われてしまいます。中道から水路の対岸に目をやると、1本だけ淡紅色に色づいているイロハモミジが見られました。
アカメガシワに虫食いの跡があり、5mmほどの小さな甲虫を見つけた参加者が、ナガタマムシの仲間と教えてくれました。のちにムネアカチビナカボソタマムシという長い種名であるとの連絡がありました。小さな虫ですが、前胸背板は金色で美しく光っていました。
最初に目的地に定めた奥池に無事たどり着き、ノギランを観察しました。花が咲いているのを期待しましたが、花は見られませんでした。その周辺でナナフシの幼虫を見つけた参加者がいましたがよく見ると触角が長く、この自然観察会でたまに見かけるナナフシモドキとは違うことがわかりました。では何か?ということになりますが、触角が長いとエダナナフシと思いがちですが、よく似たものにタイワントビナナフシがあり、若齢幼虫の時に見分けるのは難しいとのことでした。
辺りにはネジバナが咲いていました。この花に右巻きのものと左巻きのものとがあるということはたびたび話題になってきましたが、この場所でも両方の巻き方の花が見られました。どこで巻き方の左右を表すかという点については、根元に近い方から見てどちら向きに巻いているかであるとの説明がありました。
暑い中をたくさん歩いて、みんな汗をかいていましたが、その汗を吸いにやって来たツバメシジミが参加者の鼻の上にとまって口吻を伸ばしていました。チョウはこの参加者が歩いて移動してもしばらくの間離れようとせず、みんなの笑いを誘っていました。その後エゴノキにできる特徴的な虫こぶであるエゴノネコアシを見に行きました。これはエゴノネコアシアブラムシによるもので、名づけの由来となったその形状は興味深いものでした。
イヌザンショウにはつぼみがついていました。イヌザンショウを食草とするアゲハチョウの仲間がありますがこの木ではカラスアゲハ、クロアゲハ、ナミアゲハの3種の幼虫を見つけることができました。
この日の観察項目のうち、今年のなごや生きもの一斉調査(主催:なごや生物多様性保全活動協議会)の対象であるハエトリグモの仲間ではデーニッツハエトリが見つかりました。ハエトリグモの仲間は前についた4つの目のうち正面の2つが大きく発達しているためか、しばしば「かわいい」と表現されます。その他オオシロカネグモやチュウガタコガネグモなどの美しいクモにも出会うことができました。
クリの実はもうずいぶん大きくなっていて、今年は数が多いようだとの声が聞かれました。ヨウシュウヤマゴボウの花は終わり実になりかけているものもありました。帰り道でお腹が大きくなったメスのカナヘビや大きなイオウイロハシリグモなどを観察しながら里山の家に向けて帰り始めました。
参加者の大学生が芝生広場のそばで樹液の出ているアベマキの幹を調べて、ネブトクワガタを見つけてくれました。
先月の自然観察会で見たホオズキの近くではイヌホオズキが黒い実をつけていました。その葉を見ると虫食いの跡でボロボロになっていて、テントウムシに詳しい参加者がニジュウヤホシテントウの仕業であると教えてくれました。ホオズキの方は少し食べ跡があるくらいで、これがニジュウヤホシテントウの仕業であるかどうかは不明ですが少なくともニジュウヤホシテントウにはイヌホオズキの方が人気であると言えそうです。
雨模様の自然観察会が続き、今月も参加者は少なめで顔ぶれはほとんど先月と同じでした。暑さや雨で過ごしづらい中でも東山の森の生きものの様子を観察する楽しさを感じてもらえているとすれば嬉しいことです。
|
この記事の添付ファイル | |||
ファイル名 | 掲載日 | ヒット | |
7月度の観察記録
2023年7月度の観察記録(PDF)です
| 2023-7-30 | 141 | |
ページ移動 | |
2023年6月度の観察記録 | 2023年8月度の観察記録 |