2023年 8月 13日(日)9:30〜11:45 作成:田畑恭子 監修:瀧川正子 5月から毎月傘をさして歩く自然観察会が続き、ようやく晴れとなったこの日、名古屋の最高気温は今年最高の38.9度を記録し、全国でも2番目の暑さとなりました。それでも東山の森では木陰に入ると幾分かの過ごしやすさが感じられました。大人は前半で既にバテていましたが、子どもたちは虫網を手に最後まで元気いっぱいで動き回っていました。 タイワンタケクマバチを捕らえた大学生が、毒ビンに入れ弱ったところを取り出して見せてくれました。後ろ脚を中心に花粉がたくさんついていました。タイワンタケクマバチは集めた花粉を団子状にして幼虫のエサにします。大坂池の北の水路沿いに咲いたミソハギにはたくさんの昆虫が集まって来ていました。中でもモンキチョウが多く見られ、黄色いものと白っぽいものが混在していました。モンキチョウのメスは白いことが多く、中には黄色いメスもいるとのことでした。ミソハギではほかにベニシジミやツバメシジミ、マメコガネなどが見つかりました。
まっ白なツマグロオオヨコバイの幼虫がいました。成虫は体色の黄色が目立ってバナナ虫と呼ばれ、黄色い幼虫も見かけますが脱皮後間もない幼虫は白いそうです。畑のマルバヤナギにはアブラゼミとニイニイゼミがとまっていました。アブラゼミはすぐ近くでもう一頭見つかり、よく観察すると口吻を幹に差し込んでいるのが確認できました。セミを観察していると一頭のチョウが飛んできたのを見て、誰かが「ゴマダラチョウだ。」と言いま したが、見るとそれはなんとアカボシゴマダラで、急いで大学生が虫網で捕獲しました。アカボシゴマダラは奄美大島では固有種として生息していますが、これは人為的に持ち込まれた別タイプのものが徐々に分布を広げてきたもので、特定外来生物に指定されています。平和公園では初めて確認されたため、参加者の関心を一気に集めました。同じエノキを食草とする在来のゴマダラチョウとの競合や交雑が懸念されます。
近年すっかり見かけなくなったオオオナモミですが、去年はポツンと一本だけ生えているものが見つかり刈り取られないよう保護されていました。今年は去年落ちた実が発芽したようで、周辺に何本も育っていました。つぼみはまだついていませんでしたが竹の柵を設けてあり、もう刈られてしまう心配はなさそうです。その後中道で子どもが捕らえたトンボはマユタテアカネと同定され、その名の由来となる頭部の斑紋を確認しました。
湿地へ向かう道の途中でワレモコウが咲いているのを観察しました。ずいぶん草丈を伸ばして、胸の高さほどのところに花がついていました。その近くでシロバナサクラタデも咲き始めていました。
湿地では毎年サギソウの花の数を数えていますが、この日は6個しか見つかりませんでした。またシラタマホシクサのつぼみが色づいて無数の小さな白い点となって広がっていました。
田んぼでは、イネが青々と育っていました。アメリカザリガニなどを捕獲するためのもんどりを仕掛けてあり、引き上げて中を調べてみることにしました。引き上げたもんどりは4つです。合計でアメリカザリガニが20匹、ドジョウが4匹入っていました。このドジョウは誰かが持ち込んだものとのことで、現地で検索した識別表によると外来のマドジョウのようでした。
田んぼの南の大きなカキノキの葉ではイラガの仲間の幼虫の集団が見られました。イラガの幼虫の体の突起には無数の毒針があり、刺されると非常に痛いのですが、この日の参加者の中には実際に刺されたことのある人が何人もいました。そのカキノキの幹を歩くアリを見ていたところへキノカワガが飛んできてとまりました。キノカワガは翅の色に個体差があり、これは緑がかった色をしていました。幹に生えた緑色のコケの上にとまったためすぐには見つけにくく、ある参加者は自分の色をわかっていてその場所を選んでやって来たかのようだと話していました。田んぼの管理をしている参加者の女性が、希少な水草であるトリゲモを容器にとって紹介しました。この田んぼに入れた土と一緒に運ばれてきたものだそうです。
帰りは湿地の脇から坂を上って一万歩コースに出ました。誰かの手で木が伐られ視界が開けた場所があり、遠く名古屋駅のタワーまで見ることができました。道端のネジキにコノシメトンボがとまっていて、近づいても飛ぼうとしませんでした。正面から撮った写真にはサツマノミダマシが写りこんでいることにあとから気が付きました(写真中央右下)。栗林のところへ降りて里山の家に向かいました。未熟なイガが青いままたくさん地面に落ちていました。思わずもったいないと考えてしまいますが、この時期に落ちるイガは受精していないか発育不良の実とのことでした。
足元のミズヒキは盛りが過ぎて紅白の雄花は見られず、赤い雌花だけが残っていました。アカメガシワにはシャクガの幼虫がピンと伸びきった状態で静止していました。あとでイモムシハンドブックで調べてみましたが、種名はわかりませんでした。最後に里山の家の壁を歩くシラヒゲハエトリを見つけました。全身を細かい白い毛でおおわれてフサフサでした。
この日は何といってもアカボシゴマダラの登場が衝撃的でした。名古屋市内でも10年以上前に報告されていましたが、ついにここまで来てしまったかという思いです。ゴマダラチョウとは越冬のしかたが違い、木の幹で越冬幼虫が見られるそうです。冬になったら確認してみたいと思います。
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| 2023-8-19 | 35 | |
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