2023年 9月 10日(日)9:30〜12:15 作成:田畑恭子 監修:瀧川正子 各地で観測史上最も暑いと言われた8月に続き、9月に入っても厳しい残暑が続いていますが、最低気温は25度を下回る日が増えて朝晩は少し過ごしやすくなってきました。そんな中、森の生きものの様子を観察すると秋を感じさせる姿があちこちで見られ、着実に季節が移っているのを実感しました。 カエル池でナマズを見たという情報があり、みんなで探してみることにしました。でも目撃情報はいずれも夜とのことで、この日はその姿を見つけることはできませんでした。ナマズは夜行性の魚だそうです。先月はまだつぼみがついていなかったオオオナモミを見に行くと、すでに花が終わってたくさんの実がつき始めていました。先月よりも草丈がさらに伸びていました。そのオオオナモミの葉に来ているハスジカツオゾウムシが2頭見つかりました。ゾウムシに詳しい参加者によるとヨモギでよく見られるとのことでした。オオオナモミはヨモギと同じキク科です。
ナガコガネグモのメスが網の真ん中で大きく育っていました。この日はほかにジョロウグモの成体も見かけました。中道沿いのアベマキの樹液にチャイロスズメバチがやってきていました。少し珍しいスズメバチとのことです。水路のミソハギの花にクロマダラソテツシジミが来て吸蜜していました。その名の通りソテツを食草とし、南方から徐々に生息域を広げてきたチョウです。
水路の石にバッタがとまっているのを見て、参加者がヒシバッタと言って写真をスマートフォンのアルバムに収めていましたが、写真を拡大すると胸の横にトゲ上の突起が確認され、トゲヒシバッタとわかりました。カヤツリグサ科のヒメクグは水辺でよく見かけますが、この日は花が咲いていました。つどいの丘に移動してキリの房状の実を見ました。樹高が高くて通常は間近に観察することができないのですが、いつからか枝が途中で折れ曲がって房に手が届く高さになっていました。一つ一つの実には数えきれないほどの種が詰まっていますが、この種の数を数えたことのある参加者がいて、その膨大な数にみんな驚いていました。
エノキの葉に小さなガがとまっていました。灯火採集にもよく来るキナミシロヒメシャクでした。そのエノキの葉をよく見ると、特徴的な形状の虫こぶがたくさん見られました。エノキハトガリタマフシというハエの幼虫が作る虫こぶのようです。すぐ近くにエノキと同じアサ科のムクノキがあり、葉の形やきつき方がよく似ていましたが、手触りには大きな違いがあり、ムクノキの葉は表も裏もザラザラしていました。サンドペーパー代わりに使われるとのことでした。
イネ科の植物は毎年9月の観察テーマの一つです。この日もシマスズメノヒエ、キンエノコロ、アキノエノコログサ、タチスズメノヒエ、メヒシバ、カゼクサなどを行く先々で観察しました。シマスズメノヒエは濃い紫色の花が一列につい縞模様に見えるためこの名がついたとのことでした。キンエノコロは毛が金色に見えるのが名前の由来のようですが、実際には毛の色は紫色でした。アキノエノコログサは穂が直立せず垂れていることが特徴とのことでした。
さとの道を通って戻る途中で、参加者の一人がススキの葉を使った子どもの頃の遊びを紹介していました。最初はなかなかお手本のようには飛びませんでしたが、コツをつかむとうまく飛ばせるようになり、大人も混じってしばらくの間矢飛ばしを楽しみました。そのすぐそばでツチイナゴを見つけて大きさを測ってみました。ずいぶん大きく見えましたがあとで調べると標準的なサイズでした。足元の紫色の美しい花はヤブランとのことでした。園芸品種としても人気があるようです。
先月この観察会で初記録となったアカボシゴマダラが今月も姿を見せました。食草であるエノキの葉にとまっていました。少しの間卵や幼虫を探してみましたが見つかりませんでした。その途中でカナヘビの抜け殻を見つけた参加者がいました。ウロコ模様がはっきりしていて印象的でした。さとの道沿いのカキノキは一部の実が赤く熟し始めていて、食べた参加者もいました。マメガキの方はまだ青い実ばかりでしたが、来月の観察会ではもう実が熟しきって食べられないかもしれないと言う声も聞かれました。道端で小さな白い花を咲かせているマメアサガオを観察しました。よく似たホシアサガオとの違いが話題になりましたが、ホシアサガオは花の中心が紫色なので見分けは簡単とのことでした。
最後にガガイモの花を見に行くとたくさん咲いていました。足元のキンミズヒキも花が咲いていて、中には実になり始めているものもありました。一つ取ってTシャツに乗せてみましたが、まだカギが柔らかくてひっつきませんでした。振り返りの場で、トンボに詳しい少年から旅するトンボ、ウスバキトンボについての説明を聞きました。
この日も名古屋の最高気温は30度を軽く超え、汗をかきながら歩きました。でももうセミの声はツクツクボウシだけになっていたり、ひっつきむしが育ち始めていたり、様々なイネ科の植物が実をつけていたりと、生きものたちのくらしには秋が訪れているのがわかりました。
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9月度の観察記録
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| 2023-9-30 | 86 | |
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