2024年 6月 9日(日)9:30〜12:00 作成:田畑恭子 監修:瀧川正子 前日までの天気予報では全く心配されていなかった雨ですが、当日は朝から降り出しそうな空模様になっていました。開始後時折ポツポツと落ちてくることもありましたが、なんとか終了時まで傘をささずに歩くことができました。 出発前の里山の家で、キキョウソウを観察しました。これを持参した女性は去年、キキョウソウの種が熟すと、果実に穴があいてそこから種を落とすというしくみについて知り、今年その季節を迎えるのを待って、実際に確かめることができたとのことでした。その「窓」からこぼれ落ちた種は、0.1ミリほどの黒い粒のように見えました。キキョウソウは里山の家の近くに咲いているので、観察会の最初に早速見に行くことにしました。屋外のキキョウソウでも、果実の「窓」を確認することができました。
里山の家の周辺の草むらではさまざまな草花が花や実をつけていました。その中でもたくさん見つかるニワゼキショウ(上)とオオニワゼキショウとの違いの説明を聞きました。そしてオオニワゼキショウはニワゼキショウに比べて花は小さく実が大きいと覚えました。このほかにもオオニワゼキショウの草丈の方が長くなるのも特徴だそうですが、草刈りがされたり多くの人に踏みつけられたりするこの場所ではなかなか大きくは育ちにくいとのことでした。果実が下方から熟し、熟した果実のさやが褐色になっているグンバイナズナにも目を引かれました。
里山の家の駐車場の東では、大きなアカメヤナギを伐ったあとにひこばえが育っていました。その木でヤナギルリハムシの成虫や卵、チュウゴクアミガサハゴロモの幼虫などを観察しました。
また以前にも観察した白くならないハンゲショウを見に行きましたが、この日もやはり葉の白い部分は見当たりませんでした。白い部分がないと、ハンゲショウとはなかなか気づけないと話しました。その周辺にたくさん生えているミツバは花の時期を迎えていて、小さな白い花があちらこちらで見られました。アカメガシワも花盛りで、雄株の花がたくさん咲いているのを観察しました。
先月の観察会の終わりに、6月の観察会ではこの森の美味しい恵みを食べられるかもしれないと話しました。期待通りにクワの実がよく熟していて、みんなで食べることができました。初めて食べると言う人もいましたが、中には今まで食べたクワの実の中で一番美味しく感じたとの声も聞かれました。クワの木のすぐ横のムクノキにも実がなり始めていました。こちらは秋に熟し、やはり美味しく食べられるとのことなので、覚えておいて食べに来ようと話しましたが、鳥たちに先に食べられてしまうだろうという意見も出ました。
この日は、今年東山の森が環境省の「自然共生サイト」に認定されたのを記念して、別の自然観察会が開催されていました。参加者の混乱を避けるため、私たちの観察会はさとの道を進むことにしました。歩き始めてすぐに、ムラサキシキブの優しい香りに気づきました。淡いピンク色の花の様子も可愛らしいと参加者に好評でした。
少し進むと、ススキの葉を巻いて作られた小部屋がたくさんできているのが目に入りました。何が入っているのか参加者に予想してもらいました。何かの幼虫と予想する人がいましたが、中をそっと開いてみるとクモが一頭入っていました。これはカバキコマチグモと言って、この部屋の中で産卵し、孵化した子グモに自分をエサとして提供するという生態が紹介されました。カバキコマチグモは現在の東山の森で見られる唯一の毒グモです。
さとの道沿いにはスズコナリヒラタケの竹やぶがあります。毎年たくさんのタケノコが出るため整備が追いつかず、ノコギリを使わずに倒せる今の時期がチャンスということで、道沿いに出ているタケノコをみんなで次々と蹴り倒しました。
足元を見ると、昼行性の蛾、カノコガが交尾していました。初めて見ると言う参加者もいて、その姿は印象的に映ったようです。これまで気づかなかったところに大きなサカキがあり花を咲かせていました。少し透明感のある白い花は五弁で、みんな下を向いて咲いていました。
そこへヒメカマキリモドキ※が飛んで来ました。カマキリとは全く違う科の昆虫ですが、顔はカマキリによく似ていてカマキリと同じようなカマ状の前脚も持っています。が、とても小さいので、肉眼ではその特徴をしっかり確認することはできませんでした。
湿地ではサワフタギの葉の上にいるイモムシを見つけました。腹脚の多さと2個の黒い単眼からハバチの仲間の幼虫とわかりました。サワフタギを食草とするハバチの幼虫ということから種名の検索は可能なのではないかと思いましたが、意外にもたどり着けませんでした。ササの葉の上ではニホンカナナヘビやイオウイロハシリグモが見つかりました。
田んぼに向けて移動する途中、先月花を観察したカキツバタが早くも大きな果実となっているのに驚きました。2週間前に田植えが済んだ田んぼでは、引き上げたもんどりにかかっていた生きものがバケツに入れられていました。マドジョウとアメリカザリガニとオタマジャクシが入っていました。
田んぼでは泥の中を移動するヒメタイコウチも見つかりました。この森を象徴する水生昆虫の登場に、子どもたちばかりでなく大人も興味津々で見入っていました。
さとの道から自然観察会をスタートさせるのは久しぶりでした。木陰が少ないので夏の観察会では避けられがちな散策路ですが、この日は曇り空で暑さも気にならず、ゆったりと湿地までの道を楽しむことができました。時折聞こえてくるオオヨシキリの声も趣深く、自然共生サイトに認定されたこの森の豊かさをかけがえのないものと改めて感じました。
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