2024年 7月 14日(日)9:30〜11:30 作成:田畑恭子 監修:瀧川正子 5月から3ヶ月続けて自然観察会の朝は雲行きのはっきりしない天候になりました。この日は天気予報によれば下り坂ながらも午前中は雨は降らないとのことでしたが、風のない蒸し暑い空気の中でのスタートとなりました。 里山の家の作業棟の東側に、幹を腰の高さまで短く切りって麻の布で巻いて保護したオオウラジロノキの鉢が置いてありました。5月の自然観察会で新芽がすべてしおれているのを見つけた木で、その後樹木医による診断でカミキリムシの食害が原因と分かり救済中とのことでした。
大坂池の北の水路の周辺に咲くミソハギでは毎年たくさんの昆虫を観察してきましたが、この日はキタキチョウやマメコガネ、ハチの仲間などが訪れていました。また、ゾウムシに詳しい参加者が持参の虫網の上でミソハギの花を叩き、チビゾウムシの仲間が多数落ちてきたのを紹介してくれました。また同じ場所に咲いている白い花はセリで、こちらにもマメコガネが多数集まって来ていました。
ウメの木の根元に小さなセミの抜け殻が複数ついていました。白っぽく乾いた泥の粉に覆われていることでニイニイゼミであることがわかりました。オタマジャクシ池のショウブの葉にとまって交尾していたのはムシヒキアブの仲間でした。この日はショウリョウバッタをたくさん見かけましたが、そのすべてが幼虫でした。成虫が現れるのはもう少し先のようです。
参加者の虫網にアカボシゴマダラが入りました。昨年の8月の自然観察会で初登場して以来、もう何度も姿を見せすっかり定着してしまった特定外来生物です。黄色い口吻を伸ばしてしきりに何かを吸おうとしているように見えました。その食草であるエノキが近くにあり、丸々と太った幼虫も見つかりました。
中道沿いのコナラの幹にマメキシタバがとまっているのを参加者の一人が見つけて教えてくれました。また同じシタバガの仲間であるコシロシタバも複数の木で見つかりました。シタバガの仲間は、文字通り後ろの翅が黄色や白の模様を持ち、飛ぶところを見ればその色が見られるはずということで、あえて飛ばしてみることにしました。みんなで目を凝らしてその瞬間に備えたところ、飛んだ時には白い後ろ翅が見られたという参加者がたくさんいました。
コシロシタバの観察をしたコナラの幹にはヨツボシホソバの幼虫が見つかりました。地衣類を食べる幼虫です。そのほか中道を進んで行く間に大きめのゾウムシが見つかり、先ほどミソハギにつくチビゾウムシを紹介してくれた参加者が呼ばれてコゲチャツツゾウムシと教えてくれました。
畑の周辺でもさまざまな生きものの活動が見られました。ムベの葉の上でしきりに何かを探す様子の、艶のある黒い翅を持つハチがいました。ヒメバチの仲間で寄生蜂ですが、利用する昆虫は多種にわたるようです。足元の草むらにはハキダメギクが小さな花を咲かせていました。いつ見てもその姿と種名にギャップがあり理解に苦しみます。周辺にはスミレの仲間がたくさん生えていて、それを食草とするツマグロヒョウモンの幼虫が複数見つかりました。中には別の植物の葉の裏でじっと動かないものもいました。蛹化や脱皮の時には食草を離れて別の場所に移動することがあるのだそうです。
また、カミキリムシを見つけましたがその場では種名がはっきりせず、後日甲虫に詳しい参加者がヨツスジトラカミキリと知らせてくれました。アキニレの生垣にスズメウリがつるを伸ばしており、その花を観察することができました。白い小さな花で花の付け根に子房があることから雌花と分かりました。そのアキニレの葉には食痕が多数見られ、少し探すとその原因と思われる茶色い甲虫がいくつか見つかりました。ニレハムシというそうです。
湿地にさしかかるとナンキンハゼの木にたくさんの黄色い穂状の花が咲いて頭を垂れているのが見えました。近づいてみると同じ穂に雌花と雄花がついていました。その周辺ではシロバナサクラタデが咲き始めていました。
毎年この時期の自然観察会ではイネ科の植物が話題に上りますが、この日は去年までは見かけなかったというイネ科の外来種が紹介されました。アメリカスズメノヒエと言って、穂がV字状に分かれていました。黒っぽい穂の様子はシマスズメノヒエとよく似ていますが、シマスズメノヒエの方が穂の数が多いので見分けは簡単とのことでした。シマスズメノヒエの方が今年は数が少なくなっている印象とのことでした。また田んぼでは、これに形状がよく似たものとしてV字の穂をつけたキシュウスズメノヒエを観察しましたが、こちらは穂の長さがアメリカスズメノヒエの半分ほどでした。このほか同じくイネ科のジュズダマの花も観察しました。
田んぼの近くで子どもたちが水網を使って生きもの探しをしていました。捕まえたものを見せてもらうとマツモムシが入っていました。水を入れたケースに放すと仰向けになって後ろの長い脚をボートのオールのように動かして泳いでいました。
田んぼに到着した11時15分頃に急に大粒の雨が降り始め、あっという間に本降りになりました。引き返すことを余儀なくされて、観察会はいつもより30分ほど早く終了しましたが、観察項目はいつも通り盛りだくさんで、生きものの活動の活発さを知ることになりました。
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